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ヨコオタロウ氏が聞く「『ドラゴンクエストVII Reimagined』はなぜこれほどすばらしいゲーム内アートを実現できたんですか?」──再現性があれば……と思って話を聞いたらアートディレクターの才気に圧倒されてヨコオさんも「狂気を感じて若干怖い」と言い出す

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鳥山明先生のアートの「翻訳」を強く意識。じつは角の先端のポリゴンを割っている

──今作は海外の評価もすごく高いですよね。

八木氏:
おっしゃるとおり、海外からも大きな反響をいただいています。……でも、やっぱり日本の方たちの記憶の中にある「ドラゴンクエスト」とマッチしたと思っているんですね。

オリジナルの『ドラゴンクエストVII』やニンテンドー3DS版と必ずしも近い色ではないんですけど、なんとなくみんなが思っている思い出の『ドラゴンクエストVII』、「ドラゴンクエスト」感にすごくマッチしたといいますか。

浅野氏:
「ドラゴンクエスト」感といえば、鳥山明先生のアートの「翻訳」みたいなところもかなり意識しました。たとえば、鳥山先生って「角」を描くときに、線画の影響もあってちょっと丸めていることが多いんです。ですので、オルゴ・デミーラの角に代表されるように、目立った角を持っているキャラクターは「先端のポリゴンを割ってほしい」とキャラクターモデラーに無理を言ってちょっと丸くしているんですね。アウトラインがないから、代わりに形状でいこうと。

ヨコオタロウ氏が聞く『ドラゴンクエストVII Reimagined』はなぜこれほどすばらしいゲーム内アートを実現できたんですか?_023
© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX

藤坂氏:
以前、鳥山先生の絵を分析したことがあるんですけど、鳥山先生の絵ってすごくシンプルに見えるから簡単に描いてるように見えて、ベルトの重なり方まで意識して描かれていて。

紐がちゃんと穴に通っているかとか、靴底をしっかり作っているかとか。驚くほど細かなところまで立体感を考えて描かれていて、そういったこだわりに鳥山先生の命が宿っている気がするんですよね。

浅野氏:
鳥山先生が描かれてたモンスターのイラストを見ると、同じ大きさのイラストなのに、ギガンテスなどの大きいキャラクターの場合は広角レンズっぽくこちらが見上げている構図になっていて、逆に小さいキャラクターは正面を向いていたりするんですね。

なので、モンスターのスケール感に関しては、鳥山先生のアートが持っている印象にアジャストしていきました。「このモンスターはこの画角じゃないとこいつじゃない」とか、「目が合っていないとダメ」とか。

八木氏:
……いまさら浅野さんに聞くんですけど、バトルカメラについて「こうしてほしい」と僕からお願いしたことがありましたが、さきほど話したような見せ方のこだわりがある中で、この要望は、ジャマにならなかったんですか?

浅野氏:
ぜんぜん大丈夫です。このパターンは僕も考えていたものだったので、まったく問題ありませんでした。僕が今作のバトルでやりたかったのは、コマンドRPGのテンポ感を上げることだったんです。バトル中に「キャラクターが攻撃後、定位置に戻っている最中につぎのアクションを発動する」というのは絶対にやりたいなと。

アクション感のあるコマンドRPGにしないと、いまの人たちには受け入れられないと考えていました。

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© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX

──今作では歴代シリーズのウィンドウ形式のUIからタブ式のUIへ刷新されていました。「透明感のある、現代的なデザイン」だと感じたのですが、こちらも浅野さんからの提案だったのですか?

八木氏:
プロデューサーサイドから「UIを現代風にしたい」といったアイデアをもらいました。当初はウィンドウの見た目、トンマナを調整するくらいで収めておけばいいのかな、という話もあったのですが、思い切って現代的なものにしてしまおうと。

ただ、けっこうなタイミングで切り替えたので、いろいろなたいへんさがあって。とはいえ、最終的にまとめてくれるのは浅野さんということもあり、見た目に関して心配はしていませんでしたね。

堀井さんからは「遊びやすくなるんだったらUIも変わっていいよ」とおっしゃっていただいていたので、遊びやすさだったり、初めて触る方にもわかるように整えていきました。

浅野氏:
”原体験”というコンセプトを崩さないように、また、開発ディレクターからのオーダーもあり、新しいながらもプレーンな印象に作っていきました。オールドフィルム感みたいなところをトンマナとしてUIに入れながら、実直にテクスチャやアイコン、アイテムアイコンなどを整えていったんです。

ヨコオ氏:
過去にさまざまな「ドラゴンクエスト」の正解、チャレンジがあったわけじゃないですか。いろいろな発明があった中で、『リイマジンド』はすごく素直にオリジナルの『ドラゴンクエストVII』を落とし込んでいる。今作だけだと伝わらないかもしれないけれど、何作か並んだ瞬間にみんな気づき始めると思うんですよね。

味付けの濃い絵作りではなくて、堅実な絵作りをしているので、1作品で見せるよりもディズニーのように複数の作品がある中でふさわしいかどうかを見てもらうというか。そういうところをスクウェア・エニックスさんの中で育ててほしいなと思いました。

まあ、ヘキサドライブさんは違う会社じゃん、というツッコミはありますが(笑)。

八木氏:
(笑)。

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ツールが充実している時代に若いころを過ごされた方の作品が、いまメインストリームにきている

ヨコオ氏:
「NieR」もそうですけど、頭身が高い3Dモデルの作品はラインが当然あるわけで。でも、そうじゃなくて、スクウェア・エニックスさんのピクセルアート時代からかわいかった作品、ポップな作品ってたくさんあるじゃないですか。

そういったタイトルを『リイマジンド』形式で展開してほしいなって個人的に思っています。

藤坂氏:
これ以上リッチになる必要はないんじゃないかな、って思うんですよね。すごく解像度を上げました、ポリゴン数を上げました、というのが必ずしも「ドラゴンクエスト」として優れた作品ではないというか。ですので、僕も『リイマジンド』形式のものが今後現れてくれることを期待します。

浅野氏:
ヘキサドライブの中でも、いろいろな人がこういった作り方をできるようになってほしいと思っていて、人材開発室という部署で後進を生み出していくように動いています。

八木氏:
浅野さんは「40代中年男性Aさんと、女子大生Bさん」をペルソナとして頭の中において、設計を行うときに「この人は家に帰ってから1日何分プレイするだろうか」といったシミュレーションをしているんです(笑)。だからそういう方が育つことを楽しみにさせていただきます。

藤坂氏:
浅野さんがこれまでに影響を受けたエンタメって何ですか?

浅野氏:
幼少期に影響を受けたエンタメは…………なんでしょうね?

ヨコオ氏:
これだけしゃべる人なのに、これが思いつかないってどういうこと?(笑)

一同:(笑)。

浅野氏:
学生時代はスーパーファミコンの『フロントミッション』を遊んでいました。

シミュレーションやスポーツゲーム、職業体験できそうなリアル系のものが好きでしたね。アニメも現代をベースにした近未来的なものが好きでした。「SF×リアル」のような作品ですね。

ヨコオ氏:
スポーツゲームを好きだったというゲームクリエイターはあまり聞いたことがないですよね。スポーツゲームは陽キャがやるもので、ゲームクリエイターは陰キャだからスポーツゲームはやらないというか(笑)。

藤坂氏:
SF好きというのはなんとなくわかります(笑)。

浅野氏:
じつは絵的にもSFのほうが向いているとは思います。

ヨコオ氏:
浅野さんが作ったハードSFものも見たいので、人材開発室に期待するしかないですね。

浅野氏:
とはいえ、作るのはかわいいもののほうが得意なんですよね。かっこいいものやメカっぽいものは、お客さんに届けるときにデフォルメしたくなるというか、翻案したくなってしまって。生のままというよりは、丸めたいというか。

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藤坂氏:
僕は真逆で、本当はかわいいもの好きなんですけど、ドロドロした仕事が成功しちゃうというか(笑)。

ヨコオ氏:
そこはしょうがないですね(笑)。

浅野氏:
シルエットとかパワーのベクトル的な話に行っちゃうんですよね。ディテールよりもメリハリを重視するといいますか。

ヨコオ氏:
あっという間に時間が過ぎてしまったんですが、「ドラゴンクエスト」のプロモーションって、とても難しいなと感じていたんですね。堀井さんがいて、鳥山先生がいる中で開発現場のクリエイターが前に出てきて説明するというカルチャーでもない。そんな中で今日の取材はよくご許可いただけたなと。

聞きたいことに細かく答えていただいたので、記事になったときによろこぶ人がたくさんいると思います。レイヤーを分けた今回の記事で、テクニックや思いみたいなのが文章として残せたのは試みとして良かったなって思いますね。

八木氏:
僕はひたすら運が良かったですね。ディレクターに参加させてもらってありがとうございます、という感じです(笑)。

浅野氏:
今日はありがとうございました。チームも含めてですが、すべて巡り合わせだなと感じました。

八木氏:
……ただ、「浅野さんが注目されてほしい」と思いつつも、「あまり表に出すぎないでほしいな」と。もし僕が頼みたいときになって「もういっぱいで受けられません」とならないでほしい(笑)。

浅野氏:
じつは頭身が高いバージョンの画作りも、すでに自分の中では構想があるんですよね……。

ヨコオ氏:
まだ引き出しがあるんですか(笑)。

──(笑)。しかし、メガネ屋さんに30代半ばまで務めていて、ゲーム業界に入って初めてのアートディレクター作品が「ドラゴンクエスト」で、ここまですばらしいものを作り出すというのは……。在野にゲームクリエイターの原石みたいな方がまだまだいらっしゃるんだなと痛感しました。

ヨコオ氏:
さっきお話があったBlenderで作ってみたりとか、ツールが充実している時代に若いころを過ごされた方が作っているものが、いまメインストリームになってきていると感じています。スピード感含めて、「早くてクオリティが高い」というのをすごく感じますね。

藤坂氏:
僕は関係ないのに今日の取材に呼んでいただいて、こんなに詳しくお話を聞かせていただいて……とても幸運でした(笑)。改めて、若く優秀な方が最近は大勢いらっしゃるんだなと感じました。

上の世代は、浅野さんを潰さないようにフォローしてあげてください(笑)。とにかくおもしろいものを優秀な人にずっと作ってほしいんですよ。それがちゃんとある業界であってほしい。浅野さんはほかの業界に行っても成功しそうですけど、ぜひゲームを作り続けてほしいと思います。今日は本当にありがとうございました。

ヨコオ氏:
でも今日の結論は「再現性はない。浅野さんが狂気的だった」です(笑)。

一同:(笑)。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。元ファミ通.com編集長。1990年代からゲームメディアに所属しており、これまで500人以上のゲーム開発者、業界関係者、著名人インタビューを手がける。1970年代後半からアーケード、PC、コンシューマーゲームにのめり込み、『ウィザードリィ』のワイヤーフレームで深淵を覗き、現在に至る。
Twitter:@Famitsu_Toyoda

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