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不買運動に過去の開発者の苦言…モバイル向け『Diablo』新作の発表へと向けられる不評の嵐。Blizzardは「複数のプロジェクトが進行中」とファンなだめる

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 11月2日から開催されたBlizzard Entertainment(以下、Blizzard)の大型イベントBlizzCon 2018にて、モバイル向けMMOアクションRPG『Diablo Immortal』が発表された。公式サイトではAndroid向けに事前登録も開始されている。

 約20年前にハック・アンド・スラッシュ型ゲームにおけるひとつのひな形を作り上げた『Diablo』シリーズ。今回の『Diablo Immortal』は2012年に『Diablo III』が発売されてから6年ぶりとなる、ファンの待ち望んでいた新作だ。しかしその期待の裏返しか、シリーズ初のモバイル向けとなった同作はいま、不評の嵐の真っ只中にある。

 従来はPCやコンソールで展開されてきた海外で人気のストラテジーゲーム『Command and Conquer』が、E3 2018でモバイル向けの新作を発表しトレイラーに対して圧倒的な不評を叩きつけられたのは記憶に新しい。そして『Diablo Immortal』においても、公開された2種類のトレイラーには、どちらも圧倒的多数の低評価が付けられている。

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(画像はYouTube | Diablo Immortal Cinematic Trailerより)

 『Diablo Immortal』はiOS、Android向けのMMOアクションRPGだ。Blizzardと『荒野行動』『IdentityV』を開発した中国NetEaseの共同開発となる。『DIablo II: Lord of Destruction』と『Diablo III』のあいだのストーリーを描くスピンオフ作品であり、ワールドストーンを破壊したあと、その欠片が地上を穢し悪魔の軍勢がサンクチュアリに流れ込んで来た時代が描かれる。

 登場するクラスはバーバリアンやウイザード、ネクロマンサーなど6クラスが発表されており、これまでのシリーズから馴染み深いものが選ばれている。モンスターは『DIablo II』からや、まったく新しいものが登場。
 このほかジャンル名にMMOとあるとおり、本作では常にネット接続が要求される。従来のチームを組んでダンジョンに潜るシステムのほか、ハブとなるWestmarchではMMOらしく、ほかのたくさんのプレイヤーと交流したり、ダイナミックなイベントも起こるという。

 なお操作は完全にモバイルに特化したものとなっており、PCやコンソールに向けての移植は今のところ予定されていない。

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(画像は『Diablo Immortal』公式ページより)

 『Diablo Immortal』の発表について、ファンたちはさまざまな場所や形で失望感や怒りを示している。

 前述したように、発表後に公開されたトレイラーには圧倒的な低評価が付けられている。11月5日時点で250万回再生されたシネマティックトレイラーには、高評価が1.4万件に対して低評価が42万件。同じくゲームプレイトレイラーも高評価1万件に対して低評価13万件と圧倒的低評価だ。

 規模は小さいものの、日本語版トレイラーでも同様に低評価が目立つほか、ゲームを批判した自身のコメントが削除されたと主張する視聴者の発言がコメント欄やフォーラムで取り上げられるなど、混沌とした様子が続いている。

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(画像はYouTube | Diablo Immortal Gameplay Trailerより)

 Redditの『Diablo』シリーズ用サブレディットや公式フォーラムでは、ゲームへの失望感を示すスレッドが大量に投稿され、ゲームをプレイするなというボイコットを呼びかけるものだけでなく、制作中止を求める嘆願書への署名を呼びかけるスレッドすらも立てられている。そして、この嘆願書には11月5日の時点で2万9千人以上が署名している。

 ほかにもUIやアセットなどに同じくNetEaseが開発した『Crusaders of Light』との類似点が指摘されており、見た目だけ変えた「リスキン」ではないかという主張もある。

 この指摘に対し、海外メディアKotakuのインタビューに答えたBlizzardの共同設立者Allen Adham氏は、『Diablo III』から単純に移植すれば良いようなアセットであっても、本作のために新規に作られたものだと返答し、釈明に追われた。
 ただし、こういったアクションRPGのタッチパネルの操作は、特にアジア圏ではすでに慣れ親しまれており、そのノウハウは利用しているという。最適な操作を実現するため、過去作から技術的な引用は行っている。

※2018年2月に公開された『Crusaders of Light』トレイラー。

 SNSでも同様に失望感を示すファンで溢れているが、その中にはかつて『Diablo II』のプロデューサーだったMark Kern氏も含まれている。Kern氏は2006年に退社しているが、シリーズを不動のものとした『Diablo II』のプロデューサーとして、今回の発表に対するコメントを求めるファンたちの声に答えたかたちだ。

 一連のツイートの中でKern氏は、『DIablo』のモバイル版を制作することは何も間違っていないとしながらも、Blizzardはゲーマーのことをまったく理解していないと断じている。

https://twitter.com/Grummz/status/1059207004407754752

 さらに、Blizzardは複数の『Diablo』ゲームを開発中と発表しているが、BlizzCon 2018ではモバイル以外のプロジェクトについて何ら発表しなかったのは失策だったと語る。ゲームの制作陣やファンの問題ではなく、猛反発が予想出来たにもかかわらず、なんの対策も講じなかったPR戦略のミスだったと今回の発表を振り返った。

 また、かつてBlizzCon 2013でファンの質問に対して小馬鹿にするような態度を取って答えたためにネットミーム化した”You think you do, but you don’t.”を引用し、今回の失敗はBlizzardの持つ悪い文化が表出した結果だともし、かつてファンのための会社だったBlizzardは、10億ドルの象牙の塔となってしまったとまとめた。

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(画像は『Diablo Immortal』公式ページより)

 今回の発表でも、オーディエンスからのPC版『Diablo Immortal』の可能性についての質問に対しBlizzardのWyatt Cheng氏は、”Do you guys not have phones?”(みんなも電話は持っているでしょう?)と少し小馬鹿にしたようにも見える可能性のある態度で応答している。

 会場ではモバイルのみだと発表したときにブーイングが起こっており、場を和ませようとしたジョークだったのかもしれないが、どういった意図であれ、この態度は悪意あるものと受け取られつつある。

 この”Do you guys not have phones?”は、今回の発表を象徴する言葉として”You think you do, but you don’t.”と同様にミーム化しつつある。

 前述の海外メディアKotakuによるインタビューでBlizzardの共同設立者Allen Adham氏は、反発は予想していたものの、ここまでのものになるとは考えていなかったとも答えている。

 実際、BlizzCon 2018に先駆けて10月17日に公開された公式ブログの「Diablo at BlizzCon 2018」エントリーでは、複数の『Diablo』ゲームが開発中であること、そして「良い知らせは待っている人に来るが、しかし往々にして悪いことはより長く続く」ことが記されていた。暗に今回の発表に対して期待しすぎないようにとほのめかしていたということなのだろう。

 これまでBlizzConでは、お世辞にも重要視されているようには見えづらかった『Diablo』シリーズ。しかし今回の発表の約3か月前には、これからの『Diablo』シリーズの展望と、『Diablo』がBlizzardのアイデンティティであることを語るトレイラーが公開されていた。ほかにも、今年は存在がほのめかされていた『Diablo 4』を筆頭に、シリーズのサプライズ発表へと大きな期待がかかっていた。それだけに失望も大きかったことは間違いない。

 今回の発表に対するファンの不評は、新作がモバイル向けに登場したことに対する戸惑いだけでなく、メインシリーズに関する続報が一切なかったことに対する怒りも含まれているように見える。

 Allen Adham氏は複数のメディアで行われたインタビューで、『Diablo Immortal』が従来のファンを失望させる出来ではないこと、そしてBlizzardはこれまでのコアファンを決して蔑ろにしないこと、そして『Diablo』では複数のプロジェクトが進行中であることを繰り返し強調している。その肝心なゲームの評価だが、BlizzCon 2018で試遊してきた現地メディアの意見を見る限り、タッチ操作に最適化されたゲームプレイはおおむね好評のようだ。

 かつてのプロデューサーにまでBlizzardはファンの方を向いていないと言われた同社は、果たして従来のファンの尊重とこれからのファンの獲得の間でどのような行動を取るのか。今後の動向に注目したい。そしてゲームの発表への評価は可能だが、ゲーム自体の評価は『Diablo Immortal』がリリースされるまで待たなければならない。

文/古嶋誉幸

ライター
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一日を変え、一生を変える一本を!学生時代Half-Lifeに人生の屋台骨を折られてから幾星霜、一本のゲームにその後の人生を変えられました。FPSを中心にゲーム三昧の人生を送っています。
Twitter: @pornski_eros

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