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『マインクラフト』で開催された音楽フェス「NETHER MEANT」のレポート。ヴァーチャル空間のライブは現実とどう向き合っていくのか

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 日本時間2020年4月7日午前7時、『マインクラフト』内で音楽フェス「NETHER MEANT」が主催団体「OpenPit」によって開催された。6時間に及ぶ仮想空間でのフェスは常に「密」の状態が続いていたが、誰もがそのことを気にせずプレイヤーはマインクラフトらしい特徴的なジャンプを続けて盛り上がった。

 この記事では「NETHER MEANT」をライブレポートとして紹介していく。

 「NETHER MEANT」はコロナウイルス対策のチャリティーイベントとして開催。『Minecraft Java Edition』さえ所有していれば、世界中から参加することができた。最終的にはTwitchでの視聴者数は9000人、収益は8000ドルを超えた大成功を収めている。

 フェスが開始して数十分は、サーバーに負担がかかりすぎて、多くのプレイヤーが「NETHER MEANT」に参加することができなかったが、迅速な対応により最終的には不安定ながらも、十分楽しめるような状態に落ち着いた。

 『マインクラフト』内で再現されたライブハウスのクオリティは非常に高く、当日参加したアーティスト「American Football」のアルバムのジャケットを再現したステージはもちろん、バーカウンターや物販エリアなども再現されており、ライブハウスとサンドボックスのチープさが絶妙にマッチしていた。

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 ところどころにファンアートが飾っており、ゲーム内であるからこそ簡単に実現する要素も盛り込まれいた。会場を歩いているだけでも楽しむことのできる設計は、ゲームならではの楽しみに近い感覚を思い出させる。

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 次は特に印象に残ったライブの様子を紹介していきたい。こちらのスクリーンショットは、防護服を着た私と会場に貼られていた出演者一覧だ。

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 もっとも今回の音楽フェスにおけるバーチャル空間で力を発揮したDJのひとりが「Drive45」だろう。彼は、インターネットで流行のミームを多用したDJセットを準備していた。

 ダンストラック の「We Like To Party! (The Vengabus) 」のビートに100Gecs」のラップ・ヴォーカルをのせた曲、名作FPS『Halo』のテーマとSum 41のポップ・パンクのマッシュアップ、memeで使われがちな「Hamster Dance」のサウンドの上にScatman Johnのジブリッシュ・ヴォーカルを乗せたりと、ゲームやインターネットの文化を盛りこんだDJセットは視聴者を存分に盛り込ませた。

 Drive45のDJセットはSoundCloudにアップロードされているので、ぜひ元ネタ探しをしながらでも楽しんでほしい。

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 イギリスを拠点に活動する「Iglooghost」「Kai Whiston」「BABii」からなる音楽集団であるGlooのセットも独創的であった。Whistonが45ARのキーキーなラップヴォーカルの歪んだリミックスでセットをスタートさせると、Iglooghostが異国語でのつぶやきラップを披露、最後はBABiiのコズミックな鍵盤とパーカッションに乗せたオペラのような歌でしめくくった。

 若手のエレクトロニカアーティストのインターネットに対する柔軟な発想を前面に押し出していくことによって、よりマインクラフト内でのフェスの経験が濃厚になっていく。

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(画像は#NetherMeant: April 11th, 5:30pm ESTより)

 このイベントのヘッドライナーである「American Football」はエモロックのバンドであり、ほかの出演者の中でも、特にいつもと違う環境でのライブとなった。バンドはリアルタイムの演奏ではなかったものの、この日のために録音した音源を流す仕様での出演となっている。

 「American Football」のキンセラは、ステージに上がると共に 「We’re so happy to be here, wherever ‘here’ is. … So this is the future, huh? Honestly, I thought there’d be more pixels.」(”ここ”がどこであろうと、私たちはここにいられることをとても幸せに思います。これが未来なんですね。もっと画素数があると思っていました。)というジョークを披露し、会場を沸かせた。

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(画像は#NetherMeant: April 11th, 5:30pm ESTより)

 はじめのうちは、いつもの音源と変わらない音が流れ続けるため参加者たちは不安に思っていたが、終盤に「NETHER MEANT」に「American Football」が参加したことの面白さが発揮される瞬間があった。

 「You may recognize it from your favorite memes.」(あなたの好きなミームなので聴き覚えがあるかもしれません。)という前説で流れた曲は、なんと『スーパーマリオ64』リミックスバージョンの『Never Meant』であったのだ。

 『Never Meant』は、「エモの国歌」とも呼ばれる「American Football」のもっとも有名な曲のうちのひとつで、「NETHER MEANT」というフェスの名前の由来となったものだ。『スーパーマリオ64』のほかにも、『どうぶつの森』とたけけリミックスや、『バンジョーとカズーイの大冒険』リミックスなども存在しており、アメリカで非常に有名なミームとなっている。

 柔軟なAmerican Footballの発想に多くのファンは驚き、その日最高の盛り上がりを見せた。ライブハウスに行けずにいる人々が、ライブハウスの「代わり」としてしょうがなくヴァーチャル空間でのライブを視聴するのではなく、このバーチャル空間の「ならでは」を楽しんでいくという、文化の新たな可能性の提示として象徴的となる瞬間となった。

 Open Pitは今後もさまざまなCOVID関連の慈善団体をサポートすることを目指して、さらにコンサートを計画していると述べている。100 GecsやCharli XCXがヘッドライナーとして出演するマインクラフト内音楽フェス「Square Garden」を発表したばかりだ。より注目度の高いアーティストを呼び、このイベント形式を拡大していくつもりだ。

 Twitchチャットコメントとゲーム内チャットの洪水を見ると、「NETHER MEANT」というイベントは非常に必要されていたものであるということに気が付く。実際のライブのように、身体が動かないことを気にする様子はあまり見られなかった。

 新しい音楽とゲームのあり方や、昨今の文化との向き合い方に、新たな考えが生まれる可能性の感じた今回の音楽フェス。今後も自粛が続いてしまうが、心を消耗することなく、娯楽を楽しんでいくことのできるコンテンツが増えていくことを願っている。

文/tnhr

ライター
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メイプルストーリーで人との関わり方を学び、ゲームのゲームらしさについて考えるようになる。主にRPG、アドベンチャーゲーム、アクションゲームの物語やシステムに興味のある学生。
Twitter:@zombie_haruchan

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