『魔法大作戦』や『バトルガレッガ』…眠れる名作オールドゲームを現行ハードへ――“移植”の匠集団「エムツー」に聞いたゲーム保存事情【移植希望タイトル募集!】

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自らパブリッシャーになる、その“覚悟”

――そしてついに2016年、自社ブランド「エムツーショットトリガーズ」を立ち上げ、自らパブリッシャーになったことに驚いています。そのきっかけとは、なんだったのでしょうか?

堀井氏:
 きっかけとなると、やはり自社ブランド第1弾の『バトルガレッガ』【※】に由来するでしょうね。これは2016年12月にリリースしたのですが、実は2008年あたりから話が動いてはいたんです。

※バトルガレッガ……1996年にエイティングより発売された縦画面シューティングゲーム。硬派なグラフィックとテクノサウンド、そして緻密な攻略性がマニアの間で人気を博す。画像はエムツーショットトリガーズより、2016年にプレイステーション4とXbox Oneにて移植・復刻された『バトルガレッガRev.2016』のもの。

――9年前となると、Wiiの「バーチャルコンソール」【※】の全盛期ですね。

※バーチャルコンソール
2006年より開始された、アーケードを含む過去のゲームソフトを再現してプレイできるサービス。Wii・Wii U・3DSに搭載されている。移植ではなく、仮想的にゲーム機をエミュレートして動作させている。

堀井氏:
 ええ。当時、アーケード版「バーチャルコンソール」のタイトルをリリースができるようになっていて、その中で『バトルガレッガ』を出せないかなと模索していて……。

 我々はその頃、「バーチャルコンソール」のタイトルを100本以上任されたりなどセガさんには懇意にさせていただいていたんです。その後、担当者さんに相談したところ、先方でも検討してくださることにはなったのですが……。
 我々が時間をかけて作っている間に、「バーチャルコンソール」のアーケードゲーム展開が、市場的に難しくなっちゃったんですよね……。

――2012年に発売されたWii Uには、専用のアーケードのバーチャルコンソールはなかったですしね……。

堀井氏:
 「作ったからといっても、パブリッシャーさんの判断で出せるかどうかはわからない。仕様についても、自由にできるモノではない……」ということが、身に染みてわかったので、「いつか自分たちで出すしかないな」と考えるようになりましたね。

――リリースが難しくなって、それこそ専門であるパブリッシャーがビジネスとして考えてリリース中止をジャッジしたにもかかわらず、なぜ自らパブリッシャーとなって『バトルガレッガ』を世に出すことにこだわったのですか?

堀井氏:
 我々がものすごく好きだから。です!!

――アツいですね(笑)!

堀井氏:
 我々のタイトル選定には、まず第一に、「自分たちがものすごく好きなタイトル」であること。第2があるとすれば「メーカーさんがもうゲーム事業をやっていなくて、出る機会がないであろうタイトル」を拾っていきたいという想いがあります。

 そこでまず、大好きな『バトルガレッガ』を作らせて欲しいと、『バトルガレッガ』を生んだメーカーのエイティング【※】さんに何度もお願いをしまして、結果としてライツを出していただけました。
 エイティング側の担当を務めていただいた方には、感謝しかありません!

※エイティング
1993年設立のゲーム開発会社。本文で触れられているとおり、エムツーが移植・復刻した『魔法大作戦』や『バトルガレッガ』のオリジナル(アーケード版)を開発した企業。

――第2弾の『弾銃フィーバロン』【※1】は、メーカーが現役バリバリのケイブ【※2】さんですよね?

※1 弾銃フィーバロン……1998年にケイブより発売された縦画面シューティングゲーム。STGの原点である「撃つ」「避ける」「稼ぐ」を十二分に体感できるだけでなく、ゴキゲンなディスコ風サウンドにミラーボール、ダンサーが踊り狂うボンバーなど独特の世界観で今もなお根強いファンを持つ。この度プレイステーション4にて復刻された。

※2 ケイブ
1994年設立のゲーム開発会社。多数のシューティングゲームを制作している。代表作の『怒首領蜂』(1997年)では、大量で低速の弾(弾幕)を、当たり判定が非常に小さい自機で避けることに重点をおいたデザインがヒットし、のちに「弾幕系シューティング」と呼ばれるジャンルを確立した。

堀井氏:
 確かに、ケイブさんは今もシューティングゲーム業界のトップにいるんですけれど、『フィーバロン』の移植は自社ではやらなそうだな……という空気をケイブさんから感じ取れたんですよね。

 だから、「ボク、すごく好きなので、商売的にはどうなるか知らないけど、復刻やりたいです!」って言ったら、案外「じゃあ腕試しに最初に『フィーバロン』やってみる? それがうまくいったら次もどう?」という話をいただいたんです。

――言ってみるもんですね! それで、ケイブさんからの評価はいかがでしたか?

堀井氏:
 ケイブさんには「おお、『フィーバロン』こんな数字が出るんだ!」と喜んでくださいました。おかげさまで、我々にとっても次につながっています。

――なるほど、それで2017年11月2日発売の第3弾『魔法大作戦』につながるんですね。

好きすぎて盛り込んだ、数々のモード

――「ショットトリガーズ」の作品には、内部パラメーターが横に表示されていたりとか、新モードがあったりとか、ベタな移植にとどまらず、追加要素がたくさん盛り込まれていますよね。新規アレンジ曲もあったりして、とても豪華です。

エムツーによる移植・復刻版『魔法大作戦』のプレイ画面。アーケード版では知ることのできなかった「ショットアイテムのパワーアップ状況」や、「ボムを9個以上持った時の所持数」がわかるようになっている。プレイの没入感をより高める「マップガジェット」や「プレイ評価」といった追加要素も

堀井氏:
 若い頃に遊んでいたゲームが、もう20年も前のモノだったりするんですよね。それをいま遊ぶと、「難しい」ということが、やっぱりあるし。それに対してのフォローの意味もあります。

長野氏:
 「3分100円」といわれた時代のアーケードゲームですから、難しいですって。

堀井氏:
 ですからユーザーの皆さんも、順序立てたリハビリをしないと、元の難易度で遊べなかったりするでしょう。ということで、モードを増やしているワケです。

長野氏:
 というか、基本的には「自分たちが欲しいモードだから」でしょう。

堀井氏:
 ねえ、それ言っちゃう(笑)?

長野氏:
 でも、そうでしょ(笑)? 欲しいモノを詰め込んだから、あの『バトルガレッガ』や『魔法大作戦』になったんだよ。
 いま、この世に出すんだったら、オリジナル版をしっかり再現しているだけでなく、「こういう機能が欲しいよね」とか、「やっぱ難しすぎるから自分たちのような年寄りがやっても普通に楽しめるモノにしたいよね」とか。

堀井氏:
 もっというと、スタッフによって、「欲しいモノ」がそれぞれ違うんですよね。

長野氏:
 そうですね。動機や基準が違うので。

堀井氏:
 「コレを作ることで『魔法大作戦』をクリアできるようになりたい」とか、「最後までクリアした自分が、ぜひ入れたいガジェットはコレだ!」っていう感じで、開発しているスタッフの想いはそれぞれなんですよね。

――「オレたちの“欲しい”が詰まった」ってことですね。いいキャッチですね(笑)。

堀井氏:
 「オレの好きなモノは、他にも好きな人がいるよね」という気持ちでやっている部分って、やっぱりあります。少なくとも「ショットトリガーズ」に関しては、我々の中の誰かが必ず「このゲーム最高!」って思っているモノなんですよ。

長野氏:
 まあ自社ブランドだから、自分たちのやりたいことがかなり自由にできている。もちろんそれは、IPホルダーさんには許可を取りますけどね。でも、それで「ダメ」っていわれることは、ほとんどないです。

「移植仕事人」としての責任

――「移植」の道に精進し、気づけば「移植」のトップランナーとなったいま、ゲーム業界に対して何かしら責任感を覚えたことはありますか?

堀井氏:
 デバイスがどんどん進歩するに従って、古いモノは置き換わって消えていってしまうという運命がありますよね。

――「いまさらカセットテープのゲームをどうやってロードするの」とか、ゲームのようなデジタルコンテンツって、古い作品ほどアクセスが難しい問題があります。

堀井氏:
 それを実働するものとして、博物館のようにきちんと保存していくというのは文化的な意義として誰かがやらなきゃいけない――これは、ボクも理事を務める「ゲーム保存協会」【※】の理念ですが――という一方、そういうことをしても、多くの人々が気軽にそのゲームに触れる状況になるかって考えると、なかなかそうはならないのでしょう。

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※ゲーム保存協会
2011年設立の非営利団体。1970~80年代の古いデジタルゲームを文化財として保存することを目的に、ゲームソフトやハードを収集・修復するだけでなく、雑誌書籍や周辺資料などの保存活動を行っている。上記の記事はゲーム保存協会へのインタビューを行ったもの。

――その活動を自分たちでやりはじめよう、と……え? 堀井さん、ゲーム保存協会の理事だったんですね!?

堀井氏:
 そうそう。“物理的に保存する”という「ゲーム保存協会」のアプローチとは別に、我々の“ゲームを移植する”というアプローチは、1つの手だと思っています。

 実働保存って、必ずいずれ無理になってくるので、せめてデジタルというカタチで構わないので――本当の意味で100%同じではないイミテーションかもしれませんけど――100年後も触れられる状況を残せたらいいなと思っています。

――その活動を自分たちでやりはじめた、と。

堀井氏:
 保存活動の枠に、この「ショットトリガーズ」も入っているとは思いますが、ボクらが届く範囲で、まずはボクらが好きなモノだけでも、いま動いているハードやプラットフォームに持っていくことは、少なからず意義はあると思っています。

 どうしてもペースが遅いので、すべてのゲームを、ということにはならないですけれど、いまPS4に移植しておくと、10年は遊べると思うんですよ。……そういうことを突き詰めてやっていこうと思います。

――おっしゃるように、文化的に意義があることだと思います。

堀井氏:
 “いま遊べるように”していく仕事というのは、ずっとこれからもあるんじゃないかと、個人的には思ってます。

 我々が自らパブリッシャーとして始めたことで、何ができるようになったかというと――いまゲーム事業をやっておらず、昔のゲーム資産にどのくらいの需要があってどのくらい遊びたい人がいるのかなど一切気にしなくなった会社さんに対して、ボクらがアプローチして「あなたが持っている資産で遊びたいと思っている人は必ずいますから、お借りさせていただいてもう一度届けることが可能ですか」という問いかけをできるようになったことです。

 ずっとやりたかったことが、「エムツーショットトリガーズ」というカタチになったのは、本当によかったと思いますね。これまで叶わなかった自分の気持ちが救われるような話です……。

(画像は「エムツーショットトリガーズ」公式サイトより)

――いい話ですね……。

堀井氏:
 プレイヤーだけでなく、クリエイターにも、「作品を遺したい」という想いはあるんですよね。本来ビジネスでやるのとは別に、手当たりしだい「年代別に順番にすべてアーカイブしていく」なんてこともやったほうがいいとは思います。
 日本は一時、“ゲーム業界の都”だったこともありますし、それこそ国が「文化事業」として、取り組んでもいいのかなって思ったりもしますけどね。

――取り組んでもらえるといいですね……。でも、パブリッシャーになることでリスクも高まるでしょう。先ほどから「好き」が先行して仕事している、というお話を伺っているだけに、大丈夫かな、と……。

堀井氏:
 ビジネス的に大手さんには難しくても、我々の規模ならイケる、ということです。
 でも、ボクからすると――たとえば『フィーバロン』にそう感じたように――「あのゲームのマーケットのポテンシャルはこんなもんじゃねえだろ!」って思うんですよね。なので、ボクが考える商売と実際のそれとで、ギャップが若干あるような気が……最近……しています(笑)。

――えっと……そのギャップは埋められそうでしょうか? 「ショットトリガーズ」の存続のためにも。

堀井氏:
 エムツーのみんなには「考えていない」って言われるんですけど、それなりにきちんと考えています。

長野氏:
 それなりに……なの(笑)?

――開発現場の声が聞こえた気が(笑)。

堀井氏:
 もちろん、「ショットトリガーズ」以外にも、別のお仕事のラインも走らせています。なので、大丈夫ですよ。

長野氏:
 そうですね。ご安心ください。

堀井氏:
 「ショットトリガーズ」に関していえば、ベタな移植ではなく、やり方はいろいろあると思いますが、買った後でも遊び方をまた新たに提示していくような、追加の施策を入れていきたいなと思っています。

 つまり、『バトルガレッガ』を遊んだ人は『フィーバロン』やりたくなるような。『フィーバロン』を遊んだ人が『バトルガレッガ』をやりたくなるような。『魔法大作戦』をやった人がうっかり『フィーバロン』や『バトルガレッガ』も遊びたくなるような施策を、しっかり考えていこうかなと。

――それは楽しみです! 「ゲーム文化の保存」という観点からも応援しています!
 ちなみに、今後の移植作はいっぱい決まっているのですか? ユーザーさんからは「これをぜひ移植して!」といった声は……?

長野氏:
 いっぱい来ますよ。

――シューティング以外でもリクエストしてもいいんですか?

堀井氏:
 言ってくれればなんでも検討します。ボクは『エドワードランディ』【※】がやりたい。

※エドワードランディ
1990年にデータイーストからリリースされたアーケードゲーム。「いきなりクライマックス」、「冒険百連発」等のキャッチコピーが語る、『インディー・ジョーンズ』のようなハリウッド冒険活劇を彷彿とさせるアクションを楽しめる。

――ホントですね? では、電ファミ読者に募集かけちゃいましょう!(了)

 現在日本では、「日光東照宮」や「二条城」など、世界に誇る文化財の修繕が相次いで行われているが、“予算”や“職人”の不足により、なかなか修繕が進まず老朽化しているモノも少なくない。

 「文化財」という観点から見るに、この事態は「ゲーム」についても同様の状況だが、それでもエムツーは「せめて自分たちの手が届く範囲で」と、名作を“移植”という形でコツコツと修繕する毎日を送っている。

 そんな彼らが、約25年の時を経て復活させた『魔法大作戦』は、はたしてどのような修繕がなされているのだろうか?

 「自分が好きなモノは、きっと他の誰かも好きだから」――その揺るぎない自信に満ちたエムツーの“ゲーム愛”溢れる職人芸を、プレイすれば存分に堪能することができるだろう。

 最後に。エムツーさんに移植してほしいタイトルがあれば、ぜひ電ファミニコゲーマーの公式Twitter(@denfaminicogame)までご連絡を。皆さんからいただいたタイトルについてエムツーが検討する模様を、いずれお届けできればと思っている(個人的には『エースコンバット3 エレクトロスフィア』を移植してほしいな)

© 1993 EIGHTING
© 2017 M2 Co., Ltd.

© 1996 EIGHTING
© 2016, 2017 M2 Co., Ltd.

© 1998 CAVE Interactive CO.,LTD.
© 2017 M2 Co., Ltd.

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取材・文
駒林貴行
BEEP秋葉原店長、広報誌「EXTRA mag.」編集長、1/48 『テグザー』カラーレジンキットなど色々やってました。最初に買った基板は『バンクパニック』。
取材・文
「電撃セガサターン」、「電撃PS2」、「電撃オンライン」、「電撃レイヤーズ」、「iモードで遊ぼう!」、「mobileASCII」、「デンゲキバズーカ!!」と数々の媒体を渡り歩いて来た40代ファミコン世代の編集者。好きなハードは「ファミコンバージョンのゲームボーイミクロ」。
Twitter : @nkjdfng

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