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「何でも自分でやるゲーム作り」の意味と強みとは? 『ヴァルキリープロファイル』『エンドオブエタニティ』開発者・北尾雄一郎氏×『SOULVARS』開発者ジーノ氏対談

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「普通のものを作っても面白くない。でも全部奇抜だとうまくいかない」

──北尾さんにお伺いさせてください。本日の対談のきっかけとなったジーノさんの熱量や、私自身も北尾さんが手がけた『スターオーシャン3』の大ファンだという点も含めて、「数十年の時を経て、今なお魅力を感じさせるバトルシステム」を生み出せた要因はなんだと考えていますか?

北尾氏:
 つまんない回答になってしまうかもしれないんですけど、「皆さんが多感な時期に遊んでいただけた」ことで初体験としての魅力があったという僕の運の良さが大きいと思っています。そうじゃない部分を探すとすると……「ちょっと人と違ったことをしよう」とか、「普通じゃ面白くないよね」ってことをやるかどうかというのは、いつも考えています。

 ジェムドロップのWebサイトにも書いているんですけど、「求められるものは創らない、それ以上のものを創る」という社是みたいなものがあって。自分たちでゲームを作る際にも、どこかから受託して作業をする際にも、どこかほかの会社さんが作って同じものができるようじゃ面白くないんですよね。

『ヴァルキリープロファイル』『エンドオブエタニティ』開発者・北尾雄一郎氏×『SOULVARS』開発者ジーノ氏対談_019
(画像はごあいさつ | ジェムドロップ株式会社より)

 うち独自のものが出せる、ということの価値を生みだしていければ今後の仕事にもつながって存続していけるし、逆にそうじゃないと自社でやる意味がない。もちろんその結果が毎回上手くいくというわけではなくて、失敗してしまうこともあるとは思うんですけれど。

 でも皆さん「これこれ、これで良いんだよ!」という定番の安定感も好きだと思うのですが、それだけじゃなく、「なんだこれ、新しい!」と思えるような刺激も求めてらっしゃるじゃないですか。

 例えば想像になりますが、僕らが子供の頃に生まれて初めてチョコレートを食べた時って、多分すごい衝撃があったと思うんですよね。「なんだこれ、美味しすぎるぞ!」って。そういう“人生初”と言えるような刺激って大人になるにつれてどんどん減っていくわけですよ。

 年をとればとるほど新しい経験は減っていく。そこに対して、新しいものを差し込みたい、僕も新しい刺激が欲しいみたいな欲求はずっとあります。

『ヴァルキリープロファイル』『エンドオブエタニティ』開発者・北尾雄一郎氏×『SOULVARS』開発者ジーノ氏対談_020

『SOULVARS』は“映えない”。遊んでこそ楽しい「体験」の重要性

──ジーノさんの『SOULVARS』はむしろ“映えない”ところを突きつめて作ってあって、遊んだ人が「これ楽しいぞ、面白いぞ」と周囲へ波及させていくような作品になっているように感じました。

北尾氏:
 実際、作りがすごく丁寧ですよね。ゲームが始まった瞬間からバトルが遊べるとか、僕らみたいなゲーム制作者側から見ても、基本がバチッと抑えられている。

 ゲームを遊ぶ際にどういう部分が快適さを感じさせるのか、どういうところが魅力なのかを分かってる人が作ったゲームだろうな、と『SOULVARS』をプレイしていて感じてましたし、今日お話ししてやっぱりそうだったなと思いました。

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(画像はマイニンテンドーストア『SOULVARS』より)

ジーノ氏:
 今まで遊んできたゲームが私の血肉になっているということなんだろうと思いますし、その生みの親である北尾さんに褒めていただけたというのは本当に嬉しいです。ありがとうございます。

北尾氏:
 ちょっとズレる話かもしれないんですけど、僕「ニコニコ動画」が流行ったときにこれから先のゲームは「やって面白い」ものを作っていくことが課題だと思ったんですよね。

 なぜなら、「見て楽しい」ゲームだと動画で見て終わってしまうから。動画とかでゲームのプレイ風景を見た時、「これと同じ体験をしたい!」と思わせたら勝ちだと。遊んで楽しい、やって楽しいという体験が今後は一層重要になってくるだろうなと思いました。

──最後にお二方からファンのみなさんへのメッセージをいただけますか?

北尾氏:
 今日の対談、とても楽しかったです。ジーノさんのお話の中でもあったように「RPG」ってバトルを繰り返していくものなので、そこを気持ちよくしたい、楽しんでもらいたい、そしてあわよくば驚きも与えたいというのはこれまでもこれからも目指しているものです。

 ここからは宣伝ですけれど『スターオーシャン セカンドストーリー』はこれまでPS1とPSPで出てるわけですが、リメイクとなる『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』では原作の良いところを引き継ぎつつ、快適にできるところは相当快適にしています。たとえば紋章術なんかの演出も、PS1の頃って時間が止まったりしていたんですけど、リアルタイム化するなど工夫を入れてあります

 あとは「ブレイク」って言う新しい要素があって、それによって効率よく戦える要素もあります。繰り返し遊んで楽しめるようなバトルが仕上がっていますし、そのバトルにくっついてるいろいろな要素、アイテムクリエイションとかを利用して、いろんな工夫をすることでバトルを無茶苦茶にできる。「チートじゃねえか」みたいな部分も併せて楽しんでもらえたらと思います。

 シリーズをずっと追いかけて頂いているファンの方にも、リメイクである今作からプレイするという方にも、スマホ版である『スターオーシャン:アナムネシス』を遊ばれた方、そして25年前に『スターオーシャン セカンドストーリー』を遊んだけれどしばらくシリーズから遠のいていたなというような方。皆さんに楽しんでもらえる作品です。

ジーノ氏:
 今日北尾さんとお話ししてあたらめて、北尾さんがゲームを作るなかで大切にしていた部分が私にしみこんでいった結果として、面白いバトルや爽快感という部分を模倣する形で『SOULVARS』というゲームが作れたんだなと思いました。

 一作目ということで拙い部分、表現力として力不足だったなと言う部分もないわけではないですが、キャラクタービルドの部分とか、バトルの奥深さという部分を楽しんでいただける作品には仕上げられたと思っています。是非、触れてみてください。

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 いかがだったでしょうか。25年以上の長きにわたってゲームを作り続けた歴戦のプログラマーである北尾氏の、ユーザー・プレイヤーが楽しめるように手触りを良くしていく「気遣い」の考え方は、ゲーム作りに限らず様々な業種や状況で活用できるように感じました。

 また一度はゲーム業界への道を諦めながら、ひとりで夢を追い見事に作品として昇華させたジーノ氏の情熱と、その情熱が多くの人へ伝播し心を動かしていく様にも圧倒されました。

 なにより、おふたりの「なんでも自分でやる」、「仕組みを作って動かすのが大事」という考え方によって作られたゲームへの興味が大いにそそられる、素敵な対談だったと思います。

『ヴァルキリープロファイル』『エンドオブエタニティ』開発者・北尾雄一郎氏×『SOULVARS』開発者ジーノ氏対談_023

 そんな情熱的なジーノ氏が開発し、集英社ゲームズが販売を担当している『SOULVARS』は、PC(Steam、Epic Games Store、DMM Player)、Nintendo Switch、PlayStation 4、PlayStation 5、Xbox One、Xbox Series X|Sへ向けて6月27日(火)より発売中です。

 くわえて、ゲーム開発にまつわる貴重なお話の数々を語ってくれた北尾氏が社長を務めるジェムドロップが鋭意開発中の『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』はPC(Steam)、PS4/PS5、Nintendo Switchへ向けて11月2日(木)より発売される予定です。

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(画像はSteam『SOULVARS』より)
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(画像はマイニンテンドーストア『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』より)

© ginolabo / SHUEISHA, SHUEISHA GAMES

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電ファミニコゲーマー副編集長。

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