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イラストサービス「Skeb」の運営元がインボイス制度導入へ反対する対応方針を発表。Skebでは同制度の開始後も特例でクリエイターのプライバシーを保護しこれまで通りに運用

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 コミッションの支援サービスサイトSkebを運営する株式会社スケブは7月7日、2023年10月1日より開始するインボイス制度(適格請求書等保存方式)に関して、現行の同制度に対し「強く反対する」という声明とSkebの対応方針を発表した。

 発表された対応方針によると、インボイス制度の開始後にもSkebを利用する取引に限っては、作家の本名が判明することや、作家の取引が不利になること、事務作業の負担が増えることなく利用可能だ。

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(画像はSkeb – Request Boxより)

 Skebは、クリエイターにクライアントが作品制作を有償で依頼することを支援するサービスサイトだ。

 本サービスは2018年にBETA版として運営を開始しており、イラストを中心にボイス、テキストを含めた3種類の作品に対応している。本サービスを利用することでハードルの高いエクスクルーシブな作品の注文を簡潔な手順で行うことができる。

 インボイス制度は、商品から重複して徴税しないようにする「仕入税額控除」の方式として新たに導入される制度だ。同制度では商品の買い手が商品の仕入れ税額控除を行うために、売り手が課税事業者となり適格請求書発行事業者の登録を行った上で、売り手の登録番号が記載されたインボイス(適格請求書)を発行する必要がある。

 株式会社スケブはインボイス制度において、「クリエイターの本名がファンにバレる」、「消費税の納税義務を負うか、取引が不利になるか二択を迫られる」、「事務負担が増える」というクリエイターにデメリットをもたらす3つの問題点を指摘し、「インボイス制度に強く反対します」と声明を発表した。

 株式会社スケブが発表したインボイス制度における3つの問題の詳細は以下のとおり

クリエイターの本名がファンにバレる問題

インボイスに記載された登録番号を国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」というWebサイトで検索すると、適格請求書発行事業者の氏名を確認することができます。
そして、改正消費税法により、適格請求書発行事業者が、課税事業者からインボイスの発行を求められた場合、インボイスの発行を拒否したり、適格請求書発行事業者でないと偽ることは禁止されています。
つまり、課税事業者のファンが、適格請求書発行事業者のクリエイターの作品を購入しインボイスの発行を求められた場合、クリエイターは否応なくファンに本名に紐づいた登録番号を通知することになります。
インボイス制度は個人情報保護の観点から大きな問題があります。

消費税の納税義務を負うか、取引が不利になるか二択を迫られる問題

前々年度の課税売上高が1,000万円以下の事業者は、消費税の納税義務を負わない免税事業者です。クリエイターのみなさんの多くがこの免税事業者に該当します。
しかし、インボイス登録事業者となると必然的に課税事業者となり、前々年度の課税売上高が1,000万円以下であっても消費税の納税義務が生じます。
企業を相手に取引されている商業作家のみなさんは、取引先が仕入れ税額控除を行うために、適格請求書発行事業者の登録を求められる可能性があります。
取引先からの要請に従い、適格請求書発行事業者として登録すれば、今まで免税されていた消費税の納税義務が生じ、拒否すれば取引先との関係悪化や取引中止のリスクが考えられます。

事務負担が増える問題

消費税の免税事業者制度は、小規模事業者の事務負担等に配慮して納税義務を免除する制度でした。
しかし、インボイス制度では小規模事業者への配慮はなく、クリエイターのみなさんは新たに税理士に税務をお願いしたり、創作活動の時間を削って事務作業に取り組む必要があるかもしれません。
先日政府が閣議決定した「骨太の方針 2022」においても「クリエーターの創作活動の支援」が重点施策として掲げられているにも関わらず、インボイス制度はクリエイターの創作活動を阻害していると言わざるを得ません。

 そのうえで、株式会社スケブは現状のインボイス制度がそのまま開始される場合の対応を発表した。

 まず、Skebを利用する適格請求書発行事業者のクリエイターは2023年の春ごろより、アカウント設定にて登録番号を入力することとなる。いっぽうで、Skebを利用する全てのクリエイターが適格請求書発行事業者になる必要はないという。

 また、Skebでは媒介者交付特例という制度を活用し、課税事業者のクライアントからインボイスの発行を求められた場合、インボイスには媒介者である株式会社スケブの登録番号が通知される。これにより、Skebでの取引においてクリエイターの登録番号は保護され、また本名も保護される。

 さらに、クリエイターが適格請求書発行事業者か否かに関わらず、クライアントには今まで通り、リクエスト代金を消費税込で一律して支払可能であり、クリエイターが適格請求書発行事業者かどうかでSkebから受け取れる手取りが変わることはないという。

 このほかに、インボイス制度の内容が変更された場合は都度発表するという。

 インボイス制度の問題点に関しては、日本漫画家協会日本アニメーター・演出協会(JAniCA)をはじめ、業種を問わず様々な小規模事業者団体が声明を発表している。くわえて、現状ではサブカルチャーのみならず、日々利用するサービスや地域の飲食店等にもデメリットが生じる。そのため、自身が直接関係がない場合も、本制度の詳細を把握しておいて損はないだろう。

編集者
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ニュースを中心にライターをしています。こっそり音楽も作っています。

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