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「ゲームはつくって半分、知ってもらって半分」効果的に広める方法を、ゲームメディアの視点から考えてみる──PANORA×ねとらぼ×ゲームキャスト×電ファミ【CEDEC2018レポート】

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 2018年8月24日、ゲーム開発者向けカンファレンスのCEDEC2018にて、トークセッション『メディアが語るインディゲームPR術「つくって半分、知ってもらって半分」』が開催された。

 このセッションには、PANORA編集長広田稔氏を司会として、ねとらぼ副編集長池谷勇人氏、ゲームキャストライター兼編集長寺島壽久氏、そして電ファミニコゲーマー編集長TAITAIが登壇。

 セッションは広田氏によるプレスリリースの役割についての短い講演(LT)から始まり、各メディアのバズ事例を紹介しつつ、トークセッションで締められた。
 四者四様の意見が飛び交う活気のあるトークセッションであったが、どのメディアもゲームメーカー、ゲーム制作者に伝えたいことは共通しているという印象を受けた。

 それは、「いつでもバズれるように準備しておくこと」だった。

文/しば三角


インディー開発者のためのプレスリリースの書き方講座

 まずはじめに、広田氏によるプレスリリースの書き方講座が行われた。

 広田氏のスライドは全編公開されており、こちらから見ることができる。 

「ゲームはつくって半分、知ってもらって半分」効果的に広める方法を、ゲームメディアの視点から考えてみる──PANORA×ねとらぼ×ゲームキャスト×電ファミ【CEDEC2018レポート】_001

 広田氏は、プレスリリースを送ることでメディアの人間に見てもらえる可能性が増えることはもちろん、PRを振り返りたいときにも役立つマイルストーンにもなる、と説明。

 良いことずくめのプレスリリースであるが、一体どのように書けばよいのだろうか。

 広田氏はAppleのプレスリリースの構造を分析しながら、とにかくプレスリリースでは、自分のゲームのどこが他と違って、どこが凄いのか、メディアにわかってもらえるように”盛る”ことが重要だと述べた。

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 その理由は、メディアの記事の作り方にある。

 メディア側ではリリースの取捨選択が行われる。そこで選んでもらうためには、キャッチーな部分をわかりやすくしておくことや「このゲームはここが新しい」ときちんと言えるようにしておくことが大事だという。

 たとえ最低限の情報でも、そこに何か新しいポイントがあれば記事にしてもらいやすくなる。

 また、メディア側でニュースにする場合は、文章の盛りまくっている部分を削り、客観的にわかりやすく伝えるように書くことになる。事実確認もきちんとするので、「最新の」や「今までにない」などの表現で盛るのはよいけれど、「嘘は言わないほうが良い」と述べて会場の笑いを誘った。

 また、土日や祝日、ビッグニュースと重ならないように出す、重なってしまう場合は戦略的にやる、というタイミングについてのアドバイスに加え、とりあえずリリースを出して、ネットでバズをとることでメディア側から来てもらう方法、そして自分で記事を書いて寄稿してしまう方法など、さまざまなテクニックも合わせて紹介された。

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各メディアはどんなゲームをバズらせてきたか?

電ファミTAITAI「まずは座組で勝つ」

 電ファミのTAITAIは、直近のバズ事例を紹介しつつ、戦略的に記事を作成する重要性について述べた。

 読者みんなが知っているような有名人を呼んで、「このふたりの組み合わせなら読みたい!」と思わせる記事を作ればもちろん読んでもらえる。けれどもプロダクトそのものの知名度はない場合でも、情報自体に価値があると思ってもらえる記事を作れば読んでもらえると説明。

 たとえばイシイジロウ氏の『UNDER THE DOG』の記事は「クラウドファンディングでアニメを作ることについての赤裸々なビジネス話」という中身で戦い、多くの読者を獲得することができた。

現在のアニメ業界に一石を投じたい──クラウドファンディングから始まったアニメ『UNDER THE DOG』は、その想いとは真逆の着地をしたのかもしれない【原作イシイジロウ✕プロデューサー森本浩二】

 また、常識が変化する過渡期を狙うのも重要だとTAITAIは述べる。

 2018年7月からアニメ化されて人気を博している『殺戮の天使』は、もともとニコニコゲームマガジンで展開されていたRPGツクール系のフリーゲーム。『殺戮の天使』自体は決してビッグタイトルではなかったが、章ごとに分かれて配信されることがゲーム実況者に注目され、面白がってもらえたという。

 現在ではゲーム実況はメーカー公認となっていることが多いものの、『殺戮の天使』配信当時はメーカーのお目こぼしをもらってひっそりとやっている状況だった。

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 単純にプレスリリースを送るだけではなかなか遊んでもらえない。どういう人にどう取り上げてもらうかを考えることが大事、とメディア紹介を終えた。

ねとらぼ池谷氏「ひと目でヤバさが伝わる見出しを」

 ねとらぼ池谷氏は、「記事のネタを探すときにプレスリリースはほとんど見ない」といきなりちゃぶ台を返してしまう。ネタ探しは基本的にはネットで話題になっているもので、1行でゲーム内容が説明できるものをメインに引っ張ってきていると説明。

 ただ、プレスリリース自体に意味がないかというとそうではない。バズってメディア関係者の目に留まったとき、すでにプレスリリースが届いていると非常に記事が書きやすいと池谷氏は語る。

 ひと目でヤバいゲームだとわかるような、コンセプトがはっきりしているゲームだとメディアでも取り上げやすいうえに、読者の目にも留まりやすい。プレスリリースは先に出しておき、それからバズを狙うのが良策なのだ。

ゲームキャスト寺島氏「公式サイトは用意しましょう」

 ゲームキャスト寺島氏は、自らの手で流行らせた『One Hour One Life』『ダンジョンメーカー』を取り上げて、全体で見るとよくできているけど普通で、異常なところがないようなゲームでも、面白さを引き出してバズにまで持っていく仕事をしています、と語り始めた。

 「みなさんは、どのメディアにプレスリリースを出していますか?」と寺島氏は来場者に問う。

 有名メディアに掲載されたとしても、ただ載っただけでは500ダウンロードぐらいしかいかない。文字メディア単体に載った程度では流行らない時代。

 大事なのはちゃんとバズって、インフルエンサーに届く記事を書いてもらうこと。
 読者のツボはゲーム制作者よりライターのほうが詳しいので、メディアに書かせましょう、とメディアと関係をもつことを強調した。

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 掲載のチャンスはインディーゲームだとほぼ1回しかない。このチャンスをものにできるように以下のテクニックを紹介した。

   ・公式サイトにはツイートボタンをつけてください

   ・YouTuber狙いの情報は絶対に必要

   ・有料ゲームは体験コードを発行して送ってください

   ・お礼メールを書くと再掲載率UP

   ・発売前に体験してもらって、記事を準備してもらう

   (当日に渡されても忙しい場合がある)

ミル☆吉村氏「注目されるチャンスを逃さないようにしよう」

 ファミ通.comの編集、ミル☆吉村氏からも会場へ魂のこもったスライドが届いていた。

 自作のゲームを遊んでもらうために重要なのは、興味を持ってくれた人を逃さないことだという。もしバズっても、公式サイトがなければ記事にしにくい上に、読者も何を見ればよいのかわからない。

 大切なのは、限りある注目の機会を逃さないように準備しておくこと、と開発者へメッセージを贈った。

 このスライドを見た寺島氏は、有料ゲームがメディアにプレスリリースを送るときに、ダウンロードコードをつけておく技は、常套手段だけど意外とみんなやっていないと指摘した。

 続くパネルディスカッションでは、ふたつの質問が広田氏から投げかけられた。

うまいPRはどんなPR?

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 池谷氏は、うまくPRできていた作品として、『どうぶつタワーバトル』『マッチョ GoGoGo』『ひとりぼっち惑星』を挙げた。

 特に『どうぶつタワーバトル』は、メディアは当初あまり反応しなかったが、Twitterでは大きく広がったと解説。その理由は、遊んだ後に動画をすぐ投稿できるようボタンが付いていたからだ、という。

 『マッチョ GoGoGo』、『ひとりぼっち惑星』にもスクショを投稿したくなる仕組みがある。ゲームによって向き不向きはあるが、ユーザー投稿で自然に広がっていくという方法も使えると述べた。

 寺島氏は、『Strange Telephone』作者yuta氏の、自分のTwitterでファンを集めて、そこから広げていくやり方が上手かったと指摘。

 ファンを抱えるのが苦手な人は、メディアのライターに相談すると良い、とメディアとの関係性の重要さを語った。

メディアと良好な関係を作るには?

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 これまで、自分のゲームを広めるためにライターに相談したり、メディアに記事を書いてもらうなど、メディアとのつながりを重視するようなアドバイスが出てきたが、その関係を良くするためにはどのようにすればよいだろう?

 池谷氏は、Twitterの活用を強調した。

 メディアの人は、開発者のTwitterを意外とチェックしている。進捗をツイートするだけで覚えてもらえて、良い感じに取り上げてもらえるので、みんなぜひ沢山ツイートしてくださいと述べた。

 TAITAIは今日の話を以下三点にまとめ、地道な努力の重要性を強調した。

   ・媒体に乗ること自体にはそんな意味がない

   ・誰が面白がってゲームを遊んでくれるかが重要

   ・飲み会やTwitterを地道に丁寧にやりましょう

 寺島氏は最後に「けれども口下手な人はβ版のビルドを送りつけてほしい。こういうゲームです、と一言添えてくれるともっと嬉しい」と、ゲーム制作者にエールを送った。

ネタに走らないでコアゲームを取り上げてもらうには?

 会場からの質問として「先程までで紹介されていたゲームは、大喜利のネタ的な良さがある作品が多い。けれど「ガチでRPG作りました」といったコアゲーミングをやりたい人は、いったいどうしたら注目してもらえるでしょうか?」というものが出た。

 寺島氏は「そういう場合はコアなゲーマーを集めている媒体に行っちゃうのがいい。ライターに相談しよう」と即答。「『ダンジョンメーカー』はスマホゲームにしてはコアなゲームだったけど、ヒットしたのは結局ゲーム自体が面白くて、遊んだ人が「面白い」ってツイートしたから。コアならコアで、届けるための戦略をもたせられるとよい」と続けた。

 池谷氏は、「やっぱりバズるという点ではコアゲームは不利ですよね」と続ける。「けれども、コンセプトがはっきりしていると紹介しやすい。たとえば『Frostpunk』は難しいシミュレーションゲームだけど、極寒の19世紀というコンセプトでバズれた。コンセプトを磨けば、勝負できる」と語り、トークセッションをしめくくった。

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著者
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しば三角
アプリのデザイナーを経て2017年11月に電ファミニコゲーマー編集部に。好きなインターネットはよく喋るインターネット。

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