Microsoftが開発し、日本では今年1月に出荷が始まったMRゴーグル「HoloLens」。半透明のヘッドマウントディスプレイを装着すれば、現実世界の上に3Dの仮想オブジェクトを重ねて表示することができる。VRともARとも違う新たなコンセプトのデバイスだ。
Microsoftが本気出して作ったお値段33万円のHMDをさっそく購入してみた【HoloLens体験レビュー】
そんなHoloLensを80台集めて同時に接続して、同じ景色を見てみたら……?
東京・渋谷にて2月2日に開かれたイベント「Tokyo HoloLens Meetup vol.1」では、そんな野望を現実にするべく、HoloLensをかけた複数の人が同じ仮想空間を共有する「シェアリング機能」の大実験が行われた。80台という数が集まるのは世界最大規模という。
お値段33万円のHoloLensがこれだけ集まるというだけで壮観なこのイベント。一体どのような体験が楽しめるのだろうか。
文・写真/透明ランナー
HoloLensにはOSとしてWindows10が搭載されており、空間上にWebブラウザを置いたりゲームを楽しんだりすることができる。
今回のイベントの目的は、その仮想世界を何台ものHoloLensで共有できるかの実証実験だ。
サーバーを立ててネットワーク経由でつながり、空間を共有する「シェアリング機能」。この機能を使えば、同じ場所に集まった人たちが、同じ仮想オブジェクトをさまざまな角度から同時に眺められるようになる。
手のひらに乗せたキャラクターを一緒に愛でたり、空中に浮かべたプレゼン資料を共有したり、さまざまな使い方の可能性が広がる。
企画者のひとり、HoloLens好きが高じて1月に専門会社「ホロラボ」を設立したCEOの中村薫氏がイベントの趣旨を説明する。
「質問のために手を挙げているのか、エアタップ(空中で人差し指を立ててまっすぐ下に倒す動作)しているのか分からない」という中村氏の「HoloLensジョーク」に、会場は大爆笑だった。
さっそく実験開始だ。通常のネットワークでは負荷が大きいため、今回は最大500人が同時接続可能なWi-Fiを特別に用意して実験が行われた。
基準となるHoloLensを1台用意し、そこに他のHoloLensを接続していく。
シェアリングに成功したHoloLensユーザーからは、以下のような景色が見えている。
仮想空間を飛び回るCGキャラクターに向けて、エアタップで弾を撃ちあうシューティングゲームだ。
HoloLens みんなで同じホロをシェアリング。。
— ぺけぺけ (@pekenishi) 2017年2月2日
未来だ!!#HoloLens#HoloLensJP#TMCN pic.twitter.com/j9tSTO2AXR
ハンズオン ホログラム共有(Sharing Holograms) で 80人対戦を試み。Holographic Academy にあるサンプルで多人数対戦できる。質の高さと開発への敷居の低さに驚き https://t.co/Nlh0DrvlA1 #TMCN #HoloLensJP pic.twitter.com/M90MJwJsbw
— HoloLensDevJP (@HoloLensDevJP) 2017年2月2日
結果として約40台が同時接続に成功した。参加者は「もうヤバイってもんじゃない」「買ってよかった」「これが未来」と、とにかく興奮した様子。
「現実の廃墟で複数人で謎を解く脱出ゲームを作りたい」、「もう少し視野角が広がれば最高のサバゲーができる」と、本格的なゲーム制作に意欲を見せる人もいた。
筆者も体験したが、まさに近未来感あふれる光景が目の前に広がっていた。すぐ横にいる人も同じ場所に同じキャラクターを見ているのだと思うとワクワクしてくる。HoloLensは一台でも十分魅力的だが、大人数で同じ空間を共有する使い方も楽しい。
また「自分以外にHoloLensを持っている人と初めて会った」という参加者も多く、初対面の人ともすぐに意気投合していたのが印象的だった。最先端の世界をいち早く体験したくて33万円を払ったユーザーたち。同じものを愛する彼らの仲間意識を強く感じた。
近年映画のスクリーンに向かって観客が声援を送りながら鑑賞する「応援上映」が広がりを見せている。音楽ライブ・コンサートの動員数も好調だ。同じ場所にいる人と同じものを見ながら盛り上がる空間は楽しい。そのような「場」の持つ価値が高まっているように感じる。
今回のイベントでも、参加者から「脱出ゲーム」や「サバゲー」といったリアルに集まって楽しむゲームが挙げられたのも象徴的だ。
それこそが一人で仮想空間に没入するVRデバイスとの最大の違いと言えるだろう。VRゲームの課題の一つとして、自分が体験しているゲーム内の光景を簡単にシェアできないということがしばしば挙げられる。HoloLensはそういった欲求を解決するヒントとなるかもしれない。
ただ課題も見つかった。今回は同時接続に成功したのは半分の約40台。人が多すぎて現実空間のマッピングがずれたり、情報が混雑して同期が遅れたりするという問題が起こった。このあたりは今後のアップデートを楽しみにしたい。
Microsoftによれば、日本での予約開始直後の予約件数は西欧など6カ国の合計の3倍だったという。ただ、HoloLensを触ったことのある人はまだごく一部だろう。
より多くの人がこの体験を共有するためには、33万円という価格がもう少しお求めやすい値段になることを期待したい。2019年には後継機が出るという噂もあり、今後の普及が楽しみになってくる。
電ファミでは、HoloLensゲームの中で現時点で最もクオリティが高いといわれる探索推理ゲーム「Fragments」のレビューや、「HoloLens1週間かけ続けてみた体験記」など、さまざまな企画を近くお届けする予定だ。 HoloLensが開く未来がどんなものになるのか、引き続き注目していきたい。