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辞書の三省堂が選ぶ「今年の新語2024」発表。「横転」「顔ない」などSNSでも頻出のワードがランクイン。大賞は意外にも「言語化」に。そのほか「しごでき」「メロい」や「公益通報」など

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辞書の三省堂が選ぶ「今年の新語 2024」が発表された。大賞に選ばれたのは「言語化」で、以下「横転」や「顔ない」など、SNS上でもしばし見られた10の言葉が選出されている。

三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2024」発表。大賞「言語化」ほか「横転」「顔ない」など_001

「今年の新語」は「三省堂国語辞典」などで知られる株式会社三省堂などが実施しているイベント。その年を代表する言葉で、今後の辞書に見出しとして採録されてもおかしくないという言葉を選ぶというもので、開催されるのは今年で10年目だ。

応募フォームやX(旧Twitter)など、一般のユーザーから応募された言葉の中から、辞書を編む専門家たちがベスト10を選ぶ。過去には「タイパ」「チルい」「忖度」といった言葉が大賞として選ばれたこともある。

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今回大賞となったのは意外にも「言語化」。一見ごく普通の言葉に思えるが、この語はかつては学術用語としてお硬い文章に使われるものだったという。誰もが使う日常語になったのは、ごく最近のことであるらしい。

2位の「横転」も、これまでの意味とは異なり、「ずっこける」というような言葉に似た意味合いで使われることが増えているという。

「仕事ができる」の略である「しごでき」や、「めろめろになるほど相手がかっこいい、可愛い」という意味の「メロい」、「驚いた」「困った」あるいは「恥ずかしい」「情けない」などのニュアンスを持った「顔ない」など、SNSなどでしばしば見かける言葉もチョイスされている。

大賞から10位までの言葉については、以下のプレスリリース全文にて掲載している。また、公式サイトには各言葉の選評も掲載されているので、興味があればそちらも併せてご確認いただきたい。

以下、プレスリリースの全文を掲載しています


今後の辞書に載るかもしれない新語を三省堂が発表! 「言語化」「横転」「インプレ」などがランクイン!

〜辞書のプロが2024年を代表する10の新語+αを徹底解説!〜

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辞書のトップメーカーである株式会社三省堂(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:瀧本多加志)は、2024年12月3日(火)に「三省堂 辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2024』選考発表会」を実施し、2024年を代表・象徴する新語ベスト10を発表いたしました。

新語の選定にあたっては一般公募を行い、応募総数は延べ1,813通(異なり958語)となりました。これらの投稿などをもとに、辞書を編む専門家である選考委員が一語一語厳正に審査し、「今年の新語2024」ベスト10を選定しました。

なお、今回は10回目ということで、過去のベスト10も合わせてご紹介いたしました。

【選考結果はこちら】https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/shingo/2024/best10/

【過去のベスト10】

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■かつては学術用語だった「言語化」
今回大賞に選ばれたのは、「言語化」でした。一見、変哲のない日常語であると意外に思われますが、この語はかつては学術用語として、硬い文章語として使われてきました。したがって、「一般化」や「正当化」を載せる国語辞典も「言語化」は見出し語に立っていませんでした。それが最近、誰もが使う日常語に変わって来ました。新聞などでの出現件数も2020年代に入って急増しています。〈うまく言語化できないんだけど〉〈言語化が下手すぎる〉〈〔私の代わりに〕言語化ありがとうございます〉など、「言語化」は頻用されています。日頃見聞きしたものをどのように頭にインプットし、どのようにイメージ化し、ことばに出すか。そういった言語化のプロセスについて、人々が深く考えるようになったとは言えないでしょうか。

 ことばの力がますます求められる時代の象徴として、「言語化」は大賞にふさわしいと判断しました。

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■「ずっこける」だけでなく「横転」、その他

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2位の「横転」もすでに国語辞典に見出しのある日常語です。しかし、このところSNSなどのやりとりでは何かと使われるようになっているのです。〈偏差値下がってて横転〉〈1年前も同じこと言ってて横転〉〈推しが可愛すぎて横転〉などなど。実例を見ると、どれも中心には驚く気持ちがあります。ただし、それだけでなく、場合によって落胆する、苦笑する、あきれるといったニュアンスが加わります。従来の俗語で言えば「ずっこける」が一番近いでしょう。

 3位は「インプレ」でした。「インプレッション」の略ですが、インターネットでは「広告表示」や「投稿の表示回数」の意味で俗称として使われます。SNS空間にはびこり、情報伝達を阻害する「インプレゾンビ」ということばとしても広がりました。

 4位の「しごでき」は2020年代になって広まってきました。「シゴデキ」とも書かれます。「仕事ができる」の略で、仕事に有能な様子を指します。「しごはや」「しごおわ」「しごおつ」など、仕事の意味での「しご」の付く語が広がりを見せています。

 5位の「スキマバイト」も仕事・労働関係。単発・短時間で柔軟に働けるアルバイトです。忙しい学生などでも空いた時間を利用して働くことができ、雇用側も急な人手不足を補うことができます。スマホでマッチングアプリが使われることで可能になった、新しい働き方です。

 6位の「メロい」は、「めろめろになるほど相手がかっこいい、可愛い」ということ。多く、推しているアイドルに使います。「めろめろ」から「メロい」になるような、オノマトペ由来の形容詞は珍しく、「メロい」は、オノマトペ由来の形容詞を代表することばとして定着するかという点でも注目されます。

 7位の「公益通報」は本年、兵庫県知事への告発をめぐって注目された用語。刑法などの法規に違反する行為を知った人が、不正な目的でなく行う内部通報のことです。告発した人は、解雇などの不利益を被ることがないよう、法律によって保護されます。今回、「公益通報」の認知度が上がり、辞書に載るべき用語になったのは間違いありません。

 8位は「PFAS」。有機フッ素化合物の総称で、一部の物質が有害とされています。自然環境の中で分解されにくく、人体に入ると健康被害を引き起こすことが指摘されています。泡消火剤などに使われたPFASによって、日本を含む世界各地の水源が汚染され、問題化しました。

 9位は「インティマシーコーディネーター」。映像や写真の制作現場で、俳優やモデルに裸体や性に関する表現を求めるにあたって、制作側と出演者側との調整役となり、撮影のサポートなどの業務に携わる職業です。映像・写真の制作現場でもハラスメント防止の意識が高まったことが背景にあります。

 10位の「顔ない」は若い世代を中心に使われていることばです。意味はやや曖昧なところがあります。〈遅刻しそうで顔ない〉と言えば「驚いた」「困った」といった感じ。〈質問に答えられなくて顔ない〉は「恥ずかしい」「情けない」といった感じでしょうか。「顔色(かおいろ)をなくす」「顔色(がんしょく・かおいろ)を失う」(ともに、驚きや恥などで青くなる)など従来の日本語を連想させる部分もあり、若い世代が作り出したことばが、伝統的な日本語とどこか通じるのは面白い現象です。

■3語の選外

上記の10語以外に、惜しくもランキング入りを逃した語として「界隈」「裏金」「アニマルウェルフェア」3語が選ばれました。

 「界隈」は投稿数第2位でした。「新宿界隈」などの従来の用法を超えて、「サブカル界隈」「言論界隈」など「ある分野(の人たち)」の意味で多く使われるようになりましたが、すでに『三省堂国語辞典』にはその意味があるため入選とはなりませんでした。

 「裏金」も投稿数が多く3位でした。本年は政治家のパーティー収入が政治資金収支報告書に不記載だった事実が表面化し、「裏金」と強く批判される事態になりました。すでに辞書にある語で、それを超えた新しい意味にまでは至らないと考えました。

 「アニマルウェルフェア」は「動物福祉」とも訳されます。世界的な動物に対する社会意識の高まりが感じられます。

【それぞれの言葉を具体的に解説した、さらに詳しい選評はこちら】

https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/shingo/2024/best10/Preference01.html

■選考委員が選出した10語

上記ベスト10を検討するにあたり、それぞれの選考委員が選出したイチ推しの10語は次の通りです。

『三省堂現代新国語辞典』小野正弘先生:

裏金/○○界隈/公益通報/新NISA/スン(ッ)/耐える/デコピン/道義的責任/メロい/両片思い

『三省堂国語辞典』飯間浩明先生:

インティマシーコーディネーター/インプレ/横転/顔ない/言語化/しごでき/好き/DEI/データドリブン/メロい

『新明解国語辞典』編集部:

イマーシブ/推し活/オヤカク/○○界隈/観光公害/スキマバイト/スン(ッ)/沼る/まるハラ/メロい

『大辞林』編集部:

アテンションエコノミー/アニマルウェルフェア/インプレゾンビ/MBTI/推し活/きゅるきゅる/トクリュウ/猫ミーム/PFAS/まるハラ

■三省堂の新語には、国語辞典のプロの手による解説(語釈)をつけて発表

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ベスト10に選出された言葉には、実際に国語辞典を編んでいる編者が腕をふるって国語辞典としての言葉の解説(語釈)を書きました。シャープな語釈で言葉の本質をとらえる『新明解国語辞典』、シンプルな語釈で要するに何かがわかる『三省堂国語辞典』、高校生の自習を強力に支援する『三省堂現代新国語辞典』、いまの日本語の総体を映し出す[国語]+[百科]辞典の『大辞林』。それぞれの編集方針で異なる語釈の切り口と面白さをお楽しみください。

【大賞】言語化

げんごか【言語化】〈名・他動サ変〉自分の考えを整理し、筋の通った言葉として表現すること。これまで表現する言葉がなかったことがらを、あらたに表現したことにも言う。「━が苦手だ・思いを上手に━している・さまざまなハラスメントが━されている」

『三省堂現代新国語辞典』小野正弘先生

げんご か[言語化]⦅名・他サ⦆ 言いたいことをことばにすること。「思想を━する・心の もやもやが━できない」〔戦前から学術的な語として使われたが、新聞では二〇一〇年代に例が増え、やがて日常語になった〕

『三省堂国語辞典』飯間浩明先生

げんご か [0] -クワ【言語化】-する(他サ)折に触れて心のうちに去来し、曖昧にはとらえられるが、しかしその総体を明確にはとらえがたい模糊とした観念や思考、また湧き上がる自己の感情を、他人にも理解できるように、まとめ、整理し、言葉として表出すること。「論理や思考を━することを心がける/昨夜見た夢を━してみる/真に神秘的な体験は━不可能だと思う」〔近年、気持ちを伝える方策として言葉を取捨選択することや、目標達成のための過程を明確にするために各段階を言葉にすることなどにも言う。例、「盛り上がった気持ちを━する/一日一日なすべき行動をすべて━する」〕

『新明解国語辞典』編集部

げんご か -くわ [0] 【言語化】(名)スル 漠然と抱いた意識や思考、またいわく言い難い欲求や感情を、できる限り正確に言葉にして表すこと。「この感動は到底━不可能だ」「押し寄せる思いを━して伝えたい」

『大辞林』編集部

【2位】横転

おう てん[横転]⦅名・自サ⦆①左または右のほうへ回転すること。②よこに たおれること。「―事故」③〔俗〕思わず ずっこける(ほど おどろく)こと。「点数 低すぎて━・大━」〔二〇二〇年代に広まった用法〕

『三省堂国語辞典』飯間浩明先生

【3位】インプレ

インプレ [0]〔インプレッションの略〕インターネット上のコンテンツで、広告やSNSの投稿などがユーザーによって見られた回数を言う俗称。広告料の支払いの算定など、その効果をはかる指標に使われるが、実際には内容の良否善悪や真偽を裏付けるものではない。「━ゾンビ[5]〔=SNSでインプレ数を増やすことで得る広告収益のために大量の迷惑投稿を行なうアカウントをののしって言う語〕」

『新明解国語辞典』編集部

【4位】しごでき

しご でき ⦅名・ダナ⦆〔「シゴデキ」とも書く〕〔俗〕〈仕事が できる/手ぎわがいい〉ようす。また、そういう人。「━で しごはやな〔=仕事が早い〕人」〔二〇二〇年代に広まった ことば〕

『三省堂国語辞典』飯間浩明先生

【5位】スキマバイト

すきま バイト [4]【隙間バイト】空いた時間に不定期に行なうアルバイト労働。専用のアプリ上で求職が行なわれ、単独かつ短時間の雇用契約を結ぶ。手軽に働けたり、人材不足を補えたりするなどのメリットの一方、人材の使い捨てや犯罪に引き込まれるなどのデメリットもある。スポット-ワーク。[表記]スキマバイトとも書く。

『新明解国語辞典』編集部

【6位】メロい

メロ・い〈形〉見ているほうが夢中になって、だらしなくなるほど、圧倒的な魅力のあるようす。「推しのダンスが━」《由来》擬態語「めろめろ」の基本的構成要素「めろ」に形容詞語尾「い」を付けたもの。通常は、擬態語の基本的構成要素に「い」を付けて、「キラい」「フラい」などとは言わないので珍しい。類似のものに、「ちょろい」「ペラい」がある。

『三省堂現代新国語辞典』小野正弘先生

【7位】公益通報

こうえきつうほう【公益通報】〈名・自動サ変〉職場で経験した、同僚、上司等による、法令に違反している行為を、不正目的ではなく、定められた窓口にうったえること。「━者しゃ」《由来》二〇〇四年公布、二〇〇六年施行の公益通報者保護法は、公益通報した側が不利な扱いを受けないことを定めている。

『三省堂現代新国語辞典』小野正弘先生

【8位】PFAS

ピーファス [1] 〖PFAS〗〔Per- and Polyfluoroalkyl Substances〕有機フッ素化合物の一部であるペルフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物の総称。数多くの合成化合物を含む。熱や薬品に強く、水や油をはじく性質から撥水剤・界面活性剤・乳化剤・消火剤・コーティング剤など幅広い用途で使用される。分解されにくい性質から「永遠の化学物質」とも呼ばれる。〔PFASに含まれるPFOS(ピーフォス)、PFOA(ピーフォア)などの一部物質について、人体などへの有害性が指摘され使用規制が進むなか、地下水や河川、土壌や水道水で検出が相次ぎ問題となっている。〕

『大辞林』編集部

【9位】インティマシーコーディネーター

インティマシー コーディネーター [10] 〖intimacy coordinator〗映画やテレビなどで性的なシーンや裸のシーンを撮影する際に、演出側と俳優の間の調整役として働く人。また、その職業。安全かつ快適に、双方合意のもとで撮影が行われるよう、演出側の意図と俳優の意向の両方を確認し、俳優を身体的・精神的にサポートする。

『大辞林』編集部

【10位】顔ない

かお な・い[顔ない]かほ- ⦅形⦆〔俗〕〈おどろいた/困った/はずかしい〉気持ちだ。「遅刻ちこ
くしそうで━・質問に答えられなくて━」〔二〇二〇年代に広まった ことば。「顔色をなくす」「人に合わせる顔がない」などに通じる語感がある〕

『三省堂国語辞典』飯間浩明先生

■従来の新語・流行語ランキングとの違い

三省堂が募集する「今年の新語」とは、あくまで「今年とくに広まったと感じられる新語」ということで、必ずしも「今年生まれた言葉」ではありません。その中から、特定のジャンルやコミュニティーに偏らないよう、使用者層や使用域の広がりと使用頻度の高さを考慮しつつ、来年以降も使われてゆくであろう日本語を、辞書を編むエキスパートが慎重に選定しました。つまり、辞書に載ってもおかしくない新語をバランスよく認定するのが「今年の新語」です。ベスト10には、実際に国語辞典を編んでいる編者が語釈を付しています。

ライター
ル・グィンの小説とホラー映画を愛する半人前ライター。「ジルオール」に性癖を破壊され、「CivilizationⅥ」に生活を破壊されて育つ。熱いパッションの創作物を吸って生きながらえています。正気です。

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