『クトゥルフ神話』の創造者として知られるH・P・ラヴクラフトについて伝記的に論じた書籍『H・P・ラヴクラフト: 世界と人生に抗って』が、8月6日に河出文庫から刊行される。
著者は、『服従』や『素粒子』といった作品で世界的に知られるフランスの作家、ミシェル・ウエルベック。本書は彼のデビュー作にあたり、過去に刊行されていた書籍の文庫版となる。
本書のテーマは、小説・漫画・映像・ゲームなど、現代のポップカルチャーに絶大な影響を与え続ける『クトゥルフ神話』の創造者、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトだ。その生涯と作品について、著者ウエルベックが自身の「熱烈な偏愛」を込めて、まさに語りつくしているのが大きな特徴である。
著者であるミシェル・ウエルベックは、現代ヨーロッパを代表する作家の一人。1998年の『素粒子』が世界的なベストセラーとなり、2010年には『地図と領土』でフランスで最も権威のあるゴンクール賞を受賞した。

特に2015年に発表した『服従』は、イスラム政党が政権を握ったフランスの未来を描くという設定の小説。奇しくも発売日がパリで発生したシャルリー・エブド襲撃事件当日と重なり、フィクションが現実を予見したかのような衝撃は、世界中で大きな話題と論争を巻き起こすことになった。
本書には序文として、モダンホラーの帝王として知られるスティーヴン・キングによる「ラヴクラフトの枕」を収録。翻訳は、フランス文学者で東京大学名誉教授の星埜守之氏が手掛けており、解説はアメコミ『ネオノミコン』の翻訳などで知られる柳下毅一郎氏が担当する。