2018年3月、プレイステーション4版『フォートナイト バトルロイヤル』(Fortnite Battle Royale)とiOS版の日本国内向けサービスが開始された。
バトルロワイヤル系ゲーム『Fortnite』日本語版が3月8日に配信決定。国内でもプレイステーション4でプレイ可能に
『Fortnite』は英語圏にて2017年10月からサービスを開始。昨年、いくつものゲームアワードでマルチプレイヤーゲーム部門を受賞した『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』(以下、『PUBG』)に続く人気バトルロワイヤル系ゲーム【※】として、またたくまにプレイ人口が拡大していった。
その規模は同ジャンルのブームの火付け役となった『PUBG』に追いつきつつあり、すでにTwitchでの配信・視聴者数は本家をしのぐ人気に達しているとも報じられている。
『PUBG』や『H1Z1』などと比較されることの多い『フォートナイト バトルロイヤル』は、確かにバトルロワイヤル系ゲームの文脈上にある作品ではある。
また一方で、『フォートナイト バトルロイヤル』にはオリジナルである『フォートナイト』があり、そもそも対NPCをメインにしたサンドボックス型タワーディフェンスゲームだったという背景もある。
ゆえに『フォートナイト バトルロイヤル』は、バトルロワイヤルゲームに“クラフト(建築)のフォーマット”を直輸入するという特異な融合を経て生まれており、同ジャンルをただ模倣しただけではない異なる系譜を持っている。
しかし、未プレイの人に『フォートナイト バトルロイヤル』を説明するときに、独自の“建築”要素があるバトルロワイヤル系ゲームとして紹介されるのだが、そもそも“建築”要素という呼び方の印象が地味すぎて、内容がよくわからない読者も多いのではないだろうか?
ではなんと呼ぶのが相応しいか。熟考のすえ、筆者は“具現化能力者100人による異能力バトル”と呼ぶべきなのだという結論に達した。
そしてそんなプレイを体現するかのようなトッププレイヤーの凄技テクニックが、すでにシーンには多数存在している。たとえば、日本でも急速に知名度を上げているTwitchストリーマー・Ninja氏のプレイングは、まさにその代表格だ。
もともと『HALO』や『H1Z1』、『PUBG』で活躍していたNinija氏は、『フォートナイト』で一躍スターダムを駆け上った。5000万円以上の月収や、人気ラッパーであるドレイク氏とのライブ配信が同時接続視聴者数60万人を超えるなど、SNS上で話題になることも多い。
だが、それを支えているのは彼の常人を超えたプレイスキルと、それを可能にする『フォートナイト バトルロイヤル』のメカニズムだ。
この記事では、このNinja氏のようなスーパープレイを通じて、『フォートナイト バトルロイヤル』がいかに“具現化能力バトルゲーム”であるのかを記していく。
もちろんこのようなハイレベルなプレイヤーばかりがいるゲームではないが、本作がいままでのバトルロワイヤル系シューターと何が違うのかを、ぜひ感じ取って欲しい。
取材・執筆/Nobuhiko Nakanishi
編集/ishigenn
基本的な能力の使い方「移動・防御・攻撃」
本作での基本的な建築要素をまずひととおり解説しておこう。ゲーム中でプレイヤーは建物物や木々を破壊することが可能で、それらから「木材」、「石」、「鉄」を集めることができる。
この3種類の資源を消費して、ゲームフィールド上に壁や階段、天井を作り出し、有利な場所へ移動したり、防壁を築いたり、ときには拠点を固めたりする……というのが本作における建築要素の基本的な概念だ。
Here is a "How to build a microwave and cook a noob" Guide <3 ENJOY! pic.twitter.com/0lIoQD3yNB
— Ninja (@Ninja) November 27, 2017
言葉で聞けば「なんだその程度か」と思うかもしれないが、Ninja氏がTwitterに投稿したこの一連のプレイ映像は、『フォートナイト バトルロイヤル』が能力バトルであることの本質をよく表現している。
「移動」、「防御」、「攻撃」の基軸がほぼ全て建築で行われていることが理解できる理想的な動画だ。
まず敵に近づく際、崖から地面への落下ダメージを防ぐために、壁面に引っかかるように天井を足場として構築していく。安全に崖下に降りることと、敵の銃撃を防ぐ2つの効果がある。
地面に着地したのち、敵の四方を壁で囲って攻撃を防ぎ、こちらの行動を視認できないようシャットアウト。動きを封じた上で敵を取り囲んだ壁に“編集機能”でドアを作り、ドアからグレネードを入れ、また壁に戻す。そして相手は死ぬ。
この一連の流れの中で、彼の行った物理的な攻撃は“1回だけ”であることに留意してほしい。
建物を構築し合うダイナミックな異能力バトル感
『フォートナイト バトルロイヤル』の基本的なセオリーに、「建築物の貼り合い」がある。
資材と武器の所有量にもよるが、接敵して両者ともにお互いを視認している場合は、むしろ撃ち合うよりも建築物を先に作ることの方が多いかもしれない。
木材の壁でも数発の弾丸に耐える上に、クールダウンもなく連続でその場にクラフトが可能で、さらに壁裏に隠れることができれば動きは察知されづらい。つまり建築物を先に作ったほうが、戦闘の主導権を取りやすいのだ。
壁をその場で発現できる以上、『フォートナイト バトルロイヤル』においてはお互いの行動が見えないという状況が頻繁に発生する。
動作音で敵の位置を素早く判断し、敵の意図の逆を突く。遭遇戦では銃撃のエイム力よりも、咄嗟の機転と経験がモノを言う。
動画はNinja氏とDaequan氏の、もうなんだかよくわからないほど高レベルなトップ異能力者同士のバトルを映し出している。注目はロケットランチャーを見てから壁を具現化して防ぐ判断力(上記動画00:40〜)と、相手の動きが見えない状態から背後に回り込む立ち回り、さらにそれすらも予測する読み合いだ。
『フォートナイト バトルロイヤル』は、イマジネーションとそれを可能にするツールさえあれば、人はどこまででも自由に戦えることを教えてくれる。
さらに付け加えるなら、その“自由度の高さ”は同時に上達の幅を意味する。運要素が強いと思われがちなバトルロワイヤル系ゲームではあるが、実は同作は終盤になればなるほど経験や実力、理解度の差が勝敗を分ける。終盤の実力差を埋めるには回数を重ねるしかない。リトライへの欲求の強いゲームだ。
空中にすら拠点を構えることができる天空系異能力バトル
『PUBG』では稜線を利用して有利なポジションを取ったり、あるいは建物の上に陣取ったりすることもある。だが、自分で陣地を構築することはできない。
陣地を構築することができる。この点を過小評価していると『フォートナイト バトルロイヤル』の真の魅力を測ることは難しいかもしれない。
たとえば本作では、建築を利用して空中に陣取ることも可能だ。以下の動画では、伐採から建築、そして天上からの攻撃と、一連の基本戦略を紹介している。
これが4人分隊(スクワッド)モードでの戦いになれば、空中に要塞を築くこともできる。
北米でのサービスが開始した直後から、素材を確保して階段を作成し、空に陣地を築くいわゆる“天空”を利用して戦うプレイスタイルはすぐに広まっていった。
基本的にアンブッシュの手段が少ない本作において、心理的な死角に入り込もうとするプレイングの走りである。今はさほど珍しい光景ではないが、サービス当初はその戦法を体験して目を点にしたプレイヤーも多かっただろう。
なお、建物は根元を破壊すればそれに連なる部分も全て壊れるため、何も考えずに高所に上り続けることには不意の転落死のリスクも伴う。
グリッチやエモートが勝敗を分けることもあるカオス性
「ロケットランチャー」の攻撃を直接当てることは難しいが、終盤の攻城戦の場面では建物の破壊に最適だ。しかしハロウィンイベント仕様のロケットランチャーは、弾頭がカボチャ頭だったため仲間の撃ったロケラン弾に乗って一緒に移動することが可能で、ユーザーたちのあいだで大きな話題となった。そして、誰の意図かはわからないが、なぜかハロウィン期間終了後もその仕様は残っている。
今やネタの代名詞のようになっているロケットランチャー移動。また、サービス開始後から「トランポリン」、「アンブッシュ用植え込み」、「強制ダンス爆弾」など、ネタ武器は次々と実装されている。
建築や具現化能力といったテーマからはやや外れるかもしれないが、これらをすべてひっくるめた自由なカオス性が、『フォートナイト バトルロイヤル』の根底には流れているのかもしれない。
https://twitter.com/FreeMemesKids/status/950139309688066048
また、サービス開始時には一種類しかなかったエモートも増え、今は数ヵ所に装備できるようになっている。
ゲーム中でもダンスミュージックが爆音で鳴ってしまうので、自身の位置が即座にバレるが、逆に敵をおびき寄せる用途としては有用だ。ときにはロケットランチャーを避けることもできる。
このように、『フォートナイト バトルロイヤル』は『PUBG』に代表されるバトルロワイヤル系ゲームの系譜であり、フォロワー作品のひとつであることは否定できない。しかし同作は、バトルロワイヤル系ゲームという新ジャンルの可能性を“縦”の次元に大きく切り開いた作品であり、これから出てくるであろう別のフォロワーにも大きなインスピレーションを与えていくことになるだろう。
バトルロワイヤル系ゲームを触ったことがない人も、食わず嫌いな人も、ぜひこの強烈な熱さとクレイジーさの共存した異世界に転生し、特殊能力バトルを存分に味わってみて欲しい。