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『シブヤスクランブルストーリーズ』クラウドファンディング第2弾をCAMPFIREにて実施──前代未聞の「うぶごえ」未入金問題をどう乗り越えたのか? なぜ第2弾の実施を決めたのか? 「開発参加型クラファン」とはどういうものなのか? イシイジロウ氏とCAMPFIREに経緯と意図、狙いを聞いた

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「開発参加型クラファン」は、「いっしょに作りたい」という気持ちを実際に形にするもの

──今回のクラファンについて、イシイさんは「開発参加型クラファン」と説明されていますが、詳細を改めて教えていただけますか。

イシイ氏:
前回は開発をスタートさせるためのクラウドファンディングでした。一方、今回のクラファンは、開発のクオリティを上げるためのものになります。前回のクラファンのときに、みなさんから「エキストラとして出演したい」、「名前があるキャラクターとして出演したい」、「TIPを書きたい」といったご要望を多数いただいたんですね。

「いっしょに作りたい」という気持ちを形にする、実際に開発に参加していただくというクラウドファンディングをやろうと思っているんです。

もちろん、支援に対してのリワードもあるのですが、その多くが撮影の補填、撮影のクオリティアップにつながるものとなっています。これについては、撮影環境を整えたり、ロケ弁を充実させたり、ロケ場所を少しでも広いところにしたり、移動手段を充実させたり、俳優さんの時間をより多くいただけるような部分に使わせていただきます。

また、エキストラのみなさんには収録に参加していただくことになりますが、出演するだけではなくて、プロモーションにも参加してほしいと思っているんですね。

収録に参加していただいた際、ご自身のスマホで現場を撮影いただき、「こんなシーンを撮ったよ」とか、「誰々さんの出番になったよ」といったことをSNSなどに投稿していただく。そのような形で、プロモーションと撮影をみなさんといっしょに盛り上げていきたいなと。支援者の方、いわゆる共犯者の方と会話をさせていただいたときに「ゲームに参加したい」という熱意を感じましたので、その想いを実現したものとなります。

また、「出演はちょっと恥ずかしい」という方に対しては、テキストでTIP【※】という用語解説を書いていただいたり、お店の名前を命名していただいたり(命名権)といった、制作部分に参加いただけるリワードを用意いたします。

もう一点、今回のクラファンで注目いただきたいのが、「カットオーナー」というリワードです。たとえば、『428』では約7000枚という写真がゲーム中で使われているんですね。その1枚1枚の写真に「オーナーの権利」を与えるというものになります。

ゲームをプレイしたときに、特定のカットに「by イシイジロウ」と名前が出る、といったイメージが近いものとなります。自分のカットであることが証明できるほか、できるだけ大きな解像度でオーナーにその写真をお渡しするという、参加型のリワードです。

ゲームに自分が出演する、文章も書ける、命名権もある、さらに写真のオーナーにもなれるという、さまざまな形で参加できるクラファンになっています。

※TIP……『街』、『428』における、文章中の青い単語を選ぶと表示される用語・人物解説のこと。ゲームの裏設定や小ネタのほか、進行ルートの分岐を解くためのヒントが隠されていることも。

『シブヤスクランブルストーリーズ』クラウドファンディング第2弾|イシイジロウ氏&CAMPFIREさんインタビュー_006

──なるほど。これまでのクラファンのリワードではあまりなかったタイプのものを用意されているのですね。

イシイ氏:
もちろん、Tシャツやぬいぐるみ、クレジットの追加、デジタル写真集、サントラといった標準的なリワードもありますので、幅広く用意しているという感じですね。

──目標金額について教えてください。

イシイ氏:
目標金額は1000万円ずつとしています。

──All-or-Nothing【※】形式なのでしょうか?

イシイ氏:
今回はAll-or-Nothingではなく、All-inとしています。まずは目標値として、100%=1000万円と提示させていただきます。

※All-or-Nothing(オールオアナッシング)……目標金額に達成した場合のみプロジェクトが実行され、リワードが得られるというもの。All-in(オールイン)は、目標金額に達成しなかった場合でもプロジェクトを実行し、支援者はリワードが必ず得られる。

イシイさんだけを「特別扱い」するのではなく、クラファン全体の安心・安全なしくみ作りに注力

──CAMPFIREさんでの実施ということは、支援者側が手数料を負担することになりますよね?

イシイ氏:
たいへん心苦しいのですが、手数料は支援者さまにご負担いただく形とさせていただいています。……細かい問題なのですが、クラウドファンディングは内税なんですね。たとえば、1億円の支援を集めたとしても、その金額から消費税や手数料が引かれた金額が起案者に支払われる。この部分を透明化したいということが意図となります。

前回支援していただいた方から比べると少しだけお値段が高くなってしまい、申し訳ありません。CAMPFIREさんの手数料は17%となりますので、これらを明確に公表させていただいた状態で、支援を募らせていただきます。

──「うぶごえ」の未入金問題を受け、たとえば手数料を通常から減らすなど、イシイさん側の負担を少しでも軽減するような、CAMPFIREさん側としての特別な対応があったりするのでしょうか。

藤原氏:
CAMPFIREをご利用いただいている起案者さまは大勢いらっしゃいますので、既存の方々と平等に扱わせていただくというのが前提としてございます。

ほかの方々よりも優遇するのは平等性を欠いてしまいますし、イシイさんだけを救うというのも、おそらくイシイさんが求められていることとは違うだろうとも思っています。

──救済ではなく、より強固で安全・安心なクラファンのシステムを示し、世間の不信感を払拭することに注力されている、ということですね。

藤原氏:
業界全体として、クラファンが「安心・安全」ということを示していきたい、という気持ちです。『SSS』を応援してくださっている共犯者の方々、支援者の方々といっしょに作品を作っていく、という覚悟を持っていらっしゃるイシイさんの「想い」。この想いを広げていくことが、クラウドファンディングプラットフォームである我々が注力しなければならないところだと考えております。

じつは、ちょうど私たちも、資金だけではなく、そういった「作り手側の想い」を重視し、そこを起点に広げていくことが重要なのだと改めて思っていたんですね。

そこに合わせて機能をアップデートしたり、やり方も変えていたタイミングで、イシイさんとお話できる機会をいただいたんです。イシイさんの想いに共感したといいますか、「私たちにできることがあるのではないか」と強く感じたんですね。

『シブヤスクランブルストーリーズ』クラウドファンディング第2弾|イシイジロウ氏&CAMPFIREさんインタビュー_007

クラウドファンディングの本質は応援。ファンの「応援したい」を支える仕組みづくりも強化

──今後プロジェクトを立ち上げようとしている方々に対して、CAMPFIREが支援を強化するような施策は考えられているのですか?

藤原氏:
イシイさんとの話し合いを経て、改めて気づけたこと、やるべきだと思ったこととしては、ふたつほど実施予定のものがあります。これまで途中で入金するという仕組みは実装していなかったのですが、イシイさんとお話をしたときに「こういう必要性があるんだ」と気づかされました。今回発生した問題を踏まえ、そういったニーズへの対処策として活用いただける可能性があると捉えることができました。

もうひとつは、「支援者の方々の想い」です。イシイさんからは「いちばん苦労されて、いちばん悔しいのは支援者さまだ」とお話をうかがいました。そういった想いをなんとか好転させる施策や機能をCAMPFIRE側で用意できるのではないか、と。

ですので、数ヵ月後に実施しようと考えていた機能を前倒しでリリースすることを考えております。ファンの方々の声が届きやすくなる施策となりますので、ご期待いただければと思います。

──その機能の詳細について、お話できる範囲で教えていただけますか。

藤原氏:
第1弾で実装を予定しているのが「キーワードリターン」という機能です。イシイさんが前回のプロジェクトで、抽選で当たった方が支援できる施策を行われておりましたが、「合言葉のようなものを知っている方が支援できる」といった施策を実装したいと考えています。いままでは先着順のような形でしたが、「想いが強い方の支援をお願いしたい」といった起案者の声に応えるものとなります。

第2弾に関しては、まだ検討中の段階ではありますが、起案者が事前に支援者の声を聞ける機能をリリースしようと考えています。イシイさんがおっしゃったように「支援者を巻き込んでいく」、「支援者と共創していく」ということは本当に重要だと思っているんです。プロジェクト作品を制作する際に「こうやろうと考えているんだけど、どう思いますか?」といった、起案者が支援者に問いかけられるような機能、アンケート的な機能の実装を予定しております。

──なるほど。イシイさんは、この新機能の説明を受けてどう感じたのでしょうか。

イシイ氏:
大手の会社さんはEC型のクラウドファンディングにシフトしがちだったところがあって、いわゆる「応援型クラファン」とか、「エンタメ型クラファン」は小規模なプラットフォームさんから出てきたところがありますよね。

クラウドファンディングの本質というのは応援型だと思っているんです。ただ、応援型はリターンが無形のものだったりするので事故が起こりやすい。何かしらの物品を直接リターンで送る場合はトラブルが起こりにくいのですが、たとえばゲームや映像を作るといった場合は、実現できるかわからないので問題が発生しやすいというか。

ですので、今回CAMPFIREさんが「うぶごえ」未入金問題をきっかけに、改めてお客さま、そして起案者との信頼関係を作る姿勢を見せていただいたことは、私としてはすごくうれしく思っています。他社さんがやられているシステムよりもいいものを前倒しで導入しようと対応いただいたことに感謝いたします。

藤原氏:
CAMPFIREのエンタメ事業は「for Entertainment」というテーマを掲げてこれまで活動を行ってきました。エンタメという言葉は幅広く、ゲームも含めてさまざまなクリエイティブが該当します。恥ずかしながら、それぞれの分野に対しての課題や、プラットフォームとしてできていないことは、これまでたくさんありました。

その中で今年の当社のミッション刷新に合わせて、エンターテイメント事業として、挑戦者・ファンの想いを起点に、共創体験と深い絆の価値を生み出すサービスへと進化していこうとしております。今後も、業界全体に向けて最適化された機能や、パッケージをお届けしたいと考えています。

「クラウドファンディングはやっぱりゲーム業界に必要だよね」と感じてもられるように

──CAMPFIREさんにおうかがいしたいのですが、「うぶごえ」未入金問題を受けて、今後クラウドファンディングはどう変わっていくべきと考えていらっしゃいますか? 先日、CAMPFIREさんも不正アクセスによる個人情報漏洩の可能性がありましたが、そういった問題も含めて、どう対応されていくのでしょうか。

藤原氏:
本件におきましては、お客様および関係者の皆様に多大なるご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。弊社のGitHubの不正アクセスの問題と、今回起こったクラウドファンディングの信頼という根底を覆す問題も含め、改めて「安心・安全」ということが最重要だと認識しております。この「安心・安全」のためには、起案者の保護と支援者の保護の2点が重要だと思っています。

両者の保護として、これまでも審査の段階でさまざまな観点からプロジェクトやリターン内容をチェックをしておりましたが、より強化を図り、安全性の担保を引き続き行っていきます

弊社のセキュリティに関しては、同様のケースが起こらないよう、対策はすでに終わっております。セキュリティ対策は継続的に行う必要がございますので、今後もさらに強化を行ってまいります。

──ユーザーが安心・安全に使える環境づくりを行っているわけですね。

藤原氏:
みなさんの抱くクラウドファンディングのイメージは、「資金調達」の意味合いがまだまだ強いと思っています。実際、起案者の方と対峙したときに、EC的な文脈の意味合いで捉えられる場合がほとんどです。

資金調達だけではないクラウドファンディングというのを周知できていない点について、課題をすごく感じています。今後は、我々の事業部として「エンターテインメント×クラウドファンディング」により特化する動きをしていきます。

そのコアに置くのは、ファンの方々です。プロジェクトを応援してくださっているファンの方々、「支えていきたい」という強い想いを持つ方々が、より支援しやすくなる、応援しやすくなる方法を模索していきます。

お金だけではなく、ファンコミュニティとしていっしょに会話ができるような、想いが巡り合うサービスを実装するのも、その想いを実現したいからです。「起案者の想いを起点に、ファンと新しいクリエイティブを生み出していく」という戦略を明確なミッションとして、一丸となって動いていきます。会社全体としても「さまざまな想いを巡らしていくサービスを作っていきたい」と考えておりますので、クラウドファンディングだけではない会社に切り替えていく、大きな飛躍の1年にしたいというのがいまの所感です。

『シブヤスクランブルストーリーズ』クラウドファンディング第2弾|イシイジロウ氏&CAMPFIREさんインタビュー_008

──最後に、おふたりから今回のクラファンに関して興味を持っている方々、第1弾のときから応援してくれている支援者の方々へ、それぞれメッセージをお願いします。

藤原氏:
クラウドファンディング業界全体としての安心・安全面を発信したいということ、そしてイシイさんの想いに共感したというところから、今回の『SSS』クラウドファンディングをサポートさせていただくことになりました。

今回のプロジェクトでは、支援者の方々の熱い想いがより膨らんでいくものに仕上げると同時に、「熱量高く、イシイさんのプロジェクトを支援してよかった」と改めて思っていただけるようなものになることを目指しています。プロジェクトスタート後も、CAMPFIRE側から知恵を出し、ブラッシュアップに努めてまいります。

よりよいプロジェクトにするべく、CAMPFIREができる最大限のことを提供していきます。みなさんが「クラウドファンディングはやっぱりゲーム業界に必要だよね」と感じていただけるようなところまで、支援を行っていきたいと思っております。イシイさんのプロジェクトとともに、クラウドファンディングそのものを応援していただければ幸いです。

イシイ氏:
CAMPFIREさんはお客さまの安全・安心を第一に考えていただいています。私自身、クラウドファンディングに対して大きな夢を持っているので、「こういったことはできませんか?」とか、「クラウドファンディングはこうあるべきではないですか?」といったことをCAMPFIREさんにお伝えしています。

「うぶごえ」でのクラウドファンディング第1弾では未入金の問題はありましたが、お客さまの笑顔がたくさんあって、すごく楽しんでもらえたと思っているんですね。大手の会社さんから発売されるゲームは、プロモーションを始めて数ヵ月間の盛り上がりで終わってしまうことが多いですが、クラファンから生まれるゲームは違います。

「発売の3年前からいっしょに盛りあがった」、「応援して撮影にいっしょに参加した」など、お客さまとともにゲームを作れることに、作り手としてよろこびとワクワクを感じています。同時に「支援以上のものをお返しする」という気持ちが強くあります。

発売までの期間をみなさんといっしょにお祭りにしたいですし、ゲーム発売後に「プレイしてよかった、応援してよかった」と思っていただけるものを提供し、またお祭りが始まることを目指します。こういうことができるのはクラウドファンディングの仕組みがあってこそです。CAMPFIREさんと本気で取り組んでいますので、安心してもらったうえで、みなさんに楽しんでいただくということを、いちクリエイターとして目標にしていきたいです。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。元ファミ通.com編集長。1990年代からゲームメディアに所属しており、これまで500人以上のゲーム開発者、業界関係者、著名人インタビューを手がける。1970年代後半からアーケード、PC、コンシューマーゲームにのめり込み、『ウィザードリィ』のワイヤーフレームで深淵を覗き、現在に至る。
Twitter:@Famitsu_Toyoda

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