デベロッパーのTeam Reptileが8月18日に発売した『ジェット セット ラジオ』の影響を受けたアクションゲーム『Bomb Rush Cyberfunk』のSteam版が記事執筆時点で約3000件のレビューを獲得し、98%のユーザーが好評とする「圧倒的に好評」の評価を得て好調なスタートダッシュを記録している。
本作はPC(Steam)、Nintendo Switch向けに発売されており、PSおよびXboxプラットフォーム版も9月1日に発売すると海外向けに発表済だ。
『Bomb Rush Cyberfunk』は未来の広大な大都市・ニューアムステルダムを舞台に、グラフィティライターとしてスタイリッシュに街を駆け抜けるアクションゲームだ。プレイヤーは記憶と自身の頭部を失い、AIロボヘッドを装備したライター「レッド」となり、仲間とともに5つの行政区を征服する「オールシティ」を目指していく。
本作はセガが2000年にリリースしたゲーム『ジェット セット ラジオ』や続編である『ジェット セット ラジオ フューチャー』の影響を受けており、『ジェット セット ラジオ』の楽曲を手掛ける長沼英樹氏の楽曲も収録される。同作が持つ2000年代の美意識と「ストリートカルチャー」というモチーフををビジュアル、音楽、ストーリー、などと全方位的に踏襲し、発売前から『ジェット セット ラジオ』のファンからも大きな注目を集めていた。
ゲームプレイはジェットパックを装備した主人公を操作し、ローラースケートのみならずBMXやスケートボードを使用しトリックをキメながら街を走り、スポットを見つけてグラフィティをボムることを中心としている。
ボムするたびに自身のいわゆる“プロップス”(ストリートでの名声)を示すポイント・REPが上昇。一定数ポイントが溜まれば制限時間内でトリックやコンボによる獲得スコアを競う対決でライバルクルーと戦い、見事勝利すれば「オールシティ」へ一歩近づく形となる。
なお、法律上グラフィティは違法行為であるため、しばしば警察からの追跡や対決も開幕。スタイリッシュに攻撃を回避し、軽快なトリックで攻撃し退散させよう。
前述のとおり本作は多くのレビューと高い評価をSteamストアページで獲得しており、Steamの情報を集計する外部サイトであるSteamDBによると、シングルプレイ向けのゲームながら最大同時接続数は8134人を記録している。レビューと同時接続数の双方を参照すると、高い評価を受けた人気の作品であることが伺える。
コメント欄ではかつて『ジェット セット ラジオ』や『ジェット セット ラジオ フューチャー』をプレイしたプレイヤーによる高評価のコメントが殺到しており、“実質シリーズ最新作”という発売前からの期待に見事に答えているという評判を獲得していると言える。
ゲームプレイにおいては「空中ブースト」や「BMX」「スケートボード」といった新要素を加えつつ、「手軽にトリックをキメカッコよく走る楽しさ」にフォーカスした操作しやすい設計を導入している。結果として「操作していて楽しい」ことを重視したカジュアルな手触りに進化している。
また、本作は『ジェット セット ラジオ』のリバイバルに終始せず、グラフィティをはじめとする「ストリートカルチャー」を丁寧に描いている点も大きな魅力となっている。
例えば作中のイベントシーンではそれぞれのグラフィティライターの思想や姿勢が伺えるものとなっており、それらは現実におけるグラフィティやライターの美学を反映している。また、「たどり着くのが難しい」位置にスポットが存在することや、「実在するグラフィティライター」が作中の一部グラフィティを手掛けている点などからは「グラフィティ文化」へのコンシャスな姿勢が伺える。
なかでもメカニカルなスタイルを特徴とするZedzが「ダンスを極めるために頭部を改造しているクルー」のグラフィティを手掛けていたりと、ストリートカルチャーの魅力をキャッチ―なSF世界で表現する手法は報道的な価値を持っていると言えるだろう。
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また、本作には長沼英樹氏の楽曲や『ジェット セット ラジオ』のトリビュートアルバムを手掛けた2 Mello氏の楽曲のほか先鋭的な数々のダンスミュージックが収録されている。
収録楽曲はノースカロライナを拠点とするDJ/トラックメイカーであるGRRLが手掛けたマイアミベース「Operator 」やロンドンを拠点とするエレクトロニカやIDMのミュージシャンKidkanevil氏による実験的なグライム「Big City Life ft OV」、オーストリア・ウィーンを拠点に活動するシンガー・SoiaによるネットリとしたビートのR&B「ou Can Say Hi (Prod by. Mez)」などがラインアップ。
日本からはラッパーであるcyber milkちゃんが手掛けるアンニュイなトラップスタイルの楽曲「Condensed Milk」も収録され、作中ではさまざまな国の尖ったダンスミュージックを聴きながらスタイリッシュに街を駆け抜けることができる。
近年では『サイバーパンク2077 』や『Watch dogs2』『Need for Speed Unbound』などの豪華なサウンドトラックも記憶に新しいが、ストイックにアンダーグラウンドな音楽シーンにコミットした『Bomb Rush Cyberfunk』の収録楽曲は特異であり、注目すべきポイントであるはずだ。
これらにより、プレイヤーは「自身の頭部を取り換えす」物語に沿ってニューアムステルダムで奮闘していく内に「ストリートカルチャー」周辺の様々な美学や美意識を浴びるように摂取することとなる。
つまり、『ジェット セット ラジオ』からの影響を現代風にアップデートしつつ、モチーフとなるグラフィティやダンスミュージックの魅力に気軽に触れられる点が本作の魅力であると言えよう。
興味がある読者はニューアムステルダムに足を運び、警察から逃げながら「オールシティ」と「自身の記憶と頭部の奪還」を目指そう。