『Lies of P』は、試行錯誤を経て強敵を打ち破る達成感を重視した、いわゆるソウルライクゲームである。また、童話で有名な「ピノキオ」を、とことんダークに再解釈し、凄惨さをマシマシにした独特な世界観も大きな特徴だ。
2023年9月の発売後は著名なゲームアワードを多数受賞し、累計プレイヤー数も700万人(※2024年3月時点)を突破している。ソウルライクゲームの始祖であるフロム・ソフトウェア謹製のタイトル以外では、このジャンル内でかなりの存在感を発揮しているだろう。
そんなLies of Pにとって初となるダウンロードコンテンツ(DLC)の『Lies of P: Overture』(以下、Overture)が、2025年夏にリリース予定だ。
”序曲”の意味を持つこのDLCでは、Lies of P本編の前日譚となる物語が繰り広げられる。
Lies of Pの舞台となる都市のクラットは、機械人形の技術により発展し、そして、その機械人形の反乱によって凄惨な世界と変わり果てたいきさつがある。
今回のOvertureでは、機械人形が反乱するきっかけとなったとされる、「人形暴走事件」(Puppet Frenzy)が勃発する直前に主人公がタイムスリップし、これまで明かされなかった真相へと迫っていくのだ。
今回電ファミは、Lies of Pの開発作業を行う韓国NEOWIZ社を訪問し、このOvertureを一足お先に体験してみた。
ディレクターを務めるチェ・ジウォン氏へ行ったインタビューと合わせてお届けしよう。
取材・文/kawasaki
初のDLC『Lies of P: Overture』は遠距離武器の使い分けがキモ
今回の取材は、取材陣が一切の予備知識を与えられないなか、1時間のフリープレイを行うというものであった。
ゲーム開始時に主人公が降り立っていたのは雪原のエリアだ。
Lies of P本編は、薄暗い屋内エリアが大部分を占めていただけに、まばゆく輝く白銀の世界がとても美しく感じる。本編ではそこらじゅうにいる機械人形とも遭遇せず(主人公を除く)、同じクラットでもだいぶ違った印象だ。
雪原という設定は、出現モンスターの能力にも影響を与えている。
とくに厄介なのが、多くのモンスターが周囲にいる相手に冷気ダメージを与え、これが蓄積されると「氷結」のデバフ状態となること。氷結状態になるとHPや攻撃速度、移動速度が最長で20秒以上も減少し続けてしまい、まともに食らうと致命傷になりかねない、
「氷結防止アンプル」という消費アイテムを使うことで氷結状態を解除できるが、これも有限なので、闇雲に接近戦を行うのは得策ではなさそうだ。
そこで大いに役立つのが、Overtureで追加された遠距離攻撃用の武器である。
これを使って、敵に感知されないギリギリの距離から先制攻撃を行うことで、冷気ダメージを喰らうことなく、相手のHPをかなり削れる。徒歩で接近するのと比べて、複数のモンスターと同時に渡り合うリスクも減らせるし、良いことずくめだ。
遠距離用の攻撃手段としては、メインウェポンの「弓」「火炎放射器」や、散弾銃ライクなリージョンアーム(※左腕に仕込んだ特殊武器)の「カタクリズム」などが確認できた。また、遠距離武器だけだと敵に接近されると分が悪いが、もう1種類装備できるメインウェポンに近接用武器を選ぶことで、適宜持ち替えて臨機応変に対処しやすい。
弓矢による先制攻撃で蜂の巣にして、複数の敵に絡まれたらカタクリズムをブッ放し、懐に入りこまれたら大剣でトドメを刺す。まるでベルセルクのガッツのようなプレイスタイルが実に痛快だ。
檻から飛び出た凶暴な動物が我が物顔で闊歩
雪原をしばらく進むと、クラット動物園なるエリアに到達した。
この動物園が、今回の取材で体験してもらいたいメインコンテンツだそうだ。
エリアに立ち入ると、明らかに様子がおかしい。
我々が”動物園”と聞いて思い描くような、大勢の人たちが行き交う賑やかな光景はどこにもない。生身の人間は一人としておらず、そこらじゅうに死体が散乱し、檻から抜け出した凶暴な動物が我が物顔で闊歩しているのだ。たまに遭遇する人間も、皆ゾンビという有様である。
そういったなか、かつて園内に流れていたであろう、楽しげなBGMだけが同じように鳴り響いている。Lies of Pはこういった、不穏さや危うさを感じさせられる演出も高く評価されているが、Overtureでもたっぷりと楽しめそうである。
主人公の案内役であるジミニーが語るところによると、Lies of P本編の時代では、クラット動物園はすでに焼失しているという。そのことから、主人公はスターゲイザー(※不思議な能力を持つ拠点)によって、本編よりも前の時代にタイムスリップさせられたのではないかと推察していた。
また、クラット動物園に大雪が降った日に、”重大な出来事”が起こったとも述べていた。これまでの道中を振り返っても分かるとおり、それは主人公がタイムスリップした、まさしくこの日なのである。
一本道ではないフィールドエリアの探索も楽しめる
Lies of P本編は、比較的小さめのエリアで構成された”チャプター”を順に攻略し、それぞれで待ち受ける強敵とのバトルがフィーチャーされたゲーム展開である。
そのてん、今回プレイしたクラット動物園は、ひとつのエリアがかなり広い。オープンワールドというほどではないが、1時間のフリープレイでは全貌を把握できないくらいであった。
隠しアイテムを探すような楽しみもあるし、屋外の比率が大きいことや、上述した遠距離攻撃武器の存在も相まって、本編とはだいぶ違ったプレイフィールだ。
もちろん、道中には拠点ポイントのスターゲイザーがあるし、一度到達することで次回以降はショートカットができる扉なども随所に用意されている。Overtureでは、Lies of Pらしさを保ちつつも、探索要素もたっぷりと楽しめそうだ。
このクラット動物園を探索してもうひとつ気になったのは、生息しているのが普通の動物ではないこと。ゴリラ、像、ワニ、マンモス等の動物をモチーフとしているものの、よく見ると頭部を中心に巨大かつ異様な腫瘍が生じているのだ。
主人公がクラット動物園に最初に立ち入ったとき、「死の傀儡子 マルキオナ」という人物からのウェルカムメッセージを受けた。これらの惨状はマルキオナの仕業なのだろうか……?