無性に“ドロップキック”を放ちたくなる時がある。
それも、思い切り助走をつけた全力のやつだ。
不定期に訪れる破壊衝動を私に植え付けたのは『ダイイングライト』というゾンビゲーだ。
日本では2015年に発売された本作は、謎のウィルスによってゾンビだらけの終末世界となったオープンワールドを舞台に、“パルクール”を駆使して町や自然を縦横無尽に駆け巡るアクションゲームだ。
建物をよじ登り、ゾンビを避けながら高所をジャンプで移動するパルクールアクションは爽快で、中でもゾンビの群れに向かって思い切り“ドロップキック”を放って粉砕するのが最高に気持ちいい。そういうゲーム。
え、「ドロップキックでゾンビが死ぬわけない」って? いいや死ぬんだ。ホンモノのドロップキックならな。アンタはまだ、ホンモノのドロップキックを見たことがねえのさ。
そんな『ダイイングライト』だが、8月に最新作『Dying Light: The Beast(ダイイングライト:ザ・ビースト)』が発売される。
本作では、初代『ダイイングライト』主人公のカイル・クレインが再登場。
彼は、13年間の地獄のような実験に耐え抜いた後に脱走して、かつて観光地であった「カストールウッズ」へと訪れる。ゾンビの楽園と化している「カストールウッズ」にはわずかだが生存者が生き延びており、クリーチャーたちの脅威に晒されていた。
カイルは実験によって「半分獣・半分人間」という特殊な体質になっており、暴走しかけていたところを「カスト-ルウッズ」で出会った女性オリビアに出会い、命を救われる。
彼女は、敵の研究所から放たれた「キメラ」を倒し、血液を採取することで様態を安定化させ、能力を強化できることをカイルに伝える。
カイルは研究所に復讐するため、そして生き延びるためにキメラを倒し続ける鬼と化す。
今回は、7月に上海で行われた『ダイイングライト:ザ・ビースト』の体験会に参加して実際にプレイしてきたので、その内容を皆さんにお届けしたいと思う。
あらかじめ言っておこう。このゲームのドロップキックは、やっぱり最高だった。
ドロップキック健在!存分にゾンビを吹っ飛ばす!ただし……

くらええぇぇぇぇ!!!!!!
本作におけるドロップキックは、生き延びるための生命線とも言える重要なスキルだ。
(※あくまで個人的な見解です)
それは、本作の主人公カイル・クレインの「スタミナ」に関連している。
その場でのキックや鈍器を用いた近接攻撃、ジャンプといった基本的なアクションは、大抵「スタミナゲージ」を消費するのだ。
例えば、ゾンビが3体現れたとしよう。
自分のスタミナを切らさずにゾンビを倒す最も有効な方法は、後ずさりしながら一定の距離を保ちつつ攻撃を続けることだ。
しかし、ここは地の果て、ゾンピ・パラダイス。時には周囲がゾンビだらけになって逃げ場がない、なんてのはよくある話だ。ぶあつい肉壁の如くゾンビの大群が押し寄せてきた時など、一点集中で突破したいシーンがこのゲームには何度もある。
そういった終末世界のあるあるのお悩みを解決してくれるのがドロップキックだ。こいつはキマるぜ。
ドロップキックは命中したすべてのゾンビを凄まじい勢いで吹き飛ばし、壁などにぶち当てて倒す、崖から突き落とす、体勢を崩してしばらく動けなくする、といった副次効果が多数存在している。
ちなみに、ドロップキックで吹き飛ばされて壁に衝突したゾンビはバラバラに砕け散る(本当)。

絶え間なく襲いかかってくるゾンビたちをドロップキックで吹っ飛ばすことで危険は去り、「じりじりとにじりよってくる脅威」というストレスから解放される。
まるでドロップキックは、健全な肉体と精神を保つために必須の行いと教えてくれているようだ。
(※個人的な見解です)
そんなドロップキックだが、ゾンビを倒す・サブクエストをクリアするといった行為で経験値を獲得し、レベルアップすることで入手できるスキルポイントで解放できる。
ただし、注意してほしいのはドロップキックは決して無敵の必殺技ではない、ということだ。
これはひとつの失敗談なのだが、プレイテストに夢中になってドロップキックを放ちまくっていた筆者が、フィールド上でゾンビに襲われて助けを求めている人間の生存者を発見した時のことだ。
ときおり現れる生存者は、助けると弾薬など貴重な物資を分けてくれるため、率先して助けたいところ。
さっそく「今助けるぞ!このドロップキックで!」と勢いよくゾンビに向かって飛び込んだ。

ゾンビ「ヴァアアアアアアアアア」
生存者「うわぁあぁぁぁぁあぁ(´;ω;`)」
お察しのとおり、ドロップキックはきちんとNPCにも命中する仕様なため、筆者はゾンビと救助対象をまるごとドロップキックで葬り去ってしまったのだ。
「ううぅ~~~、うう~~~」とうめき声をあげながら息絶える救助対象。爆発四散(サヨナラ)。
すまん……すまん……味方にも当たっちゃうだなんて思わなくて……
という訳で、ドロップキックは間違っても救出対象に向かって放たないようにしてください。悲しい気持ちになります。
ドロップキックならすべて解決できると思っていた
すべてはドロップキックで解決できるはず……
そう確信を持っていた筆者だが、「その考えは甘かったのだ」と痛感するのにあまり時間はかからなかった。
本作は町や森林、湿地帯、洞窟、峡谷などさまざまなロケーションをパルクールしながら駆けまわることができるのだが、夜中になるとゾンビより危険度の高い個体「ビースト(ヴォラタイル)」が徘徊するようになる。
ヴォラタイルはUVライト……つまり太陽光に非常に弱く、昼間は暗闇に姿を隠しているのだが、夜になると活発に動き出し、カイルを見つけると「チェイス」を開始。執拗に追いかけてくるようになる。
そのスピードはゾンビとは比較にならないほどに素早く、追いつかれて囲まれると一瞬でお陀仏という状況にもなりかねない。ドロップキックを放つ暇もないのだ。
このチェイス状態を解除するためには物陰に隠れてやり過ごすか、セーフゾーンに隠れる必要がある。
運悪くヴォラタイルに発見されてしまった筆者は、そこらじゅうに落ちているアイテムを使って火炎瓶をクラフトし隠し持っていたため、それを使ってなんとか逃亡に成功した。
なお、夜の視界が悪い時は「サバイバーセンス」というスキルを使うと、周囲の素材や敵のシルエットが色付きで見られるようになる。ヴォラタイルは‟赤いシルエット”で壁越しにでも目視できるようになるので、率先して使ったほうが良いだろう。
スキルや武器が揃っていない序盤では「いったん夜は動かない方がいいかも」と考えた私は、ベッドで時間を朝にしてから行動を開始するようにしている。
敵はゾンビだけではなく……人間も
「カストールウッズ」に蔓延る脅威はゾンビやヴォラタイルだけではない。
そう……他人の物資を狙って襲撃してくる人間(生存者)も存在するのだ。
筆者はこのゲームで合計3体のボス敵(キメラ)やゾンビどもと戦ってきたが、一番厄介なのがこの生存者だと感じた。
なぜならこいつら……めっちゃ攻撃を避けてくるからだ。
伝家の宝刀ドロップキックは非常に強力な技で、命中さえすれば敵を一網打尽にできる威力を誇るが……いざそれを避けられてしまうと、ただその場にジャンプして横たわるだけの自爆行為と化してしまう。
生存者の行うアクションは、おもに集団での連携攻撃、残像が見えるほど素早い緊急回避、こちらの近接攻撃のガードなどの3通り。ゾンビならともかく、人間にドロップキックを当てるのは難しい。となると、筆者のとる行動はひとつだ。
大きな音を立ててゾンビに襲わせよう。
ひたすら後ろに下がりつつガードし、敵を背後からゾンビに襲わせてサンドイッチ状態にする。そうやって体力を消耗させて倒す。……そんなの卑怯だ、と思うだろうか?
喰う者と、喰われる者……そして、そのおこぼれを狙う者。
牙を持たぬ者は生きてゆかれぬ暴力の町。あらゆる悪徳が武装する観光地。
ここは感染症から始まった地獄「カストールウッズ」
カイルの躰に染みついた血糊の臭いに惹かれて、危険な奴らが集まってくる。
かつての観光地としての一面は見る影もなく、そこにあるのは裏切りと略奪、そして踊る腐乱死体たち。
次ページもカイルと地獄に付き合ってもらう。