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『怒首領蜂最大往生』最凶ボス”陰蜂”ノーコン撃破は全世界でただひとりしか達成していない不滅の大記録── 稼働開始から12年。人類には不可能とされた偉業を達成したプレイヤー(犀領さん)にクリアーまでの道のりを聞いてみた

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片道2時間もかけて通いつめた、ゲームセンターa-cho。

── 犀領さんは、もともとゲームがお好きだったんですか?

犀領さん:
そうですね。小学生のころからゲームで遊んでいて、そのときからシューティングも触っていった感じです。

── 人生で最初に遊んだシューティングゲームは?

犀領さん:
ちょっと記憶があやふやですけど、多分『ゼビウス』だったと思うんですよね。

── えぇっ!? それは意外ですね。

犀領さん:
この年齢にしては意外なタイトルだと思うんですが、『ゼビウス』とか『1942』がシューティングゲームの最初だったと思います。

父親がゲーム好きで、いろいろなソフトを持っていたんですよ。本当に適当に選んで遊んだゲームが『ゼビウス』で、そこからほかのシューティングゲームをプレイしました。遊んだタイトルを挙げたらキリがないんですけど、そのうちのひとつが『首領蜂』だったんですよ。

──縦シューティングのエリートですね(笑)。

犀領さん:
『首領蜂』を最初にプレイしたとき、「あ、これおもしろいじゃん!」と感じて、その流れで『怒首領蜂』も遊び始めたというのが、私のケイブシューティングとの出会いですね。

── ケイブシューティングに触れられたとき、どういった部分におもしろさを感じたのですか?

犀領さん:
敵が撃ってくる弾の数が多いにも関わらず、自機の当たり判定が見た目よりも小さくて、それらの弾を回避できるように設計されている。これが自分の中ではすごく斬新でおもしろくて、そこから弾幕シューティングにハマっていきました。

── ハイスコアを狙うというよりも、クリアを目指してプレイを始めたのですね。

犀領さん:
そうですね、基本的にスコアアタックすることはありませんでした。こういうスタイルのプレイヤーは、“クリアラー” と呼ばれるんですが、私はこれまでクリアラーとしてゲーマー生活を送ってきました。

── 『首領蜂』も『怒首領蜂』も、クリアまで遊ばれているんですか?

犀領さん:
両タイトルともに、1周クリアまでは遊びました。2周目はちょっと難しすぎてクリアはできていないんですけれども。

── 犀領さんが「難しすぎるからクリアできない」と言っても、誰も信じてくれないと思います(笑)。ちなみに、 ケイブさんのシューティングタイトルは、ひと通りプレイされていたり……。

犀領さん:
全作品とは言わないですが、7割から8割くらいは遊んできたかなと思います。『蜂』シリーズはもちろん、『エスプガルーダ』シリーズや『虫姫さま』シリーズといった作品もプレイしていますね。

移植版が出ている作品は家で買って遊んでいて、移植版が出ていなくてa-choにしか置いてないゲームについては、現地に足を運んでプレイしてきましたね。

── なるほど。お話をうかがっていると、犀領さんはa-choに並々ならぬ思いがあるように感じます。a-choに通い始めるキッカケは何だったんでしょうか?

犀領さん:
最近ポストもしたのですが、私がa-choを知ったキッカケは、2018年くらいに行われた「a-cho STG 大☆配信・録画会( a-cho STG 大☆配信・録画会 『怒首領蜂 大往生BL』(2018.5.5) )」というイベントのアーカイブを見たことです

このときは、ふだんYouTubeで見ていたゲームのライブ配信アーカイブもあるということで急いで動画を見たのですが、視聴時に現地の音声をオンにしていたんですね。

そうしたら、ゲームをクリアしたときに現地にいらっしゃった方々の歓声が聞こえてきて、「京都にこんな楽しそうな場所があるんだ!」と率直に思ったんです。これが、a-choに通い始めたキッカケですね。

シューティングが遊べるゲームセンターで初めて知ったのは東京のミカドなんですが、京都に住んでいるので「さすがに東京は行けないな」と。a-choは自宅から比較的近いところにあったというのが大きかったです。ただ、京都府と言ってもだいぶ北のほうなので、a-choまでは片道で2時間くらいかかります(笑)。

── (笑)。熱意がすごいですね。a-choに通われる以前に、ゲームセンターで遊ばれてはいなかったのですか?

犀領さん:
私の家の近くにシューティングが遊べるゲーセンがなかったので、家でゲームを遊ぶ日々が続いていました。私の望むゲームセンターでいちばん近かったのが、片道2時間のa-choだったんです(笑)。

── 片道2時間をかけてでも通いたい魅力がa-choにはあったんですね。

犀領さん:
はい。そこまで労力をかけてでも行きたかったんですよね、a-choには。なので、a-choに行く日は、開店から閉店までずっといました。だいたい月に1〜2回ほど行っていましたが、2日連続で行く日もあったりして(笑)。

── a-choでは、ゲームプレイがメインだったのですか? それとも、情報交換など、コミュニティの交流が多かったのでしょうか?

犀領さん:
日によってぜんぜん違ってくるんですが、基本的にはどちらも半々という感じですね。初めてa-choに行ったときは、『怒首領蜂大復活』のver.1.5、いわゆる “白復活”のノーミスクリアを目指して遊んでいました。やっぱり、私はクリアラーなんだと思います。

──では a-choさんが閉店するという発表は相当ショックだったんでしょうね。

犀領さん:
a-choに行くことは日常的な習慣と化していたので、それがなくなるというのは、心に穴が開いたような感じがしますね。非常に喪失感の大きいニュースでした。

つぎは『エスプガルーダII』の赤走行でノーコンクリアしたい

── ちなみに、Nintendo Switch版の『最大往生』は遊ばれていらっしゃいますか?

犀領さん:
はい。そこそこ遊ばせていただいております。

── Nintendo Switch版で陰蜂に挑戦されたり……。

犀領さん:
いやー、いまのところは「トレーニングモードで撃破できたらいいなぁ~」くらいの気持ちで、通しプレイはやらなくてもいいかなという感じですね(笑)。

正直なところ、陰蜂以上の目標を『最大往生』で掲げることはおそらく不可能だと思います。遊びつくしてしまった感すらありますので……。

── 「遊びつくした」という言葉の重みが違いますね(笑)。Nintendo Switch版を触ってみての感想はいかがでしたか?

犀領さん:
率直に言わせていただくと、「アーケードモードの移植度がめっちゃ高い」と思いました。

私はアーケード版がいちばん好きなので、移植版には再現度の高さを求めているタイプの人間なんですが、Switch版はXbox 360版と比べて、ゲーム内で発生する処理落ちの場所やその速度が、かなりアーケードに近くなっています。

比較動画を撮影してみたところ、Xbox 360版の処理落ちはかなり遅く、Nintendo Switch版はアーケード版よりも若干早いという結果でした。

── なるほど。若干処理落ちが速いことで、逆に気になったりはしないのでしょうか?

犀領さん:
処理落ちが遅すぎることでゲームのスピード感が損なわれるのが嫌なので、速いぶんには問題はないんですね。

この処理落ちの再現度がわかりやすいのが、エキスパート強化という高難度モードで遊んだときの5面ボスの第2形態、ジェット蜂です。私の中では、その開幕でショットを広げたときの処理落ちがどうなっているかが、処理落ちの再現度の高さの判断基準のひとつになっています。

ジェット蜂の開幕は基本的に処理落ちしやすいと言われているのですが、Xbox 360版はまったく処理落ちしないんですよ。

それに対して、Nintendo Switch版は処理落ちがかかる。厳密に言うとアーケード版と違うところはあるのですが、処理落ちがかかるということ自体がありがたいなと思います。この点でも、Nintendo Switch版を買うメリットがあるんじゃないかと思っています。

── Nintendo Switch版のオススメの遊び方はありますか?

犀領さん:
シューティング初心者の方には、ぜひ “Ver.桜夜” というモードで遊んでいただきたいです。
このモードは、敵の攻撃がかなり弱くなっている上に自機の火力も高いので、遊びやすいモードだと思います。

そんな初心者向けの難易度でありながら、真ボスの陽蜂(ひばち)や隠しボスの陰蜂と戦えてストーリーも読める。非常にいいモードだなと思いました。

そして、ある程度『最大往生』というゲームに慣れてきた方には “Novice”をオススメしたいですね。このモードはオリジナル版と比べると、

・敵弾の数が少ない
・弾のスピードが遅い
・敵が弾を撃つ間隔が長い

といった違いがあり、遅めの弾幕シューティングのような難易度になっています。

ただ、私が過去に経験したパターンとして、あまりにもランクが低すぎた結果、大量の敵弾が画面に残ってしまい、逆に高難度化することもありますので、その点は注意ですね。こういった場合には、うまくボムやハイパーを使って弾を消す、という考えを持っていただければと思います。

── 段階を踏んでプレイスキルを磨けるというのは魅力的ですね。

犀領さん:
あとは、“Ver.1.5”もオススメです。これはオリジナルの『最大往生』のオーバーフロー現象が発生しなくなるモードだったと記憶しているのですが、クリアラーの目線で見ますと、発動時に無敵と弾消しがあるハイパーシステムのゲージがすごく溜まりやすいというのがポイントですね。

バンバン弾消しができるので、少なくともオリジナル版よりは攻略しやすいモードだと思います。オリジナル版でハイパーを撃てる回数が少ないと感じている方には、ぜひこのモードで遊んでみてほしいなと思います。

そして、絶対に忘れてはいけないのが、“Arcade HD” ですね。これは、いちばんの基本かつ、いちばんの高難度モードだと思います。

『怒首領蜂最大往生』裏ボスノーコンティニュークリアしたプレイヤーにインタビュー_008

『最大往生』は非常に難しい作品ですので、心が折れそうになる方も絶対に多いと思います。そんな皆さんに紹介したいのが “Shop”です。これはXbox 360版からある機能で、私もよく使っているのですが、自機を一段階縮小して当たり判定を小さくするというオプションがメチャクチャ強いです。「どう見ても当たってるだろ」という弾にも当たらなかったりしますので。

以前「おうちでSTG」というイベントに、このオプションでノーコン討伐を狙うというテーマで参加させていただいたんですが、このオプションがあまりに強すぎて、まったく死ななかったんですよね(笑)。

Shopにはこういった強力なオプションが揃っていますので、難しさを感じる方は、何回か通しプレイを遊んでコインを貯めて、この機能を利用してほしいなと思います。

── 初めて『最大往生』に触れる人でも、やり込み甲斐を見出せるというのはうれしいですね。話は変わりますが、陰蜂を撃破された現在、新たなチャレンジはされていないのでしょうか?

犀領さん:
先月くらいまでずっと『原神』などを遊んでいたのですが、最近は新たなチャレンジを始めようと考えています。『エスプガルーダII』の赤走行はご存じですか?

── 詳しくはわからないので、詳細を教えてください。

犀領さん:
赤走行というのは、特定の条件を満たすことで発生する、すべての敵弾が超高速になる現象のことです。陰蜂の次は、この赤走行状態をつねに保ったままで『エスプガルーダII』をノーコンクリアしたいなと。

この挑戦も非常に狂気的なチャレンジになりますが、ぜひとも達成してみたいですね。

『怒首領蜂最大往生』裏ボスノーコンティニュークリアしたプレイヤーにインタビュー_009

── 楽しみにさせていただきます(笑)。

犀領さん:
どれくらいかかるかはわかりませんが、少しずつがんばっていこうかなと思います。

── 今日お話を聞いていて、犀領さんが作ったシューティングゲームで遊んでみたいなと思いました。犀領さんがデザインされた、人間がギリギリ倒せるようなレベルの凶ボスが出てくるゲーム、ぜひ遊んでみたいです。

犀領さん:
じつは静かにシューティングゲームの制作を進めています。フリーゲームで出す予定で、ぼちぼち制作しています。いまは高専5年生ではありますが、ひとまず就職先は決めずに地元でバイト生活をしようと考えているので、時間はあるんですよね。その時間をゲーム制作にも費やしていこうかなと思っています。

── 今後の活動にも注目させていただきます。最後に、犀領さんにとっての『最大往生』の魅力を改めてお聞かせください。また、『最大往生』が犀領さんの人生に与えてくれたものなどがあれば、合わせてうかがえればと思います。

犀領さん:
まず、『最大往生』の魅力は、“生命力を感じる楽しさ” だと思います。

最近X(旧Twitter)などでよく使っている言葉なのですが、自分の言う“生命力を感じる”というのは、“生存における奇跡的なプレイが起きること”を意味します。たとえば、弾幕避け中に「無理だ、これ死んだわ」と思った瞬間があったにもかかわらず、なぜか生き残っている瞬間。これは生命力を感じるいい例ですね。

そして、私が挑戦していた陰蜂戦では、生命力を感じる瞬間がめちゃくちゃ多いんです。とくに弾避けなんて超高速の弾が超大量に飛んでくるわけですから、一瞬の判断ミス、操作ミスが即座に死につながってきます。そういう弾幕を相手にするときが、すごく楽しいんです。

──ちなみに、とくに好きな弾幕を挙げるなら?

犀領さん:
やっぱり、いちばんはふぐ刺し弾【※】ですね。あの激しい弾幕を自分の目で見て、避ける方法を考える。そして実戦で思った通りに避けられたときに、「あー、弾避けすげー楽しい。陰蜂戦楽しすぎるなー」と感じるんですよね。

※ふぐ刺し弾:全方位に向かって放たれる敵弾。その様子が、皿に盛り付けられたふぐ刺しのように見えることから、シューターのあいだでこの呼び名が定着した。

── 何度お聞きしても、すごい感覚だと思います(笑)。

犀領さん:
ゲーセンでこれが決まった瞬間、見てくださっている方々が「おー!」って歓声を上げてくださるのもうれしいですね。『最大往生』は、敵弾の量に対して当たり判定が大きすぎる、非常に被弾しやすいゲームだと思いますので、そんな自機を操って弾幕をかいくぐれたときのよろこびや楽しさが大きな魅力だと思います。

そして、『最大往生』が私の人生に与えてくれたものは、“最後まで諦めないことの大切さ”です。このことを感じた決定的な瞬間が、a-choで初めて陰蜂撃破を達成したときでした。これは当時の録画にも残っているのですが、絶望的な状況に陥って「もう無理だ」と言ってしまったんですよ。

あのときは、ハイパーがなくなり残機も0で、オートボムを含めてあと2回被弾したらゲームオーバーになってしまうにも関わらず、陰蜂の残りHPが多いという状況でした。それで思わず「もう無理だ」と声がもれてしまったのですが、当然そんなことで諦められるはずもなく、とりあえずがんばって避け続けていたんです。そうしていたら、なぜかふぐ刺し弾を避けて陰蜂を撃破できるという奇跡が起こったんです。

一度は諦めの言葉を口にしながらも、結局はまったく諦めていなかったんですよね。『最大往生』でのこういった経験から、最後まで諦めないことの大切さを学んだ気がします。しかも、あのときは過去の被弾から学んだことが活きた場面もあったんです。ただ、そこについて詳しく語るとものすごく時間がかかってしまうので、今日はやめておきます(笑)。

『怒首領蜂最大往生』裏ボスノーコンティニュークリアしたプレイヤーにインタビュー_010

── (笑)。本日はありがとうございました。赤走行状態を保ったままの『エスプガルーダII』ノーコンクリア、期待しています。


陰蜂のノーコンクリアという人類初の偉業を達成された犀領さんに、3年間におよんだチャレンジについて詳しく話をうかがった。

なにより驚いたのは、陰蜂の凶悪さを十分理解したうえで「楽しい」と感じてプレイされていたことだ。ゲーマーにとってもっとも重要な素養を持っていた犀領さんだからこそ、不滅の記録を達成できたのかもしれない。

挑戦当時のことを語る犀領さんの屈託のない笑顔からは、この陰蜂挑戦が本当に楽しかったということを物語っており、その姿を見ているだけでこちらも自然と笑顔になっただけでなく、難題に対する向き合い方や考え方を再考するきっかけとなった。

また、偉業達成は犀領さんひとりだけの力で成し遂げられたものではなく、親交のあるプレイヤーやネットの海でつながった世界中の弾幕シューティングプレイヤー、そして何よりゲームセンターa-choの存在があった。

今回のインタビューのもうひとりの主人公と言っても過言ではないゲームセンターa-choは、2025年1月31日に閉店が決定している。残り僅かな日数ではあるが、この機会にぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。そして、本インタビューをきっかけに、ゲーム愛好家たちの出会いの場でもあり、日々さまざまなドラマが生まれている全国津々浦々のゲームセンターにも訪れてみてほしい。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
ライター
レトロゲームから最新ゲームまで、面白そうだと感じた家庭用ゲームを後先考えず手当たり次第に買い漁る男。500を越えてから、積み上げたゲームを数えるのは止めました。 ディズニーアニメ・お笑い・音楽・漫画などにも広く浅く手を伸ばし、動画投稿者としても蠢いています。
Twitter:@DuckheadW

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