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『Outbound(アウトバウンド)』真逆な“コージー”と“サバイバル”の融合は、ユートピアを描いた「ヨーグルトのCM」から生まれた【開発者インタビュー】

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「コージーサバイバル」というゲームジャンルをご存じだろうか。

「コージー」とは、居心地のよさ、くつろぎを指す言葉だ。ゲームにおいては時間制限やペナルティといったストレス要素を取り払い、まったりとした空気の中で暮らせるような作品群を指す。近年、ジワジワと人気を広げているジャンルだ。

いっぽうの「サバイバル」は、資源をやりくりしながら、きびしい環境を生き延びていくジャンルだ。空腹や外敵といった脅威と隣り合わせで、緊張感にこそおもしろさが凝縮されている。コージーとは、まさに対極にある遊びといえる。

くつろぎと、生き抜くこと。一見すると水と油のような組み合わせだが、この相反する2つをまとめあげた作品がある。

それが『Outbound(アウトバウンド)』であり、本作が打ち出すジャンルこそ「コージーサバイバル」なのだ。

『アウトバウンド』は、テクノロジーと自然が調和した近未来のユートピアを舞台に、「動く拠点」であるキャンピングカーとともに旅をするゲーム。敵のいない穏やかな世界で、自給自足の生活を送るやさしいゲーム性が特徴だ。

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そんなキャンピングカーのカスタマイズは膨大で、なんとルーフを延々と増築できる。クルマの上に住居を載せられる、という表現が正しいだろう。

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この自由度の高さから、本作のクルマは魔改造キャンピングカーと評されることもある。なお、積みに積んだ増築部分は、未来の技術により一瞬で折りたたんですぐに走り出すことが可能だ。

本作は発売前から、世界的に高い注目を集めていた。

2025年8月にドイツで開催された世界最大級のゲーム見本市「gamescom」では、Unityが主催するコミュニティ投票の賞「CommUnity Choice Award」を受賞。

さらに、クラウドファンディングでは目標の3万ユーロに対し26万5679ユーロが集まり、2026年2月には世界でもっともウィッシュリストの多いゲームのランキングで19位に入った。

これだけの期待を背負った作品を、開発陣はどんな考えで作り上げたのか。

そして電ファミはこの度、本作を手がけたSquare Glade Gamesのトビアス・シュナッケンベルク氏にメールインタビューをする機会に恵まれた。「コージーサバイバル」という相反する要素を融合させた理由や、いかなる着想で本作が生まれたのかをお届けする。

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右:トビアス・シュナッケンベルク氏。

取材・文/世界のザキヤマ


「居心地のよいサバイバル」という発想はどこから生まれたのか

──まずは、トビアス様の『アウトバウンド』における役職を教えてください。

トビアス・シュナッケンベルク氏(以下、トビアス氏):
私はSquare Glade Gamesの共同創設者を務めています。『アウトバウンド』では、ビジュアルディレクション、ゲームデザイン、プログラミング、そして作品全体のクリエイティブディレクションなど、さまざまな分野に携わっています。私たちは小規模なインディーチームなので、全員が複数の役割を兼任しており、私自身も開発のほとんどの部分に関わっています。

──本作の見どころを教えていただけますでしょうか。

トビアス氏:
『アウトバウンド』最大の見どころは、プレイヤーに与えられる自由度と、「完全に移動可能な拠点」というユニークなコンセプトだと思います。ひとつの場所に拠点を築くのではなく、家そのものがプレイヤーとともに移動し、探索と拠点作りが一体化しています。

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また、建築やカスタマイズ、成長要素を通じてプレイヤーの創造性を重視しつつ、全体としてはリラックスして遊べる、プレッシャーの少ない体験になるよう意識しています。

──そんな本作は、ゆったりくつろぐ「コージー」な心地よさと、資源を集めて生き抜く「サバイバル」の性質をあわせ持っています。この2つは相反するものに思えますし、両者を1つにした作品もほとんどありません。「コージーサバイバル」というジャンルは、どのような着想から生まれたのでしょうか。

トビアス氏:
私たちは以前から、サバイバルゲームのクリエイティブな側面、とくに建築やカスタマイズ、少しずつ拠点を拡張していく要素を愛していました。いっぽうで、多くのサバイバルゲームは空腹や戦闘、過酷な環境といったプレッシャーに大きく依存しているとも感じていました。

『アウトバウンド』では、そうしたジャンル特有の満足感ある成長や創造性は残しつつ、もっとリラックスしてストレスなく遊べる体験を目指しました。その「意味ある成長」と「穏やかで居心地のよい雰囲気」のバランスこそが、「居心地のよいサバイバルゲーム」という発想につながったのです。

「ヨーグルトのCM」が見せた「持続可能な世界」が着想のひとつに

──サバイバルというジャンルは、敵や脅威に対処しながら生き延びる緊張感が遊びの軸になっていると思います。しかし本作には敵がいません。これは穏やかな世界を優先したかったからか、それともゲームデザイン面からいないほうがよいと判断したかなど、理由をお聞かせください。

トビアス氏:
開発当初から、『アウトバウンド』には穏やかで落ち着いた雰囲気を持たせたいと考えていました。そのため、敵や強いプレッシャー要素は作品に合わないと感じていました。もし導入していたら、ゲームの印象は大きく変わっていたでしょう。

その代わりに、探索、資源収集、建築、カスタマイズといったサバイバルの創造的な側面に焦点を当てました。これらのシステムだけでも十分に達成感ある成長を提供でき、なおかつプレイヤーはサバイバルゲーム特有のストレスを感じることなく、自分のペースで世界を楽しめると考えています。

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──「gamescom」での受賞時に、「探索とクラフトのループはプレイヤーにとって馴染み深い」「しかし『アウトバウンド』はコージーな部分が新しい」と仰っています。その「馴染み深い」とされた探索・クラフトの部分は、どのような作品に代表されると考えていらっしゃいますか。また「リラックス」という点は、ゲームに限らず、どのようなものから着想を得たのでしょうか。

トビアス氏:
『アウトバウンド』に非常によく似たゲームを挙げるのは難しいです。なぜなら、複数のアイデアをめずらしい形で組み合わせているからです。探索・資源収集・クラフトのループについては、『Raft』【※】『Valheim』【※】から大きな影響を受けています。どちらも探索による成長を魅力的に感じさせる作品です。

※『Raft』:
スウェーデンのRedbeet Interactiveが開発した海洋サバイバルゲーム。プレイヤーは海に浮かぶ小さなイカダを、漂流物を集めて拡張していく。最大の脅威はサメで、プレイヤーだけでなくイカダにも襲いかかってくる。2018年にSteamで早期アクセスが始まり、2022年に正式リリースされた。

※『Valheim』:
スウェーデンのIron Gate ABが開発したサバイバルゲーム。北欧神話とバイキング文化をモチーフにした広大な世界を舞台に、探索とクラフトを楽しめる。2021年のSteamの早期アクセスから爆発的なヒットを記録し、2025年には1200万本以上を売り上げた。

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ただし、『アウトバウンド』はもっとリラックスした、プレッシャーの少ない体験になっています。一般的なサバイバルゲームに多いストレス要素を意図的に削り、建築やカスタマイズ、自由な探索に重点を置きました。

テーマや雰囲気については、ゲーム以外からも影響を受けています。とくに印象に残っているのが、持続可能な生活と自然との共生を描いたヨーグルトのCMでした。明るく楽観的な未来像が描かれており、その希望に満ちたユートピア的な世界観に強く共感しました。それは『アウトバウンド』のアイデンティティの重要な一部になっています。

根底にあったのはキャンピングカーで旅をするロマンだった

──コージーとサバイバルを両立させるにあたり、一箇所に拠点を構える形も想定できます。しかし本作の拠点は、移動可能なキャンピングカーのルーフに、さらに住居を拡張していく形です。最初から移動できる乗り物ありきで企画が始まったからか、それともべつのアイデアから派生したなど経緯を教えてください。

トビアス氏:
私たちは長い時間をかけて、プレイヤーがどんな体験を求めているのかを調査してきました。その中で、多くの人がオープンワールドゲームにおける「移動式拠点」というアイデアを好んでいることに気づきました。

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同時に、私と共同開発者のMarcは昔から、キャンピングカーで旅をするというロマンに惹かれていました。現実では必ずしも実用的とは言えませんが、その幻想には特別な魅力があります。こうしたアイデアを組み合わせた結果、『アウトバウンド』という作品の基盤が形作られました。それは、「テクノロジーと自然が調和した未来」を舞台に、自分だけの移動式ホームとともに世界を旅する自由を描いたゲームです。

──改造できるキャンピングカーはもちろん、コージーとサバイバルという稀有な組み合わせにも、大きな注目が集まり、配信前から大きな話題となりました。そんな独自色の強い『アウトバウンド』の世界は、どのように発展していくのでしょうか。アップデートで検討している要素や、今後の構想を教えてください。

トビアス氏:
今後もたくさんの計画があり、今年のロードマップには、最近追加された釣り要素があります。釣った魚を装飾用の水槽に入れることができます。また、撮影や記録が可能な新しい野生動物、さらに住民NPCを追加する大規模アップデートも予定しています。

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プレイヤーは町の人々と出会い、さまざまな依頼を手伝えるようになります。その先には、新マップや新地域の追加といった大型コンテンツも実現したいと思っています。最終的には、リリース後の展開はコミュニティの声や、プレイヤーが何を望んでいるかによって決まっていくでしょう。

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──それでは最後に、読者へのメッセージをお願いします。

トビアス氏:
開発中、そしてリリース後もコミュニティから寄せられたサポートやフィードバックには本当に感謝しています。皆さんがこの旅に出る日を楽しみにしています!


くつろぐこと、生き抜くこと。相反するはずの2つを、トビアス氏はごく自然な言葉で語っていた。愛していた建築やクラフトの楽しさは残し、ストレスになる部分だけをそっと外す。言葉にすればシンプルだが、この引き算の匙加減こそが、いちばん難しいところだろう。

サバイバルというジャンルは、これまで空腹や戦闘、過酷な環境をプレイヤーの原動力にしてきた。脅威があるからこそ、人は前へ進む。その定石をあえて手放したとき、ゲームは間延びしてもおかしくない。

それでも『アウトバウンド』が成立しているのは、探索して資源を集め、拠点を築くことにフォーカスした作りが、狙い通りに働いたからなのだろう。

インタビューで印象に残ったのは、その源泉のひとつが「ヨーグルトのCM」にあったという話だ。持続可能(サステナブル)な暮らしを描いた希望のある未来像。これはキャンピングカーにガソリンを使わず、自家発電で走らせる設計からも読み取れる。

キャンピングカーを思い通りに増築できる自由も、敵のいない穏やかな世界も、すべては「こんな暮らしがあったらいい」という願いから生まれたのかもしれない。『アウトバウンド』が提供する「旅」がここからどのように広がっていくのか、楽しみにしたい。

編集者
ロボット物とゲームBGM、ラーメンの食べ歩きが好き。中学で『アーマード・コア』に触れて以来のシリーズファン。無機質なBGMとブースター音の融合に精神的な安らぎを感じている。2014年よりゲームメディアにて、攻略やインタビュー、コラムなどを中心に活動。

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