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『モンハンストーリーズ3』開発者インタビュー。絶滅危惧種を保護する「レンジャー」たちのシリアスな物語や「ナビルー」が登場しないことに込められた本作の狙いを聞いた【TGS2025】

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言わずと知れた大人気の狩猟アクションゲーム『モンスターハンター』略して『モンハン』。

熾烈なバトルが繰り広げられる『モンハン』の世界だが、中には「モンスターと絆を結ぶ」という優しいテーマをもつ『モンスターハンターストーリーズ』というシリーズも存在する。

本シリーズは、モンスターの背に乗り共に成長していく「ライダー」と、そのお供となるモンスターである「オトモン」の物語が展開されるコマンドバトル式のRPGとなっている。

本来、モンスターとは恐ろしい生物だ。
火を吐く、噛みついてくる、爆発する、ビーム撃ってくるなど、人間に比べればあまりにも強大である。だが、そんなモンスターたちの生態にこちらから歩みより、“共存”を目的とした物語が描かれるのが『ストーリーズ』の特徴となっている。

その最新作である『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~(以下、モンハンストーリーズ3)』が、2026年3月13日に発売を控えている。

本稿では、幕張メッセにて開催されているイベント「東京ゲームショウ2025」にて開催された、『モンハンストーリーズ3』のディレクターである大黒健二氏、メインプランナーとなる若原大資氏、プロデューサーである辻本良三氏へのグループインタビューの模様をお届けする。

本インタビューでは、環境保護を目的としたレンジャーたちの物語というシリアスなストーリーに込められた狙いや前作まで登場していた「ナビルー」が未登場となる理由、戦闘を単調にしないための工夫など、発売に向けて期待が高まる本作の情報を短い時間ながら存分に語ってもらうことができた。本作に興味のある方々にはぜひご一読いただきたい。

文・取材/TsushimaHiro
編集/海ソーマ


主人公のカスタマイズ要素は“前作以上”に

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──『モンハンストーリーズ3』は主人公の見た目を変更できるキャラクターメイキング機能がついている点も特徴のひとつですが、本作におけるキャラメイクの幅は前作と比較して増えているのでしょうか。

大黒健二氏(以下、大黒氏):
髪型を含め、前作とほぼ同じパーツや項目は存在しますね

若原大資氏(以下、若原氏):
そうですね、詳細はお答えできないのですが、少なくとも前作以上にキャラクターの見た目はカスタマイズができるようになっています。

というのも、ユーザーからも「キャラクターのカスタマイズが楽しい」というお声はいただいていたので、それに対して、もっと楽しんでいただこうという気持ちで制作しております。

主人公は生態系を保護する「レンジャー」であり、一国の王子として葛藤する

──TGSでは本作の試遊版を遊ばせていただいたのですが、環境保護を目的としたレンジャーたちが現地踏査を通じて、『モンハン』の世界でモンスターたちがどのように世界に息づいているのかを伺い知ることのできる内容でした。この、「知る」ことをテーマにしているのは、なぜなのでしょうか。

辻本 良三氏(以下、辻本氏):
そうですね、まず、本作でシリーズは3作目になったのですが、前作まではどちらかというと『モンハン』の世界には実はモンスターと共存する「ライダー」という存在がいて、彼らの成長を描いているというテーマがありました。
『ストーリーズ3』は、よりこの世界を深く描こうというコンセプトになっていて、一例として描写されるスケールも国対国、と大きくなっています。

大黒氏:
「ライダー」の世界を深堀りしたいので、その「ライダー」の中でも、絶滅危惧種を保護して生態系を守ろうとする「レンジャー」という職業となり、異変がなぜ発生しているのかを調査するというストーリーが展開されます。

最初のお話の流れとしては、新入りレンジャーが先輩レンジャーである主人公に手引きしてもらいながら、ユーザーもゲームを覚えていくという内容になっています。

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──レンジャー見習いのティオちゃんと、その師匠的なポジションである主人公(プレイヤー)という構図ですね

大黒氏:
そうですね。主人公はアズラル国の王子(もしくは姫)であり、最初から「レンジャー」の隊長として登場します。主人公はレンジャーとしてモンスターたちの息づく生態系を守りたいという思いがある中で、国を守る王子としての立場に葛藤することとなります。

とある出来事をきっかけに主人公は「自分は王子(姫)として、レンジャーとして生態系のことを考えていたと思っていた。仲間のことも知っていると思い込んでいたのに、実は知らないことだらけだったのだ」と、思い知らされることとなります。

その「このままではいけない」と思える葛藤は主人公の行動を理由づけるには充分な出来事ですよね。ユーザーの皆さんにワクワクしてもらえる、ゲームを最後まで遊んでもらえる「引力」ってめちゃくちゃ大事だと思っていまして、ぐっと入り込めるような物語を作る、というところを意識しました。

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──主人公が王子になったことで、国同士の戦争を彷彿とさせるシーンもPVで見られました。その中では、モンスターを兵器として扱う従来のライダーとモンスターの関係ではない演出も見られるのでしょうか。

大黒氏:
そのような描写も入ってきますし、王子(姫)である主人公は戦力として重宝されてしまうんです。

だけど、やはり主人公はレンジャーとして生態系を保護したい。本当はモンスターのことが好きなので、「兵器として使いたくない」と、色んな人の想いが交差します。

──今回のストーリーで、生態調査や環境保護を目的とした「レンジャー」に焦点を当てたのは何故なのでしょうか。

大黒氏:
何もない平和なところだったら、当然ですがストーリーが作れないんですね。
やはり、ストーリーを動かすには何かしらの異変は必要で、「ラスボスはどうしよう」とか色々考えるんですけど。

その中で、どういう変化があったら本当に人間が恐怖を覚えるのか。ゲームだから描ける描写として、「石化現象」から始まりました。

人々も石になったらもう元には戻らない、という絶望の世界には生きたくないので、調査をすれば生態系を取り戻せるかもしれないと希望を持ちます。そして、おかしくなってしまった生態系を取り戻す、というレンジャーのロールプレイをゲームにリンクさせたいと思っていました。

──お話を伺っていると、レンジャーである主人公はモンスターに対する愛がすごく強いように思えるのですが、そうではない思想をもったレンジャーもいるのでしょうか。

大黒氏:
いないですね。レンジャーに関してはアズラル国で結成された部隊で、その生態系を保護したいという思想に賛同した能力の高いライダーが集結したチームになっており、みんなが同じ方向を向いています。

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──国で言いますと、本作にはふたつの国が登場しますが、主人公が住む国以外の場所はどのようなところなのでしょうか。

大黒氏:
今、言える範囲でいいますと、アズラルとビュリオンという2つの国があります。
石化現象が発生した影響で、ビュリオン王国は非常に厳しい状況にあって、その状況を打破するためには思い切った行動をとらないといけない、というところで両国の関係性は緊張状態へと陥ります。

両国は、石化現象の影響度合いにかなりの違いがあります。浸食が激しい、というイメージですね。それで、それぞれの国の考え方がぶつかりあっている状態です。

続々と登場する『ワイルズ』のモンスター。「レ・ダウ」は中ボス的存在に?

──最近、発表されたモンスターの中では『モンハンワイルズ』に登場する「レ・ダウ」の反響が大きかったと思うのですが、本作における「レ・ダウ」の立ち位置はどのようになっているのでしょうか。

若原氏:
『ワイルズ』でも非常に人気の高いモンスターですね。詳細はお答えできないのですが、ストーリー上でも中ボスと言いますか、ユーザーのひとつの壁として立ち向かうことになるかと思います。もちろん、オトモンにもできますよ。

辻本氏:
そもそも、『ストーリーズ3』と『ワイルズ』は並行して制作している期間がありました。
そこで、『ワイルズ』のモンスターをどのように導入するか開発で議論もしたのですが……片方を作りながらもう一本に注力する、というのも難しかったんです。

ですが、チームのメンバーも「なんとか入れたい」と言うので、「レ・ダウ」と「チャタカブラ」も入れられましたね。まだいますので、楽しみにしていてください。

好きなオトモンを連れていきたい、というユーザーのためにアクションの幅を広げた

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──前作はフィールドギミックを解決するためにオトモンを連れていくという仕様で、好きなオトモンを連れていくことが難しいこともありました。本作では、これを解消するようなアプローチはございますでしょうか。

大黒氏:
この「ギミックを攻略するためのオトモンで埋まってしまう」っていうところは課題として挙げられており、改善点として取り組めると思っていました。本作では、特にフィールドに関しては一匹のオトモンのやれることの幅をもっと広げてもいいのではないか、と考えていまして。

例えば、試乗版でもリオレウスはブレス(火炎)、飛行などのアクションと、ほかのモンスターとの共通アクションとしてジャンプがあります。好きなオトモンの活躍できる幅が広がったほうが、ユーザーの皆さまにも喜んでいただけるのではないかと。

まだお答えできないのですが、その点は改善していますし、さまざまな仕掛けもありますので楽しみに待っていてくださいね。

「ナビルー」は登場しない。なぜなら「ナビルー」の良さを薄めたくなかったから

──本作の主人公は王子様(もしくは姫)ですが、『モンハン』で王族といえば「わがままな第三王女」がまず頭に思い浮かびました。多くのハンターが王女の無理難題なクエストに苦労させられた記憶があるのですが、そういった過去作に関連するキャラクターは本作に登場しますか?

大黒氏:
「第三王女」は出ないですね。

辻本氏:
ストーリーだけではないのですが、本作は『モンハン』シリーズを通してどこから入っても楽しめるタイトルを目指しています。何かをプレイしていないと楽しめない、という作り方を毎回はしたくなくて。

そこでキャラクターの絡みを作ると、別の人も出そう、ということになってしまい制限がかかって窮屈になってしまう。なので、そこは過去作品をやっていなくても楽しめるように作っております。

──本作で「ナビル―」の姿がまだ見られないのも同様の理由でしょうか。

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(画像は『モンスターハンターストーリーズ2』公式サイトより)

辻本氏:
「ナビルー」の話となると、もうちょっと説明しないといけませんね。

大黒氏:
まず、「ナビルー」は本作に登場しないです。

一番大きな理由としては、本作の主人公がたくさん喋るようになったからです。
「ナビルー」は口数の少ない前作までの主人公の代弁者として活躍していたのですが、主人公が自身の感情を言葉で表現するようになると、その役割が薄まってしまいます。

あと、ストーリーをシリアスにしてみたというのもありました。
やはり重たいシナリオは息抜きのようなシーンも必要で、ナビルーもそういう(息抜き的な)キャラクターだったのですが、ギャグテイストすぎたんですよね。

本作『ストーリーズ3』ではギャグテイストというより、ユーモア風味に変えていこうと思っていたのです。そして、ナビルーの性格を変えて本来持っている良さを薄めることもしたくなかった。であれば、ここは一新しようと。

先ほど話が挙がったのですが、3作目から新たに遊んでいただきたいという想いもあったので、本作のパートナーであるオトモアイルーの「ルディ」も代弁者ではなくレンジャー部隊の仲間として、主人公と共に冒険してくれます。

──それこそ、試遊版では後輩レンジャーの「ティオ」ちゃんが登場して、あまりにも可愛すぎて「この子が本作のヒロインなのかな」と思いました。純粋で、ひたむきで、すごく人気が出そうだなって

大黒氏:
そう言っていただけると嬉しいです。

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純粋でかわいいティオ

3すくみのアクションはより戦略的に。「気持ちよくなる」バトルを目指してプレイヤーに選択肢をつきつける設計

──本作の戦闘に関してですが、前作まではじゃんけんに勝ち続ければいいというシンプルな内容でした。本作の戦闘に、何かスパイスが追加されているのかをぜひお聞きしたいです。

大黒氏:
めちゃくちゃ良い質問ですね。そこに関しては、色々と考えていました。

若原氏:
その質問を待ってました。
『1』『2』を経て3すくみの勝負は本作でも続投しているのですが、モンスターのクセを読むのが本作の楽しいところのひとつではあるんですね。ですが、仰るとおり癖を把握してしまえば完封できてしまう。

それはユーザーさんの声でもあったと思うのですが、いわゆる単調さに繋がってしまうという部分もあったのではないかと思います。

それに対してどういうアプローチをしたのかというと、今回取り入れた「竜気ゲージ」がその中のひとつだと思っています。バトルの全体的な話になるんですけど、今回のバトルは「気持ちよさが連鎖する」ものを目指して開発しています。

──気持ちよさの連鎖、ですか

若原氏:
そうです。ただ真っ向勝負で勝ち続けるだけでは本作では苦しくなってくる場面が出てきます。じゃんけんで勝ったうえで、モンスターのスタミナ的な要素である「竜気ゲージ」をいかに削っていくのかを考える必要が出てきます。

モンスターの部位を破壊すると「竜気ゲージ」を削れるのですが、そのためには先に別の部分を破壊するべきだろうか、そこを破壊するためには何を使えばいいのか、とプレイヤーの中で長期目標のようなものが出来上がるんです。

この計画を成し遂げると、「竜気ゲージが」ゼロになり、パーティメンバー全員で袋叩きにできる新要素「シンクロラッシュ」が発動できます。そうすると、今度は「絆ゲージ」が上昇します。

ここで、いよいよ「待ってました」というシーンです。
「絆ゲージ」が上がるとライダーはオトモンの背中に乗って、必殺技の「絆技」を放てます。そこで気持ちよくなっていただく。それが今回目指したバトルの方向性で、楽しんでいただけるかと思います。

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──実際、試遊版で登場した「チャタカブラ」と戦っている時、腕に纏った石を破壊するか、背中の石を破壊するか選択させるシーンがありました。

若原氏:
どんなバトルでも「どこを選ぶのか」というのは、あえて正解を示すのではなく「選択をさせる」ということを意識しています。リスクとリターンをユーザーにつきつけることで考えが生まれるのですが、この思考する瞬間こそがコマンドバトルRPGの面白いところだと思うので、そこは意識して作っています。

──最後の質問になりますが、本作はライダーとオトモンによって「絆技」の演出が異なっていて印象的でした。そこでお聞きしたいのですが、皆さんが一番お気に入りの演出はございますか?

若原氏:
『1』『2』の「絆技」のユニークで面白いものもあったと思うのですが、僕はシンプルに「トビカガチ」のド派手にスパークするシーンが派手で好きですね。

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──それこそ、後輩レンジャーのティオちゃんがトビカガチのスピードについていけなくて、引っ張られているシーンはとてもかわいかったです。

若原氏:
仰るとおりコミカルなキャラクターごとの絆技っていうのも必見と言いますか、演出がかなり凝っていますので、ぜひ見ていただきたいですね。

辻本氏:
僕は〇〇〇です!(思いっきり未発表)
「どうせ出る」って、皆さんわかっていると思うので。

一同:
(笑)

大黒氏:
今、言える範囲ですとお気に入りのモンスターは言いづらいので質問の答えとしてはズレちゃうんですけど。さきほどの「ティオとトビカガチ」のように同じモンスターでもパートナーごとに演出が変わるという「こんなところこだわってるんだ…」と、小さな部分でも見て欲しいなと思いますし。楽しみにしていただきたいですね。

──本日はお忙しいなか、ありがとうございました!(了)


以上、『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』の開発者インタビューをお届けした。

国同士の関係を描いたシリアスなストーリーや「気持ちよさの連鎖」を意識したというバトル、そして過去作を経験していないプレイヤーも楽しめるようにとの言葉から、制作陣の『モンハンストーリーズ』というブランドを“進化”させていくという意識が感じられる貴重なインタビューとなった。

本作は、Nintendo Switch 2PS5Xbox Series X|SSteamにて2026年3月13日発売予定だ。

なお、詳しいゲーム内容が知りたい方は、電ファミ公式YouTubeチャンネルでの試遊動画や、当サイトに試遊レポート記事も掲載されているので、ぜひ読んでみてほしい。

編集・ライター
MOTHER2でひらがなを覚えてゲームと共に育つ生粋のゲーマー。 国内外問わず、キャラメイクしたりシナリオが分岐するTRPGのようなゲームが好き。『Divinity: Original Sin 2』の有志翻訳に参加し、『バルダーズ・ゲート3』が日本語化される前にひとりで全文翻訳してクリアするほどRPGが好き。 『ゴースト・オブ・ツシマ』の舞台となった対馬のガイドもしている。 Xアカウント(旧Twitter)@Tsushimahiro23
編集・ライター
『The Elder Scrolls』や『Dragon Age』などの海外RPGをやり込むことで英語力を身に付ける。個人的ゲーム史上ナンバーワンヒロインは『Mass Effect』のタリゾラ。 面白そうなものには何でも興味を抱くやっかいな性分のため、日々重量を増す欲しいものリストの圧力に苦しんでいる。

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