約16年ぶりのフルリメイク作『龍が如く 極3』(以下、『極3』)の発表。そして、峯 義孝(みね よしたか(『龍が如く3』の登場キャラクター))の過去が描かれる『龍が如く3外伝 Dark Ties』(以下、『3外伝』)の電撃発表。
9月24日に開催された“RGG SUMMIT 2025”での新作発表には、度肝を抜かれた方が多かったことだろう。
『極』シリーズの3作目の発表を予想していた人は数多くいたと思うが、新作の外伝が同時発表されると予想していた人は皆無だったのではないだろうか。
ましてや別々の発売ではなく、2タイトルをひとつにまとめた『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』としての発売なのだというのだから、龍が如くスタジオのサービス精神にはいつも驚かされる。
発表翌日から開催となった東京ゲームショウ2025(以下、TGS)では『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』の試遊出展が行われており、連日多くのゲームファンが来場。ゲームデザイナーの桜井政博氏やひろゆきさんがブースを訪れるなど、大きな盛り上がりを見せている。
セガ/アトラスブースにソラ代表の桜井政博さんが来訪。
— セガ公式アカウント🦔 (@SEGA_OFFICIAL) September 25, 2025
『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』をお楽しみいただきました。#TGS2025 #SegaAtlusTGS2025 pic.twitter.com/vjsdZr19BI
【#TGS2025 Day2】
— 龍が如くスタジオ 公式 (@ryugagotoku) September 26, 2025
\ひろゆきさん降臨!!/
セガブースで、ひろゆき(@hirox246)さんが『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』を試遊プレイ!
さらに18:00~「電ファミ公式チャンネル」配信番組内で「龍が如くスタジオ」横山代表がゲストで登場します!! お見逃しなく👀… pic.twitter.com/H6M3CFWNAI
9月27日、電ファミ編集部はTGS会場にて『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』(以下、『極3 / 3外伝』)チーフプロデューサーの阪本寛之氏と、プロデューサー兼ディレクターの堀井亮佑氏にインタビューする機会をいただいた。本稿ではその模様をお届けしていく。

取材・文/豊田恵吾
──RGG SUMMIT 2025の発表は本当に驚きました。『極3』の発表は予想の範疇でしたが、まさかの外伝の発表、しかも峯を主人公として過去を描くタイトルが発表されるとは微塵も思っておらず……。あいかわらず龍が如くスタジオは突き抜けてるなと。
阪本寛之氏(以下、阪本氏):
昨年のTGSでは『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』(以下、『8外伝』)発表を受けて、「なんで海賊なんですか?」といろいろなところで質問いただいたんですね。「本当に意味がわからない」と(笑)。
でも、その「なぜ?」が広がり、おかげさまで新規のお客さまにかなり入っていただけた。また、海外でも好評で、とくにヨーロッパで広がりがあり「初めて『龍が如く』を触りました」という方もいらっしゃったんですね。
「よく意味がわからないけどおもしろそう」と興味を持っていただけたことがIPの広がりにつながったわけです。この道筋が良かったというのが現在の手応えとしてあります。
そして、今回発表した『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』は、あくまでも『極』シリーズを続けてきた中での延長線上ではあるのですが、同じ展開ではなく「もうひとつ皆さんの想像を超えるものをお届けしたかった」というのが意図としてあったわけです。
──なるほど。
阪本氏:
そういった驚きを提供しない限り、「『極』シリーズは過去タイトルのリメイクタイトル」と、単調に思われてしまう懸念もあったんです。
「峯の過去を描こう」という考えが固まってきたときに「見せ方、売り方をどうするか」という話になるわけですが、難しい説明をするよりも「1本買えばふたつ遊べる」といったシンプルな伝え方のほうが響くと判断し、こうなったと……。
──いやいや、簡単におっしゃられますけど、作る労力は2倍になっているわけですよね(笑)。しかも、ここ数年はナンバリングの新作発売のあとに外伝の展開があり、ゲームの評価としてもセールス的にも結果を出されていたわけですから「1本にまとめるなんてとんでもない」といった意見が社内からあがらなかったのですか?
阪本氏:
それがほとんどなかったんですよ(笑)。そこもセガという会社の懐の広さといいますか(笑)。
堀井亮佑氏(以下、堀井氏):
『極3』はそもそも会社としてはまったく問題なくGOで、やることは決まっていたわけです。ただ、『龍が如く3』を2026年に展開するときに、峯 義孝というキャラクターをクローズアップしたかった。人気キャラということもありますが、開発側としても峯は深掘りしたい、魅力あるキャラクターですので、軽いものにはしたくなかったんです。
峯をフォーカスするにあたり、RGG SUMMITで横山(横山昌義氏。龍が如くスタジオ代表)が述べていたように最初は「映像作品として映画のようなものを『極3』に入れようか」という意見もあったのですが、「やっぱり峯を動かしたいよね」となり、『7外伝』、『8外伝』と外伝の展開を続けていたこともあって「外伝としてしっかり扱おう」となったんですね。
『8外伝』も真島を動かせるからこその楽しさがあったじゃないですか。
阪本氏:
いまこのタイミングでふたつのタイトルが1本で遊べるというお得感というのは、ほかの会社さんやほかのエンタメ作品でもやっていない展開ですし、「外伝もセットで遊べます」という伝え方は、アプローチとして響くだろうなと。
──しっかり響いてます(笑)。ファンとしては『龍が如く』シリーズ20周年ですし、お祭り感のあるタイトルだなと。
阪本氏:
まさにそうなんです。20周年での、おこがましいかもしれませんが、龍が如くスタジオからのプレゼントといいますか……。
──ファンからすると、これ以上ない20周年プレゼント、サービスだと思います。
堀井氏:
単純に「『極3』を発表しました。発売しました」では、「よかったね」で終わってしまうと考えたんですね。
──RGG SUMMITでの発表の仕方もうまかったですよね。最初に『極3』が発表されて歓喜し、そのあとの『3外伝』のアナウンスで「え? マジで?」となり、最後にそのふたつのタイトルが1本に入っています、と。
堀井氏:
「峯、キター!」となってましたね(笑)。
最初にお話したように、昨年の『8外伝』発表もいい意味で予想を裏切りまくるものだったので、今年も「いい裏切り方」ができたのかと思います(笑)。
──峯というキャラクターについてですが、『龍が如く』シリーズを1作目からリアルタイムで追っている身としての意見で言うと、『龍が如く3』発売当初はキャラの評価が低かったじゃないですか。
それは、描かれ方とか人間性とかではなく、「錦や龍司と比べて、敵としての個性が弱い」という評価。でも、シリーズを重ねるごとに峯の評価は覆っていき、現在は屈指の人気キャラになっています。
阪本氏:
2作品(『龍が如く3』、『龍が如く 維新!』(土方歳三として)』しか出ていないのに、すごい人気ですからね。
──『3外伝』制作にあたり、約16年ぶりに峯というキャラクターと向き合ったときに、開発としては峯の魅力をどう分析し、どう捉えられたのでしょうか?
堀井氏:
『龍が如く3』発売時の話でいうと、まず郷田龍司【※】のあとだったというのが不運でした。あのころは次作のことが見えない中で制作していたので、龍司は超わかりやすい極道として描いていたんです。
当時は『龍が如く』の「極道っぽさ」に惹かれるユーザーさんが多かったんですね。その視点で見ると、たしかに龍司と比べて峯は「極道っぽさ」が薄かった。その部分が「個性の弱さ」として見られてしまったわけです。
ですが、その後シリーズが続いていき、さまざまなタイプの極道が描かれていくにつれ、峯の極道っぽくないところや、内面にいろいろな葛藤だったり、コンプレックスだったりを抱えているという独自性が認められるようになっていったんですね。
──いまお話いただいているように、阪本さん、堀井さんは『龍が如く3』のときの峯を熟知されているじゃないですか。でも約16年前のタイトルということで、開発チームの若い方々は、人気が高いときの峯しか知らないわけですよね。世代による峯の印象の違いはなかったのでしょうか?
阪本氏:
どちらかというと、我々のほうが少数派ですからね。みんな峯については「かっこいい」という印象しかない。
堀井氏:
むしろ、そっちのほうが強い。「かっこいい人」という意見が圧倒的ですし、社内や開発チーム内にも峯が好きな人は多いですね。
阪本氏:
わかりやすくビジュアルで好きな人が多い(笑)。ハン・ジュンギと峯は、かっこいい枠というか……。
堀井氏:
僕としては見た目よりも「男が男に憧れる」というか、いろいろな感情が入り交じったところが峯の魅力だと思っているんですけどね。
──『3外伝』では、バトルでも峯らしさが反映されていますよね。
阪本氏:
峯が抱えるそのコンプレックスというか、ダークさを「闇覚醒」というシステムで表現しています。
堀井氏:
クールなだけではない、内面とのギャップがいいんですよね。峯は学業成績が非常に優秀であったものの、壮絶な幼少時代を過ごしているので、お金に対してもそうですが、いろいろなことに執着しているんです。『3外伝』では、そのあたりをしっかりと描きたかったんですね。
さまざまな出来事が展開されていくのですが、峯の独白みたいなところから物語がはじまっていきます。『3外伝』は峯が自分自身と向き合う話でもあるので、そういった峯の内面を描くことをとくに意識して制作を進めていきました。
──TGS試遊バージョンを遊ばせていただいたのですが、『極3』と『3外伝』はプレイ中いつでも切り替えができました。製品版でも同じようにいつでも切り替え可能なのですか?
堀井氏:
TGS版だと若干簡略化していますが、2 in 1ですのでセーブデータも別にしていますし、プレイ中はいつでもお互いの作品に飛べる仕様になっています。
──『極3』をプレイしていて神田のエピソードが出てきたから、明日は『3外伝』で神田の過去をおさらいしてみよう、といった進め方もできるわけですね。
阪本氏:
「何章まで進めないと『3外伝』はプレイできません」といったプレイヤーがストレスに感じるような連動はさせていないので、安心していただければと思います。
──発表内容や公開されたトレーラーを見るに、『3外伝』の物語は『龍が如く ONLINE』の「峯義孝という男」【※】をベースにされていますよね?
堀井氏:
はい。ただ、あくまでもベースにしているだけといいますか、『龍が如く ONLINE』ではテキストで物語が語られるだけでしたので、大幅に変えています。
新規シーンや幕間の出来事もそうですし、3Dアクションゲームにするにあたっての追加など、かなり大きく変えていますね。ですので、『龍が如く ONLINE』をプレイされている方も、別のものとして楽しんでいただける内容になっています。
──『3外伝』の「神田カリスマプロジェクト」は、発表された際に思わず爆笑してしまいました。『龍が如く3』を遊んだことがある人からすると「『3外伝』で神田を育てて『極3』でその神田を……!?」と思った方が多かったんじゃないかと(笑)。
阪本氏:
結末を知ってる人から見たら、たしかにエグいですよね(笑)。
堀井氏:
『3外伝』は峯が極道の世界に足を踏み入れ、東城会でのし上がっていく話ですから、そのために神田を利用しているところを描いていますし、『極3』での関係性とはいろいろ違うんですよね。
上司だったけど、いつのまにか追い抜いちゃった、というのはふつうの会社でもあることじゃないですか(笑)。
──(笑)。
阪本氏:
『龍が如く3』を遊んだことがある方が『3外伝』をプレイすると、若干複雑な気持ちになるかもしれません(笑)。
堀井氏:
『3外伝』は峯と神田のふたりのやりとりがすごく重要になっているので、神田の描写が多くなっているんですね。ですので、神田に感情移入しやすくなっています。
阪本氏:
確実に神田ファンが増えると思いますよ。じつは開発チームには神田ファンが多いんです。
神田は混じりっ気のない「悪」といいますか、清々しい「悪」。『3外伝』ではそこをさらに深掘りしている内容なので……。
堀井氏:
僕もじつは神田はフェイバリットキャラなんです。まあ、神田のアクリルスタンドはぜんぜん売れないんですけども(笑)。神田はずっと「クズ」なのがすごくいいですよね。