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映画『バイオハザード:デスアイランド』はゾンビに勝ち目がなさすぎる。CG長編映画に初登場のジル・バレンタインや歴代主人公たちが一堂に会する “おまつり騒ぎ” の狙いを制作陣に聞いてみた

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アクションに入るまでの環境を積み上げる

──深見さんの作品というとガンアクションの素晴らしさが特徴だと思うんですが、本作の5人のアクションについては、どのように描かれたのでしょうか?

深見氏:
 『ヴェンデッタ』ではアクションを細かく脚本に書いていたんですが、今回は「こういうアクションがあったらいいな」というのをぼんやりと書いています。「ここで弾丸が切れて、ここからはナイフで戦う」といった程度のことは記しましたが、その先のナイフの動きなどは細かく書いていません。というのも、今回のアクションは監督やモーションキャプチャーのアクション俳優さんにお任せしていたからなんです。

 実際に映像を見たらナイフでゾンビを攻撃するシーンでも、ジルがテクニカルな動きをしてくれていたので「これはファンが喜ぶな」と思いました。

 でも、アクションって、それを盛り上げるための前段が大事なんですね。「どっちが勝っても別にどうでもいいや」というテンションで見るアクションって、なにをやってもおもしろくならない。だから、アクションに入るまでの前段でセリフや環境を積み上げていくのが自分の仕事だと思って取り組みました。

──なるほど。予告映像ではバイクに乗るレオンの姿が映っていましたが、バイクシーンもあるのでしょうか?

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深見氏:
 はい。『ヴェンデッタ』のバイクチェイスとはまた違ったカッコよさのバイクシーンがあります。

 『デスアイランド』の初期段階では、小さい島に敵が何百人もいて、それをあの5人がバッタバッタと倒しまくる、という内容だったのですが、一段落して脚本を直したときに、バイクシーンも追加しました。

 じつは『ヴェンデッタ』も初期はアクションシーンが多かったんです。全編アクションで、「あちこち爆発するやつがいい!」と(笑)。
 オープニングから爆発! 爆発! 市街戦! ケーブルカーがひっくり返って、人がドンドン倒されて、クルマが爆発して……という初期構想から、最終的にはカッコいいバイクチェイスになったので、あれが正解だと思います(笑)。

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詳しく知っているとより楽しめる

──予告映像にはクリスがロケットランチャーを打つシーンがありましたが、それをよく見ると初代『バイオハザード』のデザインであったり、レールガンらしき武器が一瞬映っていたりするなど、原作ファンがニヤッとする要素が多数見受けられました。原作ファンに「ここを楽しみにしてください」という要素や場面があれば、お教えください。

羽住氏:
 『バイオハザード』シリーズは長い歴史のあるものなので、全作ガッツリやっている人もいれば、途中が抜けている人もいるなど、原作ファンの中でもバラつきがあると思います。

 そういう意味ではメインキャラクター5人が登場するというおまつり感も出しつつ、原作ファンみんなが楽しめる形にしたいと思い、“詳しくないと楽しめない” ではなく “詳しく知っているとより楽しめる” というところを意識しました。

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 先ほどおっしゃっていただいた初代デザインのロケットランチャーもまさにそういった要素のひとつで、こういったものは映画の中にたくさん登場します。この要素はタイトルバックにも散りばめられていますし、スタッフにもアイデアを出してもらって、原作ゲームの要素を取り入れました。

──チームの中に『バイオハザード』に詳しい方がいらっしゃるんですね。

羽住氏:
 いっぱいいます(笑)。それこそラクーンシティのシーンでは「俺がラクーンシティを描きたい」とたくさんのスタッフが手をあげましたから。

川田氏:
 監修に関して、当初はいろいろと大変だろうなと覚悟していたんですけれど、いざ始まってみたら「思っていたよりは楽だな」と驚きました(笑)。

──原作サイドがいろいろ言わなくても、すでに “わかったもの” ができあがってくると。

川田氏:
 そうですね(笑)。ジルに関しても、少なくとも僕が参加させていただいたタイミングでいまのジルのキャラクターが完成されていました。ジル以外の個々のキャラクターも完成度が高く、『バイオハザード』という原作をしっかりと理解されたうえで映画を作っていただいていると感じました。

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深見氏:
 たまにとんでもないものがあがってくる、みたいなこともあったかもしれません(笑)。

川田氏:
 ゲームでも作る人の解釈によってキャラクター像は違ってくるものですが、本作の5人のキャラクターたちは大切にしてもらえていると感じています。恵まれた環境だったんだなと思いますね。

──監修業務をするうえで、カプコンさんとして注意されていた点はありますか?

川田氏:
 時間軸がブレていないかどうかは気をつけていました。あとは「このキャラクターはこういう言い方はしない」といった細かなニュアンスの部分で話をさせてもらいました。

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 時間軸の部分は最初から練られていたので、問題はありませんでした。むしろ『ヴェンデッタ』の続編としてジルを出すことになったとき、当初は「とはいえジルを出すところがないのでは?」と思っていたんです。正直なところ、よくこの流れの中にうまいことジルがハマれたなと感心しました。奇跡的だと思うくらいです(笑)。

──川田さんにおうかがいしたいのですが、『バイオハザード』という作品の現状を俯瞰で見たときに、好調なナンバリングタイトルと『RE』シリーズのヒットで広がり続けるゲーム、リブートの展開が発表された実写映画、『インフィニット ダークネス』のNetflix配信、そして本作の劇場公開と、ゲームだけに止まらないコンテンツの活性化・勢いを感じます。この一連の展開はどのような狙いがあるのでしょうか?

川田氏:
 会社の方針もありまして、ゲームのほうは「可能な限り毎年『バイオハザード』を出せ」という無理難題を押しつけられています(笑)。

 ありがたいことに、シリーズのナンバリングだけでなく、リメイクの反響もいただいているので、それらを交互に出しながらリブートの企画も進めています。
 このゲーム展開をベースに、ほかにもいろいろな展開をしていければと、映像作品についても前任者から引き継いだものを組み込みながら『バイオハザード』というIPを盛り上げていこうと歩み続けてきました。

 これらの動きを何年も続けていくなかで、最近はその成果が見られるようになってきている実感もあります。

 もちろん現時点で好調だとしても、5年後や10年後はわからないですし、ファンの方からの要望も変化していくものだと思うので、それらの声に対応できるようにいろいろな企画を立てているところです。そういったなかで今回の『デスアイランド』は、大きな指標を打ち立てることができたんじゃないかなと思います。

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 これだけの数の有名なキャラクターが登場しているので、ゲームファンの方はもちろんのこと『バイオハザード』というタイトルだけは聞いたことがあるという人にも楽しんでもらえて、この映画をきっかけにこれまでのゲームや映像作品にも興味を持ってもらえたらさらにうれしいですね。

 ……ひと言でまとめると、会社って欲張りだなと思いました(笑)。

──(笑)。欲張りな会社の要求を実行しているみなさんがすごいと思います。

川田氏:
 馬車馬のように働いてますよ(笑)。

──最初のSNSの反響のお話に戻ってしまいますが、メインビジュアル1枚であれだけ話題になるというのは、シリーズの歴史とキャラクターが認知されているからこそなのかなと思います。

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川田氏:
 そうですね。先ほどもおっしゃっていたような「アベンジャーズ」感や全員集合のおまつり感を出したいという強いコンセプトをもとに本作を仕上げることができたことが、反響の大きさにつながっているのかもしれません。

──キャッチコピーにも “最凶のミッション、最強のチーム” とありましたが、最強のチームに誰も異論はないかと思います(笑)。監督におうかがいしたいのですが、『デスアイランド』でいちばん描きたかったところや注目してほしいポイントを教えていただけますか?

羽住氏:
 「敵がかわいそうだ」というくらい強すぎる5人が集まっていて、その5人は絶対的な正義なんです。映画にはそんな彼らの正義を否定してくる人物が出てくるのですが、それは邪悪だからではなく、彼らも彼らなりの正義があって否定しているんです。
 現代でも、視点を変えると正義の定義が異なる場面が多くありますが、そういう部分を描きつつも、あくまでエンターテインメントとして「絶対にブレない連中」を楽しんでもらえたらと思います。

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──それでは最後におひとりずつ、映画を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。

深見氏:
 SNS上では「この5人が相手だなんて敵がかわいそうだ」と言われていましたが、映画を見終わったあとは違う意味で敵をかわいそうだと感じるのではないかと思います。
 この言葉の意味はぜひスクリーンで確かめてみてください。

羽住氏:
 『バイオハザード』は歴史の長いコンテンツですので、ずっとゲームを遊んできた人、名前を聞いたことがあるだけの人、あるいはゲームはプレイしてきたけれどフルCGアニメシリーズは知らない人もいるかと思います。
 そんな方々がどなたでも楽しめる映画となっていますので、アミューズメントパークのアトラクションへ行くような感覚で劇場に足を運んでください。

 また、『バイオハザード』は過去作がたくさんありますので、これを機にゲームを始めてみるのもいいですし、その時間を含めて映画体験として楽しんでいただけたらと思います。

川田氏:
 本作にはたくさんのキャラクターが登場しますので、いろいろな視点から観ることができる映画なのかなとも思っています。ぜひ2回3回と言わず、10回くらい観賞していただき、楽しんでいただければと思います。(了)

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 主人公側のメンバーが強すぎることで、『バイオハザード』シリーズのファンから大きな注目を集めた話題の映画『バイオハザード:デスアイランド』。3人のキーマンに語っていただいた魅力や見どころはいかがだっただろうか。

 そもそもホラーというジャンルは、怪物や霊、殺人鬼などといったキャラクターが持つ理不尽に対する恐怖を、超人的な能力を持つわけではない主人公たちを通して描かれていく。
 しかしながら本作は、登場する5人のメインキャラクターが超人的な能力を持ち合わせていることが自明であるがゆえに、全員の生存が火を見るよりも明らかであり、ファンのあいだではそのことが共通認識として存在するという、ホラーという土俵で考えたときにはある種不利な状況の中にある。

 そこで取られた手法が、本編中にホラー的な演出のあるシーンは残しつつも、オールスターが集結することによるおまつり感を重視するということ。
 インタビュー記事を執筆するにあたって、改めて本予告映像を確認してみたのだが、ゾンビやクリーチャーが数多く出現しているにも関わらず、アメコミヒーロー映画のようなワクワク感や高揚感を強く感じた。

 娯楽作へ振り切ったゲーム原作映画と言えば、大ヒットを記録している『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を思い出すが、本作の予告映像を見る限り、否応なしに期待感は高まる。

 ナンバリング、リメイク、実写映画、CGアニメ……。ほかのゲームシリーズではあまり見られないような多岐にわたる展開を見せる『バイオハザード』シリーズ。その大きな礎のひとつとなるであろう『バイオハザード:デスアイランド』。ぜひ劇場で鑑賞してみてほしい。 

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。

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