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『フィットボクシング 北斗の拳』でバズりまくっているイマジニアが“55人対戦の漢字クイズ”を作ったそうなので話を聞いてみた

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 9月に発表されてからというもの、次々に話題を巻き起こしている『フィットボクシング 北斗の拳 ~お前はもう痩せている~』(以下、フィットボクシング 北斗の拳)。『フィットボクシング』『北斗の拳』という異色の組み合わせから生まれた独特の雰囲気もあってか、単に両シリーズのファン向け作品にとどまらない勢いをもって拡散されている作品だ。

 そんな独創的なコラボ作品を生み出したイマジニア株式会社(以下、イマジニア)だが、その裏で15年以上にもわたって『漢字検定』シリーズを手がけてきたことをご存じだろうか。2006年にニンテンドーDS向けに発売された初代『漢検 DS』以後、5作品がWiiやニンテンドー3DS向けにも発売されてきた。

 そして12月8日(木)、同じくイマジニアより発売されたのが『漢検スマート対策』。タッチ操作で実際に漢字を書いて学習したり、AIを活用した漢検の模擬検定を受けられるなど、現代にあわせて進化したシリーズ初のNintendo Switch向けタイトルである。

 しかしイマジニアの発想は単なる「学習用ソフト」にとどまらない。なんと“55人でオンライン対戦する漢字クイズ”こと『早押し!漢検スタジアム』を用意しているというのだ。

 確かにバトルロイヤル系のFPSのブームをきっかけに、『テトリス 99』『パックマン 99』といったさまざまなジャンルの大規模多人数対戦ゲームが生まれてきた。だが「漢字クイズ」というアカデミックな内容で挑戦する試みは珍しいように思える。しかし、開発を経て実際にサービスインするとなれば、そこには何かしらのビジネス的な勝機があるはずだ。

 そんな疑問を解消すべく、今回電ファミニコゲーマーでは開発元のイマジニアに直接メールインタビューを行う機会をいただいた。『早押し!漢検スタジアム』開発の経緯はもちろん、『フィットボクシング 北斗の拳』や『メダロット』など独創的なタイトルを生み出してきたイマジニアの開発背景についてもうかがうことができたので、興味を持たれた方はぜひ最後まで目を通してみていただきたい。

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文/久田晴


──まず率直にお聞きしますが、なぜ「漢字クイズ」というジャンルのソフトを発売しようとお考えになったのでしょうか?

 受検対策ソフト『漢検スマート対策』(2022年12月8日発売)をNintendo Switchで発売しようと思ったときに、シリーズ累計120万本の実績を誇るニンテンドーDS時代から培ってきた学習ノウハウに加えて何か新たなことができないか、もっと手前にいるユーザーに興味を持ってもらえるものを用意できないか。そういった想いが『早押し!漢検スタジアム』の原点です。

 せっかくNintendo Switchで遊ぶなら「みんな」で「気楽に」遊びたい。そんなことを考えていましたら、“クイズ番組の中で対戦する”というアイデアが生まれてきたんですね。話の出発地点である『漢検スマート対策』は「学び」にフォーカスしたものですが、「学び」の前に「遊び」があっていいんじゃないか、と。

 弊社はこれまで漢検協会との共同事業としてコンシューマーゲームやスマートフォンなど様々なデバイスで漢字の学習機会を提供してきましたので、そのアイデアをもって早速漢検協会へ相談に行きました……というのが『早押し!漢検スタジアム』誕生の経緯です。

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──イマジニアさんは『メダロット』や『フィットボクシング』など多彩な新規IPを創出し、なおかつヒットさせることに成功されてきた印象があります。どのような戦略で、新作のゲーム内容を決めていらっしゃるのでしょうか?

 『漢検スマート対策』にも通ずるものがありますが、競合他社様がやらないことを企画していく視点は大切にしています。一方で、ただ尖っただけの企画は市場のパイも少なくビジネスとしては成立しません。「他社と差別化は必要だけど、そこにしっかりお客様の存在がみえる企画であること」このバランスこそが重要だと考えています。

 そのためにどんなソフトが売れているか? シリーズであればどんな声がお客様からあがっているのか? そうしたリサーチは欠かせません。またゲーム市場はもちろん、ゲーム以外でのトレンドも抑えていくことで、ソフトの中身だけでなくプロモーションもあわせてイメージできる企画を意識しています。

──今回の『早押し! 漢字スタジアム』ですが、なぜ基本プレイ無料という形態を選ばれたのでしょう?

 ありきたりな答えですが、多くの人にプレイしていただきたいからです。『漢検スマート対策』に入れるという選択肢もありましたが、もっと多くの人にリーチするにはどうしたらいいかを考えたとき、無料ダウンロードという形態がベストと判断しました。

 そのためにも「繰り返し遊びたい」と思っていただけるよう出題のバリエーションを多数用意しました。優勝を目指して漢字クイズを解くというシンプルな内容のゲームですが、対戦する人・出題される問題はプレイするたびに異なります。ひとりでコツコツ楽しむもよし、家族や友人と一緒に楽しむもよし、シーンに合わせて遊んでいただけるよう開発しました。

 なお本作については無料といっても、ずっと無料というわけではありませんのでご注意ください。お試しで5回遊んで(体験して)いただいて、その後は期間チケットを購入していただきます。

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──「漢字」というテーマを用いた学習系のゲームとしては珍しい大規模なオンライン対戦が採用されていますが、この発想にいたった経緯をお聞かせください。

 注力したのは「漢字」というテーマをどうやったら「遊び」に変えられるか、というところです。クイズ番組のように自分が解答者になれたら、画面の向こうにいる誰かと競い合う事ができたら、もしかしたら楽しいことになるかもしれない、そんなアイデアが軸になっております。

──オンライン対戦における「55人」という数字に何か意味はあるのでしょうか。

 本作では、1ゲームの時間を出来るだけテンポよく進める事を意識しています。考える時間や、優勝までの問題数などですね。

 そういったことを考えたとき、100人など大人数にすると脱落する人をかなり多くしないといけなくなり、単なる早押しゲームになってつまらなくなってしまう。人数が少なすぎても今度は早押しのサバイバル感が薄まってしまいます。そうした部分のバランスをとりつつ、かつキリが良くて言いやすい・覚えやすい数字を挙げていく中で「55」が選ばれました。

──少しシビアな話になってしまいますが、本作のビジネス的な“勝ち筋”をどのようにお考えなのでしょうか?

 正直なところ未知数です。ただテストプレイに参加した人たちが「クイズ好きな人にはハマるね」、「子どもでも遊べるね」、「親に勧めてみたい」などなど、それぞれ違った感想を持ってくれたことにヒントがあると思っています。そうした間口の広いサービスとして受け入れていただければといったところです。

 特定のターゲットを狙うというわけではなく、気軽に遊べるサービスとして育っていったらいいなと思っています。その先に『漢検スマート対策』があったら一番いいんですけどね(笑)。

──イマジニアさんの作品として、大いに話題を集めている『フィットボクシング 北斗の拳』が同じく12月に発売になりますが、同月にそろえられたことに何か意味はあるのでしょうか? 外から見ると自社競合になってしまうのでは……と考えてしまうのですが。

 競合になれたらうれしいですね。きっと、視界に入ってないと思います(笑)。他社様もふくめ新作タイトルが多い時期ですが、『フィットボクシング 北斗の拳』でも他社様のメジャーソフトでも、Nintendo Switchを触る機会が増えるのは本作にとってチャンスだと思っています。そもそものサービスの特徴が多くの作品とは異なっているので、そこに本作の可能性があるのではないかなと。

 また年末年始のお休みに友だちや家族で集まり、まったりと遊んでいただければというところも大きいですね。12月は「今年の漢字」だとか、少し漢字にちなんだ話題があるのも理由のひとつとなっています。

 こたつでお餅を食べて『早押し! 漢字スタジアム』で遊ぶ。そのあと腹ごなしに『フィットボクシング 北斗の拳』……そんな風に遊んでいただけたら何よりです!(了)

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©Imagineer Co., Ltd.
「漢字検定」「漢検」は公益財団法人 日本漢字能力検定協会の登録商標です。


 “55人でのオンライン対戦”という要素を採用した『早押し!漢検スタジアム』は、もはや単なる学習ソフトの域を大きく超えたように見える。「漢字」や「漢検」という一見アカデミックで堅苦しそうなテーマにも、どうにかして「遊び」を取り入れる。その原動力にはイマジニアのエンターテインメントを追求する上での“貪欲さ”があるのではないだろうか。

 こうした流れには「運動」をゲーム化した『フィットボクシング』シリーズにもつながるものを感じる。インタビューの中でも「競合他社様がやらないことを企画していく視点は大切にしています」と語られているが、ともすれば義務感も生まれてきてしまう「勉強」や「運動」をアイデア次第で遊びへと昇華する手腕には目を見張るばかりだ。

 そんなイマジニアの新たな挑戦のひとつである『早押し! 漢字スタジアム』はNintendo Switch向けに12月8日(木)より配信中だ。最初の5回は無料で遊べるとのことなので、年末年始に家族や友人で集まった際の話のネタとしてでもプレイされてみてはいかがだろうか。

ライター
1998年生まれ。静岡大学情報学部にてプログラマーの道を志すも、FPSゲーム「Overwatch」に熱中するあまり中途退学。少年期に「アーマード・コア」「ドラッグ オン ドラグーン」などから受けた刺激を忘れられず、プログラミング言語から日本語にシフト。自分の言葉で真実の愛を語るべく奮闘中。「おもしろき こともなき世を おもしろく」するコンピューターゲームの力を信じている。道端のスズメに恋をする乙女。

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