『アークナイツ』と『ゼンレスゾーンゼロ』をずっと遊んでいる。シナリオがおもしろいからだ。
しかし私は、この「シナリオがおもしろい」がもはや当たり前すぎて売り文句にならない “恐怖の時代” が到来していると思っている。だって、私がやってないけど周りはやってるスマホゲーム、みーんな「シナリオがおもしろい」って言われてるもん。
『アークナイツ』とは
『アークナイツ』は中国のHyperGryphによるタワーディフェンスゲーム。動物の特徴を持つ人類が暮らす異世界「テラ」を舞台としており、この世界のエネルギー源「源石」がもたらす不治の感染病「鉱石病」を巡る差別や国同士の戦争、それらに挑む製薬会社「ロドス・アイランド」の奮闘を描いたSF作品だ。
ゲーム開始当初こそ、病に苦しむ人を助けようとする製薬会社と差別に苦しむ感染者が暴力を持って決起したテロリスト同士の悲しい戦いを描いているのだが、段々話がデカくなっていき、いまはすっかり宇宙規模の話になっている。

それも唐突なものは一切なく、6年の年月をじっくりと使い、張り巡らせた伏線を丁寧に回収したうえで、かつ十分な驚きを持って壮大なスケールのSFを描くことに成功しており、これが『三体』スタートから20年弱を経た中国のSFの描き方なのかと、その姿勢そのものに感動をするストーリーとなっている。また、病気だけでない、あらゆる差別や偏見を逃げずに描いていて、とにかくストーリーは陰惨で人が死ぬ。
だがそれは決して悪趣味から来ているサディスティックな描写ではなく、「どう生きるのか」「未来になにを残すのか」を描くために選ばれている手法であり、その重厚なストーリーはもはやハードカバーの長編SFを相手取る時のような覚悟をイベントごとに求められる、文字読み大好きマンには堪らないゲームに仕上がっている。
『ゼンレスゾーンゼロ』とは
『ゼンレスゾーンゼロ』(以下、ゼンゼロ)は『原神』『崩壊:スターレイル』などのHoYoVerseによるアクションゲーム。
未知で危険な異空間「ホロウ」に世界の至る場所が飲み込まれ文明は崩壊。それでもホロウから必死に資源を集め、なんとか再興を果たした都市「新エリー都」が舞台。新エリー都は依然ホロウに囲まれており、市民の生活のすぐ横にはホロウ内の物質に侵される「侵食」や、ホロウに巣食う怪物「エーテリアス」といった「死」がすぐそこに迫っている。
そんな世界で主人公の兄妹はプロキシと呼ばれる一種のハッカーで、ホロウ内を安全に探索するための道案内を裏稼業にしている……と設定だけ書くと、まるでグレッグ・イーガンの『闇の中へ』を彷彿とさせる陰鬱さなのだが、本作はむしろ楽観的なまでに明るく前向きに「毎日を楽しく過ごすこと」「隣人を愛すること」「幸せを脅かす悪を許さないこと」といった、非常にポジティブなストーリーが描かれている。
先の『アークナイツ』や同社の『崩壊:スターレイル』に比べると舞台も話のスケールもこじんまりとしているが、それを活かした話作りが楽しいゲームです。

……と、気に入ってるゲームの説明を長々と書いてみましたが、どうですかこれを読んだゲーム未プレイのみなさん。
ぶっちゃけ、読んでもやらんでしょ?
っていうか、なんなら読まんでしょ? こんな知らん言葉ばかりの文章。
スマホゲームはサービスが終了するまで “一生”
これはいま非常に怖い時代だなと思っているのですが、先に書いたようにとにかく私はこの両者のストーリーに惚れ込んでるんです。そしてさっきの文章でもちょっと長くなっちゃいましたけどアレでもかなり絞って書いているつもりなんです。
もっとこう……すごいさあ! めちゃくちゃすごいことやってんだよ! お話とか見せ方とか!
『アークナイツ』とかさあ、「このカロリー重すぎる世界設定を、いつサービスするかどうかもしれないスマホゲームという土壌で6年も熟成させてお出ししたの!? 少しずつ匂わせつつ!?」みたいなのが目白押しで、それに費やした準備期間やエネルギー、リソースを想像すると気が遠くなってしまう。真似しようとしてできることではない。

でもそれをさ、かいつまんで説明するの難しいじゃん。難しいから「とにかくシナリオがおもしろくてクオリティがすごいんだよ!」みたいなことしか言えないんですよ。
だけど、「シナリオがおもしろい」って、いまの時代みんなが遊んでるスマホゲームにおいて当たり前なんですよ。当たり前すぎる。前提すぎる。私がやってないけど周りはやってるスマホゲーム、みーんな「シナリオがおもしろい」って言われてるもん。
例えば『リバース:1999』とか、あるいはサービス終了しちゃいましたけど『メギド72』とか、遊んでる人たちはみんな「シナリオがおもしろい!!!」って言ってるもん。
で、それを見たら遊んでない私も「へぇ、シナリオがおもしろいんだ」とは思いますよ。思いますけど、でもそれで遊ぶかっていうと遊ばない。だっていま、すでにシナリオがおもしろいスマホゲームを複数やっているから。

これが本とかアニメとか映画だったら「じゃあ時間作って1本見てみるか」で済むんだけど、スマホゲームってサービスが終了するまで一生だから。ずっと運営で継ぎ足されていくから。新しく始めにくいですよね。
私、本当に『アークナイツ』についてはかなり信頼してるというか信奉まであるし、とにかく周囲の人全員にプレイしてもらいたいと思っているんですけど、6年ですよ、このゲーム。6年。6年経過したゲームを「いまから1から始めて最新に追いついてくれ!」ってすさまじく重いよね。しかも『アークナイツ』って死ぬほどシナリオが長い。期間限定イベントが始まるたびに小説1冊読む覚悟を入れながら遊んでますマジで。
長いイベントシナリオとかそれだけで20万字超えてるんですよ。やばいっすよ。そりゃあ興味があってもなかなか遊ぶゲームを増やせないよね。デイリーやらないとガチャ回せないしさ。

いや、でもほんとあらゆるゲームのシナリオがおもしろくて、プレイヤーみんなが「俺が遊んでるスマホゲームを君も遊んでくれ! 俺にならないか!」って言いふらしまくっている世界、恐ろしすぎる。怖すぎる。全員その願いは叶わないし、救われる方法が思いつかない。どうすればいいんですか?
そして読まれる人の数を確保できなかった物語はサービス終了してしまう。恐ろしい。こんな儚いことってありますか。時々こんなことを考えると途方に暮れてしまいます。どうすればいいんだ?
もう『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』のタチコマみたいに思考を並列化するしかないかもしれない。僕らはみんな生きている……。
そんななか、懲りずにこないだリリースされたスマホゲーム『SDガンダムGジェネレーション』(以下、Gジェネ)を楽しく遊んでいます。
なにがおもしろいって、やっぱスマホゲームってシナリオの先が読みたいから遊んでるところがあるじゃないですか。「早く話の続きを読ませてくれ!!!」って思いながら歯を食いしばって強大なボスキャラに立ち向かうわけじゃないですか。

でも『Gジェネ』って原作ガンダムをできるだけ忠実に再現しようってゲームだから、クリアしてもクリアしても知ってる話しか出てこないんですよね。
なんなら「ふーん、これからやる『ガンダムZZ』のシナリオは全18ステージあるのか……。でも遊ばなくても私、全部知ってたな!」ってなってしまうんですよ。でも楽しく遊んでしまう。不思議ですね。
とりあえずいま私から言えることは『アークナイツ』は今度『アークナイツ:エンドフィールド』っていう派生作が出るから、それを遊びなさい……ってことだけです。
さようなら。