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なぜ『ゴッド・オブ・ウォー』がゲームアワードを獲得したのか? めんどくさい開発者たちによる2018年のゲーム(いまさら)総ざらい座談会【岩崎啓眞・島国大和・hamatsu・TAITAI】

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MOBAの伸び悩み

──今年のトピックスのひとつは、なんだかんだでeスポーツだという話もあります。

TAITAI:
 eスポーツって、日本で流行ってる対象タイトルと海外で流行ってるものの温度差や違いが、少なくとも日本においてはネックになっている部分があると思います。
 『フォートナイト』(2017年7月25日リリース)などのバトルロイヤル系は、その違いを重ね合わせてくれる可能性があるタイトルとして、ひとつのブレイクスルーになるかもしれないとは思いますね。

岩崎氏:
 MOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)は、いまだもって日本では大流行しませんね。

島国氏:
 あれはなんででしょうね。「格闘ゲームがいつまで強いんだ」という話でもありますが。

TAITAI:
 でも、格闘ゲームもそこまで強くはないでしょう。

島国氏:
 でもすでに国産のタイトルが減っているにもかかわらず、日本では格闘ゲームに目がいく傾向がありますよね。

──MOBAの現状はどうなんですかね。

岩崎氏:
 MOBAに関してはいろいろ難しいと思っています。MOBAを分解して極端に単純化した『クラッシュ・ロワイヤル』がいまのところ日本ではいちばんマシじゃないかという状態。MOBAはメインの場がPCというのがツラさの原因のひとつかなと思う。
 そう考えると『フォートナイト』は……うん。うまく当たったよなという感じですね。

バトルロイヤル系ゲームのヒットは負けるのが嫌いなプレイヤーの習性から

TAITAI:
 2018年に限った話ではありませんが、そうした『フォートナイト』や『Dead by Daylight』(2016年6月14日リリース)などオンラインもののブレイクも多かったですね。
 ビジネス面から言うと『フォートナイト』がいまはどれくらいか判らないけど、5〜6月の時点で月300〜400億でした。

hamatsu氏:
 基本的には『PLAYERUNKNOWN’ BATTLEGROUNDS』(以下、『PUBG』。2017年3月24日リリース)が2017年にガーッと伸ばした勢いを、『フォートナイト』が全部持っていっちゃった感じですよね。『PUBG』はいま下がり気味で。

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(画像はギャラリー – PUBG公式 – DMM GAMESより)

──日本では『荒野行動』(2017年11月23日リリース)が大ヒット。

岩崎氏:
 『荒野行動』が売れた理由は、わりとはっきりしているんです。『PUBG』が来ないうちにモバイルで『荒野行動』が売れ、モバイルだけを遊んでいる人々から、『荒野行動』がオリジナルだと認識されたからなんですよ。

島国氏:
 「『PUBG』? あるよ」というような売られかただ。

hamatsu氏:
 遊んでみたら、結構ちゃんと遊べましたし。

TAITAI:
 『荒野行動』はゲーマーを向いていないマーケティングをして当たっていますよね。結果的にゲーマーも遊んだけど、そもそもの想定が、いわゆる僕らが想像するゲーマーのような人たちではぜんぜんなかった。

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(画像はスマホ版バトロワ!|荒野行動 公式サイトより)

岩崎氏:
 そういう人たちが『荒野行動』のヒットを支えているわけですが、僕の知っているゲームプロデューサーがそのメカニズムを解説してくれて、それにちょっと感心したんですよ。

──どんなメカニズムですか?

岩崎氏:
 話は、基本無料の『荒野行動』で「なぜアバターが売れるのか」というところから始まったんですが、それはいま動画の実況をしている人たちがいっぱいいるなか、「彼らが買ったアバターをコミュニティのみんなが買うからだ」と言うんです。

 そのコミュニティが形成された理由が面白い。あのゲームって100人をひと塊で集めますよね。すると、わりと有名実況者というものにプレイヤーがゲーム内で会えるらしいんですね。すると妙な親近感が湧く。それで雪だるま式に遊ぶ人が増え、コミュニティとして出来上がったと言うんです。

──それは面白いですね。

島国氏:
 日本のゲーマーって、わりといまはコミニケーション疲れをしている人も多い傾向がある中で、そういう形で『荒野行動』が売上を立てているなら、逆方向を向いているのがなおのこと面白いですね。

TAITAI:
 「バトルロイヤル系のゲームがなぜ流行っているのか」という話はしておいたほうがいいですね。

 もともとは1対1の対戦ゲームやチーム戦から派生して、『LEFT 4 DEAD』(日本では2008年11月21日リリース)のような協力戦をするものが現れたように、オンラインで人と遊ぶことに対して、ゲーム側が徐々に心理的障壁を下げる方向に伸ばしていった歴史があるわけです。

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『LEFT 4 DEAD』
(画像はLEFT 4 DEAD 日本語版 公式サイト – スクリーンより)

 その結果、いまいちばん心理的障壁が低いのは、「自分以外は全部敵で、基本は負ける」ゲーム。つまり「いちばんはひとりしかいないから、基本的にはどう死ぬか、死にかたに満足できればオーケー」というところにたどり着いた。

hamatsu氏:
 勝つのも好きなんだけど「負けるのはもっと嫌い」ってことなのかな。

島国氏:
 ああ、それはGvG【※】のゲームをやっているとそう思いますね。「あいつのせいで負けた」などあったときに、マッハでキック投票が始まる。

 似たような話で、その昔、対戦型TPSを作ったときに、いきなり対戦させるとユーザーが遊んでくれないと解っていたので、PvE【※】も入れてちゃんとCPUを倒す練習をしてからPvPへ繰り出すという仕組みにしていたんですが、いざPvPとなったときに、ユーザーがみんな怒り出すんですね。
 「我々は戦いたくないんだ。もっとザコを出せ。ただ殺したい」と。「これはゲーム作りもたいへんだ」と思いました。

──それは負けたくないことの裏返しなのかもしれませんね。

※GvG、PvE、PvP
GvGはギルド(所属集団)対ギルドでの戦いがあるゲーム。ここではグループ対グループ戦程度の意味。キック投票は、グループ内の誰かを追い出すグループ内投票のこと。PvEはプレイヤー対敵(CPU)、PvPはプレイヤー対プレイヤーを指す。

hamatsu氏:
 よく言われていますが、参加者が100人いるから、まず勝てない。だから負けたとしても「今回はこれでいいか」と納得しちゃうというか、悔しさを忘れられるというか。

TAITAI:
 そういうオンラインで遊ぶ文法の、ここへ来ての進化は『PUBG』の発明ですね。

hamatsu氏:
 バトルロイヤル系のゲームって、プレイ時間に中に実際に交戦する時間って短いですよね。つまり、ライバルに出会わない時間、探索部分と言うんですかね、そこだけでも充分に面白いってことですよね。「あ、とりあえずあの家に行っとけ」、「おー、いいものがあったぞ」みたいな(笑)。

岩崎氏:
 それはあるね。

hamatsu氏:
 『フォートナイト』だと資材の木をひたすら配置したりなど、それだけで「やっている感」があるというか、充実感があるわけです。

島国氏:
 ああいう資源集めや探索は、MOBAなどを通して積み重ねられてきた文法の上に積み上げられているものですね。

TAITAI:
 昔でいう『カウンターストライク』などの対戦ものに比べ、『PUBG』や『フォートナイト』って交戦するまでのその時間、言ってみれば「余白」の行動がことさら重要に機能しているんでしょうね。初めて入った人や初心者がなんとなく5分程度は遊べてしまう感じを上手く演出していると思いますね。

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(画像はSteam:Counter-Strike: Global Offensiveより)

岩崎氏:
 端的に言うと「すぐに死なない」ってことだね。

──皆さんの言う「プレイヤーは勝つのが好きな以上に、死ぬのと負けるのが大嫌い」に繋がりますね。

hamatsu氏:
 『フォートナイト』はもともとバトルロイヤル系ではなく、co-op(協力)ゲームだったんですよね。そんなに評価も高くなかった。そこでゲーム性を根本から変えて「やっちゃったかな」と思ったら……

TAITAI:
 ところがまさかの大ヒットですからね。

hamatsu氏:
 ええ。co-opゲーとして作られているから、クラフト部分のUIが「みんなよくやっているな」と思うぐらい、けっこう複雑で(笑)。

島国氏:
 画面の作りはけっこう雑ですよね(笑)。

hamatsu氏:
 だから洗練の余地もまだあるわけで、バトルロイヤル系はまだまだ可能性あるんだろうと思います。

岩崎氏:
 『フォートナイト』が出たときにco-opゲームでいちばん注目されたのは、課金モデルだったんですよ。

──どういうものですか?

岩崎氏:
 ルートボックスがちょうど世界的に問題になり始めてたときに、「『フォートナイト』はそういうことをしませんよ。この課金でいけますよ」というのを最初に売りにしていたんですよね。

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『フォートナイト』の課金システム、「バトルパス」
(画像はバトルパス シーズン7より)

 僕は「そんなのできるわけないだろ」と思っていたんですが、そうしたらバトルロイヤル系に変身した。すると『PUBG』のメリットだったところが全部『フォートナイト』に乗り、さらにビルドの部分が面白さの要素になっていった。……最初の『フォートナイト』は、みんな覚えていないだろうなあ。

島国氏:
 確かにバトルロイヤル系だったらアバターに意味が出ますね。

hamatsu氏:
 バトロワとビルドは相性がよかったですね。
 それにしてもいまだにゲーム業界って、一本のヒットでここまで状況が変わるんだなと思いました。Epic GamesはついにSteamっぽいことを始めましたからね。

TAITAI:
 そうそう。『フォートナイト』一本で一億ユーザーと言っていますからね。

hamatsu氏:
 いまはSteamユーザー全体より『フォートナイト』のアクティブプレイヤーのほうが多いとか。恐ろしい話だなと。

岩崎氏:
 そしてEpic GamesはSteamにお金を払う必要ないから、自分たちでやるぜ、と。

hamatsu氏:
 この『フォートナイト』のエモート(踊り)をワールドカップのドイツ代表がやっていたとか。
 『スプラトゥーン』もありましたが、バトルロイヤル系がこうして日本でけっこう流行ったことで、いままでブレイクしきれなかったシューターが、とうとう日本でもふつうにヒットタイトルになるようになったと思います。
 バトルロイヤル要素を入れた『コール オブ デューティ ブラックオプス 4』(2018年10月12日発売)も、ここ最近でいちばん売れましたよね。

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(画像はゲームソフト | コール オブ デューティ ブラックオプス 4 | プレイステーションより)

島国氏:
 その昔、こういうゲームを作っていたから、キーッとなりますね(笑)。ただ、どのタイミングにどういう人に向けてどれだけ弾を撃てるかという話で、狙い澄まして当てられるものでもないですね。
 逆に言うとそれだけの規模のお金をかけたタイトルって、日本ではあまりないので、ゲームを遊ぶ人たちは充実感を求めたら、そちらにいくだろうなと思います。

岩崎氏:
 昔にこういうゲームを思いついても、当時はリソースがなくて作れないからね。そこがコンピューターゲームの難しいところなので。

初心者や子どもにウケるものが変わっている

──『フォートナイト』は、とくに子どもへの広がりを感じます。

hamatsu氏:
 『フォートナイト』とか『マインクラフト』とか、『スプラトゥーン』かもしれませんが、子どもが遊ぶゲームがそういうものになっている。

岩崎氏:
 僕はプレイステーションVita版のときにSIE(ソニー・インタラクティブエンターテインメント)から「小学生がみんな『マイクラ』を本当にやっているんですよ。そのおかげでVitaが売れているんですよ!」って話を聞いて、ビックリしましたね。

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プレイステーションVita版『マインクラフト』
(画像はゲームソフト | Minecraft: PlayStation Vita Edition | プレイステーションより)

hamatsu氏:
 彼らが中心購買層になっていく10年後くらいには、メインストリームの売れ筋って相当変わっていくんだろうと思います。

TAITAI:
 変わるでしょうね。

島国氏:
 そのうち、海外ゲームの○ボタンと×ボタンが逆転している状態を、みんな気にしなくなるかもしれませんね。

TAITAI:
 2017年のプレイステーションアワードで、100万本売ったタイトルが『ドラゴンクエストXI』などだった。その上にダブルミリオンみたいなのがあると言われたとき、みんな「いったい何?」とざわついていたんですが、それは『マイクラ』で、「ああ納得」みたいな空気に。

hamatsu氏:
 確かいろいろなDL版も合わせて国内で300万本くらい到達しているはずです。間違いなくビッグタイトルなんですよね。Nintendo Switch版ももうすぐ50万本いきますし。

島国氏:
 それでだいたいの潜在的なユーザーをさらったと思ったら、『ドラゴンクエスト ビルダーズ』がまだまださらって驚きました。
 一昨日発売の『ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島』ってどなたか手を着けています?(2018年12月20日発売)

一同:
 いえまだです。

島国氏:
 僕もまだですが家族がハマっているのを横から見ていると、テキストの「堀井雄二っぽさ」がよくできているんです。堀井さんは直接関係してないと思うんですが、監修がしっかりしてるんだと思います。

hamatsu氏:
 しっかりとした継承が着々となされているんですかね。

島国氏:
 『ドラクエ』がそもそも『ウィザードリィ』などの海外ゲームを日本向けに翻案したものですよね。同様に『トルネコの冒険』が ローグライクを日本向けにするのに成功したじゃないですか。
 『ビルダーズ』も同じパターンで、『Minecraft』をいかに簡単にして持ってくるか。毎回こんな感じで成功しているのを見るとすごく羨ましくて。私が腐心していたFPSやTPSを『スプラトゥーン』が一瞬にして成功してですね……本当に任天堂さんには敵わないと。

hamatsu氏:
 『Minecraft』は日本でもずっと売れてますよね。そこのジャンルがまだまだ掘れたんですね。

おいしいところを最初にやらせるのがいまのチュートリアル

TAITAI:
 先ほどのhamatsuさんの話に繋がりますが、いわゆるライトユーザーや初心者向けのゲームを考えたとき、いままでは「チュートリアルが丁寧なもの」だとか「絵がポップなもの」などをイメージしていましたが、実際にいまどきの小学生が遊んでいるのは『フォートナイト』だったり『マインクラフト』だし、下手をしたら『Dead by Daylight』の可能性だってあるわけで。それは何だかんだと言って、ゲームの入り口としての動画や実況が強いということですよね。

※女優・本田翼による『Dead by Daylight』実況動画。

 チュートリアルやマニュアルはまったく見ないけど、動画を観ているうちになんとなくルールを理解して、「僕も」と始めると、なんとなくできてしまう。ゲームへの入りかたや、初心者や低学年が遊ぶもののイメージがだいぶ変わってきている感じがしますね。

岩崎氏:
 チュートリアルは作りかたそのものが変わっています。
 とくにモバイルはそうでしたが、2014年ぐらいまでは「3分間でゲームのコアとなるループをすべて回して、そこでゲームの全貌を教えなさい」という話でした。そこを越えると「1分ごとに1%ぐらいの人が抜ける」というような継続率のデータがあったんですね。僕が以前いた海外メーカーのルールでは、「とにかく3分くらいで回せ」というのが鉄則だった。

 ところがゲームは複雑化するもの。モバイルのゲームがやたら複雑化したのはとくに日本なんですが、売り物を増やしてゲームを長持ちさせるために、コンテンツ量が一気に増え、複雑化した。
 その結果、3分で回せなくなったわけです。

 その転換が起きたのは2015~2016年くらいで、そのとき日本のゲームが導き出した答えというのが、いちばんおいしいところだけを最初の2分で遊ばせることでした。残りはホーム画面に行ってもらい、ミッションという名前の、エサで釣ったチュートリアルがいっぱい置かれていて、これを進めると、当面必要になるものがひととおり揃うんです。
 なおかつゲームの中身がわかってもらえる。「これを3日くらいかけて延々とやってもらう」というシステムがいちばん有効だというのがいまのところの答え。つまり「丁寧なチュートリアル」という考えかた自体が、もうすでに古いんですね。

TAITAI:
 そうですね。いまや丁寧なチュートリアルがあるだけでレガシー感がありますからね。世界でもそれはそうなんでしょうか。

岩崎氏:
 海外のゲームというのはいまだに僕がいた往時の流れの上にいるのに、日本ほどひどくはないけども、ゲーム自体はそれなりに複雑化しているんですよ。その結果、チュートリアルだけで15分かかるものなどがある。

──15分は長いですね……。

島国氏:
 アジアはそのあたりに気付いていて、中国・韓国はチュートリアルを短くして、先ほどの話のとおり、ミッションでいろいろ覚えてもらうようになっています。

岩崎氏:
 あれは日本のコピーをしているからそうなっている。いちばん最初にやったのは、たぶん日本。おそらく2015年で『アイドルマスター シンデレラガールズ』あたり。そのころ自分が関わっていたゲームもチュートリアルが10分以上になりそうで、みんなで頭を抱えていたんだよね。

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(画像は‎「アイドルマスター シンデレラガールズ」をApp Storeでより

島国氏:
 私も同時期に同じようなことで頭を抱えていましたね。「離脱率が多いのは説明がないからだ」と言われたけど、説明を試しに入れてみても、結局のところ率は変わらなくて。すでに説明のあるなしは離脱率に関係なくなってきていた。おいしいところを触らせるかどうかだったんです。

hamatsu氏:
 『BotW』も『スパイダーマン』もおいしいところをすぐにやらせてくれますからね。

島国氏:
 ただ、『BotW』も『スパイダーマン』も、最初はしばらくプレイが切れるまでけっこう進むんですよ。それはコンシューマーのタイトルだから、「そんな早々に辞めるわけがない」という強みがあるから。それにしても面白い画面と操作があるので続けてもらえるんですけどね(笑)。

岩崎氏:
 うん。もうチュートリアルが長いのは流行りじゃない。

なぜ日本のゲームは詫び石を配るのか

島国氏:
 それ以外でも、そもそもいまソーシャルゲームで合成のしかたを説明し始めたら、その瞬間にみんな離れていきます。いまさら合成はしたくないと思っているので。なんだかんだで似たようなことはするんですが、プレイヤーの皆さんがどんどんそうした仕組みに慣れ、以前通用した技が使えなくなってきています。ただ同じ技がずっと通用するよりは健全でいいと思いますけどね。

岩崎氏:
 いまでもずっと通用する技って言うと……困ったときに石(ガチャに使用するアイテム)を撒く!

一同:
 (苦笑)。

島国氏:
 あれはわりと日本の文化ですよね。海外はもともとひとりあたりの課金額がぜんぜん高くないので、石を撒くとさらに課金額が減ってしまう。

──海外は不具合が発生したときにはどういうスタンスなんですか?

島国氏:
 とくに何もしませんね。だから『ポケモンGO』を見ていると海外っぽさを感じますよね。

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岩崎氏:
 あえてやるなら非課金のアイテムを配っている。課金で買うことはできるけれど、非課金のアイテムをあげる。そういうハイブリッドな選択をとっているわかりやすいゲームを日本で言うなら、『アズールレーン』がそれです。メンテナンスが終わった後にくれるものは、燃料とゲームマネーであって、石(課金通貨)ではない。

島国氏:
 『アズールレーン』はプレイヤーは多いんだけど課金率が低いので、一度でも課金通貨を配ってしまうと誰もお金を使わなくなるんでしょうね。ああいう商売をしているところは配りませんね。

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岩崎氏:
 解りやすく言うと、日本はARPU(Average Revenue Per User=ひとりあたりの平均課金額)が3000円程度ないと、ランキングでベスト数十位に入れないんですよ。
 ARPUが3000円ということは、LTV(Life Time Value≒プレイヤーの生涯課金額)が3000円と等しいか、もっと高くなるわけで。LTVがCPI(Cost Performance Install=プレイヤーひとりがゲームをインストールするまでに、いくらの宣伝費や開発費がかかっているを表す指数)よりも高ければそのゲームは儲けていることになるので、日本ではCPIが2000円というメチャクチャな高さの数字になることが許されるんですね。

 そうすると広告をとにかく出して人を集め、集まった人にお金を払ってもらうという形になる。結果、人が流出するのがいちばん怖くなるので、課金しない人たちにも石を配っておいしい思いをしてもらい、そのうちにコラボやイベントで課金をしてくれる人が現れるのを待つ。それによって維持されているんですよね。

──基本的に母数がないと成立しない?

岩崎氏:
 数がないとではないですね。

島国氏:
 アメリカなどは人が多くて数セントという小額課金をする人も多いので成り立つんですが、日本にはそういう文化がないので、払う人は払う、払わない人は払わない。つまり課金をする可能性のある人をどれだけ呼んでこられるかですね。

岩崎氏:
 だから日本で商売するのと海外で商売するのでは、課金モデルの構造がまったく変わるんですよ。海外のゲームは基本的に日本で宣伝できない。海外の人は「日本の市場も解っている」と言うけど、現実的にはさっぱりわかっていませんね。両方をたまたま見てきたからその違いを強く感じます。別物です。

島国氏:
 逆も然りなので、何とも言えませんけどね(笑)。こんなに個人課金率が高い国はほかにないので、別物にならざるを得ませんね。

──そんなに稀有ですか。

島国氏:
 海外ではこんなにガチャにつぎ込みません。同じようなタイトルが中国で当たったことはあるので、ある程度似たような心理はあるにせよ、数字を見るとぜんぜん違いますね。

日本はキャラじゃないと売れない

hamatsu氏:
 そういう違いはキャラクターにもありますよね。キャラに対する執着というか、需要というか。

島国氏:
 かつて小池一夫さんがキャラクター理論として言ったようなことですよね。

岩崎氏:
 解りやすく言えば、日本ではキャラクター以外は売れないんです。

──鳥嶋和彦さんも、よくキャラクターの重要性を説かれています。

島国氏:
 武器課金のゲームも、武その器にキャラクターイラストを付け始めましたしね。キャラが付いていれば、売れる可能性が上がる。性能やパラメーターにお金を払う時代はもう終わっている感じです。みんなキャラにお金をかけています。

岩崎氏:
 プレイヤーはキャラにお金を払うし、作り手はキャラでお金を稼ぐ。
 これは『チェインクロニクル』の発明ですが、日本のモバイルゲームは、ガチャで出てくるキャラクターにストーリーが付いているという作りかたをします。当初は「これで運営が回るのか?」と思っていたんですが、回せた。

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『チェインクロニクル』
(画像は『チェインクロニクル』 CM(15秒)編 – YouTubeより)

島国氏:
 格闘ゲームが大ヒットしたとき、ゲーム性もそうですが、キャラクターに情報を乗せることに成功したんですよね。春麗だ、リュウだケンだというキャラクターたちで、「このキャラクターはかわいい」、「カッコいい」、「ドラマがある」というような見せかたに成功したわけです。

 なぜこれができたかというと、まずキャラクターが大きいからしぐさなどの情報もあったから。そこにナコルルが現れ、筋肉質でない女性キャラの土壌もできたし、プレイしないゲームファンも現れた。
 そういうキャラクターの強さが、結果としていま『Fate/Grand Order』(以下、『FGO』)が大成功しているように、ゲームをしない人にまでリーチしたわけです。キャラクターはそのくらい強い。

岩崎氏:
 日本ではゲームの構造そのものが、キャラクターを売るためのメカニクスに変わっている。

島国氏:
 キャラクターの話をガーッと見せて、「さよなら」なんて離脱した後に、「いまならガチャでこの人が手に入るよ!」という超進化ですよね。シナリオからシステムまで、キャラを売ることに特化している。

hamatsu氏:
 スーパーセルの『Brawl Stars』(以下、『ブロスタ』。2018年12月12日サービス開始)というゲームはやりました?

岩崎氏:
 やってますやってます。

hamatsu氏:
 スーパーセルのゲームは、その点、キャラクターとゲーム性のどちらもありますよね。

岩崎氏:
 スーパーセルのいちばんの発明は、日本ほどARPUは上がらないけど、海外でもちゃんと数字を出すライトなガチャのモデルを作ったことなんですよね。
 『クラッシュロワイヤル』は当初「これARPUが低いよな」と思いながらプレイしてたんですが、でもそのうちに「海外だとこれくらいじゃないと回らないんだろうな」と思いましたね。いろいろなケースを見ていると、あの課金システムに収斂しつつあるので。

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クラッシュ・ロワイヤル
(画像は「紹介動画」クラッシュ・ロワイヤルってどんなゲーム? – YouTubeより)

島国氏:
 ワールドワイドで戦うにはあれがいちばん手堅いなとは思いますけど、日本型に慣れていると『クラロワ』タイプってあんまり売上が跳ねないんですよ。短期的に見るとあからさまに日本型のモデルで計算して売上予測のシートを書いたほうが会社の上のほうが喜びます。「こんなに儲かるの?」と言い出す(笑)。

岩崎氏:
 楽しそうな話になってきたぞ!

hamatsu氏:
 そうなんですか。ゲームとしてみると、『クラロワ』はよくできていますよね。スーパーセルというだけで、とりあえずダウンロードするくらいには。『ブロスタ』もちょこちょこ遊んでいますが、これもまあよくできています。

岩崎氏:
 僕はスーパーセルのゲームに対抗してみたくてしょうがないんです。というのも『クラロワ』に至っても、ゲームデザインの問題を抱えたままなので。

──どういう問題でしょう?

岩崎氏:
 普通にゲームを作るときに起こるんだけど、「相手として出てきたユニットを見てプレイヤーが対応する」仕組みだと、相手よりもリソースを効率よく消費できるので、基本的に「待ち」のほうがゲームが有利になる構造が生まれるという問題です。この問題が『クラロワ』はとくに大きく、「攻めるゲームを作る」とスーパーセルは言っていますが、現実には「待つほうが有利なゲーム」になってしまっている。

 それから日本市場のもうひとつの特殊性として、基本的に同じタイプのゲームがふたつ生き延びれないということが挙げられるから、そこも生き延びられないかと。

──確かにどのジャンルも一強のようなイメージがありますね。

岩崎氏:
 それは日本のゲームは構造上、プレイヤーがひとつのゲームに大量の資産を持ってしまうので、同じ種類のゲームだとやる必要がなくなっちゃうからなんだよね。

島国氏:
 ああでも何かのときに計算したんですが、ベストワンのゲームでは勝者になれない人が、「注ぎ込まれている額がぜんぜん違うのでセカンドゲームでは勝者になれる」と何割かそちらに流れるんですよ。そうすると同じようなゲームでも3本目くらいまではギリギリ細々と生き残るみたいなことになります。

岩崎氏:
 「日本のモバイルゲーマーって、7本程度のゲームをインストールして遊んでいる」という数字があって。僕が持っているアプリケーションの解析データなので、非常に精度としては高い。

島国氏:
 7本はデイリーアクティブじゃないですよね?

岩崎氏:
 いや、7本起動させています。

島国氏:
 えー!

岩崎氏:
 ただし、7本の中の回遊率はもちろん違います。毎日起動するもの、毎日起動するけどログインボーナスしか取らないもの、というようにグラデーションがもちろんある。その7本の中に、基本的に同じゲームが入らないという傾向がはっきりあるんですよね。

島国氏:
 以前僕が大きめのプラットフォームの数字を見たときは、だいたい毎日起動している数字で「ひとりあたり3~4本で大きいくらい」と聞いていたので、7本とはすごいですね。

岩崎氏:
 4.X本はライトなユーザーに限った数字がそうかな?

 動いているお金を考えると、実質的にはランキング上のほうにいるゲームのひとり勝ちですよ。たとえば「『パズル&ドラゴンズ』(以下、『パズドラ』)が大ヒットしたからコピーを作ったけど討ち死にした」なんて話はよくあるけど、『パズドラ』っぽいものなら『パズドラ』があればいいじゃんとなるわけで。

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『パズル&ドラゴンズ』
(画像はパズル&ドラゴンズ – Google Play のアプリより)

 そういう傾向があると僕は思っているので、日本は市場として難しい。ところが海外の売り上げランキングを見ると、ARPUが低いものが入っているんです。たとえばビンゴゲームがベスト100位内に4本くらいあったりするんですよ。しかも立ち上げるとまったく区別がつかないくらい変わらない(笑)。

島国氏:
 あー、アメリカのビンゴ好きは何なんでしょうね。ビンゴに当たると脳汁が出るからダウンロードしようという層が一定数いる気がするんですよ。

岩崎氏:
 しかもみんな、その似たようなビンゴゲームを何本も遊ぶんですよ。本当に。

TAITAI:
 ビンゴゲーム? ビンゴ以外の部分で何かがゲームになっているんですか?

島国氏:
 とくになっていない。何が面白いんだろう?

hamatsu氏:
 (笑)。

岩崎氏:
 ビンゴのシートが表示されているところにボールが転がってきて……シートを眺めているだけなんですよ。ランキングには、いわゆるマッチ3系もKingの『キャンディー』シリーズが2本程度と、Playrixの『Homescapes』『Gardenscapes』と両方あって、さらに……と下手したら5~6本あったりします。日本だとそうではない。

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島国氏:
 日本では『チェインクロニクル』が当たって、「これからはシナリオだ」といった瞬間に、そういうものがブワーッと横に広がって増えて片っ端からコケてほとんど生き残らなかった焼け跡から、それはそれは長いシナリオなのに『FGO』が当たり、「やっぱり長さがいるんだね」と勘違いをしている人が業界にいっぱいおり、いま地獄の様相を呈しています(笑)。

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『Fate/Grand Order』
(画像はFate/Grand Order – Google Play のアプリより)

TAITAI:
 そこは一巡していないんですね。

島国氏:
 そうなんですよね。どう考えても一巡しているんですが。

岩崎氏:
 みんな物語が好きなので、シナリオはやっぱり強いよ。シナリオを売るということ自体は正しいんだけど、シナリオだけじゃなく、シナリオに付いているキャラクターがいて、このふたつを組み合わせて売る。キャラクターを置く世界があり、世界の上にキャラクターを置き、その上にシナリオがある、という構造だから。これらがとにかくまとまっていないと日本では売れません。

島国氏:
 それ全部を込みにして設計できる人がどれだけいるのかとか、良し悪しを判断できる人がどれだけいるかとかが判らないから、なんとなくライターに投げてみて、なんとなくな結果になって、みんなで「ぐぬぬ」となりやすいんです。
 『FGO』ってシナリオが本当によくできているから、勝てないじゃないですか。課金のところまでわかっている人がシナリオを書いてるから、なかなか勝負になりませんよ。

半裸の女の子が活躍しないと

TAITAI:
 キャラクターで言うと、10年ほど前のものですが、『人はなぜ形のないものを買うのか』という本は読みました?

なぜ『ゴッド・オブ・ウォー』がゲームアワードを獲得したのか? めんどくさい開発者たちによる2018年のゲーム(いまさら)総ざらい座談会【岩崎啓眞・島国大和・hamatsu・TAITAI】_054
(画像は人はなぜ形のないものを買うのか | 野島 美保 |本 | 通販 | Amazonより)

岩崎氏:
 読みましたよ。なぜ買うのかに関しては、形があろうとなかろうと、その人にとって「それに価値がある」と確信させてくれるものにお金を払っているんですよ。
 そして、ゲームで形のないものにお金を払わせるときにいちばん威力があるものは……やっぱり絵。それもエッチな女の子の絵がいちばん威力がある(笑)。

島国氏:
 そうなんですよね。半裸の女の子の絵が付いてくれば、いかつい武器だって売れる。言うとみんながイヤな顔をするので、あまり言われませんが。

岩崎氏:
 ゲームを作るとき、とくに若い子が「ゲームが面白ければ売れる」と言うと、僕は超否定するんです。ゲームが面白くなければ長くは続けてくれないけど、ゲームが最初に売れるためにはフックのある商品が必要なんです。スマホの世界なら、簡単に言うと半裸の女の子だったり、『ONE PIECE』や『ドラゴンボール』や『Fate』のようなIPだったり。

 「そういうフックを作らずに売ろうとすると、基本的には売れなくなりますよ」ということをよく言っています。「ゲームの価値」というのは極論すると、「後からわかる価値」なんですよね。
 ついでに言うと、すごく面白いゲームでも、半裸の女の子が活躍しないとダメ。

島国氏:
 みんなキャラを通してゲームを見ているんですよね。

岩崎氏:
 そう。自分のフックがかかった半裸の女の子……半裸はともかく、フックのかかったキャラが活躍するシーンを見たい。これってまさに小池先生が言っていることで。

──半裸の子の活躍をですか?

島国氏:
 「小池先生が例として出すシナリオの出だしは、「夜の銀座を全裸の美女が走っている……」というものだ」という話がありますが、それはデマで、先生は「キャラ起てに困ったら走らせてみろ」と仰っています。キャラが動けば心が動くと。

岩崎氏:
 いわく、人はゲームのキャラクターを見に来ているんであって、お話というのはキャラクターが活躍する場所なんだと。だからいちばん最初にちゃんとしたキャラクターを作らなくちゃいけない、と。

島国氏:
 継続率を考えるとどれだけゲーム性が大事かは解っているけど、それだけじゃ売れない。もうひとつ言うと、バナー広告などでかわいい半裸の女性をバンバン出すといっぱいクリックされますが、来た人が「タダで半裸が見れないじゃん」といって帰ってしまう。ゲームになかなか居着かないんです。
 もっとダメなのは、オッサンばっかりの広告。まったくクリックされなくて始末書モノだったという話はいくつか聞きます(笑)。

一同:
 (笑)。

TAITAI:
 ゲームの話じゃないけど、先日、電ファミで佐藤辰男さんと鳥嶋和彦さんにライトノベルの話をしていただいたんですが、やっぱりコンテンツのフックとなる最初のトリガーは性的なものという話でした。

【佐藤辰男×鳥嶋和彦対談】いかにしてKADOKAWAはいまの姿になったか──ライトノベルの定義は「思春期の少年少女がみずから手に取る、彼らの言葉で書かれたいちばん面白いと思えるもの」【「ゲームの企画書」特別編】

 「そこを押さえないとダメ」というような話をしていて。そこを高尚ぶって外そうとしたり、紛らわせるとリーチしない。読者が「手に取りたい」と思うものは、ストレートにそういうエッチなものだったり、親や学校が隠すものという話でした。

島国氏:
 『ニーア オートマタ』(2017年2月23日発売)の売り上げの何割が、2Bのおかげか。アメリカであれがなぜあんなに売れたかって、お尻しかないじゃないですか。日本だとみんな胸にいくんだけど、海外で売ろうとすればお尻だと。開発チームは、よく解ってらっしゃる。

なぜ『ゴッド・オブ・ウォー』がゲームアワードを獲得したのか? めんどくさい開発者たちによる2018年のゲーム(いまさら)総ざらい座談会【岩崎啓眞・島国大和・hamatsu・TAITAI】_055
『ニーア オートマタ』
(画像はヨルハ二号B型 | CHARACTER | NieR:Automataより)

VTuberの強みは接点の多さ

──キャラクターで言うと、ゲームではありませんが、2018年に大ブレイクしたバーチャルYouTuber(以下、VTuber)はどう受け止められましたか?

VTuberはなぜ増え、どう駆け抜けたのか? 当事者たちが振り返る2018年【のじゃロリおじさん×にゃるら対談】

hamatsu氏:
 なんとなく外側から見てる程度ですが、やっぱ日本ってキャラクターが強いんだなと思います。本当に。

島国氏:
 VTuberって黎明期はともかく、いまって本当にデザインから声からモーションからバラバラに担当している集合体じゃないですか。ですので、そうやって権利や機能をどんどんひとりで持てないものになっていくと思うんですよね。

TAITAI:
 キャラクターが商売の主軸だと、「じゃあそのキャラクターにどうやって愛着を持ってもらうのか」とか、「どう人気を作るのか」という話になる。VTuberもYouTuberもそうですが、見ていて僕が思うのはアイドルの話なんです。

──TAITAIさんのアイドル論。聞かせてください。

TAITAI:
 その昔、歌って踊ってかわいいアイドル、80年代ならたとえば松田聖子などがいて、そういう「能力や特性があるから人気になるんだよね」という世界だったところから、90年代になってバラドルのようなものが現れた。

 そういう人たちが音楽番組に出演するのでなく、とにかくテレビに出る頻度が高いから「親近感が湧く」という感じで売れていく。それが加速して、いまのYouTuberやVTuberは、日常的にファンとの接点が多くて人気となっている。

島国氏:
 「同じところに生きている」ってやつですよね。

TAITAI:
 そうそう。そのひとつの形がいまのVTuberで、VTuberがいまの形そのままかであり続けるかは判らないけど、「よりファンに近いところに降りてくるのがキャラクタービジネスだ」というような流れは、きっと止まらないだろうと思っています。HIKAKINが芸能人よりも人気だったりする層があるわけで。

岩崎氏:
 やっぱり接点の多さでしょうね。

島国氏:
 恋愛だって接点が一定量を超えると成就率が上がるという話が。

岩崎氏:
 ゲームだって、「スマートフォンのゲームが主役になってる理由は何ですか」と問われたら、それは生活の中でいちばん接点が多いからで。

島国氏:
 スマホゲームは「接点の多さ」と「短時間で遊べる」という点が本当に強かった。その「短時間」を「長期間遊ばせる」という構造が死ぬほど強かったせいで、ほかが勝つ方法がないんですよ。1回が2時間を必要とするようなコンシューマのゲームがスマホゲームに勝てる術ってひとつもない。
 「壺の中に岩と砂をどれだけ入れられるか」というたとえ話がありますが、最初にスマホという砂で埋めてしまうと、あとからコンシューマーの岩など入らないわけで。

TAITAI:
 それこそガラケーのときは、ゲームってよく「隙間で遊ぶもの」みたいなことをしきりに言われてましたが。

岩崎氏:
 いまや電車に乗ったら、立ち上げるものですよ。

島国氏:
 『スカイリム』とかすごく好きだったんですけど、ケータイゲームのように隙間を見つけて遊ぼうとすると、「ここはどこ?」から始まるので。『RDR2』なんてセーブしたところとちょっと違うところから始まる。もう、地形に弱いからツラいです(笑)。

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