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韓国産ゲームの日本運営って、ぶっちゃけ何が大変なの? 「男主人公がまさかのオネエ化」「止まらないむちむちキャラ攻勢」──『カオスゼロナイトメア』運営に訊いた“ローカライズ奮闘記”

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「このゲームに時間とお金を使っても大丈夫なの? すぐにサ終しないの?」

レッドオーシャンと化した昨今のスマホゲーム市場において、ユーザーが運営に向ける目はかつてなくシビアだ。

数ヵ月でサービス終了するタイトルも珍しくなく、大型IPを冠した有名タイトルですら苦戦を強いられる。かたや、10年以上運営が続いてなお高い人気を獲得し続ける国産タイトルや、AAA級の予算と技術をふんだんに盛り込んだ海外タイトルがひしめきあう。

もはやレッドどころかブラックにまで染まっている市場環境とも言えるだろう。

そんな日本市場において、2025年10月22日にオリジナルIPタイトルとしてリリースされたのが『カオスゼロナイトメア』だ。運営チーム曰く「売上も堅調」のようで、激動の市場を力強く生き抜き、2026年4月にはハーフアニバーサリーという節目を迎えている。

手がけるのは、『エピックセブン』でも知られる韓国の開発スタジオ「スマイルゲート」。じつは彼ら、レッドオーシャンがすでに極まり切っていた2024年に、わざわざ日本法人を本格稼働させ、本作のリリースへと至っている

なぜ、あえて、熾烈な環境である日本市場で本格始動を考えたのか。

彼らによれば、日本のゲームユーザーは知名度や広告の量だけで判断せず、ゲーム体験や運営の姿勢を見てくれる傾向が強いからだという。そして、日本での評価がそのままグローバルな信頼に直結するというのだ。

「中長期的なIP展開を考えたとき、日本で腰を据えて事業を行う意義は非常に大きいと判断しました」

そう明かしてくれたのは、スマイルゲート日本運営チームのトップである李氏と、『カオスゼロナイトメア』運営チームの「顔」として生放送にも立つ前田氏だ。

※取材は2026年2月某日に実施されました。

中長期的なIP展開を見据えたビジョン。それを胸に、スマイルゲート日本運営チームは始まった。……しかし、どれだけ立派な戦略や理念があろうと、最前線の現場はいつだって泥まみれだ。

今回おふたりに語っていただいたのは、美しいサクセスストーリーではない。「韓国の開発スタジオ」と「日本のユーザー」の間に立たされる、日本運営チームの胃の痛くなるような戦いの記録であった。

リリース1.5ヵ月前にテキストの品質改善のために韓国本社へ直談判に飛んだ修羅場や、難易度をめぐる開発との議論、そしてトラブルのたびに直面する板挟み……。

本稿では、そんな数々の運営裏話を紐解きながら、彼らがいかに日本運営の最前線で奮闘してきたのかをお届けしたい。

取材・文/竹中プレジデント


ニッチな需要をついた精神崩壊イラストと、止まらないむちむちキャラの真相

──『カオスゼロナイトメア』は、リリース直前からSNS等でキャラクターたちの精神が崩壊する表情が話題になっていましたよね。実際にリリース後、ユーザーからはどのような反応が寄せられたのでしょうか?

前田氏:
具体的にどのような反響があったのかは……ちょっとここでは言えないようなものもあるのですが、かわいいキャラやかっこいいキャラが絶望する姿からしか得られない栄養素があることを実感しました。

これからもトラウマコード(キャラストーリーの位置づけ)含めて、ユーザーのみなさんに“悦んで”いただけるような表現を追求していきたいですね。

『カオスゼロナイトメア』日本運営インタビュー:韓国産ゲームの日本運営って、ぶっちゃけ何が大変なの? _001

──ビジュアル面での反響は狙い通りだったのでしょうか。インパクトは絶大ですが、一歩間違えるとユーザーを選んでしまうリスクもありますよね。

李氏:
もちろん人を選ぶ表現だとは理解していましたが、それでも新規のユーザーさんを惹きつけるフックとして機能すると思っていました。

前田氏:
やはりパッと目を引きますよね。あの表情が持つ力は絶大だと思います。

──数ある表現のなかで、なぜあえて“精神の崩壊”という要素を押し出そうと考えたのでしょうか。

前田氏:
昨今のスマホゲームは、もちろん例外はありますが、基本的には明るくて希望に満ち溢れた世界観が主流です。

本作のように、キャラクターの精神が崩壊した表情を前面に押し出すアプローチは珍しく、興味を持ってもらえるきっかけになると考えたんです。

同時に、キャラクターの苦悩や絶望する姿を好む、特定のコアな層のニーズを捉えられるという手応えもありました。

李氏:
私たちが危惧していたのは、現在のレッドオーシャンな市場において、『カオゼロ』が数多くリリースされる新作ゲームのひとつとして埋もれてしまうことでした。

世の中にはクオリティが高く、洗練されたゲームがたくさんあります。そのなかで差別化を図り、ユーザーさんに訴求できる最大の武器がこの崩壊イラストだったんです。

他にはない表現なので、しっかりアピールすれば必ず気づいてもらえると信じていました。

前田氏:
ただ、“精神が崩壊すると過去のトラウマが蘇る”という設定や、あの絶望した表情はあまりにもニッチなので、日本のユーザーさんに受け入れてもらえるか不安ではありました。

ですが「かわいそうはかわいい」という言葉もある通り、想像以上にポジティブな反響をいただいて、本当に安心しました(笑)。

『カオスゼロナイトメア』日本運営インタビュー:韓国産ゲームの日本運営って、ぶっちゃけ何が大変なの? _002

──ゲームを進めていくなかで、2枚目の崩壊イラストが現れた際には驚きました。別バージョンもあるの⁉ と。

前田氏:
当初、私たち運営チームも1種類だけだと認識していました。

ところが後になって、開発側から「じつはこんなものもご用意しています……!」と、サプライズのような形で新たな崩壊イラストがあがってきたんです。これには私たちも驚かされました。

──それは開発陣の業を感じますね(笑)。

前田氏:
「絶対に出したい」という執念のようなものがあったと思います(笑)。

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本作の精神崩壊イラスト。各キャラ2種類存在する。

──開発陣の強いフェティシズムを感じる点として、実装されるキャラクターの傾向も挙げられます。というのも、リリースから現在に至るまで、むちむちな美少女キャラクターの実装が連続しているように見受けられます。これは意図的なものなのでしょうか?

前田氏:
意図的に特定の層だけを狙い撃ちしたというわけではなく、偶然そう見えてしまったというのが正直なところなんです。

2月25日に実装されたティペラは少し控えめなサイズになっていますから。もっとも、その次に実装されたリタはまた大きめに戻ってしまうんですが……。

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ティペラ。
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リタ。

──やはりむちむちキャラの傾向は止まらないんですね(笑)。

前田氏:
(笑)。冗談はさておき、私たち運営チームもキャラクター展開の多様性は重要だと認識しています。

最近では、日本のユーザーからも「かっこいい男性キャラクターを出してほしい!」との声も増えています。英語圏でも、ヒューゴやルーカスといった男性キャラクターがすごく人気です。

韓国市場では美少女キャラクターを求める声が強い傾向にあったのですが、こうしたグローバルでの需要を根拠にして、男性キャラクターの実装も開発側へ積極的に提案していく方針です。

──つまり、今後は多様なキャラクターに出会えるということですか?

前田氏:
今後のキャラクター実装については、ストーリーの展開や物語上の役割を重視しています。基本的には、物語に必要なキャラクターが、その世界観にふさわしい姿で登場する形になります。

ビジュアルも含めて、今後もより個性的で魅力的なキャラクターが続々と登場する予定ですので、ぜひ楽しみに待っていてください。

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リリースから実装されたキャラたち(0.5周年直前まで)。

売上よりも信頼関係? 『ブルーアーカイブ』や『勝利の女神:NIKKE』のような長く愛されるタイトルを目指して

──リリースからしばらく経ちますが、売上やユーザー数など日本運営チームとして掲げた目標は達成できたと感じていますか?

李氏:
大前提として、売上をはじめとする数字は、企業として成果を測る大切な指標です。

ただ、私たち日本運営チームが何よりもまず目指していたのは「この会社のゲームなら遊び続けたい、今後も期待できる」と、日本ユーザーのみなさんに思っていただける存在になることでした。

──昨今は、ユーザー側も「このゲームは長続きするのか」と運営の姿勢をシビアに見ている印象があります。

李氏:
まさにその通りで、直近のスマホゲーム市場はゲームが溢れすぎている状況ですよね。

2023年は約330本、2024年は約230本ほどの新作がリリースされるなか、数ヵ月でサービスを終了してしまうゲームも珍しくありません。大型タイトルであっても、1年足らずでサービスを閉じるケースがあります。

そういう状況が続いているので、ユーザーさんの中には「このゲームに時間とお金を使っても大丈夫なの? すぐにサ終しないの?」という、運営に対する根強い不信感があると思います。

だからこそ、サービスを提供する側と遊んでくださる側との間に、しっかりとした信頼関係を作ることが重要だと考えました。

──なるほど。ユーザーに継続して遊んでもらうには、ゲーム自体のおもしろさ以前に、運営体制への安心感が不可欠ということですね。

李氏:
おもしろいもので、ユーザーさんと丁寧にコミュニケーションを重ねて信頼関係が築けると、継続率をはじめとするKPI(評価指標)の達成率も自然と上向いていくんです。

逆に、どれだけゲームがおもしろくても「この運営、この先大丈夫かな?」と不信感を持たれれば、ユーザーさんは離れてしまいますし、当然課金もされません。

実際、キャラクターゲームの分野には『ブルーアーカイブ』『勝利の女神:NIKKE』のように、日本のユーザーさんから長く愛されている素晴らしいタイトルがあります。私たちも、いつかそうした運営と肩を並べられるようになりたいという目標を持っています

──『ブルアカ』は現在、日本市場で確固たる地位を築いていますね。運営視点で具体的にどのような点を高く評価されているのでしょうか。

李氏:
私は定期的に日本のスマホゲーム市場の分析を行っているのですが、『ブルアカ』は「エデン条約編」の実装を契機に、業界でも類を見ないほどのV字回復を成し遂げた特筆すべき事例と、私は分析しています。

ローンチ後にあそこまで大きな改修やテコ入れを行うのは、開発や運営としてすごい勇気が必要だったと思います。

──たしかに『ブルアカ』の転換期として「エデン条約編」を挙げるユーザーも少なくないです。

李氏:
加えて『ブルアカ』は、キャラクターのギャップ萌えや先生と生徒という関係性など、日本のユーザーさんが感情移入しやすく、深く考察できる要素をしっかりと作り上げています。

さらに、リリース前から二次創作を盛り上げるような活動を仕掛けるなど、クリエイター主導のコミュニティマーケティングを展開し、長期的なブランド構築を行っていました。

そしてなんといっても、ユーザーに対するコミュニケーション能力が非常に高いと感じています。お知らせの文章ひとつとっても、ユーザーに寄り添ったわかりやすい言葉で書かれていますよね。

目先の収益を追うのではなく、「ちゃんとしたサービスを提供しよう」という運営の熱意が、あのV字回復と今の揺るぎない信頼に繋がっているのだと、強くリスペクトしています。

──では、話に挙がったもうひとつの作品『NIKKE』についてはいかがですか。リリース当初はやはり「お尻が揺れるゲーム」という印象が先行していたように思いますが。

李氏:
『NIKKE』に関しては、前田が以前プレイしていたこともあり、私より圧倒的に詳しいんですよ。

以前、私が前田に「お尻のおかげで成功したんでしょ?」と冗談半分で言ったら、本気で怒られまして(笑)。「わかってないですよ! ちゃんとストーリーを読んでください! そうじゃないと『NIKKE』のよさはわかりません!」と熱弁されました。

前田氏:
でも、本当にそうなんです。お色気要素を前面に出すタイトルって、どうしてもシナリオが軽視されてしまうパターンもありますが、『NIKKE』はまったく異なります。

視覚的なフックで広範囲のユーザーを獲得したのち、濃厚なストーリーでがっちりと心を掴んで、ユーザーを定着させているんですよね。

「この運営なら常に新しい景色を見せてくれる」という、ユーザーの期待感と信頼を見事に勝ち取っているのが本当にすごいところです。

李氏:
本当に学ぶべきことが多いタイトルですね。私たちも、こうした素晴らしい先行事例からしっかりと学び、日本のユーザーのみなさんから厚く信頼されるようなブランドを築いていきたいと考えています。

リリース1.5ヵ月前の絶望。韓国本社への直談判で乗り切ったローカライズの修羅場

──リリースまでさまざまなご苦労があったかと思いますが、日本運営チームとして「これはマズい」と最大のピンチを感じた瞬間はいつだったのでしょうか。

李氏:
もっとも強烈に記憶に残っているのは、2025年の東京ゲームショウ出展の準備と『カオゼロ』のローンチ準備が重なるタイミングですね。

リリースまで残された時間が少ないなか、とくにローカライズ周りの状況に対して強い危機感を抱いていました。

というのも、ローンチ1.5ヵ月前にあがってきたテキストが、日本運営チームとしては「このままでは納得できない。世に出せない」という状態で……。

──リリース1.5ヵ月前で、世に出せないレベルというのは絶望的ですね……。

李氏:
ですから急遽、私が飛行機に乗って韓国本社へ向かい、代表と直接協議しました。

このままではサービスインできないという実情をお伝えし、「日本法人で責任を持ってテキストのチューニングを行うので、2週間から1ヵ月ほど時間をください」と直談判したんです。そこからはもう、みんなのマンパワーで一気に修正を進めていきました。

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──お話を聞いているだけでも、リリース直前のすさまじい修羅場が目に浮かびます。

李氏:
本来、私たちはローカライズの実作業をする部隊ではなく、日本市場の戦略や運用を回すのがメイン業務です。

でも、あがってきたテキストを見た瞬間に「これはまずい」と直感があって……。腹を括って自分たちで直す手段をとりました。

本当に最後のギリギリのところまで調整を重ねて、なんとかリリース日を迎えることができたんです。今振り返ってみても「よくあの状況を乗り切れたな……」と、正直ホッとしていますね。

──結果論かもしれませんが、リリース1.5ヵ月前の段階で妥協せずに直談判してテキストを修正した判断は正解だったわけですね。

李氏:
そうですね。もしあのクオリティのままリリースしていたら、サービスとして致命的な結果を招いていたと思います。

前田氏:
当時の品質は、及第点には遠く及ばない状態でしたからね……。

ただ、あのとき死に物狂いでチューンナップした苦労が報われる出来事がありました。ユーザーさんが、韓国版と日本版の表現の違いを比較してくれていたんです。

──比較された結果、どのような評価を受けていたのでしょう。

前田氏:
韓国版の「レノア」というキャラクターは、艦長(プレイヤー)に対して非常に刺々しく、冷たい印象を与えていたようなんです。

一方で、日本語版のレノアについては「たまに棘はあるけど艦長想いの優しい女の子」と評価をしていただいて。それを見たときは「がんばってよかった」と心底感じました。

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──それはおもしろいですね。日本では「ツン」と「デレ」のバランスが重視されますが、韓国ではデレのない強烈な「ツン」が好まれる傾向があるのでしょうか?

前田氏:
そういうわけではないと思うんですけどね……。ただ、韓国の原文を見たときに「なんでこんなキツい言い回しになっているんだろう?」と疑問に思う部分は多かったです。

それに、初期段階であがってきた翻訳テキストは、登場人物が全員「女性口調」になっていたのも印象的でした。男性である艦長までオネエキャラみたいなしゃべりかたになっていて「あれっ?」と戸惑ったり(笑)

──まさかのオネエ化ですか(笑)。

前田氏:
そうなんです(笑)。韓国語の原文をそのまま直訳してしまうと、どうしてもそういった違和感が出てしまうんですよね。

直訳ならではの独特の味もあるのですが、それをそのまま日本のユーザーさんにお出しして受け入れられるかというと、やはり厳しい部分が多いです。

だからこそ、シナリオ本来の意味合いは変えず、日本のユーザーさんが自然に読めるように言い回しを調整することを大切にしています。「なんだこのキャラ?」と違和感を持たれないよう、現在も地道に調整を続けているところです。

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編集者
美少女ゲームとアニメが好きです。「課金額は食費以下」が人生の目標。 本サイトではおもにインタビュー記事や特集記事の編集を担当。
Twitter:@takepresident

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