「人の財布」が、家に届いた。
なにって……文字通り、「人の財布」である。これは自分の財布じゃない。いつかどこかの誰かが使っていた、「人の財布」なのだ。それが、私の家に送りつけられてきた。なんか、記事で紹介してほしいと「人の財布」をもらった。いや……困るよ! まるで私が拾った財布を警察に届けない浅ましい人間みたいじゃないか。業務妨害だ!
これが、「人の財布」である。
ちょっといい財布なのが腹が立つ。
ここで問われるのは、人としての倫理である。
究極の2択、「開ける」か、「開けない」か。
だってこれは「人の財布」なのだ。もしかしたら、財布は日常的に携帯するものの中で最も「プライベートエリア」と言えるものかもしれない。だって、誰しも自分の財布の中身を誰かに見せたくはないでしょう。友だち、同僚、恋人……なんなら親にだって「財布の中身」を見せることには抵抗感があるはず。
そしてこの「人の財布」を開けるということは、「そのプライベートエリアを容赦なく踏み荒らす」ということなのだ。人としての程度が知れる。倫理が知れる。道徳が知れる。浅はかさが垣間見える。
だから、これは究極の2択だと思う。端的に言えば、こうやって文章を書いている私の好感度を左右する重要な2択だ。
…………………じゃあ、開けていくね……。
文/ジスマロック
※この記事は「人の財布」公式のネタバレガイドラインに沿ったうえで、制作されています。ただ、いくつか「人の財布」の中身に関するネタバレが含まれていますので、お気をつけください。
「人の財布を見る」ということは、エロス
ご開帳。
うわぁ、リアル他人財布じゃん。なんか学生証とか入ってるんですけど……なんかレシートとか入ってるんですけど……。うわぁ、リアル他人財布じゃん。
この財布を開いた時、ふと「ドラッグストアでアルバイトしていた頃」を思い出した。あの頃、私はレジ打ちのバイトをしていた。その「レジの一角」……接客業をしたことがない人には、「店員が立っているエリア」とでも言えば伝わるだろうか。
その一角には、ひとつ「引き出し」があった。そこにはレジ打ちのマニュアルや食品の割引率を表記するためのシールなどが置いてあった。いわゆる「困ったことがあったらここを開くと大抵のものが入っている」引き出しである。
ある日、その引き出しの中に「日記」を見つけてしまった。……明らかに開いてはいけない気がする日記だった。だけど……気になってしまった! これは一体、なんの日記なのか? これは一体、誰の日記なのか? 何が書かれているのか? どんなことが綴られているのか?
ちょうどその日は客入りも少なく、本業<メインロール>のレジ打ちも結構暇だった。
だから私は、時給を貪りながら、勝手にその日記を開いてしまった━━━。
その日記に書かれていたのは、主に「愚痴」だった。
あの客が嫌だ。あの客には注意しろ。こんなヤバいことがあった。こんな事件が起きた。こういうエラーが発生した。……いま挙げた例すら若干オブラートに包んでいるほど、かなり直接的な愚痴が書かれていた。
その瞬間、私は思った。
「俺は……見てはいけないものを見た!!」と。
普段あんなに優しいパートの人たちが、こんな荒い語気で日記を綴っている!
あぁ、これは確実に開けてはいけないパンドラの箱を開いてしまった!!
私の人生において、あれはかなり衝撃的なイベントだった。だけど、その「見てはいけないものを見た」という罪悪感と同時に、「他人が見てはいけないものを、見てやった」という背徳感も感じた。普段絶対に見ることができないプライベートエリア。他人が立ち入ってはいけない個人領域。そこを、こっそり覗き込んでしまった。
じわじわと、罪悪感を背徳感が塗りつぶしていくかのような感覚があった。
そして、この「人の財布」を開けた瞬間、あの「ドラッグストア日記事件」の気持ちを再び思い出した。これはもう、一種の「エロス」なんじゃないか? 「見てはいけないものを見ている」という、エロスなんじゃないのか?
たとえば、好きな男性の胸元をチラッと見えるとか。好きな女性の足元をチラッと見るとか。「普段見せていない・見せたくないものをご開帳してまじまじと見てしまう」という点において、この人の財布は「エロス」を味わえるアイテムなんじゃないのか?
いや、少なくとも私はそう感じた。財布を開いた。目に飛び込んできたのは見知らぬ学生証と、5W1Hがオール謎な領収証。ちょっとゾクゾクした。見てはいけないものを見た。エロスを感じた。やっちゃいけないことが、6800円払えばできてしまう。これは……エロスアイテムだ!!
学生証、レシート、写真……「財布の中身」から真相に迫れ
もうちょっと真面目に書こう。
まず最初に触れたいのは、この「学生証」。
書かれている名は「█████」。
これは……女子生徒だろうか。きっとCV若山詩音あたりの女子生徒なんじゃないだろうか。いや、名前で決めつけるのは良くないか。もしかしたら美少年かもしれないし。うむ、そういった決め付けもゆくゆくはナンセンスな世の中になっていくかもしれないがね……(櫂利飛太)
生年月日は2004年の4月10日。おい、私の2歳下じゃないか。後輩、もしかして初めて買ったポケモンはダイパかな? いや、ギリギリでBW世代ですか……?
発行日は2020年4月1日で、有効期限は2023年の3月31日。……たぶん現役女子高生ですね。これはマズいな。本当に私が現役女子高生の財布をかっぱらってインターネットでひけらかしているみたいじゃないか。
どうする、この記事がYahooニュースでも転載されでもしたらインターネットの掃き溜めようなコメントが大量につくんじゃないのか。
「女子高生の財布をネットに公開するとか、戦争で若人が命を賭して守った未来がこれか……」みたいなコメントが大量にあふれ出てしまうんじゃないか。
お次は、(たぶん)現役女子高生の財布に挟まれていたこちらの写真。
怖っ。怖いよ。
何の何の何? これは「チョコドーナツの上にかかっていると嬉しいアレ」か「実験に失敗したお姉ちゃん」あたりのワードでAI生成された画像なんじゃないか。なんか和風な背景も余計に怖い。ここどこよ。太秦映画村?
今のところの私の推理は、「太秦映画村で財布を落とした女子高生」です。
そしてみっつめ、お札を入れるところにぬるっと挟まっていた領収書。
「ガリバーホーム」というお店で、この人は三徳包丁を買ったらしい。それは2023年1月8日、19時32分のできごと。へぇ、三徳包丁って1320円くらいで買えるんですね。普段あんまり料理をしないから、こういう調理器具の相場って知らなかったな。
まぁ、料理好きな子なんじゃないですか?
なので、現時点での推理は「19時32分に三徳包丁を買って太秦映画村に向かったけど、うっかり財布を落としてしまった女子高生」ですね。
そしてこちら、お札を入れるところに入っていた封筒。
「█████様」という方に宛てたお手紙のようです。
もはや勝手に財布を空けた時点でプライバシーもクソもないので、この封筒もズケズケとオープンします。容赦なく封を開けます。
そこに書かれていたのは……「私はあなたを」。
私はあなたを……私はお前を……お前を殺す。
デデン!!!!!
あ、もしかしてこれヒイロ・ユイの財布ですか?
流石にこんな手紙書くのってヒイロ・ユイ以外ありえなくない?
閃いた。この事件の真相は……「19時32分に三徳包丁を買って太秦映画村に向かったけど、うっかり財布を落としてしまったヒイロ・ユイ」だと思います。これで間違いない。
最後はこちら。
2012年に起きたらしい、ある事件に関するブログのコピー。ステーキハウスで起きた殺人事件についてのことが書かれています。嫌だなぁ、お肉食べるとこで殺人事件起きるのは。「金が欲しかった。金がありそうなところに押し入った」とのことです。
いや……この犯人、本当はステーキが食べたかったんじゃないか?
だって、ステーキハウスよりお金持ってそうなとこなんて沢山あるでしょう。
それなのに、なぜかステーキハウスに押し入っている。
これはもうお腹ペコペコ殺人犯で確定ですね。
なので、この事件の真相は「19時32分に三徳包丁を買って太秦映画村に向かったけどうっかり財布を落としてしまったヒイロ・ユイと、腹が減りすぎてステーキハウスに押し入った張五飛」という感じでしょうか。
殺人事件をネットで検索。財布から広がるミステリー
まぁ、こんな推理合ってるわけないんですけど。
そしてこの「人の財布」のさらなるギミックとして挙げられるのが、これまでに紹介したアイテムを使って「謎解き」に挑戦できるところ。たかが財布ひとつから、どんな形で謎に挑むのか?
……それはまぁ、実際に財布が届いてからのお楽しみというコトで!
ひとつ例として挙げるのであれば、ここまでのアイテムに登場したキーワードのいずれかをインターネットで検索することで、その真相に近づいていくことができたりします。たとえば、さっきの封筒の宛先として書かれていた「█████」の名前をGoogleで検索すると……
こんな風に、「███████████████████████」というスレッドが出てきます。先ほどの「殺人事件」に関することが書かれたスレッドですね。これ、検索すると本当に出るんです。……まぁ、黒塗りだから実際にどのワードで検索すればいいのかわからないとは思うんですけど! 「こういうギミックがある」ということだけでも覚えて帰ってください!
……なんか普通に面白くない?
よくこんなん思いつくね。
このスレッドから、さらに「人の財布」事件の真相へと近づいていきます。他にもこんな感じのミステリーギミックがあったりなかったり……この謎の真相は、実際に「人の財布」を手に入れて突き止めましょう。
そんな「人の財布」は、PARCOオンラインストアにて税込6800円で販売中!
「人の財布が販売中」ってなんだよ……。
とにかく6800円あると、人の財布を買えちゃいます。
そして、なんとなくこれまでの写真でも理解できているかもしれないのですが……この財布、普通に「財布」としてオシャレなんです。普段使いしても問題ない、「普通に良い財布」として作られています。
つまり、「6800円払うと普通にオシャレな財布が手に入り、その上で謎解きに挑むことができる」という、なんだかお得感のあるアイテムなのです。
そんな話題沸騰中の「人の財布」は、10月30日の19時に再販開始予定です。そう、本日! 本当に人気すぎて一瞬で売り切れてしまうらしいので、かなり熾烈な予約戦争となりそうです。予約情報など、お見逃しなく!