KONAMIが手がけた新感覚の対戦ミステリーシミュレーションゲーム『クライムサイト』(『CRIMESIGHT』)。4月15日の発売以来、Steamでは「非常に好評」と高い評価を受けている。
本作はいわゆる『人狼』に代表されるようなアナログな正体隠匿系ゲームを、デジタルかつオンラインで楽しめるように、独自のルールが搭載されているユニークなゲームである。
本作は税込2200円とそれなりにお手軽な値段で、言葉の壁を越えて気軽に遊べる作りにはなっている。しかし「情報量」の観点に立つと、その独自性からゲームのコツを掴めずに複雑に感じることがあるだろう。購入してみてはいいものの「何を分析すればいいのか」、「何をすればいいのか」といったことがわからず、はじめてすぐにやめてしまった人もいるかもしれない。
そこで本稿では複雑なルールを説明することはやめて、本作のさまざまなルールのなかからどこを要点として着目すればいいのかという視点で、ゲームを紹介していこう。
なお本記事は基本的なルールである「3vs1」のルールに基づいているが、もちろん他のルールでも応用は可能だ。
舞台は「仮想世界」の洋館
本作の舞台は吹雪の中の洋館、その中に閉じ込められているのは6人の男女だ。彼らは食糧不足や野犬の脅威におびえつつ、救助がくるまでの3日間を耐え凌がなくてはいけない。そして、なにより恐ろしいのは男女6人のなかにキラー(殺人鬼)が混ざっており、誰かがターゲット(被害者)として狙われているということだ。
実はこの「6人」は、コンピューターによってシミュレートされた存在である。つまりこの洋館は仮想世界なのだ。実際の世界は2075年の近未来。AIが未来を予測すると世界が破滅することが判明した。そこには未来に功績を残す人を予測して殺害する犯罪計画AI「モリアーティ」が暗躍していたのだ。
こうしてAI「モリアーティ(Moriarty)」が行おうとしている殺人事件を未然に防ぐため、シャーロックホームズの名前が冠された犯罪防止AI「シャーロック(Sherlock)」が立ち向かうのである。
本作はそうした仮想世界を舞台にしつつ、プレイヤーは「シャーロック」と「モリアーティ」のそれぞれの勢力に組みすることになる。
同じ部屋に2人きりになるのを阻止する/2人きりになる状態にする
さて、本作は一見するとルールはかなり複雑に見えるが、根本的なところはシンプルだ。
ゲームの舞台となる洋館は各エリアごとに四角のマス目状に分かれている。プレイヤーはターンごとに好きなキャラクターを選んで、マス目状にキャラを動かしていくだけだ。
ゲームは各キャラクターが洋館のロビーに集合した状態からスタートする。
そこからシャーロック側は3日間を生き延びるために「食料」を、モリアーティ側はターゲットを殺害するための「凶器」を手にするため、各部屋を探索していくこととなる。
そして最終的に「同じ部屋にキラーとターゲットが2人きりになるのを阻止する」ことがシャーロック側の勝利条件、モリアーティ側はその逆パターンの「同じ部屋でキラーとターゲットを2人きりの状態にする」ことが勝利条件だ。
この根本の目標さえしっかりと抑えておけば、冷静にプレイすることができるだろう。
『Among Us』や『Project Winter』などの既存の人狼系ゲームと比較して本作がとくに異なるのは、「自キャラ」の概念が存在せず、男女6人のキャラを「コマ」のように選んで操作するというところだ。その点ではチェスや将棋、戦略シミュレーションゲームにも近いプレイ感覚もある。
最大4人まで同時プレイができるという性質上、他のプレイヤーと操作するキャラクターが被ることがある。
その場合、シャーロック側の操作がモリアーティ側に上書きされるなど細かいルールがあるのだが、実際のプレイ上はそこまで意識しなくてよい。キャラの動きの挙動については、ゲーム側で情報を整理してくれるからだ。
「キャラクターウィンドウ」と「Tabキー」を使いこなす
前述したように本作は「2人きりになるのを阻止する/2人きりになる」というのが最終目標だが、途中経過としては「誰がキラーで、誰がターゲットなのか?」ということを推理するゲームになっている。
この推理は半ば自動化されているので、実はここも深く考えなくてよい。具体的にいうと定期的にシャーロックが現れキャラクターの位置関係から「ターゲットの近くにキラーがいるかどうか」を推理してくれるからだ。
また、推理の重要なポイントとなるものとして「モリアーティ側はターゲットを操作できない」というルールがある。そのため、シャーロック側の操作が上書きされた場合、そのキャラクターは「ターゲットではない」ということになり、情報がどんどんと収束していく仕組みになっている。
さて、推理を進めるにはゲーム画面の右上の「キャラクターウィンドウ」に注目しよう。ここは本作でもっとも重要なインターフェースとなる。キャラクターの顔の上にある赤色がキラーである可能性、青色がターゲットである可能性を示している。
ゲーム開始当初は、全キャラクターにこの赤色/青色マークがついているが、シャーロックの推理が進み、モリアーティの行動が上書きされる状況になると、このマークが消えていく。キラー/ターゲットの候補が自動的に絞られてくるというわけだ。
キラーとターゲット候補がある程度絞られたら、Tabキーを活用しよう。「どのキャラがキラーで、誰を殺害する可能性があるのか」という情報が矢印で視覚化されるため、ターゲットとなりそうなキャラをキラーの容疑者から遠ざけたり、あるいはほかの潔白が判明しているキャラと行動させるなどしていこう。
シャーロックの推理は「ターゲットの周囲3エリア以内にキラーがいるか」なので、モリアーティ側は、序盤におけるキラーとターゲットの距離を慎重に立ち回る必要がある。
基本的には近づきすぎず、離れすぎずがいいだろう。ターゲットのまわりにキャラがいるなら思い切ってキラーを近くに配置してもいいし、ターゲットのまわりにキャラがいないならキラーも少し遠ざけたほうがいいのかもしれない。
終盤の立ち回りで覚えておくべきルール
本作はルールを熟知していなくても、「なんとなく」でプレイできるように作られている。
実際のところ、ほかのプレイヤー全員が最適解として動くわけではないので「2人きりになるのを阻止する/2人きりになる」という最終目標まで、逆算するのは不可能に近い。さらには「ガス漏れ」や「野犬」などのランダムイベントが発生することもある。
そのため何より重要なのは、キラーとターゲットが絞られてきたときのゲーム終盤の立ち回りである。ここで特に覚えておきたいルールとして、「モリアーティの制御は「疲労」状態のキャラを3エリア分動かせる」ということだ。
このため一見して、キャラクターを各エリアに散らばらせることが安全策のように感じやすいが、キラーの移動能力は高いため、ターゲットとの距離を急速に狭められる可能性を考慮しなくてはいけない。
シャーロック側は潔白キャラとターゲットの可能性あるキャラを近づけておき、モリアーティ側はキラーを近づけつつ、キラーのような不穏な動きを見せる囮キャラを仕立てるかターゲットのまわりのキャラを遠ざけ、最終的な状況の布石を置こう。
キラーが疑いが強いものの、モリアーティ側のプレイヤーが判明していない場合は、モリアーティ側がスタンプでターゲットを動かす振りをしたり、嘘の集合を呼びかけたり、あるいはそれを疑うことで、独自の緊張感が出てくるはずだ。
ボイチャしながらでもアリ
ここまで本作の基本的なルールに基づいた攻略の要点について書いてきたが、実は本作はスタンプやチャット機能を使って相手勢力を誘導し、盤上をひっかきまわす……といういわば「盤外戦術」が有効な手のひとつである。
シャーロック側なら「このキャラクターを動かします」と意思表示しつつ、ほかのキャラクターを動かしてターゲットではないキャラクターを狭めていけるし、モリアーティ側なら、特定のキャラクターをキラーかのように誘導してもいい。
もちろんその裏、そのまた裏……という可能性は無きにしもあらずだが、情報量が多いゲームのため考えすぎてもきりがない。最終的には直感を頼りに見定めていこう。
本作は「言語を使用しない騙し合い」をコンセプトとしており、ボイスチャットを使用しなくても遊べるように設計されている。友人とボイスチャットしながら遊べば楽しさが「上乗せ」されるのは当然としたうえで、ゲームに「必須」とはしていない、ということだ。
一方で、10ターンというプレイ時間の短さ・最大4人というプレイ人数の少なさもあり、特にボイスチャットありのプレイではモリアーティであることをゲーム終了まで隠し通すことは困難だ。
とはいえ、ボイスチャットで自分がモリアーティ側であることがバレてしまっても、そこですぐさま負けが決まるわけではない。本作の勝利条件はあくまでも「キラーがターゲットを殺害できるかどうか」であり、「モリアーティが誰か」が勝敗の決定的な要因とはならないからだ。モリアーティ側はシャーロック側の操作を上書きできたり、最初から凶器や食料の場所がわかったりとルール上有利となっている箇所も多いため、バレた上で勝利することも十分可能だ。
「バレてしまっては仕方ない……」と、開き直って悪役ロールプレイに移行するのもまた一興だろう。
こうしたことは『Among Us』や『Project Winter』にはない本作ならではの面白さで、新しいゲームプレイの可能性を存分に感じさせてくれるはずだ。
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