キャラクターが自分の名前を呼んだり話をかけてくれる――それは届かない夢のような願いだった。
それぐらい二次元と三次元は遠く、立ちはだかる壁は厚い。しかし、そんな夢に追いついてきたプロジェクトがある。ご存じだろうか、二次元と三次元の狭間へと我々を誘う『AR performers』(以下、『ARP』)を。
『ARP』にはシンジ、レオン、ユニット「レベルクロス」のレイジ・ダイヤという二次元のパフォーマーが所属しており、彼らはエイベックストラックスと契約し、12月には3枚目のミニアルバムの発売を予定している。
特に凄いのは彼らのライブで、中の人ではなく、二次元キャラクターたち自身が生で歌い、踊り、会話することだ。これらは再生されたものではなく、全てがリアルタイムで、一つとして同じものはない。実際のライブでは、ファンや司会と会話するとごろか、キャラクター自身がファンの名前を呼ぶこともあるのだ。
仕掛け人は、「ときめきメモリアルGirl’s Side」シリーズや「ラブプラス」シリーズで、ファンとキャラクターの垣根を越えさせようとしてきた第一人者・内田明理氏。ゲームメーカー・ユークスで立ち上げた「ウチダラボ」でこのプロジェクトを展開している。
電ファミニコゲーマーでは、そんな『ARP』という未知の二次元コンテンツに迫るため、内田氏と『ARP』のファンたちにインタビューを実施。二次元キャラクターたちの新たな姿と、その魅力をお届けする。
取材、文/タカロク
目指すは脱再生、二次元コンテンツにも一期一会を
まずはステージの裏側で何が起こっているのかを説明したい。客席から見る分には、二次元のキャラクターがまるで実在の人間のように動き、歌い、踊り、会話しているわけだが、その裏にはモーションアクターとボイスアクターがおり、それぞれ動きと声を別々に担当しているのだ。
他にもキャラクターデザイナーやCGクリエイター、ミュージシャンなど様々なプロフェッショナルがこのステージのために集結。『ARP』のアーティストは、このようにして複数人のプロによって作り上げられているのだ。
イケてて、私のほうを見ていて、やりとりも可能で裏切らない。そんな理想の集大成となるイケメンを、女性が放っておく理由もない。
そもそも、こうしたステージングの発想はどこから来たのだろうか。内田明理氏(内P)にお話を伺った。
ここまでステージを取材してきましたが、私が受け取った凄みのようなものを上手く言語化できていません。ぜひ内田さんご本人から「『ARP』で何をしようとしているのか」を教えて頂きたいです。
世の中にいるたくさんの2Dキャラクターって、基本的にはアニメなどを“再生”しなければ存在できないもの。だから、そのキャラクターと一期一会の体験はできないんです。
でもそういう存在であるにも関わらず、熱心なファンの皆さんにお応えできるようにと、ライブやイベントが毎日のようにどこかで行われています。そういう状況を見ていて、「2Dコンテンツを扱っているのに、体験価値を求めているお客さんに対して、再生コンテンツでしかお応えできない」というジレンマを僕はずっと持っていました。
『ラブプラス』にはあんな想いやこんな想いなど凄い体験をさせてもらいましたが、言われてしまうと、たしかに再生コンテンツです。
ところが、いまあるいろいろな技術を組み合わせれば、2Dコンテンツであっても、「一期一会の時間」という体験価値を共有できるんだと気づいたんです。
そこに至るまでに、まずアニメやゲームの架空の存在であるキャラクターの「何がいいのか」を考えました。その結論が“現実にはいないようなタレントを表現できること”だったんです。
まさしく『ARP』が表現していることですね。
架空であるがゆえに、歌もダンスもお芝居も声も、当然ビジュアルもカッコいい存在が作り出せる。そして生まれたのが『ARP』です。生でお客さんとやり取りをしたり、生の歌や踊りをお見せするということが、まず『ARP』でやりたかったことの一つですね。
それから自分でもよく言うんですが、技術と、構成しているアクター、ダンサーなどが集って一人のパフォーマーを人間として生で存在させる……これって、人形浄瑠璃みたいなことなんだろうなぁと思うんです。
人形浄瑠璃も表情だけを担う人とか、手だけを動かす人などで構成されていて、人形のはずなんだけど、実際に舞台で見るとその人形に感情移入して泣いてしまう。職人芸が生み出すケレン味と技術を組み合わせて、僕らは新しい人形浄瑠璃みたいなものをやってるんじゃないかと思ったりしています。
人形浄瑠璃……言われてみればそうかもしれませんね。凄く納得しました。そういった構想はかなり前からあったんでしょうか。
結構昔からです。僕はずっとキャラクターコンテンツを手がけてきて、「お客様が今何を求めているのか」を考えてきた。
そしてお客様が、「そのキャラクターとの一期一会の体験」、「その瞬間しかない、いずれ終わってしまうようなもの」に対して、非常に強い価値を感じていると知ったんです。
年々そういう意識を持つ人たちの思いが強まっていたので、そういうことをやってみたいなと考え始めたんですね。
ライブの随所にフリートークのようなコーナーがあって、今日はパフォーマーが学校生活について話していましたが、その会話に現実があいまいになるような、「本当に学校に通ってるんじゃないか?」と思うぐらいの生々しさがありました。そのあたりの秘訣などあるのでしょうか。
ステージングの最初のころはやっぱりどんな会話になるか分からなかったので、発言も台詞レベルで打ち合わせていたんです。でも彼らもパフォーマーとして成長して、本当に自分たちの気持ちを自分たちの言葉で言えるようになって……今は段取りだけ決めて手放しの状態ですね。だから生々しいというか、生なんです。
今僕がしっかり書かなきゃいけないのは、漫才の台本ぐらいですね(笑)。彼らもそこはやっぱり僕には全然敵わないなって(笑)。
(笑)。手放しというのもすごいですね。それだけパフォーマーが成長していると。
漫才の話で思い出しましたけど、彼らも成長してステージ上で余裕が出てきたので、もっともっといろんなことをさせられるなと思っているんです。例えば芝居とか、コントもやってみたいですし……。
昭和の昔にはあったんですよ。「8時だョ!全員集合」【※】などはご存知かと思いますけど、歌謡ショーあり、コントあり、体操あり、トークありの総合的なバラエティーショーのようなものが。そういうことがそろそろできないかなって思っているんです。
彼らの“生”の焦りや興奮、喜んだり悲しんだりする姿を、お客様にもっと一緒に体験していただくためには、いろいろなことをやったほうがいい。それが「できるな」っていう実感を今は得てますね。
※8時だョ!全員集合
1969年から1985年にTBS系列で放送されていた、国民的人気のコント番組。 いかりや長介、志村けんらが所属した音楽バンドおよびコントグループ「ザ・ドリフターズ」が主催。
『ARP』をファンはどうみているのか
リアルタイムで反応を返すパフォーマーはまさしく普通の人間と変わらないわけだが、メイクも落ちなければ服が乱れることもなく、着替えにも時間がかからないので、つぎつぎと華やかな装いですぐに登場してくれる。そのうえ、汗もかかず、肉離れをすることもないので、最初から最後まで全力のダンスを華麗にこなし、イケメン度MAXを維持する。
キャラクターとしてよく見ると、二次元らしいスラっとした等身だが、いかにもなキャラクターっぽすぎず、かつリアルに寄り過ぎず、ある程度のバランスを考えて取っているように見える。さらにステージ上では光の当たりかたが絶妙で、見続けていると本当にそこに人がいるように見え始める。ライブ会場は現実と虚構の狭間のようだ。
でもこれは記者の感想であって、彼らに心酔しているファンの感想ではない。そこで、イケメンなんてアプリでガチャを回せば腐るほど出てくる時代に誕生した彼らに、熱いエールを送ってしまう魅力は何なのかと、11月3日にDMM VR THEATERで開催された上映イベント「REWIND2」に来場していたファンに尋ねてみた。
はじめまして。突然なのですが、『ARP』を初めて見たとき、どんなことを思いましたか?
実際に見てもう……茫然としてしまいました。普通こういうイベントって、声優さん本人が出てくるのがほとんどだったけど、キャラクターが動いて、喋って、しかも反応してくれるんです。それはもう「すごい!すごすぎる!」ってなります。
ダンスも歌もビジュアルもプロ級で、これはもう総合芸術ですよ。プロとプロの力のぶつけ合いみたいなのを感じました。
プロ集団の最高傑作って感じだよね! 私達はよく「二次元に行きたい」なんて言いますけど、本当にそれが叶ったって感じなんです。二次元に行けてるっていうか……いや、あっちがが三次元に来たのか(笑)。
パフォーマーのシンジくんの持ち歌の歌詞で「次元を超えよう」っていうフレーズがあるんですけど、「本当に超えてきた! ヤバい!」って(笑)。
自分がそうなんですが、見ていると「何これヤバい」としか言えなくなるほど語彙力が低下しますよね(笑)。
最初はよく分かってないで行ったけど、見終わって「もうヤバい」ってなって……。あのときは基本「ヤバい」しか言ってなかった。
最初はよくありがちな、ただ歌って踊る映像が流れてるぐらいのことを考えていたんですけど、始まってみたら「あれ? 生で喋ってない?」っていう衝撃がありました。歴史の目撃者になりましたね。
だからこれを今後見ないなんて、考えられなくなりましたね。リアルタイムで喋るって言うのは、他にはないことです。今までに行ったこういうイベントとは全然違いました。
もちろん他のイベントにもそれぞれ良さがあるんですけど、これこそ2.5次元だなって感じるんですよね。
話を聞いていると、やはり“そこにいる”と思わずにいられない“リアルさ”が魅力なんですね。
ステージで歌い終わったとき、ハァハァって言ってて、すごくリアルなんです。会場の電気が点いてもそのままいるっていうのにめちゃくちゃ感動しましたね。その場でレスポンスがあることにも「ヤバい本当に次元超えてる! キター! やばいこれはやばい恋に落ちた!」って(笑)。
私はラジオ【※】から入ったので、耳でしか知らなかったんですけど、そんな子たちがステージ上に、目の前にまず“いる”。そして私たちと喋ってくれることに衝撃を覚えました。耳で聴くっていうのはアニメとかでもよくあるんですけど、目の前に来てくれて一緒に喋れるっていうのは今までなかったので、感動しました。
※ラジオ
AR performersのラジオ番組「アメイジングレディオパフォーマーズ」。2016年11月から2017年3月まで文化放送でオンエアされていたものと、2017年5月から毎週土曜日22:00~にニコニコ生放送のavex公式チャンネルで放映されている「アメイジングレディオパフォーマーズオンザウェブ」が存在する。
最初はあの空間ですごいことが起きてるって感じだったんですけど、だんだん「普通にライブだったな」って思うようになりました。でも、そう感じることが一番すごいですよね(笑)。
そう、最初は「すごいな!」って思うんですけど、だんだん普通のライブを楽しんでる感覚に……。
終わって「そういえば(実際にあそこに)いたな」って思っていることに気づくんですよね。
それぐらい自然だと、もう空想のキャラクターではなく、人物というか、アイドルを応援する感じに近いんでしょうか。
アイドルというよりは、アーティストですね。
それもキャラクターではなく、ちゃんと実在する人間のライブに来てる感覚です。もういるものとして見てるんで! っていうか「いる」んですけど!(笑)。
人間ってだんだん好みが変わって来たりするじゃないですか。言動も変わったりして。彼らのラジオとかを聴いてると、そういうのを感じるんですよ。キャラクター設定から離れて生の人間が垣間見えてくるときの人柄が、すごい魅力的なんです。それでアーティストとして追いかけたいってなって。
だんだんパフォーマーのみんなが仲良くなっていったりとか……。
そう、ライブごとに技術的な面のクオリティーも上がってると思うんですけど、それ以外の会話とかやりとりに、彼らのつながりみたいなのを感じられるんです。
そこは主催している人々もこだわっているというか、表現したい部分だと言っていましたね。
私は皆さんと違ってYouTubeで「また内Pなんかやるんだ!」って思って気になってました。ビジュアルと歌がめちゃくちゃかっこいいじゃないですか! でも遠方だからライブにはあまり行けてなくて、ラジオも聴けないんです。
それでYouTubeにアップされるアフタートークだけちまちま聴いてたんですけど、最初はみんなあんまり仲良くなくて……でも回数を重ねるごとに仲良くなっていって、ほんまに自分とおんなじ時間生きとるんやって、すごい感じました。
応援が推しメンの勝敗を左右する「ふれフレ」にファン涙
彼女たちが熱狂しているものの一つが、彼らへの応援スタイルだ。ライブでの応援と言えば今ではサイリウムを振るのが定番だろう。しかし『ARP』の公演でファンが振るのはスマートフォンだ。
この『ARP』には専用の「ふれフレ」というライブアプリが存在し、楽曲の応援ゲームに参加できる仕組みになっている。
ライブのステージ上、パフォーマーのバックスクリーンには、音ゲーでおなじみのリズムマーカーなどが現れ、アーティストの曲とマーカーに合わせて振ることで、応援ポイントが貯まるというシステムだ。このちょっとしたゲームはライブ会場のみで楽しめるもの。
アニメやゲームのイベント会場ではスマートフォンの電源を切るのが普通だが、『ARP』はそんな常識をも覆した。しかも撮影が可能というのも驚きだ。
また、ライブには毎回「バトルソング」コーナーと呼ばれるパートがあり、その名の通りパフォーマーたちが歌い合い、対決をするコーナーが設けられている。
バトルはファンが応援したポイントで勝敗が決まるため、推しパフォーマーを勝たせるためにはファンがスマホを振るしかない。そして「フォルテ・タクト」というアイテムがあれば、より多くの応援ポイントを得ることができる。「フォルテ・タクト」の入手にはゲーム内通貨「トーン」が必要で、これが課金要素だ。
バトルが終わったときの応援ポイントが高いと、ステージ上に応援コメントが表示されるほか、ライブ終盤には名前が発表され、上位は推しパフォーマーに名前を呼んでもらうことができる。
推しの口から、自分の名前が出る。『ARP』ではそれが許されるのだ。その興奮はとてつもないものだろう。この課金と「バトルソング」のシステムで表現したことを内田氏に伺った。
「バトルソング」で泣いているファンの方を何人も見たんですよ。中には「もっと……もっと私が応援すれば○○くんを勝たせてあげられたのに……」という方もいて。内田さんがやろうとしたのは、こういう感情の揺さぶりだったんじゃないでしょうか。
そうですね。2D系のアイドルコンテンツは、映像を再生して、お客さんがそれを観ているわけじゃないですか。それはそれで美しい一つのエンターテインメントなんです。
でも、パフォーマーたちが実際にガチでバトルをして、勝てないと思っていたのに応援の力で勝てたりすると、泣けるんですよね。舞台にいる彼と、客席にいる私たちが協力してやり遂げた!という一期一会の感覚やその場で共有された気持ちには、心が大きく揺さぶられると思うんです。
実際作っている僕たちでも観ていると、誰かが本当に大逆転したときはうるうるしたり、「うわー逆転しちゃったよ!」と驚いたり。やっぱり生で一緒に興奮して、「見た見た、今の!?」と共有するのは、本当のライブステージじゃなきゃ体験できないことです。
たしかに「2nd A’LIVE」で起きた逆転劇は、観ていた我々も大変感動しました。
よく2D映像でもノリの良いお客さんが「目線が合った!」なんて言って、協力的にライブ感覚を盛り上げてくださったりすることがありますが、それが『ARP』では本当に起こるんです。声をかけられたり、そういう瞬間を目の当たりにしたときに、気持ちってすごく揺さぶられるんじゃないかなって。
これだけ再生コンテンツが溢れかえり、ほぼ無料みたいな形で過去のものまで手に入る状況だと、お客様は逆に生の感覚がほしくなっているのではないかと。ライブではそういう
体験価値が、今強く求められているんだなというのが、よく分かります。
「ふれコレ」は良くも悪くも“人を狂わす“システム?
パフォーマーの魅力だけでなく、こうしたファンの参加型コンテンツとしても、かなりのエンターテインメント要素を含んでいる『ARP』。応援についてもどのように楽しんでいるのか、ファンの皆さんに尋ねた。
『ARP』の特徴に「ふれフレ」がありますが、皆さんはどう楽しまれていますか?
「うわ、楽しい!」って、すごい集中して振ってました。
でも振るのに必死で、パフォーマーになかなか目がいかない……それがもどかしいですね。なので「REWIND」【※】は「ふれフレ」がない分だけ集中して観れるっていう楽しみがあるんです。
※REWIND
過去のライブを特別ディレクターズカット版として上映するイベント。
私はスマホを持ってないから、ライブ会場では「今はみんなに任せとけ!」って(笑)。みんな細かく振るのに大変そうなので、みんなの「もっと応援したい」っていう気持ちを受け継いでいます。
だって一瞬でも逃せないんですよ!
「1ポイントでも多く!」って。推しを勝たせたいし、名前呼ばれたいし……。
彼らのためなら全然つぎ込めます。彼らから与えられているものが大きすぎるので。
私たちは全然彼らに返し足りてないですね……。
……やっぱりバトルソングは熱いんですね。
はい! パフォーマーが煽ってきたり、「もっと歓声を!」って言われたりするので、こっちも「うぉー!」って盛り上がっちゃいます。自分も参加してる感じがするし。
そのバトルソングが終わった後に推しが負けちゃったりすると、「次は絶対勝たす!」っていう気持ちになるんですよ。
それな! 私もこのあいだそうだった。あと自分の推しじゃなくても、誰かが負けると結構心が痛くて。
子犬のようなしょぼくれ方をされると……「あ、あぁ……」、キュンって。
っていうか「みんな勝ってくれよ! くそー!」みたいな気持ちになりますよね。
勝敗があるのが苦しくも、楽しいという感じでしょうか。
そうですね……彼らがバチバチ火花を散らしているのもかっこいいし、ライブの見せかたとして新しいんですけど……。
推しが負けるとすごい悔しいですね。このあいだパフォーマーのレオンが、ふたつのバトルでどっちも勝てなくて……友達は号泣してましたね。「本当にこの子たちを勝たせてあげなくちゃ!」って思えるんです。
でも普段すごい仲良くしているのをラジオで聴いたりしてるので、ステージ上でそういう姿を見ると……。でもバトルが終わった後、称え合ってるのがすごい良いんですよね。他のコンテンツだと普通に推しは一人なんですけど、『ARP』はキャラそれぞれの魅力が感じられるんです。
戦ったり、称え合ったりというのは、たしかに中々ない状況ですね。
私は良くも悪くも、人を狂わすシステムだなと(笑)。すごい怖いし、それにやりがいを感じてしまうところがまずいんじゃないかとか、葛藤がありますね。
楽しいけど怖い。
やっぱり推しが負けるところは見たくないんですよね。悲しそうな顔を見たくないから、それで振ってしまうんです。コンテンツとしては応援しているので、後悔はしないんですけど。
怖さを感じても追いかけてしまう魅力ってなんですか?
全員がステージでのびのびと歌って、トークをする……それを見ていて、すごく“生きてる”人物たちだって感じるんですよね。キャラクターとして作られた感じがしない。
それと楽曲がすごくいいので、曲だけでいいからもっといろんな人に聴いてほしいです。こういうコンテンツにありがちなキャラクターソングじゃなくて、ちゃんとアーティストとして楽曲をもらって活動しているってところが、彼らの良いところでもあるので。
ファンに推しメンの魅力を聞いた
課金に関する葛藤の話も出たが、パフォーマーはそれを飲み込んででも応援したくなる存在のようだ。彼らは二次元でありながらエイベックストラックスとも契約し、アーティストとして扱われている。
最後にそれぞれの推しメンついて、ファンに熱く語ってもらい、その熱気を感じ取っていただければと思う。
せっかくですので、みなさんの推しメンについても教えてください。まずはシンジのファンの方はいらっしゃいますか?
はい! 私、見た目通りに真面目な彼が好きなんです。みんなでわちゃわちゃしてる最近も好きですけど、結局最終的にはちゃんと“王子”でいてくれる。そのいてくれようとするところが大好きなんです。
私はいまレイジ推しですが、次の公演ではシンジくんです! 「1st A’LIVE」やラジオで推しがレイジに変わったんですが、一番最初にシンジくんで入ったので、やっぱり今でも好きなんです。
続いてレオンはどうでしょうか。
レオンは歌がすごいんですが、本人はちょっと自信がなさそうで……。やっぱり好きな人には自信を持ってほしいので、応援したくなりますね。ライブは「βLIVE」【※】の一回だけしか行ってないんですけど、他は全通ししてます!
※βLIVE
2016年4月16日にベルサール秋葉原にて開催された、ARPのお披露目公演。
彼は最初居なかったんですよ。それぞれ魅力的で箱推し【※】みたいな感じだったんですけど、「1st A’LIVE」が始まる前にラジオが始まって、そこで初めて登場して……。「うわ何この子、めっちゃ喋りかた可愛いんだけど!」って(笑)。
イラストを見るかぎりは「推しにならないだろうな」って思ってたんですけど、「実際会ったらヤバいかも……」って。それでライブはレオンを応援する恰好で行ったんです。で、動いてるのを見て「はい、好き!」って(笑)。間違いなかった。声と喋りかたと雰囲気が、ものすごいヤバくて。全部含めて好きって、パフォーマンスも全部かわいいしかっこいいし……セクシーだし……。
※箱推し
メンバー全員を推しているという意味。
最後にレベルクロスへの想いをお願いします!
レベクロは2人組なんですけど、1人だけに絞れなくて……今日はレイジの日と思ってレイジを追ってたんですけど、次の公演はダイヤだけを見ようと思ってます!
レイジはだんだん可愛くなっていって、素が出てきていて、あとダイヤは……顔が好き(笑)。ライブに来るとすごいファンへの愛情を感じるし、それをばらまいてくれる。「今日来て良かったな」ってすごい思えるライブにしてくれる。だからこれからも応援したいし、好きが毎日更新されていく感じがするんです……好き……!
私は特にレイジですね。彼って「βLIVE」のときは中二病感漂ってて……それこそ「(お前らは)歴史の目撃者だ」みたいなことを言っちゃう感じの(笑)。「ちょっとなんかすかしたのが来たぞ」って思ってたんですけど、「1st A’LIVE」のときはちょっと男子高校生らしい面も見えて、「2nd A’LIVE」ではみんなと仲良くなってたり面白い部分も見えてきて……そのキャラクターが成長していくのを見られるのがいいところだなって。
4人それぞれ応援したくなる魅力があるんですね。
さっき話にあったように、誰か推しがいても全員好きっていう(笑)。
もう目が4つ欲しい。
わかる!! 全員踊ってるときとかね!
目が4つと手が4本欲しい! サイリウムと、タオルと、カメラと……足りない!
もっと手がいる……!
あと箱推しというか、スタッフ含めてユークスさん【※】がすごい良いんですよ。全部含めての箱推しなんですよね。
※ユークス
ARPの運営会社。大阪に本社があり、「WWE 2K」シリーズなどのプロレスゲームを中心としたゲーム開発を行っている。
ユークス、ウチダラボ、ありがとう……!
ユークスさんやパフォーマーの人たちのファンに対してのサービスがすごく素晴らしいし、暖かいんです。ライブ会場で待ってる人のためにわざわざ椅子を用意してくれたりとか、夏のライブでは暑さ対策についてすごいツイートしてくれたり、実際にミストの出る扇風機を用意してくれたりするんですよ。
スタッフさんたちがファンに返してくれるものも大きいんです。もう、与えられているものが大きすぎて……もう……ついて行きます!
どこまでもついて行っちゃってください! みなさん今日はありがとうございました!(了)
今回の取材で来場者の話を聞いて感じたのは「温かさ」だ。ファンというよりも、ある意味、パフォーマーの家族のような温かさがあった。推しの話をしている彼女たちは間違いなく目を輝かせている一人の女の子だが、『ARP』全体の話をする時は母親のようにも感じられるのだ。
コンテンツが産声を上げたときから見守っていることもあるだろう。そして口々に言う「もっと広まってほしい」と「でも広まったら寂しい」の声は、彼女たちの葛藤だ。目の届く範囲での内輪で楽しい気持ちもあるが、そのポテンシャルを信じて彼らが羽ばたくことも夢見ている。
だからこそ応援し続ける、し続けたいという彼女たち。これもまるで子どもを見つめる母親の視線のようで、彼女たちの想いがうまくバランスの取れた場所に着地することを願わずにはいられない。
そして内田氏の話を聞き、ファンにとっての「体験価値」の重要性を考えさせられた。確実にニーズは存在し、それは昨今、ゲーム業界に限ってみても、パッケージ商売から、ライブ、イベント、舞台、そしてライブビューイングを行ったり、ネットでリアルタイムの配信をしたりといった「生モノ」への拡張が日々増えていることにも表れている。一時期話題となった映画の応援上映もそれに当たるだろう。いまは誰もがそのときにだけしか体験できない“何か”を求めているのだ。
『ARP』は、パッと見ただけだと、他の2Dコンテンツと変わらないただのイケメンかもしれない。しかし、ただのイケメンと言うには言葉が足りないほど、様々な技術が込められている。プロジェクト名に入る「AR」は「拡張現実」を指す言葉。パフォーマーに寄せるファンの子たちの想いは間違いなく現実のもので、この『ARP』はまさしく現実を怖ろしいほどに拡張していると言えるだろう。
今後この技術がどのように発展し、彼らがどこまで進んでいくのか。取材ですっかり心を奪われた一ファンとして、見守っていきたい。
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