2026年8月21日より、東京品川区・シアターHにて、「舞台『龍が如く』-神室町八犬伝-」が開幕した。
本作は、『龍が如く』の人気キャラクターたちを描く、舞台である。それも、シリーズ20周年を記念して実施された「キャラクター総選挙」で、49万票を超える投票から選ばれた上位10名が登場する、夢のオールスター作品だ。
ゲーム本編では決して実現しない組み合わせのキャラクターたちが一堂に会し、舞台だけのオリジナルストーリーを繰り広げる。
開幕に先駆けて行われた公開ゲネプロでは、原作を思わせる豪快なアクションはもちろん、時代を超えたキャラクター同士の掛け合い、そしてそれぞれの過去と内面に踏み込んだドラマが展開され、満足度の高い仕上がりになっていたと思える。
今回電ファミは、そんな舞台版のゲネプロ公演を取材した。本稿ではその感想を舞台写真とともにお届けしていく。
『龍が如く』を知らなくても面白いし、知っていればもっと刺さる。仁義と覚悟、そしてド迫力の殺陣(暴力)!
本作で描かれるのは、作中の人気キャラクター10名が活躍する、舞台だけのオリジナルストーリーだ。およそ2時間という尺の中に、『龍が如く』シリーズの魅力をたっぷりと凝縮したエンターテインメントに仕上がっていた。
キャラクターの再現度もさることながら、シリーズの時間軸を超えて彼らが掛け合う様子は、まさに「ファンの夢の具現化」と言えるだろう。驚いたのは、そんな「ファンのための作品」であるにもかかわらず、シリーズの名前くらいは知っているものの、ゲーム自体は未経験という人でも楽しめる部分がかなり大きかったことだ。
『龍が如く』と聞くと、どうしても極道やヤクザ、裏社会における組同士の抗争といったイメージが先行しやすい。そのため、「シリーズを知らないと楽しめないのでは?」と不安になる人もいるだろう。
だが、安心してほしい。舞台版のシナリオはかなり異色の設定となっており、超ディープなファンであっても絶対に見たことがない、誰もが新鮮な気持ちで楽しめる内容で構成されている。
簡単に紹介すると、悪霊「玉梓(たまずさ)」が作り出した1995年の「まやかしの神室町」を舞台に、「八犬士」に選ばれたキャラクターたちが、元の世界へ戻るために悪霊討伐へ挑むというもの。
もちろん、登場人物について簡単に調べておけば、より楽しめるのは間違いない。逆に、ほとんど何も知らない“ミリしら”状態で劇場に足を運んだとしても、「異世界に召喚された極道たちが己の弱さと向き合い、仁義と覚悟、そして暴力で歯向かう敵を蹴散らすエンタメ」として十分に楽しめる。そう断言できるぐらいには、物語がちゃんと面白い。
特に真島、冴島、堂島ら主要キャラクターについては、それぞれの過去や内面に迫る描写が舞台上で展開される。そうした場面が、「このキャラクターはこういう人物なのか」と知るための、ある種の自己紹介としても機能している。
舞台を見終えたあと、シリーズ初見の人ならゲーム第1作から手に取ってみようと思うかもしれない。あるいは、舞台を見てからゲームに触れることで、オリジナルストーリーの台詞や関係性に、新たな感情が湧いてくるはずだ。シリーズ経験者やファンとは、まったく異なる感想がでてくると思う。
『龍が如く』シリーズは、舞台上でのアクションがとりわけ映える題材でもある。原作キャラクターへのリスペクトを感じさせつつ生み出された、ダイナミックな殺陣も、本公演の大きな見どころとなっていた。
工事看板や自転車を豪快に振り回す桐生、どこかゲーム的なノリを感じさせる春日、そしてドスを手に狂気をにじませながら戦う真島――。それぞれのキャラクター性をそのまま身体表現へ落とし込んだような、激しいアクションが次々と展開されていく。
異なる時間軸のキャラクター同士が掛け合う場面も、本作ならではの魅力だ。一見何気ない会話でも、その人物の未来を知っている観客の胸中に複雑な思いがこみ上げてくる、そんな「受け手によって情報が変化する」場面作りは、まさにこういった作品ならではだろう。
ときにエモーショナルで、これまで抱いていたキャラクター像がさらに拡張されていくような、味わい深い会話劇にもなっていた。
筋トレにも余念なし? キャスト陣が語った舞台『龍が如く』の見どころ
ゲネプロに先駆けて行われた囲み取材には、桐生一馬役の宇野結也さん、真島吾朗役の菊池修司さん、錦山彰役の里中将道さん、冴島大河役の桜庭大翔さんが登壇。それぞれが本作に懸けた思いや、舞台ならではの見どころを語った。
宇野さんは、およそ10年ぶりとなる『龍が如く』の舞台化に参加することに「プレッシャーがあった」としつつも、稽古を重ねて作り上げてきた舞台の完成度には確かな手応えを感じている様子。
本来なら交わることのない10人のキャラクターが一堂に会する物語だからこそ、シリーズファンはもちろん、今回初めて『龍が如く』に触れる観客にも届く作品にすることを意識してきたという。
そんな宇野さんが個人的な見どころとして挙げたのは、約半年間にわたって続けてきたという筋力トレーニングの成果。
これに桜庭さんが「本当にステキな身体になっています」と太鼓判を押すと、今度は宇野さんは桜庭さんの恵まれた体格を引き合いに出し、その説得力に疑問を呈する一幕もあるなど、取材の現場は和やかな空気に包まれていた。
真島吾朗を演じる菊池さんは、シリーズ屈指の人気キャラクターを託されたからこそ、「真島吾朗の生き様をどう舞台上で表現するか」を考え続けてきたと語る。
また、本作にはゲームを原作とする舞台ならではの要素がふんだんに盛り込まれているとし、その再現にも注目してほしいとコメント。一方で、役者が目の前で芝居を繰り広げる“生の舞台”だからこそ、キャラクターの魂を背負った俳優たちの演技も楽しんでほしいと呼びかけた。
そして菊池さんもまた、個人的なイチオシとして筋トレの成果を挙げる。すると再び桜庭さんが食いつき、「真島の胸筋のカットの入り具合を見てほしい」と猛アピール。さらに、ゲネプロ前日の深夜にも2人でジムへ足を運んでいたことが明かされ、会場の笑いを誘った。
里中さんは、本作について、原作ファンはもちろん、『龍が如く』を知らない人でも等しく楽しめる「アツい作品」になっていると紹介。
一方、筋肉トークが止まらない桜庭さんに「良い身体してんだよなぁ」と反応すると、桜庭さんも「身体が出ても出なくても、良い身体してることをぜひ書いてください」と畳みかける。これには里中さんから「それは嘘やん(笑)!」と鋭いツッコミが飛び、4人の仲の良さを感じさせるやり取りとなった。
桜庭さんは、自身も『龍が如く』シリーズを遊んできたプレイヤーだからこそ、舞台だけの完全オリジナルストーリーや、稽古期間そのものが楽しかったと振り返る。また、アクションについても、各キャラクターの戦い方の違いをどう舞台上で表現するか、演出家とともに研究しながら作り上げていったという。
最後に宇野さんは、「原作に対するリスペクトを第一に、初めて見る方に『龍が如く』と舞台の楽しさを感じていただけたらいいなと思います。怪我なく千秋楽までお届けしますので、応援のほどよろしくお願いします」と挨拶。
シリーズ20周年だからこそ実現した、時代も作品も越えた10人の共演。その姿を生身の役者たちが全身全霊で表現した舞台は、ゲームを知る人には新たなキャラクターの魅力を、知らない人には『龍が如く』という世界への入口を与えてくれる、そんな一作になっていた。










