王谷晶の小説『ババヤガの夜』のKindle版が、現在44%のポイント還元セールを実施している。同作は世界最高峰のミステリー文学賞のひとつ、英国推理作家協会のダガー賞・翻訳小説部門を受賞し、大きな話題となっている作品だ。日本人が同賞を受賞したのは史上初。
本作は、愛とも友情とも名づけがたい絆で結びついたふたりの女性を描く、いわゆるシスターフッド的な物語であると同時に、裏社会を舞台とした血が沸騰するような激しいバイオレンスアクションの物語でもある。
『ババヤガの夜』の主要な登場人物はふたりだ。暴力の化身のような女・新藤依子と、紆余曲折を経て彼女が護衛することになる暴力団の会長の娘・尚子。タフで強靭な肉体、狂気じみた暴力性を秘めた依子と、生命力の感じられない人形のような尚子は、ふたりを取り巻く裏社会の過酷な運命のなかで、言葉で表現しがたい関係性を築いてゆく。
依子は暴力を欲してやまないエネルギーの塊のような人間であり、一般にイメージされやすい女性的なヒーロー像とは大きく異なっている。物語は舞台となっている裏社会の生臭い血と暴力にまみれており、彼女が暴れまわるアクションシーンにはまるで容赦がない。コミックや映像作品のような疾走感もあって、一気に読み進められてしまう。
一方で、彼女と尚子との関係は、お互いの持つ孤独を認めながらも相手に依存しきらないようなもので、決して分かりやすいものではない。けれども物語を追っていくことで浮かんでくるふたりに通じる共感は、読者の真に迫ってくる。圧倒的な血と暴力の世界で静かに繋がるふたりの物語を、ぜひ読んでいただきたい。