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韓国産ゲームの日本運営って、ぶっちゃけ何が大変なの? 「男主人公がまさかのオネエ化」「止まらないむちむちキャラ攻勢」──『カオスゼロナイトメア』運営に訊いた“ローカライズ奮闘記”

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口コミによってユーザー層が拡大し、リリースから2週間後に売上がグッと上がり始める

──答えにくい質問かもしれませんが、リリース当日は通信トラブルが発生していましたよね。運営チームとしてはかなりの緊急事態だったのではないでしょうか。

李氏:
リリース当日は、想定を大きく上回るお客さまにアクセスしていただいたことで、通信環境の不具合や、正常にログインできないといった問題が発生してしまったんです。

幸いにも、そのタイミングで開発側が全力で対応してくれて、原因の特定から修正までをものすごいスピード感で進めてくれました。おかげで、大きな混乱になる前に収束させることができました。

とはいえ、一歩間違えればどうなっていたかわからない、本当に危険な瞬間だったと思います。今思い返しても、あのときの緊張感は忘れられませんね。

『カオスゼロナイトメア』日本運営インタビュー:韓国産ゲームの日本運営って、ぶっちゃけ何が大変なの? _010

──初動のトラブルは、ゲームの第一印象を大きく左右しますからね。

李氏:
最近のスマホゲームは、リリース直後から大きなトラブルなく遊べることが多いです。だからこそ、私たちにも「早く対応しないとユーザーさんたちに見放されてしまう」という焦りがありました。

でも、日本のユーザーのみなさんはとても温かく見守ってくださって……。あのときのみなさんの反応には、運営チーム一同、本当に救われましたね。

──そうしたトラブル対応に追われるなかで、リリース直後の反響(セールスランキングやユーザー数)を見たときはどのようなお気持ちでしたか?

李氏:
リリース直後は、本社や開発チームと連絡をとり合いながら、ひたすら問題解決の対応に追われていました。「とにかくサービスを安定化させないと……」という危機感でいっぱいで、それしか考えられなかったですね。

そんな状況でしたから、リリースから数日はセールスランキングやユーザー数といった数値を気にする余裕はまったくありませんでした。

ようやく週末になって状況を確認し始めたら、想定以上に多くのユーザーの方々がプレイしてくださっていることに気づき、かなり驚きましたね。

──おお! それだけ多くの方が遊んでくださっていたということは、売上面でも手応えを感じられたのではないでしょうか。

李氏:
売上も堅調でした。当初は「無難なスタートが切れたかな」くらいに思っていたんですが、リリースから2週間くらい経ってから売上がグッと上がり始めたんです。

前田氏:
そうですね。口コミによってユーザー層が拡大していったと感じています。

X(旧Twitter)上でも「このゲームおもしろいんだけど一緒にやらない?」と発信してくださる方が多くて。そういう意味でも、ユーザーのみなさんにはとてもよくしていただいて、本当に感謝しています。

『カオスゼロナイトメア』日本運営インタビュー:韓国産ゲームの日本運営って、ぶっちゃけ何が大変なの? _011

李氏:
じつは、リリース前にマーケティングを展開していくなかで、日本のお客さまからの反応が薄かった時期があったんです。うちの代表も、リリースが近づくにつれて「これは大丈夫か?」と不安を口にするようになっていました。

ただ一方で、「このゲームは絶対にウケる!」という手応えもありました。段階を踏んでいけば、少しずつ評価はついてくると信じていたんです。

そんな背景もあったので、日本のユーザーさんの間でポジティブな声が広がり始めたときはうれしかったですね。心の中にあった不安が解消された感覚でした。

前田氏:
『カオゼロ』はだいぶニッチなゲーム性をしているため、システムがあわない人には刺さりにくいと思うんです。

それでも「凄い!楽しい!」や「キャラクターが好き!」と言ってくださる人がたくさんいて。こんなに尖ったゲームにも関わらず、みなさんが心から楽しんでくれているのを見て、胸がいっぱいになりました。

──日本市場でのそうした盛り上がりに対して、韓国の開発チームからの反応はいかがでしたか?

李氏:
じつのところ、韓国の開発チームは、日本での反響がここまで大きくなっていることを最初はあまり実感できていなかったと思います。

日々の不具合修正や改善対応に全力で走り続けていて、市場の反応をじっくり確認する余裕がなかった、というのが正直なところですね。

恐らく、2回目の公式生放送のタイミングあたりで、ようやく「日本でこんなにも愛されているんだ!」と肌で感じたのではないでしょうか。

あまりに難しすぎた初期ビルド。韓国開発と日本運営の議論を経て、難易度が3回も下げられていた

──開発側が韓国、運営側が日本という体制の中で「韓国開発が考えるおもしろさ」と「日本運営が求めるもの」に乖離が生まれる瞬間もあったと思います。そのあたりはいかがでしたか?

李氏:
大前提として、開発スタジオのみなさんが、日本の市場感や私たち運営チームの意見をものすごく深く理解し、尊重してくれている状況があります。

そういった真摯な姿勢で向き合ってくれる開発チームといっしょに仕事ができるのは貴重な経験だと感じています。……とはいえ、もちろん私たちの意見をすべてそのまま受け入れてくれるわけではないんですが(笑)。

──なるほど(笑)。ぜひ、議論が白熱した要素について教えてください。

李氏:
とくにすり合わせが必要だった領域としては、ゲームプレイの難易度やバランス設計ですね。開発側はやはりコアプレイヤー向けに、やや高難易度で“歯ごたえのある設計”を好む傾向がありました。

もちろん、コアなユーザーさんはそれを楽しんでくださるのですが、私たち日本運営としては、もっと幅広いプレイヤーのみなさんに触って、楽しんでほしかったんです。

そのため、難易度の段階設計や細かなUI(ユーザーインターフェイス)、UX(ユーザーエクスペリエンス)の調整については、何度もやりとりを重ねました。

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──ちなみに……どのくらい難易度の調整が入ったのでしょうか?

李氏:
そうですね……大きく3回くらいは難易度を下げる調整を行いました。

前田氏:
私が最初に触った初期バージョンでは、『Slay the Spire』並みのガチガチの難しさだったんです。

コアゲーマーなら喜んでくれるかもしれませんが、より幅広いライト層を獲得するうえでは障壁になると判断し、開発側と何度も話しあって、今の遊びやすいレベルまで落ち着きました。

李氏:
韓国は、ゲーム文化として「プレイヤー同士を競争させる」文化が根強いんですよね。韓国市場で主流なタイトルの大半がMMORPGですし、プロゲーマーの文化も盛んです。

「困難な壁を、自らのスキルで突破することに価値を見出す」という遺伝子が、開発陣にも強く根付いているのかもしれません。

──そこはゲーム文化の違いなのかもしれませんね。

李氏:
本作の独自要素である「崩壊モード」についても、初期段階ではプレイヤー側にメリットがほとんど存在していませんでした。

ストレスゲージが蓄積して崩壊状態に陥ると、指定のカードを10枚以上消費しないと回復できないうえに、苦労して回復させても明確なリターンが設定されていなかったんです。

開発側としては「シビアなバランスを維持しながら、キャラクターの絶望した表情を見せたい」という強い設計思想があったため、当初は意見が衝突しました。

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前田氏:
日本側からは「崩壊から立ち直ったら即座に必殺技を発動可能にするなど、プレイヤーが爽快感を得られるようなメリットを提示すべきだ」と提案しました。

開発側は「メリットが過剰になるとゲームバランスが崩壊してしまう」と難色を示したのですが、そこから幾度も議論を重ねまして。

結果として「崩壊から回復したら、コストが下がって必殺技が出しやすくなる。さらにHPもある程度回復して、他のキャラのストレスも下がる」という折衷案に落ち着きました。

李氏:
こうしたやりとりを通じて強く感じたのは、「日本だから」「韓国だから」という国柄の話ではなく、結局のところ「どうすればユーザーに本当に楽しんでもらえるか」がもっとも重要なんですよね。

議論を通じて、開発と運営がその共通認識を持てたことが、最終的なクオリティアップに繋がったのだと思います。

レッドオーシャンと呼ばれる日本市場で、なぜ「今」本格始動したのか。スマイルゲート日本運営チーム立ち上げの経緯

──ここからは日本運営チーム立ち上げの経緯についてお聞かせください。スマイルゲートが2024年に日本法人を本格稼働させ、積極的な事業展開に踏み切った経緯や狙いはどこにあったのでしょうか。

李氏:
一番大きな理由は、2024年が私たちにとって「準備が整った年」だったということです。

──準備が整った年というのは?

李氏:
スマイルゲートとしては以前から、日本市場を短期的なチャレンジの場ではなく、中長期でしっかり向き合うべき重要な市場だと位置づけてきました。

しかし、ただ拠点を作ってタイトルを出せば成功できるほど、日本市場は甘いものではありません。そのため、それ以前は内部的な準備を進めていたんです。

──その内部的な準備というのは、具体的にどのようなことを進められていたのでしょうか。

李氏:
これには大きくふたつの軸がありました。

ひとつは、日本市場を深く知り、国内のさまざまな企業との繋がりを作ることです。広告代理店やメディア媒体、攻略サイト、版権元の方々などに「今後、スマイルゲートとして日本で幅広くゲームを展開していきます」と地道にご挨拶を重ねていきました。

もうひとつが、そうして整えた環境に投入するための「中身(ゲーム)」の仕込みです。2024年に『カオゼロ』の初期ビルドを触ったとき、これは日本市場で通用するという強い手応えを感じました。深夜3時までテストプレイに没頭して、そのまま寝落ちしてしまったほど、ゲームとしての本質的な魅力がありました。

改善すべき課題はあったものの、それ以上に高いポテンシャルを確信したので、すぐに代表へ「これを日本で展開したい」と提案しました。そこからようやく、準備が具体的な形になり始めたんです。

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──日本市場に展開するにあたって、運営としてもっとも大切にされたことはなんですか?

李氏:
とくに重視していたのは、「韓国で作った完成品を日本に持ってくる」のではなく、最初から日本のユーザーさんと向き合うことを大前提として、開発と運営が一体となって動ける体制を作ることでした。

──「完成品を持ってくるだけ」のパブリッシングと、今回のように企画段階から「開発と運営が一体となる」体制とでは、どのような違いが生まれるのでしょうか。

李氏:
すでに作り上げられた完成品を持ってくる場合、ゲームの中身にはもうほとんどタッチできません。そうなると必然的に「日本市場でどうプロモーションを打つか」というマーケティング視点の議論に終始してしまいます。

しかし、企画段階から参画していれば、システムやキャラクターデザインといったゲームの根幹仕様から協議が可能になるんです。

前田氏:
たとえば「レイ」というキャラクターの初期デザインは、現在とは大きく異なっていました。

当初は茶髪にロングスカートという、「平成」感を感じる雰囲気だったんです。それを、現在の日本市場のターゲット層の好みに合わせて、より現代的なデザインへと調整してもらいました。

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李氏:
UIやUXに関しても、より直感的に操作できるよう全面的に見直しています。

また、バトルの演出面も日本市場特有のニーズにあわせました。日本のユーザーさんは「自分のアクションによってどんな効果が生じたか」という視覚的なフィードバックを重視する傾向があります。そのため、ダメージ数値の視認性向上や打撃感の強調など、細部にわたるチューニングを実施しました。

現在のイベントの運用サイクルについても、私たちから「日本市場における需要」を提案して実装に繋げたものです。

──昨今の日本のスマホゲーム市場は「レッドオーシャン」と言われて久しいです。なぜ今、そこまでコストをかけて勝負に出たのでしょうか。

李氏:
日本市場が長年「レッドオーシャン」と言われており、熾烈な競争環境にあることは事実です。しかし私たちは、そうした厳しい環境下であるからこそ、あえて「今」参入する価値があると考えました。

理由のひとつは、日本のゲームユーザーは、単純な知名度や広告の量だけで判断するのではなく、「ゲーム体験の独自性」や「開発や運営に対する信頼感」をしっかりと見て選んでくださるからです。だからこそ、新しい挑戦をする私たちにとって、大きな励ましになるんです。

──ほうほう……。

李氏:
加えて、日本市場が保有するグローバルな影響力の高さです。日本での評価や運営実績は、そのままグローバルでの信頼やブランド価値に直結します。

そのため、短期的な売上といった成果だけを求めるのではなく、中長期的なIP展開を考えたとき、日本で腰を据えて事業を行う意義は非常に大きいと判断しました。

──日本のユーザーは目が肥えている分、そこで認められれば世界的なブランド力に繋がるわけですね。

李氏:
おっしゃる通りです。日本市場は、ゲームの品質や運営の姿勢に対して非常にシビアですが、同時に誠実さに対してきちんと評価してくれる市場でもあります。

だからこそ、曖昧な状態で参入するのではなく、「腰を据えてやるぞ」と覚悟を持てたタイミングで本格稼働する必要がありました。

体制、タイトル、そして覚悟。これらすべてが揃い、ようやく真の意味でスタートラインに立てたのが2024年であったと認識しております。

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編集者
美少女ゲームとアニメが好きです。「課金額は食費以下」が人生の目標。 本サイトではおもにインタビュー記事や特集記事の編集を担当。
Twitter:@takepresident

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