【新連載:中東編】廃課金者は急増、中東が舞台のFPSにも歓喜…アラブの“お前ら”も、意外と人生エンジョイ中?【世界は今日もゲーマーだらけ(メディアクリエイト佐藤翔氏)】

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 世界中のあらゆる国に独自の人脈を持ってゲームの情報を収集し、ゲームのためとあらば危険なブラックマーケットにも飛び込んでいく。ゲーム専門調査会社・メディアクリエイトの国際部チーフアナリスト、佐藤翔氏――。

「ムスリム圏でポケモンGO禁止はウソ」 ヨハネスブルグまでも実地調査した男が“その目”で見てきた、新興国のゲーム産業やブラックマーケットの実態とは?

 彼に取材した前回の電ファミのインタビューは、ネット上でも大好評。そして記事の中でも予告したとおり、ここに連載第一回の「サウジアラビア編」をお届けしたい。
 この連載「世界は今日もゲーマーだらけ」では、中東、東南アジア、南米といった日本とまったく異なる新興国の「ゲーマー」連中が、一体どんなゲームを愛して、どんなバカをやらかしているのか、等について、佐藤さんの幅広い知識と実体験から存分に語っていただく予定だ。

南アフリカのヨハネスブルグにあるブラックマーケット「DVD Highway」。前回の記事より抜粋
(画像:佐藤氏撮影)

 ゲーム業界に限らず、仕事をする日本人にとって海外市場の重要性は日に日に高まっている。だが、我々が海の向こうの人たちをどれだけリアルに知っているのかは、なかなか怪しい。世界の多様な国の多様な人々が、どんなふうにリアルな生活を送っているのか――私たちに身近なゲーム文化を通じて、それを親しみ深く理解できないものか。
 この連載では、特に日本の将来を担う若い読者たちが、いずれ競争していくことになる「新興国」に焦点を当て、そこに住む人々の「顔」を明らかにしていく予定だ。

 第一回となる今回取り上げるのは、石油で裕福ながらイスラーム教の戒律が厳しく、「世界一入国が厳しい国」としても知られるサウジアラビアだ。3月にサウジアラビアの王族が来日して大いに話題になったが、その際にゲーム業界に関する商談の場にも立ち会っていたという佐藤さん。知られざる大国サウジアラビアついて、その摩訶不思議な生活実態から、急増するスマホゲームへの「廃課金者」事情日本のサウジ進出戦略まで、興味深い話を聞いてみた。

聞き手・文/稲葉ほたて透明ランナー


佐藤翔氏

えっ、あの中東が舞台の北米FPSが大人気!?

――というわけで、さっそく連載第一回「中東編」なのですが、ちょっと日本人には、あまりに遠すぎる地域なんですよ。そもそも中東で、そんなにゲームが遊ばれてるのでしょうか?

佐藤翔氏(以下、佐藤氏):
 大変に遊ばれています。 
 なにせ2010年のレポート【※】では、家庭用ゲーム機の世帯普及率は6割を超えてますから。

※アラブアドバイザーズグループのオンラインアンケート調査結果より。

――かなりの数字ですね。でも、どういうゲームを遊んでいるんですか? ムスリム圏【※】は規制がだいぶ大変な気がするのですが。

※ムスリム圏
イスラム教徒が多数派を占める地域。イスラム教徒は世界中に広がっているが、ここでは主に、サウジアラビア及びその周辺諸国を指す。なお「ムスリム」とは、アラビア語で「(神に)帰依する者」のこと。

佐藤氏:
 ちょっと、サウジで実際に売られていたことを確認したゲームと、現在禁止されているゲームのリストを見てみましょうか。

「禁止されていたゲームが、今後売られるようになる可能性も十分にあります」(佐藤氏)
(表:編集部作成)

 例えば、やっぱり「Grand Theft Auto」シリーズなんかは禁止です。『Witcher 3』【※】も禁止でしたね。

※Witcher 3
2015年発売のオープンワールド型アクションRPGゲーム。ポーランドのゲーム開発会社CD Projekt REDが開発。戦闘シーンに限らず過激な描写が登場する。

――ああ、やっぱり厳しいんですね……(リストを見ながら)ん? でも三上真司さんの『サイコブレイク』【※1】なんて、ゲロゲロのスプラッターホラーなのにOKになってますね。いや、というか「Battlefield」【※2】? 「Call of Duty(以下、CoD)」【※3】!?
 ……あの、この辺のゲームって、中東の人をバンバン撃ち殺すシーンも出てくるFPSじゃなかったでしたっけ!?

※1 サイコブレイク……2014年発売のサバイバル・ホラーゲーム。バイオハザードシリーズの原作者である、三上真司氏が設立したゲーム開発スタジオTango Gameworksが開発。グロテスクな死体や恐怖に満ちた映像が流れる。17歳以上を対象とするD指定を受けている。

※2 Battlefield
米エレクトリック・アーツ社の完全子会社である、スウェーデンのEA Digital Illusions CE(通称DICE)が手がけるFPSシリーズの総称。第1作目は2002年にリリースされた『Battlefield 1942』。プレイヤーは軍隊の一兵士となり(一部作品を除く)、自軍を勝利へと導く。オンラインプレイが非常に充実していて、機種・作品によっては最大で64人(32人vs32人)まで同時に遊ぶことができる。シリーズの中には中東が舞台として登場する作品がある。

※3 Call of Duty
2003年発売の戦争をテーマとしたFPSゲーム『Call of Duty』、及び同作品シリーズの総称。一部の作品では「ゾンビモード」と呼ばれる、より過激な描写のあるモードを遊べる。「Battlefield」シリーズと同じく、シリーズの中には中東が舞台として登場する作品がある。

佐藤氏:
 ああ、その辺のゲームも遊ばれてますね。
 私の知人にも、ヨルダン人の『CoD』のヘビーユーザーの女性がいます。どうもアラブの女性には『CoD』が人気らしいですよ。何年か前に、女性向けのゲームイベントが開催された際、音ゲーやパズルゲーのような、世界共通で女性に人気のゲームジャンルを差し置いて、『CoD』のトーナメント戦が一番の大盛況だったと聞きました。会場には1600人の女性ゲーマーが集結したと言いますから、他国でもなかなかお目にかかれない光景だったのだと思います。もちろん、『CoD』は男性にも人気ですけどね。

――あの……どこからツッコミを入れようか困ってるのですが(苦笑)、そもそも『CoD』がアラブの女性にそんなに人気なんですか?

佐藤氏:
 ええ、実はアラブの女性って、妙にコアゲーマーが多いんですよ。これは宗教上の理由で、女性向けの伝統的娯楽が少なかったことが大きいと思います。例えば、レースゲームのユーザーなんて、他の国に比べて明らかに女性が多いです。

 ここは今日の中東の話を聞く上で重要なので、一つ覚えておいて欲しいのですが……イスラームが登場した時代に存在していないものは、なかなか禁止されないんですよ。
 しかも、アラブは貿易を積極的にやってきた国なので、新しいテクノロジーなどへの興味が、非常に先進的です。LINEが出たとき、海外で真っ先に普及したのは中東だったと聞きますし、新しいIT技術への興味も高い。デジタルームなんかはまさに昔規定がなかった新しい娯楽ですから、女性たちがどんどん楽しめているんですね。

――なるほど……! とはいえ、自分たちの同胞が白人にバンバン撃ち殺されたりもするゲームは、やっぱり思うところがないのかな……と考え込んじゃうんですけど。FPSなんて、中東にいる連中を撃ちまくれ……みたいなノリの作品が普通にあるじゃないですか。

佐藤氏:
 むしろ『Battlefield 1』なんて中東が舞台だったことで、ガンガン宣伝されてましたよ(笑)。

大々的に広告されている『Battlefield 1』
(画像:佐藤氏撮影)

 それだけじゃないですよ――そんなFPSのイメージを逆手にとったビジネスをしてる人たちもいます。ヨルダンの方の会社には、Unityのアセットストアで中東の正確な服装や町並みのマップを3Dモデリングして販売している人たちもいます。

――ええええ。さあ、この素材を使ってマップや敵キャラを作ってくれ、という感じですか(笑)。

佐藤氏:
 どうです? 人間って、たくましいと思いませんか?

――うーん、どうやら今日は、僕たちがアラブに何となく抱いている「偏見」を、壊してくれる話をたっぷり聞かせてもらえる気がしてきました(笑)。

知られざるサウジアラビアの国民事情

――ただ先に言わせていただくと、そもそも中東への日本人のイメージって、「王族は石油でお金もってそう」とか「イスラームの戒律で庶民は生活大変そう」みたいな程度だと思うんですよ。ゲーム文化について聞く前に、その実際の生活実態を聞きたいなと思いまして。

佐藤氏:
 わかりました。まずアラブ圏の人口って、湾岸諸国合わせて5千万人くらいいるのですが、アラブはその中で3千万人ちょいくらいです。【※1】
 そして、サウジの1人当たりGDP【※2】はPPP(購買力平価)換算だと日本と同じくらいです。ただ、3%くらいの「ザカート」【※3】はあれど、税金は基本ないんです。ザカートは、イスラームで貧しい人に恵むための「喜捨」にあたるものですね。

※1……ちなみに、東京の人口は約1300万人、北京は約2150万人、ニューヨーク(市)は約850万人。アラブには、世界最大の規模を誇る大都市と比較しても多数の人が住んでいることが分かる。
(Photo by Getty Images)

※2 GDP
Gross Domestic Productの略称で、国内総生産のこと。一定期間に国内で生産された財産・サービスの付加価値の合計。国の経済指標を示すものとして重要な数値のひとつとされる。

※3 ザカート
イスラム教において義務として課せられている「五行」のひとつ。収入の一部を生活に貧窮している者へ施すことを意味しており、多くの場合、財産税のような制度として存在する。サウジアラビアでは、「ザカート税法」という法律として明文化されており、省庁がその徴収を担っている。「喜捨」ともいう。

――日本と一人あたりGDPが同じくらい! ……って現代の「喜捨」は、国家が税金として徴収してるんですね(笑)。

佐藤氏:
 フランス革命以降、欧米では「政教分離」は原則ですが、イスラーム圏はそういう話はないので、現代でも国家と宗教が大変に結びついています。

 ただ、税金がないのは、イスラームの教義とかではないです。単純に石油で国が豊かだからです。「サウジアラムコ」という国営石油企業などに――まあ正確に言うと、王子がお金を出しているので、我々が考える意味での「国営」とは少し違いますが――国民の多くが所属しています。家族の中に公務員の親父さんが1人いると、家もなかなか巨大です。そもそもアラブはまだまだ開拓の余地があって、土地が大きいのもあると思いますが。

――ボロ儲けしている会社が、その地域を養っているイメージなんですかね。なんだか愛知におけるトヨタみたいですけど。

佐藤氏:
 でもこれはかなり凄くて、なにせ教育費もタダで、留学費も国から出ているくらいです。
 それにくわえて、石油からの垂直統合ビジネスとして石油化学の事業を行ったり、貿易の危機に備えて医薬品系の事業を行ったり……ということも積極的にやっています。実際、サウジ以外のGCC諸国【※】では、既にドバイのように金融業にシフトしている国もありますからね。

※ GCC諸国
1981年に設立された「湾岸協力理事会」に加盟している国のこと。Gulf Cooperation Councilの略称。サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、オマーン、カタール、クウェートのペルシア湾に面する中東6カ国から構成される。

――ううむ……随分と庶民も裕福な暮らしをしているんですね。とはいえ石油がそんなにあったら、別の事業なんて、あまり本気ではやれないような。

佐藤氏:
 歴史的には色々とやってますけどね。今も、石油があれば火力発電が出来るので、バーレーンのようにアルミ精錬に乗り出したり、色々とやってはいます。

「昔は農業もやってました。Googleアースなんかで、サウジアラビアの北西部のほうを見ていただくとわかるんですけど、緑色の変な丸い田畑がたくさんあるんですよ。赤字でも無理矢理普及させようと、人工的にやっていました」(佐藤氏)
(画像はGoogle マップより)

 ただ一方で、サウジで実際に労働しているタクシーの運転手だとかは、インド人とかパキスタン人とかフィリピン人の移民ですね。だから、サウジの首都リヤドでも、南のほうには移民街があって、そこの暮らしは新興国並みです。その意味で、国の中に貧しさがないわけではないですね。

――ちなみに、インターネットはどうなんでしょうか。

佐藤氏:
 PCが普及しています。ソーシャルメディアの利用も非常に盛んですね。しかも、通信網もしっかり整備されています。というのもサウジは砂漠ばかりで、各都市部に固まって人間が住んでいるので、人口カバー率が高くて通信網の負担が低いんです。まあ、おかげで住宅費が高くなっている問題はありますけどね。

大きく変わり始めたサウジアラビア

――ただ、僕らが考えているよりも、だいぶ近代的な生活をしていそうなのはわかってきたのですが、やはりムスリム圏って、ゲームみたいな「快楽」の娯楽に厳しそうな印象があるのですが。

佐藤氏:
 ええ、厳しいですよ。
 そもそも娯楽が非常に限られています。お酒はもちろんダメです。レストランも夜に閉まっちゃうし、バーもないし、男女間の交流もなかなかないです。あとはギャンブルはアウトですね。これは非常に厳しいです。

 ところが今、サウジは大きく変わり始めているんです。
 一つには、やはり戒律のあまりの厳しさに国民の政府への不満が溜まってしまっているんです。娯楽もアンダーグラウンドに流れてしまい、誰も把握できない状況になってしまいました。国家として新たな秩序を作らなければいけない状況にあります。
 そして、もう一つは――ここにきて国の指導者層の王族の世代交代が始まっていて、その若い世代がアニメや漫画好きなんです。例えば、2016年9月に来日したムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(31歳)も、アニメや漫画が好きなのだそうです。

ムハンマド・ビン・サルマン副皇太子と安倍首相
(Photo by Getty Images)

――なるほど……。つまりは戒律が厳格化しすぎた揺り戻しとして、エンタメの「ガス抜き効果」に注目が集まっている、と。そのときに指導者層に、なぜか二次元オタクがいて、日本に注目しているという感じですかね(笑)。

佐藤氏:
 もちろん、漫画やアニメだけではないですよ。
 そもそも「娯楽分野」全体で、今サウジは大きく変わり始めています。昨年には「娯楽庁」も設立されました。その主催で毎月たくさんのイベントが開かれています。「サウジエンターテイメントカレンダー」というサイトを見ればわかりますが、今週はアメリカのゲーム会社のイベント、来週はサッカーの大会、再来週はコメディアンの公演と……次々にイベントが開かれています。最近話題になったところでは、ジャズコンサートが25年ぶりに開かれたという話もありました。

Saudi Arabia just had its first concert in 7 years

――なんかとんでもない偏見混じりの発言で申し訳ないのですが、アラブってイスラームの戒律を厳格に守ってるから娯楽も何もなくて、せいぜいサッカーでも楽しんでるくらいなんじゃないかな……とか思ってしまってたので(笑)、ちょっと驚きですね。

イスラーム法学者が“知恵袋”で回答!?

――とはいえ、やはり最初にしっかり聞いておきたいのですが、イスラームの戒律は今もアラブできちんと機能しているんですよね。確か、「イスラーム法学者」と日本語訳されている「ウラマー」【※】と呼ばれる人たちが、しっかりと判断を下していると聞きました。

※ウラマー
イスラム社会における知識人や学者。狭義の意味では、コーランに解釈を施し、イスラム法の維持を担う神学者・法学者のこと。イランの指導者として日本でも知名度が高いホメイニ師も、このウラマーにあたる。

佐藤氏:
 まず先に言うと、アラブ諸国で有力なイスラームのスンニ派【※1】にはいくつかの法学派があり、それぞれの法学派によって解釈の仕方が違います。サウジはスンニ派の中の4つの法学派の中で最も厳しいものを採用しています。

 ファトワー【※2】の出し方や法的拘束力も国や地域によって色々です。公的なものもプライベートなものもあります。例えばこちらのサイトによると、エジプトには「イスラーム電話相談室」があって、そこで「隣人と揉めてるんですが……」というようなプライベートな悩み相談にウラマーがファトワーを出すそうです。

※1 スンニ派
イスラム教の二大宗派のひとつ。現在スンニ派は全イスラム教徒のおよそ九割を占めているとされている。

※2 ファトワー
高位の宗教指導者によって出される宗教的な見解。

――え!? というかイスラーム法学者って、そんな場所で回答してるんですか。電話相談でいいんだ……。

佐藤氏:
 電話相談は、男性の多いモスクでウラマーに相談するのが気が引ける女性の利用率が高いそうですね。

 そして、最近ではインターネットでも、「Yahoo!知恵袋」のようにウラマーが回答するサイトが登場しています。
 例えば、「私はオープンソースのゲームエンジンを作る仕事に就きたいのですが、ゲームエンジンを使えば反イスラーム的なゲームも作れてしまいます。ゲームエンジンを作るのは禁忌にあたるでしょうか」みたいな質問が来る。これにウラマーが答えるのですが、どこの国のどういう学派のウラマーが答えるかはサイトによりけりですね。

――実名での回答とは言え、「Q&Aサイト」でイスラーム法学者に相談してるのは凄いですね。もっと村のエラいお坊さんに聞いたりするイメージだったのですが、随分と民主的になっているというか。

佐藤氏:
 もちろん、以前はそうですし今もそういうやり方は当然あります。しかしこの変化こそが、まさにインターネット社会がムスリム圏にもたらした影響です。昨今ではFacebookやTwitter、Skype、WhatsApp【※】などもウラマーにコンタクトを取る手段として使われています。

 しかも、今日びFacebookのようなSNSがあるので、海外の情報もしっかり取れてしまいます。特にサウジアラビアではアメリカなどに留学したことのある学生も何十万人という割合でいるので、他国でトレカがギャンブル扱いされていないことくらい、若者は知っているわけです。若い人が増えて、時代は大きく動いているんです。

※WhatsApp
アメリカのWhatsApp社が2009年にリリースしたメッセンジャーアプリ。日本国内ではあまりメジャーではないが、2016年には10億人以上のユーザーを獲得。2017年現在、世界でもっとも使用されているメッセンジャーアプリのひとつと言える。

――皆さん、そんなにSNSを使ってるんですか?

佐藤氏:
 Snapchat【※】やInstagramは大人気です。Snapchatに至っては、一時期サウジアラビアのユーザー平均視聴時間が世界トップだったはずですよ。

※Snapchat……2011年にリリースされたスマートフォン向けの写真・動画共有アプリ。共有された写真や動画が非永久的にしか保存されないことが特徴。基本的な機能は、フレンド(複数人のグループを含む)に送る「スナップ」と、自分のフィードに投稿する「ストーリー」に集約される。「スナップ」は相手が見たら消去され、「ストーリー」は投稿されてから24時間だけ閲覧可能。「残らない」というカジュアルと、「セルフィをアップしたいけど長く残したくはない」という若者のニーズのマッチが、このアプリがブレイクしたひとつの要因である。
(Photo by Getty Images)

 他の大半の国では若い女性ユーザーが沢山、セルフィーをあげていますが、サウジアラビアはさすがに自撮りが難しいので、フォロワーがたくさんいる有名女性ユーザーは自分の持っているブランド物や最近食べた食べ物なんかを写真に撮ってアップロードしているそうです。それでサウジのファストフード店とSnapchatの有名な女性インフルエンサーがタイアップして集客に大きく成功したケースもあったらしいです。

――ううむ、普通にインフルエンサーマーケが行われてるんですね……。

佐藤氏:
 国によっては自撮りしている人もいっぱいいます。そうそう、女性と言えば、サウジアラビアのTwitterで人気のハッシュタグは、ファッションや口紅、料理のような言葉なんです。おそらく女性たちがTwitterで、そういうおしゃべりで繋がっていると言われています。そういうアカウントの多くが「卵アイコン」【※】だったのですが、きっと顔写真を載せられない女性たちなのだと思います。

※卵アイコン
Twitterが2010年から採用していた、新規ユーザー用のデフォルトのアイコン。「カスタマイズを行なっていないアカウント」を指す造語としても機能しており、いわゆる“業者アカウント”や迷惑行為を目的に取得されたアカウントなどを一括りに「卵アイコン」と呼ぶことも。ここでは「カスタムされていない=個人を特定しにくい」という意味合いで使われている。なお、卵アイコンは2017年4月からは廃止されており、その経緯はTwitter社のウェブページに詳しい。

――面白いですね。Twitterは、向こうの女性たちが手に入れた、本音を話せるおしゃべりの場なんですね。

佐藤氏:
 ともかく、そんなふうに昔想定されていなかったものが、かなり本格的に導入され始めた現実が存在しています。
 とはいえサウジでは、まだインターネットの規制は厳しいですよ。ただ、メディアの発達と宗教の伝達というのは非常につながりが強いですから。米国でも1970年代からテレビ伝道師が出てきて、ロックコンサートのような会場で何万人も礼拝に集める「メガチャーチ」【※】が生まれました。そういう意味でも、サウジも今後、変化していく可能性は高いでしょう。

※メガチャーチ
2000人以上の信者が礼拝に訪れる巨大教会のこと。中には数万人規模の礼拝者を抱えるメガチャーチも存在。1960〜1970年代の米国で発祥したとされている。礼拝者のなかには若者も数多く見られ、メガチャーチは現代アメリカの象徴的な現象であるとする声もある。

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