──(笑)。『極3』については、『龍が如く3』がもとになっているわけですが、お話できる範囲でどのようなところが変わっているのかをお聞かせください。
堀井氏:
『龍が如く3』はプレイステーション3初期のゲームですので、まずはいろいろと拙かったところを改善しています。また、新規シーンについても、皆さんが想像しているようなレベルのものではなく、ゲームシーケンス的なところも含めて大幅に変えていますね。発表しているところでいえば、アサガオのところですとか……。
阪本氏:
別のゲームを遊んでいるような新鮮さを感じられると思います。
堀井氏:
アサガオライフはすごくいいストーリーになっていると思います。料理がいろいろできるようになっていく中で、家族の絆だったりをしっかりと描いているんですね。
子どもたちとの絆みたいなものもありますし、アサガオ全体での話でもある。父親としての桐生が……というところを、すごく丁寧に描いているんです。
──アサガオといえば、子どもたちが食卓を囲んでいるスクリーンショットが公開されたじゃないですか。最初、咲が入っていることに気づかず、「あれ? 子どもたちが9人になってひとり増えてる! 『極3』は歴史改変ありなのか!?」と思いっきり勘違いしました(笑)。
阪本氏:
ひとり増えていたら「知らないやつがいるぞ!」と大事になってますから(笑)。
──この勘違いに関連した質問をさせていただくと、『龍が如く3』にはリチャードソンも登場しますし、柏木修も重傷を負って……という展開がありますよね。『龍が如く8』のリボルバーのマスターや、『龍が如く7』のサバイバーのマスターのことを考えると……。
堀井氏:
ナニヲイッテイルンデスカ?
阪本氏:
ゲームで描かれていること以上のことは、なにも明言していませんので(笑)。
堀井氏:
キャラの生死がどうこうという話ではなく、『極3』全体についてお話すると、現在も『龍が如く3』が遊べる状況なわけですから「変えなければいけない」という考えがもちろんあります。『極3』が発売されたら『龍が如く3』が遊べなくなるわけではないですし、変えないのであれば『極3』を作る意味はないですよね。
「『龍が如く3』からまったく変わっていません。演出も結末も出演陣もまったく同じで、綺麗に作り直しました」となってしまったら、「懐かしいね」で終わってしまう。だったら『龍が如く3』を遊んでもらえよ、という話ですよね。
『極3』は、『極』シリーズ最新作として2026年に発売する意味のあるタイトルでなければならない。『龍が如く3』はあくまでも原作であって、『極3』では変えるべきところをドラスティックに変えています。詳細はまだお伝えできませんが、皆さんが想像している5倍、6倍、いやもう10倍くらいすごいものになっていると思います。
阪本氏:
プレイしていただければ、「『龍が如く3』とは別のゲームだ」と感じてもらえると思います。
堀井氏:
ゲームサイクルも違いますし、『龍が如く3』には達成目録的なものもありませんでしたし、街の中で虫も捕れませんでしたし、OKAサーファーで移動もできませんからね(笑)。新しいコンテンツを多数入れていますので、プレイフィールはまったくの別物になっています。
ストーリーの描き方に関しても、ただ単に追加シーンが入っているというものではなく、シーケンスをおもしろくするためにバトルを入れたり、生き急ぎ過ぎだったら出会いのシーンを入れたり、そういったことを丁寧に加えています。
阪本氏:
たとえば、セガの昔のRPGをリメイクすることになったとして、街を歩いて誰かに話しかけるシーンがあるとします。
ハードも変わりました。グラフィックも変わりました。最新ハードで3Dグラフィックの街を歩き、誰かに話しかける。ただそれだけであれば、我々はこれをリメイクとは呼ばないわけです。
誰かに話しかける途中でなにも起こらなかったら意味がないんですよね。体験として別のものでなければ意味がない。ですので、『極3』で沖縄の街を歩いていただいたときには、飛び込んでくる情報量に驚かれると思います。
堀井氏:
歩いているだけで、いろんなものが気になると思います。『龍が如く3』はただ歩けるだけだったというか、やれることが少なかったんですよね。
──あ、では『極3』に「天啓」【※】は……。
※天啓:
『龍が如く3』では、街の中で特定の対象を主観モードで見ることにより、天啓を得て新たな能力を習得することができた。
阪本氏:
『極3』に天啓システムは入れていません。
堀井氏:
逆の言い方をすると、『龍が如く3』のアドベンチャーは天啓くらいしかなかったんですよね。
『龍が如く3』のすべてを否定するわけではなく、不要なものをなくし、メインストーリーのわかりやすさとか、ドラマの没入感だとか、力也との関係性をもっと丁寧に描こうとか、そういったところに力を入れている、という感じですね。
──なるほど。ちょっと話題を変えますが、『極3』では浜崎豪役に香川照之さんがキャスティングされました。香川さんはパフォーマンスキャプチャー【※】をされたと発表がありましたが、めちゃくちゃたいへんなことをやられていますよね? 香川さんクラスの役者さんをパフォーマンスキャプチャーされたなんて……と驚きました。
阪本氏:
そうなんです。パフォーマンスキャプチャーは本当にたいへんなことなんですよ。
──反響次第では、今後ほかの役者さんでもパフォーマンスキャプチャーを採用されるのでしょうか?
阪本氏:
いや、あれは香川さんだからできたことだと捉えています。パフォーマンスキャプチャーは、セリフを言い間違えたり、演技がうまくいかなかったら、最初からすべて撮り直しになるんですね。
セリフを事前に読み込んで暗記していただいたり、演技の予習をしていただいたり、さらにはスケジュールもかなりの時間を割いていただく必要があるので、香川さんに関しては本当にレアケースです。
意外に聞こえるかもしれませんが、パフォーマンスキャプチャーをしたからといって、必ずしもゲームキャラクターとして良くなるというものでもないんですね。本人の表情を取り込むのが正しいことではあるのですが、それに至るプロセスが正しいかというと、必ずしもそうではない。ちょっとしたことで撮り直しになるため、香川さんだからこそできたことだと思っています。
──なるほど。
阪本氏:
香川さんのあの演技って、我々が手付けでモーションをつけても再現できないんですよ。別の方がそれっぽい表情を演じたとしても、あのニュアンスは出せない。今回、無理を承知でお願いしたところ、幸運にも承諾いただいて実現したという、本当にレアなことだと思っています。
堀井氏:
浜崎のシーンはとてもおもしろくなっていますので、とにかく新鮮に感じていただけると思っています。ワクワクが詰まっているので、ストーリーも楽しんでいただけるんじゃないかなと。
──ここまでお話を聞いて、『極3』をプレイしたあとに『7外伝』をまた遊びたくなるんだろうな、と強く思いました。
堀井氏:
太一、綾子をはじめとした子どもたちとの絆をアサガオライフで強く体感していただけますから、『7外伝』のラストシーンがよりグッとくるでしょうね。
阪本氏:
自画自賛じゃないですが、そこが『龍が如く』シリーズのいいところなんですね。ゲームといっしょにプレイヤーもキャラクターも年をとって、それぞれがそのあいだの人生を歩んでいる……。『極』ではそこを遡って、もう1回、成長の様子を確認できるという……。
『龍が如く』シリーズは遊べば遊ぶほど、キャラクターたちの深みがどんどん増していくんですよね。
『7外伝』を先にプレイしていた方は「太一、ちっせえなあ」とか、「こんなバカなこと言ってたの?」となりますから……。
(取材に同席していたセガ PR担当者を見ながら)……って、え? どうしたの? 泣いてるの?
堀井氏:
なんでキミが泣いてるの?(笑)
(PR担当者さんがアサガオの子どもたちのことを思い浮かべて号泣)
阪本氏:
そんなことある?(笑)
堀井氏:
全部持っていかれましたね(笑)。
──ここでインタビューを終わらせるのもキレイかとは思いますが(笑)、最後に『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』を楽しみにしている方々へ、それぞれひと言お願いします。
堀井氏:
『3外伝』では峯を動かせるというところもそうですし、峯をいかに魅力的に描くかというところを意識して作っています。峯は正義感があるキャラクターではないので、これまでの『龍が如く』シリーズの主人公にはいなかったタイプ。誰かを助けたいわけでもなく、怒りやコンプレックスを抱えているキャラクターですので、峯が主人公だからこそ描けるものがきっとあるはずだと思っていて、プレイした方の心を動かす内容になっていると思います。
いままでの『龍が如く』シリーズとは読後感が違うものになっていますので、楽しみにしていてください。
『極3』は先ほども述べましたが、『龍が如く3』が遊べる状況で発売する意義を考えて制作しています。ちょっと追加シーンがあったり、ちょっとキャラを変えました、というものではなく、完全新作と同じくらいのフレッシュさ、ワクワクさを感じてもらえるタイトルになっています。
『龍が如く3』を否定しているわけでも、上書きするわけでもありません。「『龍が如く3』も『極3』もどっちもいいね!」と愛してもらえるものになっていますので、発売を楽しみにしていてください。
阪本氏:
昨年は海賊の『8外伝』を発表し、その1年後に『極3』と『3外伝』という、これまた誰も想像できなかったタイトルを発表することができました。
『8外伝』で初めて『龍が如く』に触れた方の中には「ナンバリングはちょっと……」と思っている方がいるかもしれませんが、我々が作っている中でのベストマッチングになっているタイトルです。遊んだときに「楽しかった」という作品になっていますので、ちょっとでも「おもしろそうだな」と感じていただけたなら、ぜひ手に取ってみてください。