昨今、乙女ゲーム、育成ゲーム、BLゲームと、女の子向けのゲームがとても盛り上がっています。昨年11月3日〜4日に池袋サンシャインシティで開催された、女の子のため大型イベント「アニメイトガールズフェスティバル 2017」には2日間で合計8万6千人以上の女の子たちが参加しました。
乙女ゲームで彼と恋愛し、育成ゲームでは推しキャラを全力で応援、BLゲームで萌えを楽しむなど、ゲームは生きる喜びを与えてくれます。
さらに、キャラクターをイメージしたアクセサリーを作り、痛ネイル、キャラ祭壇などで好きなキャラに愛を捧げていきます。
その中に“自分の髪の毛をキャラ風にする”というものがあります。
“髪は女の命”と昔から言います。そう、髪の毛は女の子にとって気分を左右する重要なポイント。だからこそ、その大切な髪型でキャラクターへの愛情を表現するのです。
そこで、ブームの実態を探るべく秋葉原の美容室「fuwat」にお邪魔し、オーナーの平野アキ氏とカラーリストのHana氏を直撃。女の子たちの楽しんでいる様子をお伺いしました。
美容室「fuwat」は一般的なヘアサロンでありながらも、秋葉原という立地にマッチした、コスプレやドールウィッグのオーダーもこなす、スペシャルな美容室。事前情報によるとスタッフ全員、秋葉原が好きなアニメ・ゲームファンだとか。なんだか期待がもてそうです。さて、ブームの実態やいかに?
文/かなぺん
髪型で気分が変わる! “作品愛”を髪型で表現する女の子多発
──以前から、自宅で髪の毛をキャラ風にするヘアアレンジ方法が動画サイトで話題となり、最近は2016年8月に公開された映画『君の名は。』【※】のヒロイン、宮水三葉の髪型をマネする女の子が多くなりました。美容室でも“アニメのキャラ風”のオーダーはありますか?
平野アキ氏(以下、アキ氏):
当店は秋葉原にあるので、もともと「キャラ風の髪型にしたい」と言いやすい雰囲気があると思います。ですから、キャラ風のオーダーは多いですよ。ただ、美容室なので手軽なヘアアレンジではなく、しっかり変化できるヘアカラーのオーダーが多いです。
Hana氏:
“スタッフ全員がアニメやゲーム好き”というコンセプトを打ち出していて、そうした美容室はほかにあまり存在しないので、関東周辺だけでなく、北海道から福岡まで全国にお客様がいます。
──いつ頃から「アニメ風に」というオーダーがありましたか?
アキ氏:
当店のオープンが2010年10月10日。その頃は秋葉原に美容室は数店舗しかありませんでした。秋葉原という場所を活かしオリジナリティーを打ち出していたら、「キャラ風にしてくれるヘアサロンがある」、「ウィッグ作ってくれるよ」とSNSで拡散されていきましたね。キャラ風のオーダーはオープン当初からあった気がします。
Hana氏:
僕が店に所属したのは2016年です。月日が経つにつれ、お客様も増え、どんどんキャラクター風の依頼も増えていると実感していますね。
──どんなときにお客様はオーダーしますか?
アキ氏:
たとえば、水樹奈々【※1】さんのライブがあった日は、僕のお客様の7人中5人が、ライブ前の立ち寄りカットでした。
他にも諏訪部順一【※2】さんのファンの方はイベントをはしごされている合間に来店され、『うたの☆プリンスさまっ♪』の神宮寺レン【※3】のキャラカラーにあわせ、髪色を“レン様カラーのオレンジ”にしてから、次のイベントへ向かわれましたね。
※1水樹奈々
声優、歌手、女優、ナレーター、ラジオパーソナリティーなど幅広く活躍中。第60〜65回「NHK紅白歌合戦」に連続出場した。
※2 諏訪部順一
1972年生まれの声優。主な役は「テニスの王子様」跡部景吾、「黒子のバスケ」青峰大輝、『刀剣乱舞-ONLINE-』千子村正など。イケメンから敵キャラまで幅広い声色の魅力をもつ。
──イベントのハシゴの合間にカラーチェンジ! つまり、特別な日の装いという感覚でしょうか?
アキ氏:
当店はコスプレウィッグの製作もしていますが、こちらはコミケの直前やディズニー・ハロウィーンの頃がとても忙しくなります。ただ、キャラクター風の髪型は特にオーダーが集中する時期はありません。
Hana氏:
最近は日常生活でキャラ風の髪型を取り入れる方も多くいますから。コミケやイベントだからというよりも単純にオシャレの一環といった感じです。過去には『ポケットモンスター』のゲンガー【※】風にというオーダーがありましたよ。
──日常生活でゲンガー! もはや対象が人間ですらない……。
Hana氏:
あくまでコンセプトがゲンガーなんです。2次元のキャラクターの髪や形を実際の毛で再現するには限界がありますから。キャラカラーをヘアカラーとして取り入れる方が多いんですよ。
──可愛いですね。大好きなキャラグッズを身に着けたとき、テンションが上がるのに似ている気がします。
Hana氏:
そうかもしれません。一般的な美容室だとヘアカタログを見てスタイリストと髪型を決めますよね。それがキャラクターのイラストになります。そして、お客様の髪の経歴と状態を考えながらカラーを決めていきます。
──“髪の経歴”ってなんでしょう?
Hana氏:
「パーマやカラーリングを最近いつしたか」という履歴です。たとえば、すごく明るい髪色にしたくても、黒染めをしていたり、自毛くらいの茶色にトーンダウンしていると、ブリーチをしても色が抜けきらないという限界があります。
僕はブリーチが必要なカラーリングを専門とする“カラーリスト”なので、まずはそうした点を踏まえてお客様とご相談し、カットは別の美容師が担当しています。
──カットとカラーが別の人! こだわりが凄いですね。
Hana氏:
髪の毛は本当にひとりひとり違うものですから。カットとカラーのどちらを先にするかもお客様ごとに替わります。日本でカラーリストは馴染みがないものですが、海外だと専門職として知られています。
──なるほど。それぞれの工程を専門のスタッフが手がけるからこそ、キャラクターのように特殊なヘアセットが可能になっているんですね。
Hana氏:
はい。しかもスタッフが全員“オタク”なので楽しくやっています。ちなみに僕は、文学好きから派生した西尾維新さんの大ファンです! 『猫物語』以降の羽川翼【※】を担当したこともあります。
──“『猫物語』以降”とバージョンの指定までできるところに、秋葉原感とこだわりが詰まっていますね。
アキ氏:
お客様の中には「美容室が苦手」とおっしゃる方も少なくありません。でも、ここは秋葉原。カットやカラーをする数時間、スタッフと一緒に萌えジャンルの話ができるからこそ、多くのお客様に受け入れられていると感じています。
──いいですね! アニメやゲームが好きと公言できる空間を作っているからこそ、皆さんスッと「キャラ風にしたい!」と言えるんですね。
Hana氏:
はい。お客様が増えるにつれ、どんどんキャラ髪のオーダーが増えています。昨年だと『宝石の国』のダイヤモンド【※】も手がけました。
髪が白くなるまでブリーチで色を抜き、規則的にしつつも不規則に見えるように、さまざまなカラーを入れ、虹色に見せることで再現していきます。
──見事に3次元化! これは気分がアガりそうです。とはいえ、キャラカラーは目立ってしまい、社会人には難しそうですね……。
Hana氏:
そんなことはありません。たしかに個性的なカラーをされる方には、学生さん、服装が自由な社会人の方、専業主婦の方が多いですね。ですが、たとえば『ラブライブ!』の南ことりちゃんの“ことりベージュ”は、社会人の方でも取り入れやすいですよ。
──ことりベージュ!?
Hana氏:
ヘアカラーでいうアッシュブラウンからグレージュあたりまでの色のことです。一般的な美容室でも通じる単語になるほど、大人気なカラーですよ。ことりちゃんは、これまでに一番オーダーが多かったキャラクターです。ただ、イラストによって髪色が若干違うのが悩みどころです。僕は「どのイラストのことりちゃんにする?」とお客様にお伺いしています。明るめから暗めまで選べるので、会社勤めの方でも挑戦しやすいですよ。
──たしかに! 社会人でも可能な気がします。
Hana氏:
目立たないようにしたいのであれば、カラーをワンポイントとして取り入れることも可能です。逆にさまざまなイラストに出てくるカラーを全部取り入れた“ことりベージュ全部乗せ”などもあるので、いろいろな楽しみ方ができますよ。
あくまでキャラクターをコンセプトとして取り入れることを楽しんでいただくのが目的なので、方法を問わずその人のライフスタイルにあった形で楽しんでいただいています。
──ほんの少しだけキャラカラーを取り入れるのは、気軽に楽しめそうですね。他にはどんなキャラ髪がありましたか?
Hana氏:
『刀剣乱舞-ONLINE-』のへし切長谷部【※1】、『B-PROJECT』の是国竜持【※2】、『ユーリ!!! on ICE』のヴィクトル・ニキフォロフ【※3】などです。
──どの髪型も、同じ作品が好きな仲間たちにはキャラ名を言わなくても、髪だけで通じる点がいいですね。それこそSNS映えもしそうですし。
Hana氏:
SNSで誰かが「キャラクター風の髪にした」と発信すると、「こういう楽しみ方もあるんだ」と広がっていきますね。
アキ氏:
「好き」の表現が多種多様な時代だからこそ、当店のようなコンセプトの美容室に価値があるようになったと感じています。
──女性だけでなく、男性のお客様もいるんでしょうか?
アキ氏:
もちろん! 男性のお客様も多くいらっしゃいます。「美容師との会話が苦手だった」という男性のお客様もぜひお越しいただいて、一緒にアニメやゲームの話をしましょう! 秋葉原へ来たら、ぜひお立ち寄りください。(了)
「憧れのキャラを真似したい」
「キャラカラーで推しをアピールしたい」
「乙女ゲームのヒロイン風にして、大好きな彼が惹かれた女の子に近づきたい!」
思いの形はみんなそれぞれだけれど、女の子界隈には“髪の毛で作品やキャラ愛を表現する”という方法もあるのです。
男性の皆様は、驚いてしまったかもしれませんね。でも、好きなモノに一途になる気持ちの強さには、女性も男性もありません。女の子たちの愛の表現を温かい目でみてください。
そして、理解と共感が深まったら、男性の皆さんも次のヘアチェンジには大好きなキャラ風を取り入れてみては?
【秋葉原の美容室「fuwat」店舗情報】
住所:東京都千代田区外神田4-6-7 カンダエイトビル1F
電話:03-5256-1528
営業時間:12時~22時(カット受付終了 21時)
定休日:毎月第1火曜日
HP:http://fuwat.jp/
Twitter:@fuwatooo
◆「fuwat」初回カット料金を2000円引き!◆
電ファミニコゲーマーの公式Twitter(@denfaminicogame)をフォロー&この記事のツイートをRTで、初回カット料金が通常価格5000円のところを2000円引きで3000円に!
来店時にRT画面をお見せください。ご来店お待ちしております!
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