『逆転裁判』シリーズといえば、カプコンによる法廷バトルアドベンチャーゲーム。現在までに本編6作の他、『逆転検事』や『大逆転裁判』といったスピンオフ作品が生み出され、アニメ化や舞台化など数々のメディアミックスもなされた人気シリーズです。
そして今から14年前、宝塚歌劇団により『逆転裁判』が舞台化されたときには大きな話題を呼びました。2009年に宙組にて初演が上演された『逆転裁判 -蘇る真実-』は、アメリカを舞台にフェニックス・ライト(英語版『逆転裁判』における主人公・成歩堂龍一の名前から。演じたのは蘭寿とむさん)が活躍するストーリー。宝塚歌劇によるゲームの舞台化は本作が初であり、本作の好評を受けて、同年に『逆転裁判2』を、2013年には『逆転裁判3』を上演し、いずれも大好評を博した人気作品となりました。
そして、本年2023年には『逆転裁判』シリーズのスピンオフ作品『大逆転裁判』が再び宝塚歌劇団により舞台化!
脚本・演出は2009年の初演から変わらず鈴木圭氏が手掛けます。2013年の『逆転裁判3』から数えると10年の時を経て舞台化されたミュージカル・ロマン「宝塚歌劇宙組『大逆転裁判』―新・蘇る真実―」神奈川公演ゲネプロの模様をレポートします!
文/鈴木れな
この再現度、この展開には「待ったなし!!」
舞台は19世紀末の倫敦。
親友・亜双義一真(風色日向)の意志を継ぎ、大日本帝國からの司法留学生(の代理)として大英帝国の地に降り立った成歩堂龍ノ介(瑠風 輝)。
彼はかの名探偵・シャーロック・ホームズ(鷹翔千空)の庇護を受け、法務助手の御琴羽寿沙都(山吹ひばり)と共にホームズのアパートに滞在することになります。
いまでこそ、マンガやアニメ、ゲームなどを原作とした舞台は「2.5次元舞台」として広く知られるようになりましたが、宝塚歌劇団といえば『ベルサイユのばら』を初めとして数多くのマンガや、小説、ドラマや映画などを舞台化してきた実績があります。
元祖2.5次元ともいえる宝塚歌劇、2009年の初演時にも、そのキャラの再現度や、宝塚らしい華麗さとコミカルな演出が絶妙なバランスで配された楽しい作品でしたが、今回の『大逆転裁判』も、そのバランスの良さが素晴らしい!
「空・前・絶・後」の再現度! 若干のウザさも原作通り!?
ホームズに誘われて出かけた舞踏会で殺人事件が発生。その容疑者とされたのは、まさかのシャーロック・ホームズ!
彼を救うために成歩堂は弁護士として法廷に立つことになるのです。
「待った!」「異議あり!」と言えば、『逆転裁判』シリーズではおなじみの名セリフ。
本作のストーリーは舞台用のオリジナルですが、『大逆転裁判』らしさは流石の一言。
法廷でのシーンは、「見たことある!」なデジャブ体験のてんこ盛りです。
もともと原作の『大逆転裁判』は、モーションキャプチャーでアクターの動きを取り入れた作品。それまでの作品に比べて、キャラクターがめちゃくちゃ動くぞ!というのが新鮮でした。
その後、《大逆転裁判》制作の際『“宝塚なヤツ”を出そうぜ!』ということになり…元・タカラジェンヌの汐月しゅうさんにミゴト演じていただいたっけ(←モーションキャプチャーというヤツですね)
— 巧 舟 (@takumi_gt) February 24, 2023
…ちなみに、かの有名な“カカト落とし”も、その時ついでにやってもらった一撃。お許し願いたい。
モーションキャプチャーなので元は人間の動きではあるのですが、現実のビジュアルでこれだけ美しく、かつ原作のコミカルさを失わずに魅せてくれるとは驚きです。
ばしんと頬を叩いて気合を入れる成歩堂、追い込まれた成歩堂の仰け反る角度、そしてもちろん「異議あり!」と指を突きつけるおなじみのシーンまで、本当にゲームがそのまま出てきたかのように感じられました。
ちなみに成歩堂のライバルとなるバロック・バンジークス検事(優希しおん)の神の瓶と神の聖杯もちゃんと出てきますよ!
“宝塚っぽいヤツ“を出そうぜ、から宝塚で実際に舞台化されるとは……この展開にも胸熱です。
原作ファンも宝塚ファンも楽しめる!
イケメンだけど若干ウザいときもある(笑)、ケレン味たっぷりのホームズさんですが、現実でもこんなにしっくりくるなんて……。もちろんアイリス・ワトソン(美星帆那)はいろんな紅茶を入れてくれますし、4文字熟語を叫びまくる留学生の夏目漱石(凰海るの)も登場し、その小心者っぷりも見ものです。
さらに陪審員のひとりには……あれ、なんか見覚えある……キャラクターも。
シリーズファンならニヤリとしてしまう要素も盛り込まれています。
寿沙都と成歩堂の縮まりそうでなかなか縮まらない淡——い恋模様も描かれており、心温まるシーンとなっています。
本作は舞台オリジナルストーリーでありながら、物語の最後には『大逆転裁判』らしい逆転劇が盛り込まれ「なるほど、そう来たか!」と唸らされました。
フィナーレでは、迫力のある群舞にしっとりと艷やかなデュエットダンス……と宝塚らしい魅力もたっぷり魅せてくれます。
逆転裁判シリーズが好きな方ならもちろん楽しめますし、宝塚歌劇の入門作としてもピッタリではないでしょうか?
とにかくテンポもバランスもよく、肩がこらず気軽に楽しめる作品なのは間違いなし!
KAAT神奈川芸術劇場での公演は8月8日まで。ぜひ皆さんも楽しんでみてください。
作品情報
ミュージカル・ロマン『大逆転裁判』-新・蘇る真実-
公演期間:2023年8月1日(火) – 8月8日(火)
会場:KAAT神奈川芸術劇場