『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』以来、約8年ぶりとなるシリーズのメインライン最新作『トゥームレイダー:レガシー・オブ・アトランティス』(以下、レガシー・オブ・アトランティス)が、2027年2月13日に発売となる。
折しも、今年2026年はシリーズ30周年の年でもある。本作は1996年に発表された初代『トゥームレイダー』をもとにしており、時系列的には若き日のララ・クロフトを描いた「サバイバートリロジー」とも呼ばれるリブート版3部作の続編にもあたるタイトルだ。
そうした経緯もあり、本作は単なるリメイクとも言い切れない。率直にその感想をぶつけてみると、開発者からもリメイクとは考えていないという答えが返ってくる。
彼らが目指しているのは、「リイマジン」(Reimagining:再解釈、再構築)。リメイクというオリジナルの土台の上で踊るのではなく、その土台そのものをいったん疑い、再度その意図を考え直す。
「現在の技術が1996年にあれば、当時の開発者たちは何をやったのか?」その問いを出発点に、本作は徹底してきちんと納得できる世界観を作ることを目指している。同時に、オリジナル版の特徴的な要素を、地に足の着いた形で取り込むという意欲も見せている。
今回電ファミでは、ロサンゼルスで開催されていた「Summer Game Fest Play Days」会場にて、本作の開発を手掛けるFlying Wild HogのアートディレクターであるArek Tomaszewski氏、Crystal Dynamicsのエクスペリエンスディレクター・Jeff Adams氏、そしてゲームディレクター・Raul Siqueira氏ら3名にお話を伺ってきた。

なお、「Summer Game Fest Play Days」では本作の先行プレイも実施。レポートを掲載しているので、興味のある方はこちらもぜひご確認いただきたい。
■1996年の初代『トゥームレイダー』が意図したものを、現代の技術で再び問い直す。だから目指すのは「リメイク」ではなく「リイマジニング」
──今日、実際にデモ版に触れてみて、この作品は明らかに単なる「リメイク」と呼ぶべきではないなと感じました。また別の表現が必要だと思うのですが、みなさんは本作について、どのような姿勢で開発に向き合っているのでしょうか?
Raul Siqueira氏(以下、Raul氏):
実は私たちもほぼ同じことを考えていて、以前「リイマジン」という言葉で本作を説明した動画を公開しています。
ゲームによっていろいろな呼び方があるのは承知ですが、私たちはリメイクとは「以前から存在していた土台の上に、現代の技術でアップデートを施すもの」だと思います。
ですが、本作ではそれよりさらに一歩先へ進めたいというのが、ごく早い段階からの私たちの意思でした。テクスチャやモデルをアップデートするだけではなく、ゲームの「本来の意図」について深く考えたかったのです。
私たちはよく「もし1996年の開発者たちが、今日私たちが持っているすべてのツールを持っていたら、彼らはこれをどう作るだろうか?」と自問します。それこそが私たちにとって、開発におけるある種の理念になっています。
だから、「リイマジン」こそが、私たちが気に入っている言葉ですね。なぜならそれは、ゲームの中のなにかひとつの構成要素だけにとどまらず、ゲームプレイやストーリーなど、あらゆる側面に及ぶからです。
──本作が現代の技術によって『トゥームレイダー』をリイマジンしたのだとすると、それを成立させた最大の技術的要因は何だとお考えですか?
Arek Tomaszewski氏(以下、Arek氏):
私たちはUnreal Engine 5(以下、UE5)を使っていて、それは大いに役立っています。ですが3Dスキャン、キャラクターや衣服のスキャンなど、その他の現代の技術も使うことで、リアルなキャラクターや衣装の造形が可能になっています。
ですが私たちにとっては、どんな技術を使うかよりも「一緒に働く仲間の情熱とスキル」のほうがより重要です。
確かに技術は進歩し、私たちはオリジナル版が作られた当時とはまったく異なる時代にいます。それでも私たちがやりたいと思っているのは、1996年に人々が抱いたのと同じ感情を呼び起こし、さらに当時以上のものを作るということです。
つまるところ、私たちはただ手元にあるもので最善を尽くしているだけですが、幸いなことに、UE5やプログラマー、両スタジオ(Flying Wild HogとCrystal Dynamics)の熟練した大勢のスタッフたちに助けられています。
Jeff Adams氏(以下、Jeff氏):
付け加えると、確かにUE5は非常に堅牢な開発ソリューションではありますが、私たちのチームはいまなおカスタムツールの開発にも多大な労力を注いでいます。というのも、本当に『トゥームレイダー』らしい体験を作るために、いくつかどうしてもこだわりたいポイントがあるからです。
そしてこのプラットフォームは、今後さらに良い体験を作り続けられるよう、必要なツールに投資できる、とても良い場も提供してくれています。
『トゥームレイダー』の核は、探索、世界観、戦闘、そしてパズル
──『トゥームレイダー』をリイマジンするにあたって、みなさんが本作の「核」だと考えた要素は何でしょうか?
Jeff氏:
「探索」「没入感のある世界構築」「めまぐるしい戦闘」──この3つの見事なバランスなしには、トゥームレイダーは成り立たないと思います。主人公のララ・クロフトは本質的に、これまで誰も行ったことのない未踏の地へ向かう冒険者です。だから彼女は、何が起こっても対処できなくてはいけません。
ゲーム中には静まり返った瞬間があり、それがやがて発見の興奮へ移り、そして突然クマが現れて飛びかかってくる──。プレイヤーに、いま自分が厳しい自然の中に一人きりでいるのだとリアルに感じさせてくれるんですね。
Raul氏:
それからパズルもですよね。パズルがないと駄目です(笑)。
Jeff氏:
そうだパズルだ! もちろんです! 忘れてました(笑)。
──前回のメインラインの『トゥームレイダー』から8年ほど経っています。このタイトルで初めてシリーズに触れるプレイヤーも多いと思いますが、彼らにどんな体験を届けたいとお考えでしょうか?
Raul氏:
たくさんのことがあります。『レガシー・オブ・アトランティス』は、長年のファンにとっても、本作が初めての方にとっても、本当に素晴らしい出発点になると感じています。「いっさい下調べしなくてもすべて楽しんでもらえる」ことをめざしていますから、このゲームを理解するために、他のゲームをプレイする必要はありません。
一方で、ララの30年間をずっと私たちと共に歩んでくれた長年のファンなら、ファン向けのイースターエッグや隠し要素を必ず見つけられると思います。
私たちはこのシリーズに非常に情熱を持っていて、『トゥームレイダー』の「開発者」である前に「ファン」でもあります。だから、このゲームには細かな気配りと愛情を注いでいますよ。
今作のララ・クロフトは、過去作を経てさらにパワフルに。同じキャラだけど、過去に縛られているわけではない
──ララ・クロフトというキャラは、単なるゲームの登場キャラという枠をはるかに超えた、世界的なビデオゲームのアイコンのひとつだと思います。本作ではまた少し雰囲気が変わったように見えましたが、デザイン上ではどんなことが考慮されたのでしょうか?
Jeff氏:
「基本に立ち返る」というのがひとつのテーマだったと思います。
ポップカルチャーの主要なキャラクターたちと肩を並べられるようなアイコニックなデザインは、最初の冒険が「ララ・クロフト」の名を世に知らしめたことで生まれました。だから、彼女の最初の冒険をリイマジンするにあたっては、そのデザインをしっかりと引き継いで最高のものにしなければいけません。
チームは、オリジナルのデザインを受け継ぎつつ、すべての衣装を確かな説得力で作り込み、かつそれを現代へと持ち込むという素晴らしい仕事をしてくれました。
そこにララ役のAlix Wilton Reganの演技が加われば、思わず一緒に時間を過ごしたくなるような、完璧に形作られたひとりの人間としてのキャラクターが画面上に現れます。
──これまでのシリーズを通じて、ララはいくつも異なる側面を見せてくれました。本作では、彼女をどのように描いているのでしょうか?
Jeff氏:
本作の彼女は、リブート版の「サバイバー トリロジー」【※】の時系列から来ています。2013年の1作目から『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』までのシリーズと、同じララなんですね。ただ、それらの出来事は彼女のキャラクターを形作ってはいますが、「この瞬間におけるララ」を規定するものではありません。
いまの彼女は、すでに次のステップに進んでいます。トゥームレイダーとしての人生を大いに楽しんでいて、実力としても全盛期です。ですが、ここがまさに、私たちの物語のスタート地点でもあるのです。
※サバイバー トリロジー
Crystal Dynamicsが開発した『トゥームレイダー』シリーズのリブートタイトルで、初代より以前の出来事を描く。2013年『トゥームレイダー』、2015年『ライズ オブ ザ トゥームレイダー』、2018年『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』の3作。
ララの感情を引き出すのは、ほんのわずかな表情の揺らぎ。何千時間も苦心しながら、頬のささいな揺れまで表現
──実際のゲーム内で、ララの表情がとても感情豊かに描かれていると感じました。彼女の感情表現について、開発中にどんなことを考慮したのでしょうか?
Jeff氏:
ララのモデルは、キャラクターアーティストのKam Yuが制作しています。彼は『トゥームレイダー:レジェンド』以来、ほぼすべてのララを作ってきていますから、彼ほどララをよく知っている人間はいません。
Kamが素晴らしいのは、彼がいつも新鮮な目で新しいララに臨んでいるところです。「自分たちは何を必要としているのか?」「作っている体験とは何か?」「必要なストーリーとは?」「彼女の感情にはどのくらい幅があり、どこまで表に出すのか?」──彼はそうした問いを、自らの作業の指針となる「北極星」にしているのです。
チームは、「笑ったときに頬のえくぼがどう動くのか」といった細部にまで、何千時間も苦心して取り組んでいます。アニメーションチームが必要とするツールをすべて提供することで、Alixの演技がララのモデルにしっかりと表れるようにしているのです。
Arek氏:
付け加えると、私たちはAlixの演技をキャラクターの「モックアップ」として使っています。彼女は女優として演じ、その表情をキャプチャして取り込み、表情のアニメーションを作るときに、それを彼女の感情のベースとして使っています。Alixとララ双方から、できるだけ多くのキャラクター性を引き出そうとしています。
Raul氏:
もう1点お話すると、「彼女の人生における現時点のララ」を確実に捉えることが、私たちにとって重要だったのです。「サバイバー」の彼女はいまより若く、まだキャラクターとして成長の過程の中にいました。
ですがいまの彼女は「サバイバー」のときよりも成熟し、実力的にも全盛期です。その表情も以前よりも少しニュアンスに富んだものになっています。
Alixがこれを見事にやってのけてくれているのですが、頬やまぶたがほんのわずかに揺れ動くなど、そうした小さなところに、本当に深みが宿っています。ですから私たちは、その結果にとても満足しています。




