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【速報&水口哲也氏インタビュー】『Rez Infinite』PC版が本日登場! その出来映えに茫然自失しつつPC版の狙いを訊く。MODでユーザーが生み出す可能性に期待の言葉も…!

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 本日8月10日0:00に、一切の事前告知なくリリースされたPC版『Rez Infinite』。VRの新古典として名高い同作のSteamでのとつぜんの発売は、すでに各所で話題を呼んでいる。

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PC版がリリースされたSteamページ

 今回、電ファミニコゲーマーは、同作のパブリッシャーEnhance GamesおよびデベロッパーMonstarsからの招待を受け、本日のリリースに先駆けて、PC版の試遊(Oculus Rift / HTC Vive使用)と、同作のプロデューサー、水口哲也氏へのインタビューを敢行した。

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(取材当日のプレイ画面)

 8月初旬の都内某所、指定された会場に向かった編集部は、映画館さながらに照明が落とされた広い会議室におそるおそる足を踏み入れた。我々はそこで、4Kの大画面に映し出された『Rez Infinite』のPC版の鮮明さと、Oculus RiftならびにHTC ViveのVRで完全に動作する同作の異様なリアリティを体験し、しばしのあいだ、言葉を失うことになった。

 ありのまま言えば、あらかじめ考えていた質問の内容が吹っ飛んでしまうほどの衝撃だったのだ。そして着席すると、目の前にはこの怪物をつくりあげた張本人、水口哲也氏が座っていて、にこにこと微笑んでいるのだ。私たちは思った、さて、いったい、この人になにを尋ねればいいというのだろう?

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水口哲也氏

 そういうわけで、以下にするインタビュー原稿には、たったいま体験したものをなんとかして言葉にしなければと苦心する、編集部の必死さが現れているように思う。もっと実際的な情報を優先した内容にしようかとも考えたが、やめておいた。あの場所で起きたことは、単純なプレス記事の作成で済ませられるようなレベルのものではなかったからだ。

 いま考えてみると、もしも、おそらく日本で最もVRゲームをプレイしているVRマニアでありドワンゴVR部greenspa氏と、ドワンゴの技術を支える凄腕エンジニア、MIRO氏が同席していなければ、この取材は失敗に終わっていたかもしれない――そう思えるほどの、語るべき言葉がなかなか見つからないような体験だった。これは取材記事であってプレイレポではないので、ゲームの概要に誌幅を割くことは控えたが、気になる方は、いますぐダウンロードしてプレイしてみてほしい。

 さて、前置きはこれぐらいにしておこう。私たちが録音したテープは、試遊を終えて茫然自失としている編集部の、嘆息から始まっている。

取材/藤田祥平透明ランナー
文/藤田祥平


『Rez Infinite』PC版をプレイして…嘆息

――いやぁー。

greenspa:
 いやぁー。

――すごすぎますね。

greenspa:
 すごいですね……(ため息)。

水口氏:
 (微笑んでいる)

――どうしましょうか。もうこれは、感想から始めたほうがいいかもしれませんね。

greenspa:
 そうですね。

――では……僕から。じつは昨晩、電ファミニコゲーマーのオフィスで、PS VR版を初体験しました。それからここにお邪魔してPC版を体験して、2日続けて異なるプラットフォームでおなじゲームを遊んだことになります。とても楽しかったです。

水口氏:
 ありがとうございます。とても嬉しいです。

――PS VRはヘッドマウントディスプレイのトラッキング機能を用いていて、自分の視線の先にカーソルが動きますよね。そして今日体験したPC版は、両手に握ったコントローラーを大きく動かして、まさに腕で指し示すようにしてカーソルを操作する。このインターフェイスの差だけで、ゲームが持っている意味が変わってくるんです。

水口氏:
 ふむ。それはどういうことでしょう?

――PS VR版が「見ること」のゲームだったとすれば、今回のPC版は「指し示すこと」だなと思いました。例えば、僕がPS VR版で首を振りながらプレイしつつ連想したのは、知覚や瞑想や啓示のような言葉なんです。それが、今回は命名や交信や影響のような言葉を思い浮かべました。これは腕を振りながら撃つことの影響だと思います。プラットフォームの違いが、ゲームに与える意味を変えてしまったのだと思います。

水口氏:
 ありがとうございます(笑)。なるほどなあ。PCに対応するのはなかなか大変だったので、そう言っていただけて嬉しいです。そんな読み解き方もあるんだ。とても嬉しいです。

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新たな身体感覚を呼び覚ます『Rez Infinite』

greenspa:
 それでは、私からも。感動したのは、視点移動がとにかくなめらかなことでした。だいたいのVRゲームって、一人称視点ですよね。でもこれは三人称視点で、しかもキャラクターが目の前に浮いている状態です。それでいて、ここまで酔わないゲームって、ちょっとほかにないなと思うんです。

――たしかに、不思議なくらい酔わないですよね。

greenspa:
 もちろん、三人称視点のゲームもないわけじゃありません。ミニチュアの世界で、箱庭のなかを動かせるというようなものはけっこうあります。でも『Rez Infinite』はそもそものつくりが違う――これって、プレイヤーが後ろを向いたら、世界を映すカメラ自体が回るじゃないですか。それってすごく酔いそうな表現なのに、ぜんぜん酔わない。それどころか、気持ちいい。

 あの蛇――いや、魚でしょうか――魚がこう、すっとこう通っていって、自分が追いかけていく感じ。そこでプレイヤーが後ろを振り向いて、その姿を追いかけていく。あれがすごく気持ちいいんです。

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「スネーク」と呼ばれている、長い帯状の存在。Area Xにて遭遇することができる
(画像はソフトウェアカタログより)

水口氏:
 あれですか。べつにこれという名前はありませんが、われわれは「スネーク」と呼んでいましたね。

――僕はドラゴンだと思いました(笑)。

greenspa:
 (笑)。まあ全体として、身体で操作して狙うという感覚、自分自身がうしろを向くという身体感覚を、ゲームに持ち込むのがこんなに楽しいのか……と思いました。シナスタジア・スーツ【※】を体験したときもそうでしたが、身体の新しい感覚を開発してくれるというか。

※シナスタジア・スーツ
Enhance Gamesが開発した全身体感型スーツ、あるいはスーツ型コントローラー。スーツ全体にモーションセンサーとバイブレーション機能を埋め込むことで、人体の外付け部品としてのインターフェイスによる操作の感覚から飛躍して、プレイヤーの肉体そのものをインターフェイスに変質させるような体験をもたらすデバイス。非売品。

「感覚の境界をなくそうとしている」

――身体感覚でいえば、PS VRよりもOculusのTouchコントローラー【※】で強く感じたことがあります。あれでプレイしたときに、ありのまま言えば、なぜ自分の手はここにあるんだろうと思ったんです。

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※Touchコントローラー……Oculus Touch。Oculus社が開発したVR用ハンドコントローラー。指の動きまで認識し、手に近い複雑な動作を高い精度で再現するのが特徴。
(画像はAmazonより)

水口氏:
 自分の手はなぜここにあるんだろうというのは、どんな気持ちでしょう?

――Oculus Touchって、自分の手をべつの世界のなかに入れることに特化したデバイスですよね。ただPC版では、ゲーム内にプレイヤーの手が描かれていません。しかし操作としては、自分の手を動かして指示するものになっている。これによって、ある種の肉体消失の感覚があったんです。ゲーム内における自分の手のありかが、わからなくなるというか。

greenspa:
 一般的な一人称視点のVRのゲームだと、ゲーム中に半透明で現実世界の手を描画したりしますよね。プレイヤーがそれを操作するための物差しになるような。ただ、『Rez Infinite』はそうじゃない。

――そのあたりについてお聞きしたいですね。プレイヤーの腕を使うOculusとViveに対応するにあたって、腕を描かなかった理由はあるのか、そして一人称視点ではなく、俯瞰した視点であることになにか意味があるのか。

水口氏:
 じつは、いまのお話を聞くまで、そのことを深く考えていたわけではありませんでした。実験もしていません。ただ開発しながらみんなで話していたのは、もしもプレイヤーの手が描かれてしまうと、プレイヤー自身がそこにいるという実在感が、かえって薄れてしまうんじゃないか、ということでした。

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 じつは『Rez Infinite』って、どれだけ肉体を消失させられるのかということを考えているのかもしれません。どれが視覚で、どれが聴覚で、どれが触覚なのか、ぐちゃっとしている状態を目指している。感覚の境界をなくそうとしているように思います。変な話ですけど、僕には「意識体【※】」の概念なんかも頭にあって、そういうものを描きたかった。

※意識体
アストラル体とも。形而下的な肉体とは異なる、超越的な形而上的肉体の概念。単純な五感の感覚を越えた、エーテル状態の身体意識として考えられることが多い。情緒、啓示、星辰などを司るとされ、おもに神智学の分野において取り上げられる。「変な話ですけど」と水口氏が断りを入れたのは、科学的な時代である現代にこの語彙を持ち出すことからの遠慮だと思われる。

――なるほど。だからこそ酔いや不快感を排除するために、あの、ほとんど職人芸ばりの調整がなされていると。

水口氏:
 そう考えたときに、あの、アバター【※】というものにすごく意味が出てくると思うんです。あれがないと、たぶん、プレイヤーは宇宙空間にぽーんと放り出されたような気持ちになっちゃうと思う。あれは、どう思いましたか?

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※アバター……ここでは『Rez Infinite』におけるプレイヤーキャラクターを指す。プレイヤーは、このキャラクターを俯瞰しながら操作してプレイを行う。昨年、同作がVRに対応した際、なぜアバターの視座(一人称視点)ではなくプレイヤーの視座(三人称視点)から世界を映しだしたのかという議論が起こり、以後、アバターはその議論の焦点となっている。
(取材当日のプレイ画面)

――アバターなしの『Rez Infinite』は、めちゃくちゃ恐い体験になると思いますよ。ものの見え方が現実とあまりに違っているので、もしかすると実際に宇宙に放り出されるより恐いかもしれない。アバターはいわばプレイヤーの魂の拠り所になっているんですよね。

水口氏:
 そうですね。どうやらアバターは、プレイヤーの意識を繋いでくれる象徴になっている。それは自分の肉体ではないけれども、そのあいまいな距離感の関係性、けれどもないと困るもの――不思議な位置づけのものになっているんだなと実感します。

 シナスタジア・スーツでも、似たような現象が起こります。この感覚はおれ身体のどの部分が感じているんだ、というような。これはほんとうに言葉にするのが難しいエリアなんだけど、全身で音を聞いているとき、足とか腹の底ではなくて、心のどこかで低音を感じているというか。

greenspa:
 前回シナスタジア・スーツ2.0を体験させてもらったので、その感覚は分かる気がします。

水口氏:
 ただ、きっと15年前のオリジナルの『Rez』がないと、こうはならなかっただろうなと思います。いきなり、ぽんと「Area X」【※】だけ、というのは実現できなかったと思う。あの前奏があったから、というのはまちがいないですね。――いやあ、みなさん、すばらしい質問をされますね。

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※Area X……『Rez Infinite』のために新たに作られた、パーティクル(粒子)で構成されたステージ。世界を自由自在に移動し、全方向から襲ってくる敵を打ち倒していく。それまでのステージはレール上を一方通行に奥へ進むだけだったのに対し、「Area X」では3D空間を上下左右に移動することができる。

VR酔いしない“魔法のレシピ”とは?

greenspa:
 全体的に、意識だけゲームのなかに入っているような感じといいますか。不思議な体験ですよね。それが気持ち悪いというのではなくて、むしろ気持ちいい。そして、どうして気持ちいいんだろうと気になりはじめて、より引き込まれていく。やはりこれは調整、作り込みによって実現されたものですよね。

水口氏:
 アバターの距離や大きさなんかは、PS VR版を開発していたころから、かなり作り込んでいます。プレイヤーの動き自体もそうなんだけれど、アバターの動き次第でものすごく酔っちゃったりという現象もあったので。

greenspa:
 ものすごい調整が行われているのを感じます。そもそも、アバターが視界から消えることがあるじゃないですか! あの発想がとにかくすごい。ふつう、画面中央にずっと残しておきたくなると思うのですが。

水口氏:
 そう、僕たちもそれは試したんだけれど、アバターを画面に残すと、少しくらっとくるというか、あまり気持ちよくないことがあって。これはかなり独特な作り方だと思います。いろいろ試してみて、これは違う、これは気持ち悪い、これは気持ちいい、といった判断基準でやっていきましたから。

greenspa:
 まさにそれが、VR酔いをさせないための魔法のレシピなのでしょうね。

水口氏:
 そうですね。そのうち知見がたまってくれば、さらに最適化されたパターンが見えてくるだろうとも思います。そうすれば、より優れた体験ができるかもしれないな。楽しみにしていてください。

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