7ターン目で20点、2コストで全破壊。呆れるほど強く、大味なようで奥深い群雄割拠の時代「八獄環境」の魅力
──先ほど環境のお話も出てきましたが、みなさんが好きだった環境についても教えていただけますか。
友田さん:
僕は10年間『シャドウバース』を遊んできて、いま振り返っても一番おもしろいなと思うのは「八獄魔境アズヴォルト」環境ですね。
あぽろさん:
僕も八獄環境が一番おもしろかったですね。
『シャドウバース』のオリジナルキャラクターたちが主役になる環境ってあるじゃないですか。「十禍絶傑」とか八獄とか。僕はあの世界観がとにかく好きなんです。
ただ、そういうパックのときって、大体カードパワーがとんでもなく高くないですか?
友田さん:
そうなんです。とにかくド派手ですべてのカードが強かった。リリースからわずか10日でナーフされたデッキもあったくらい大味なスタートでした。
環境初期は、「絶尽の崇拝者」を採用したウィッチのOTKデッキがやばくて、普通に5ターン目で試合が終わるレベルだったんです。もちろん許されるわけもなく、一瞬で能力調整されたんですが……その調整後の環境が神だったんですよ。
──その神環境はどんな顔ぶれだったんですか?
友田さん:
「財宝ロイヤル」「ラストワードネクロ」「セフィーウィッチ」が並び立ち、アディショナルパックで「狂乱ヴァンパイア」「八獄ネメシス」も台頭。かといってドラゴンやビショップが不遇だったわけでもなく、まさに群雄割拠でした。
「どれだけ強いんだこのデッキは!?」と呆れるパワーのデッキたちが殴り合っていて、八獄のカードはローテーション落ちするまで一生強かったですから。
──あぽろさんにとって、八獄環境で思い出深いカードはありますか?
あぽろさん:
僕は、公式の事前カード紹介でウヌエル(翼天の執行者・ウヌエル)を独占紹介させていただいたんです。
最初に見せてもらったときは「なんだこの効果は?」って首を傾げた記憶があるんです。でも、せっかく自分が紹介させていただいたカードだから「なんとかして強く使いたい!」と思って試行錯誤していました。
友田さん:
ウヌエル、強かったなぁ……。とんでもないOTKのキーカードに大化けしましたよね。
あぽろさん:
そうですね。場でアミュレットが割れるたびに2点飛ぶので、ウヌエルを並べて低コストのアミュレットを連打すると、無限にダメージがループする。そんなコンボが開発されて。

友田さん:
『シャドウバース ワールズビヨンド』にもぜひ八獄のキャラクターたちがきてほしいですね。
バルバロス、ドラズエル、ミロエル、ガロダート……いまのビヨンド勢が八獄の刺激をどう感じるかはわかりませんが、「震えて眠れ」と言いたくなる最高のメンツです。
──もし八獄のカードがいまの環境に来たら、どうなってしまうんでしょうね……。
友田さん:
めちゃくちゃになっちゃいますよ。それくらい当時のカードは強かったですから。
セフィー(耽溺の咎人・セフィー)なんか、7ターン目に20点出せるという意味のわからない効果をしていましたし、イステンデッド(勅令の咎人・イステンデッド)に至っては、2コストで盤面のフォロワーをすべて破壊する。昔のバハムートが目じゃない効果でした。
しかも、それだけ規格外のカードがあっても、それが環境の絶対王者じゃないというのが八獄環境の恐ろしいところなんです。
僕はこういうパワーインフレ環境が大好きなんです。一見すると大味なんですけど、その大味さの中に、プレイヤーの技術が色濃く出るのが本当に楽しかった。


──強力なデッキがたくさんあったからこそ、対戦は熱かったと。
友田さん:
そうなんです。デッキが強力で尖っているからこそ、大会では信じられないようなドラマが生まれました。
たとえば、セフィーデッキにおいて、キーカードであるセフィーは、手札に引けば引くほど強いんです。
それなのに、「Shadowverse Invitational」という舞台で、2ターン目の時点で試合の展開を完全に読み切っての「手札のセフィーを、もう1枚のセフィーに混ぜる(融合)」という、本来のセオリーではありえないプレイが発生したんです。
それが結果的に大正解となって優勝をもぎ取ったんです。「あそこのセフィー混ぜがまさかの正解だったのか!」と会場が震えました。そういう極限の「味」があったのが、八獄環境の魅力です。
配信卓で起きた「ヒロイックエントリー!事件」。プロリーグでの熱闘の記憶。懐かしの思い出を振り返る
──みゃこさんは、どの環境が好きでしたか?
みゃこさん:
私は、全クラスのデッキの中で「マーズロイヤル(ヒーローロイヤル)」が一番好きだったので「Academy of Ages / 遥かなる学園」の時期ですかね。
当時、ランクマッチでマスターやグランドマスターに上がるのってすごく大変だったじゃないですか。勝ってポイントを100もらっても、負けたら80~90ポイント下がってしまって。
でも、マーズロイヤルのおかげですぐにグランドマスターになれたので、すごく好きだったんです。
友田さん:
「RAGE」の配信卓でも、みゃこさんはロイヤルでばっちり勝っていましたよね。「ヒロイックエントリー!」【※】という5コストのスペルを撃ったのに何も起きない、という事件はありましたが(笑)。
※カードの効果は「ヒーロー・フォロワーをランダムに2種類を1枚ずつ、自分のデッキから手札に加える。その後、相手のフォロワーすべてにXダメージ。Xは「自分の手札のヒーロー・フォロワーの枚数」である。自分の場にダメージを受けているフォロワーがいるなら、マッハナイト1体を出す。」。
みゃこさん:
たしか「なんかこのカード強いらしいから入れてみよう」と急遽入れたカードで、効果をよくわかっていないまま使ったら何も起きなくて……(笑)。私もびっくりしましたけど、対戦相手の方がもっとびっくりしていました。
友田さん:
あの試合、一緒に実況・解説をしていた海老原さんは「ええ!? それは撃っちゃダメだぁー!」と叫んでいました。会場で爆笑も起きていましたが、それでも試合には勝っていました。
──まさかの事件ですね(笑)。Surreさんはいかがですか?
Surreさん:
僕は「Ultimate Colosseum / アルティメットコロシアム」ですね。プロリーグの試合で、僕がギンセツ(大妖狐・ギンセツ)を使って、相手のクオン(陰陽の開祖・クオン)を倒した一戦が、いまでも強烈に印象に残っています。

友田さん:
Surreさんが所属していた「よしもとLibalent」が「AXIZ」と戦って、シーズン準優勝を果たしたときの試合ですよね。よく覚えていますよ。
Surreさん:
そうです、まさにあの試合ですね。もちろんプロリーグでの思い出が一番大きいですが、「Ultimate Colosseum / アルティメットコロシアム」はパックのコンセプト自体もすごくしっかりしていました。
各クラスに「アルティメット(究極)」な戦士たちが揃っていて、とにかく世界観がかっこよかったんです。
──環境に存在したデッキも、Surreさんの好みにあっていたんですかね。
Surreさん:
そうですね。僕はもともと、盤面でしっかりフォロワーを戦わせる「正統派なデッキ」が好きで、そうしたデッキがきちんと活躍できる環境を好む傾向があるんです。
僕が「RAGE」で優勝した「ワンダーランド・ドリームズ」のときも、まさにそういう盤面戦ができる環境だったからこそ勝てたと思っています。
逆に、盤面を無視して手札から直接大ダメージを叩き出すような空中戦のデッキは昔から大の苦手で。そういうデッキが強い環境のときは、いつも「ぐぬぬ……」と悔しがりながら、必死に苦手を克服するために練習を重ねていました。
「カードゲームで世界大会に行ける」という衝撃。数々のドラマを生んだ「RAGE」の熱狂
──ご自身が出演されたり参加されたりした中で、特別な思い出があるイベントや大会はありますか? 順番を逆にして、まずはあぽろさんからお願いします。
あぽろさん:
あれは「運命の神々」の時期だったと思うんですが……そのときの「RAGE」ですね。
Day2で5勝1敗までいって、あと一歩でプレーオフ(決勝トーナメント)に進出できるという最後の試合で、プロのあぐのむ選手に負けてしまったんです。
それが本当に、本当に悔しくて……。悔しすぎて寝込んでしまい、その後3日間くらい動画投稿を休むほどでした。
──それは、ご自身のプレイングに納得がいかなかったのでしょうか。それとも全力を尽くした結果の悔しさだったのですか?
あぽろさん:
うーん、とにかくあぐのむさんが強かったですね。
──寝込むほどガチになれたということは、それだけ「RAGEの舞台に立ちたい」というモチベーションが高かったということですよね。
あぽろさん:
そうですね。動画投稿者として「おもしろい動画を作りたい」というのは大前提としてあるんですが、活動を続けるうちに「ひとりのプレイヤーとしても強くありたい」という気持ちが芽生えてきたんです。
──どのあたりから「強くなりたい、大会で勝ちたい」と意識するようになったのでしょうか。
あぽろさん:
きっかけはやっぱり、プロリーグが発足したり、世界大会を観たりしていく中で、年々競技シーンへの気持ちが高まっていったことですね。
何より、いつも画面の向こうで流れる友田さんの熱い実況を聞いていて、いつか自分もあの配信卓に立って実況されたいと。「友田さんにゼウスって叫んでほしい!」と思うようになったんです。
友田さん:
それは……めちゃくちゃうれしいですね。実況者として、あの場に立ちたい、大会に出たいと思ってもらえること以上の喜びはないですから。
──それこそSurreさんは数々の大会に参加されてきましたが、これまでで一番印象に残っている大会はどれですか?
Surreさん:
自分がプレイヤーとして出場した中だと、やはり世界大会の「Shadowverse World Grand Prix」ですね。
「カードゲームで世界大会に行ける」という夢のような経験をして、世界中の強豪プレイヤーと戦い、合間には談笑して交流して……。本当に貴重な経験ができたので、印象に残っています。
あと、解説として呼んでいただいた大会だと、hasuくんが優勝した「RAGE 2017 Winter」。彼がアグロデッキを3つ持ち込んで優勝した大会です。
友田さん:
そう。hasuくんがマンモスドロシーで予選を抜けてきて。超越を思わせておいてからのまさかのアグロ3本。びっくりだよね。
Surreさん:
あれはびっくりだよね。


──みゃこさんはいかがですか?
みゃこさん:
やっぱり、「Shadowverse Queen Cup」ですね。私はもともとゲームがあまり得意ではないんですが、『シャドウバース』はずっとプレイしていて。
当時は周囲からも「何か実績を」と言われていたんです。でも、大会の実績なんて簡単に作れるものではないし、自分には無理だと思っていました。そんな中で「Shadowverse Queen Cup」という素晴らしいチャンスをいただいて、全力でがんばれたことがうれしかったです。
あとイベントとしては、公式コスプレイヤーとして参加した際に、会場に「クレイゴーレム」や「ハッピーピッグ」といったキャラクターの着ぐるみや、コスプレイヤーさんがたくさんいて、お祭り感があった初期のリアルイベントも印象深いです。
自分の写真をその場でゲームのカード風にしてくれるキャンペーンなどもあって、いまでもすごく大切な記念になっています。
──先ほど「ゲームは苦手」というお話がありましたが、そんなみゃこさんが『シャドウバース』を長年続けられたのは、どのような要因があったのでしょう。
みゃこさん:
なんなんでしょうね……。もちろん「純粋にゲームとしておもしろい」というのは大前提としてあるんですが、やっぱり私はアクションゲームなどの細かい操作が全然できなくて。
その点、カードゲームは操作自体がすごく簡単でシンプルですよね。だからこそ、私のようなプレイヤーでも挫折せずに、ずっと楽しむことができたのかなと思っています。
プロリーグ発足。『シャドウバース』が「eスポーツ」へと舵を切った、その瞬間
──では友田さん。初期からプレイヤーとしても実況者としてもシーンに関わり続けてこられましたが、ご自身の中で特別な思い出があるイベントはありますか?
友田さん:
ずっと携わらせていただいているので、ひとつのイベントに絞るのはちょっと難しいですね……。ただ、歴史の転換期としていまでも印象に残っているのは、やっぱりプロリーグの立ち上げです。
「プロリーグが発足するから、実況を担当してほしい」と打診されたときは「マジで!?」と驚きました。
──その「マジで!?」というのは、どういった心境だったのでしょうか。
友田さん:
「すごいことが始まるな」という興奮を含んだ驚きです。
野球やサッカーのような本格的なプロリーグができて、企業のプロチームがどんどん参戦してきて、プロ選手を選ぶためのオーディションが始まって……。あのときのわくわく感はいまでも覚えていますね。
『シャドウバース』というゲームが、ひとつの「eスポーツ」へと変わった瞬間だったと思います。
──『シャドウバース』がどのような路線で進んでいくのか、その大きな分岐点でもあったと。
友田さん:
「みんなでわいわい楽しめるスマホゲーム」で行くのか、それとも「ガチの競技路線」で行くのか。あのときにeスポーツへと舵を切ったからこそ、いまの歴史があるんだと思います。
個人としても「Wonderland Dreams / ワンダーランド・ドリームズ」の時期から実況をやらせてもらえましたし、そこから高校生たちに向けた「全国高校生シャドバ甲子園」が始まったり、TVアニメが始まったりと、さまざまな展開が広がっていきました。
そうした10年間のすべての積み重ねが、これから始まる「Shadowverse Premier Series」へと繋がっているんだなと、いま改めて実感しています。僕個人としても、作品の歴史としても、やはりあのプロリーグ立ち上げの時期が一番印象深いですね。
──Surreさんはそんなプロリーグで戦ってこられたわけですが、その当時の思い出はありますか?
Surreさん:
引退直前によく考えていたのは、「趣味を仕事にするのは、本当に苦しいことなんだな」ということでした。もちろん、いい面もたくさんあるんですけどね。
長い間カードゲームをやってきましたが、まさかこれが仕事にできるとはまったく思っていませんでした。「RAGE」で優勝した当時は別の業種で働いていましたし、なんなら「一生この田舎(地元)で暮らすんだろうな」と思っていたんです。
だからこそ、『シャドウバース』が自分の人生をガラッと変えてくれたという、ありがたい気持ちがすごくあります。
──具体的にはどういった部分が一番苦しかったのでしょうか。
Surreさん:
どうしても「勝たなきゃいけないプレッシャー」が常に付きまとう点ですね。
友田さん:
仕事において、自分の評価に「勝ち負け」がずっと直結してくるのって本当にしんどいよね。「任された業務をこなせばOK」という仕事じゃないし、どれだけ努力しても全員が報われるわけじゃないから。
Surreさん:
しかもカードゲームって「練習を積み重ねれば絶対に勝てる」とは限らないじゃないですか。そこがよいところでもあり、残酷なところでもあって。
プロリーグの限られた試合数では確率が収束しきらず、どうしても運の偏りが出てしまいます。当時のシーズン中は、プレッシャーに押しつぶされそうになりながら、苦しんで練習していたのをいまでも覚えています。
──その過酷な環境の中で、どのように気持ちを維持して戦い続けることができたのですか?
Surreさん:
まずは「自分を信じること」ですね。「自分は強いのだから、練習の成果を発揮すれば結果はついてくるし、見ている人も納得してくれる」という信念を持っていたおかげで、連敗しても自分を見失わずに済んだのだと思います。
それに応援してくれるファンの方々の存在も大きかったです。日々の温かいコメントはもちろんですが、「リーグチャンピオンシップ」のオフライン会場に、大勢のファンがチームの応援バルーンを持って集まってくれた光景には心から励まされました。
その試合には敗れてしまいましたが、「応援してくれる人たちのために、来期も必ずがんばろう」という次へのモチベーションに繋がりました。僕にとって一番の支えは、間違いなくファンの存在でしたね。






