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歴史考証がガチすぎて、大統領が視察に来るゲーム。チェコ産RPG『キングダムカム:デリバランスII』は圧倒的な説得力と解像度で「中世ヨーロッパ」をわからせてくる【TGS2024】

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歴史考証がガチすぎて、大統領が視察に来るゲーム。
今までにそのような作品を聞いたことがあるでしょうか。筆者はないです。

今回ご紹介するゲーム『キングダムカム:デリバランスII』は、まさにその状況を作り出すほど世界観構築に力を入れている作品で、我々日本人があまり享受してこないであろう「中世ヨーロッパ」という概念を圧倒的説得力でわからせにくるのです。

それもそのはず、本作の開発チームには「フルタイムで勤務する歴史考証班」が常駐しているとのことで、その再現度は圧巻の一言。くわえて歴史から読み解き補完・創造することも必要となるコンセプトアート班には「本職の歴史家」が参加。多方面・多角的な角度から本作で描かれる中世ヨーロッパの歴史を描いているのだとか。

……ガチすぎる。

そのガチさゆえに、筆者は生まれも育ちも日本なのに、ゲームに存在する要素全てに「中世ヨーロッパ」のリアリズムを感じてしまうほどでした。

今回電ファミ編集部では、そんなガチすぎるRPG『キングダムカム:デリバランスII』を2024年9月26日から開催されている東京ゲームショウでの試遊にご招待いただきました。

本記事ではプレイの率直な感想と、開発元であるウォーホース・スタジオで本作のPRマネージャーを務めるトビアス・シュトルツ=ツヴィリング氏へのインタビューをご紹介します。

はっきり言ってこのゲーム、マジでやばいです。

取材・文/Squ
編集/実存

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真の意味での“ロールプレイング”ゲーム

本作の一番大きな魅力は、圧倒的リアリティで描かれる世界観を地盤に描かれる人間ドラマ。人々との会話の節々に登場する選択肢を自分の思う通りに選択することで、物語の展開が分岐していきます。

選択次第では、NPCと友好的にも敵対的にもなります。一見シンプルな要素ですが、状況次第でストーリーの進めやすさに影響するだけでなく、主人公のヘンリーというキャラクター自体の感じ方にも深く関わってくる様子。

今回の体験会で遊んだ範囲でも、すべての選択肢が何かしらに影響を与えていることは強く感じられ、ひとつひとつの選択に重みがあるようでした。

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今回筆者がプレイしたのは、物語中ある街にやってきた剣術道場の師範を助けるミッションです。

救出対象の師範は、ある王様からの伝令でやってきたにも関わらず、すでに剣術道場が存在する街からは厄介者扱いをされているようで、なんとかして追い出せないかと考えられているのです。

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ミッション中、敵対する剣術道場が所有している剣を盗み取り喧嘩を売るというシーンがあるのですが、犯罪を実行する時間帯に応じて見つかりやすさが変わります。昼間は比較的簡単に侵入できる一方で見つかりやすく、夜間は見つかりづらく侵入しづらいといったイメージがわかりやすいでしょう。

夜間の侵入には、他のゲームではあまり見ない類のピッキングミニゲームが発生することも。スティックのアナログ入力を巧く使ったミニゲームに仕上がっており、侵入行為ひとつひとつに緊張感が生まれています。

ピッキングミニゲームの難度は高めなものの、昼間に見つかるリスクと天秤にかけて選択していきたいところ。筆者は昼間に堂々と侵入し無事バレてしまいました(これが後のストーリーに大きく影響することに……)。

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やりたいことをやりきっているが故の不便さと理不尽さ。中世ヨーロッパの世界を生きるということ

本作では、中世のヨーロッパの文化的価値観をビジュアルだけでなくゲームプレイでも色濃く描いています。今回体験した中でもっとも印象的だった戦闘もそのひとつ。

「剣を抜くところからボタンが設定されている」など、ひとつひとつの動作にプレイヤーのアクションが必要なこともさることながら、相手の剣を見極め的確にさばくことが要求されます。

全く別物にはなってくるのですが、「剣を振るう方向の概念がある」ということから戦闘のイメージとしては『フォーオナー』を思い浮かべていただくとわかりやすいかもしれません。そのぶんだけ操作も難しくはあるのですが「剣を交える」ということに意味が生まれる、非常に印象に残る戦闘システムなのかなと感じます。

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▲方向管理だけでなく、攻撃とガードのボタンの押し分けも必須。

ゲームを遊ぶ前に担当者の方から教えていただいたのですが、前作『キングダムカム:デリバランス』では、この戦闘システムが「覚えやすいけど、マスターしにくい」という部分が問題点として存在していたとのこと。本作ではそのあたりも改善点のひとつとして意識していたということで、ただ単に歴史考証をガチるだけではなくプレイヤーのゲーム体験という部分も非常に考えられているようなのです。

中世ヨーロッパを生きて体験することはできないのに、なぜか本当にタイムスリップしたように感じる本作。その背景にはどのような要素が隠れているのか……気になってきた。

先行プレイ後には、本作を開発するWarhorse Studios(ウォーホース・スタジオ)のPRマネージャー、トビアス・シュトルツ=ツヴィリング(Tobias Stolz-Zwilling)氏への合同インタビューが実施され、本作の気になるところを直接質問する機会にも恵まれました。次項ではそんな本作の魅力を深堀りしていきます!

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左:トビアス・シュトルツ=ツヴィリング氏
右:川谷久海氏(コンセプトアーティスト)。『KCD2』開発チーム内で唯一のアジア人とのこと

歴史考証がガチすぎてチェコの大統領や大使館が興味を示すゲーム

──前作『キングダムカム:デリバランス』(以下、KCD1)は全世界累計600万本以上の大ヒットでした。その成功を鑑みると、本作(以下、KCD2)を2作目ではなくDLCとして新たな物語を展開する選択もあったと思います。続編という形を取ったのにはどのような経緯があったのでしょうか。

トビアス・シュトルツ=ツヴィリング氏(以下、トビアス氏):
『KCD1』は2014年にクラウドファンディングを始め、開発した作品です。ただ、クラウドファンディングだけでは大作を作れるほどのお金は集まりにくいんです。そのため『KCD1』では、実際に描きたかったストーリーを3つの構成に分割していたんです。

──続編としてリリースする大きな理由として、そもそもストーリーがキリのいいところで分割されていたというのがあったわけですね。

トビアス氏:
そうなんです。しかし、いざ作ってみると2部作で当初想定していたストーリーは十分に描ききることができました。とはいえ、どちらにせよクラウドファンディングが成功していなければ1作目はありませんでしたし、『KCD1』が成功していなければ『KCD2』には繋がりませんでした。

なので、むしろ『KCD1』と『KCD2』は最初から存在していたというのが正しいかもしれません。DLCはあくまで『KCD1』が成功したからこその産物だったんです。

──まさしく『スター・ウォーズ』のような成り立ちと成功に近かったと。

トビアス氏:
確かにそうですね。ある意味では、ジョージ・ルーカス的だったかもしれません(笑)。

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──私たち日本人は中世ヨーロッパを題材とした作品をよく目にします。とはいえ、実際に我々が経験したり生活や歴史に根付いた要素ではないため、感じ方は全く異なると思います。トビアスさんやヨーロッパの人々にとって、中世時代とはどのような存在なのでしょうか? たとえば、歴史好きの人々のなかでも人気のある時代なのでしょうか?

トビアス氏:
ヨーロッパ各地や、特に我々が拠点としているチェコは中世の文化が息づいています。第二次世界大戦で爆撃を受けなかったこともあって、遺跡もたくさん残っていますからね。ただ残念なことに、文化として残っているからといって、全ての人がそれを知っているわけではないんです。

本作は日常の中に残る中世の文化を見つけてもらえるような作品だと思いますし、ユーザーさんからは実際に聞いたことのある歴史上の偉人が出てきた時に喜んでもらえたりもしています。

──そういった背景があったのですね。

トビアス氏:
個人的には、侍が台頭した封建時代の日本は、同盟を組んだり派閥争いが起こったりといった形で、中世のヨーロッパと非常によく似ていると思っています。

100%史実通りとはいきませんが、『KCD2』は歴史を窓から覗きこむような作品です。そういった観点で行くと、日本の方々が我々の歴史や文化を知るのにいい機会になるのではないかと思います。

このゲームではチェコの歴史や文化をたくさん取り入れているわけですが、その点にチェコの大統領や大使館が興味を示してくれたんです。私たちがやろうとしていることを理解してくれているという点で非常に光栄に思っています。

実際に先日、大統領がこのゲームの開発進捗を見にスタジオにいらっしゃったんです。不思議な話ですよね。同時に開発陣へのプレッシャーもとんでもないですが(笑)。

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──主人公であるヘンリーは若く柔軟で、だからこそプレイヤーの選択によってさまざまな姿を見せてくれますが、同時に「復讐」という大きな目標も掲げています。物語と高い自由度をどうやって両立させていますか?

トビアス氏:
確かに復讐の物語は、ヘンリーの目指すゴールであり、物語の終着点です。ただし、ヘンリーが人間としてどのような選択をしていくのかという部分は、このゲームをプレイするプレイヤーひとりひとりによって変わってきます。

例えば、『KCD1』の冒頭で、ヘンリーの育ての父が死亡しています。ただ、度々ヘンリーの夢の中に現れる一種の良心のような存在になっているんですよね。もちろんお父さんはヘンリーが善人として生きることを願っているし、不幸になってほしくないと思っています。

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▲主人公・ヘンリー

トビアス氏:
ただ、当時のヘンリーは村に閉じこもっていないで、いろいろなところへ旅に出たかったのです。そして、最終的には本作『KCD2』までの間に内戦に巻き込まれ、目的が復讐へと変わっていきます。
物語のゴールは決まっていますが、そこまでのルートはみなさんが決めることができます。残忍な殺人マシーンになることもできれば、ならないこともできるのです。

そんな時にお父さんが夢に出てきては、「強くなったかい?」とか「復讐は成功したか?」などと良心に問いかけてきます。ヘンリーがどうするのか、父親がその選択対してどう感じるのか。その答えはプレイヤー次第で変わってくるのです。

──自分の選択などで、遊べなくなるクエストがあったりプレイヤーが不利な状況に置かれる選択肢はあったりするのでしょうか。

トビアス氏:
あるドイツ人のジャーナリストが「まるでプレイするネットフリックスのドラマシリーズみたいだ」と言っていたのを気に入っているのですが、なにかの選択肢がなくなったという考え方よりも、「あなただけの物語の流れを構築していく」という考え方の方が近いかもしれません。

たとえば、街中で犯罪行為をしすぎたせいで、顔に犯罪者を示す焼き印を押されてしまったとします。するとお店の店主が物を売ってくれなくなったりするかもしれませんが、一方で悪人連中はあなたを仲間だと思って寄ってくるでしょう。このゲームでは、そういったことがいくらでも起こり得るんです。

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──前作でやりきれなかった要素の中で、今作でリベンジできたポイントなどはありますでしょうか。

トビアス氏:
もちろんたくさんありますよ!

『KCD2』は我々の追い求めていた理想そのものです。決して1作目がなにか悪かったということではありませんが、開発段階での制限が強く、本作ほどの自由度はありませんでした。

たとえば、本日皆さんがプレイされたエリアのような大都市は、やりたくてもできなかったことですし、ただ歩き回るNPCをたくさん配置することさえできませんでした。
しかし、『KCD2』の開発にいたるまでにスタジオの規模も3倍、開発スタッフの人員も2倍以上になっていますので、より歴史を深掘りしたり、歴史考証に時間を割くこともできたというのも大きかったでしょう。

重ねて言いますが、『KCD1』がなにか悪かったというわけではありませんよ!(笑)

──前作ではセーブに専用のアイテムが必要だったりと、リアルさゆえに一部のプレイヤーにとって不便に感じるような場面もあったかと思います。フィードバックを受けて変更した部分などはありますか?

トビアス氏:
フィードバックには目を瞑ることなく真摯に受け止めていますが、やはりゲームの設計思想の関係で変更しにくいものも多く存在します。

とはいえ完全に変更しないということではなく、例えばおっしゃっていただいたセーブのしにくさなどは、アイテムの入手難度の調整などを実施しました。ただ、ある種の制約は設けていますので、実際にアイテムを使用する前にプレイヤー自身の選択について考えていただけるタイミングにしていただければと思います。(了)


本作は1作目『キングダムカム:デリバランス』の直接的な続編となるものの、いきなり2作目である『キングダムカム:デリバランスII』から遊んでも楽しめるよう設計されているとのこと。“ガチの歴史”を当時を生きる人物となり体験したいそこのあなた、本作の動向を要チェックです。

リアルすぎる中世ヨーロッパの世界を再現した『キングダムカム:デリバランスII』は、2025年2月12日発売予定。対象プラットフォームはPS5、Xbox、PC(Steam、Epic Games Store)となっています。

© 2024 Warhorse Studios s.r.o. Published by Deep Silver. Deep Silver is a division of PLAION. Deep Silver and Plaion and their respective logos are trademarks of Plaion GmbH, Embracer Platz 1, 6604 Hoefen, Austria. Warhorse and Kingdom Come: Deliverance are registered trademarks of Warhorse Studios s.r.o. Portions of this software are included under license © 2019-2024 Crytek GmbH. All rights reserved. Crytek, Cryengine and their respective logos are trademarks of Crytek GmbH. All other trademarks, logos and copyrights are property of their respective owners. All rights reserved.

ライター
最近ゲーム業界にサメ映画ブームが来ている気が・・・え? 『スター・ウォーズ』のゲームが出すぎて手が回らない毎日。1日36時間欲しい。
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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