15歳の神童「リュウ使い」Blaz選手がルーザーズで大爆発。名だたる強豪を立て続けに「3-0」で破るその姿、さすがに脳を焼かれてしまう
★ルーザーズ2回戦 vs GG|XIAN
翔選手にウィナーズ1回戦で敗北し、ルーザーズに落ちたBlaz選手のルーザーズ2回戦の相手はXian選手。競技シーンではやや見ることが少なくなったDJをおもに使用している“シンガポールの英雄”で、今大会でカプコンカップへの出場はなんと10回目となるベテランだ。
Xian選手はLeShar選手と同じグループFで、2位通過ではあるものの4勝1敗の好成績を残している。ルーザーズの1回戦では、カプコンカップ2大会で王者に輝いたドミニカのMenaRD選手を破ってきた。
このルーザーズの2回戦から、Blaz選手はリュウを起用。「リュウ」という『ストリートファイター』を代表するキャラクターが、日本・両国で行われている世界大会の大舞台に立つ……それだけで、どこか嬉しくなってしまうのは筆者だけではないだろう。実際、会場内も15歳の神童が操るリュウを観たい、そんな空気が満ち満ちているように感じた。
試合開始すぐの歩いての踏み込み投げ、そして中段でのラウンド先取と、Blaz選手の一挙一動に会場が沸く。そして1セット目の決まり手はSA3「真・昇龍拳」。

権利表記:©CAPCOM
これだよ、これが観たかったんだよ……筆者の心の中にはそんな声が響いていたし、おそらく笑顔も漏れていた。本当は両選手を応援すべきだと分かっていても、なぜか「リュウが勝つ姿がみたい」と思わされてしまっていた。
Blaz選手の勢いは止まらず、要所の無敵技暴れ、そしてDJの上からの攻めの選択肢である「ニーショット」を“くぐって”着地硬直を刺すプレイングを魅せ、3-0のストレートで勝利。試合後には笑顔を見せながら壇上を降りていく。

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★ルーザーズ3回戦 vs CR/PWS|SHUTO
続くルーザーズ3回戦では、日本勢のひとりであり、Crazy Raccoon所属のShuto選手と相まみえることに。Shuto選手は日本のストリートファイターリーグの今や常連プレイヤーであり、2024年シーズンもCRの一員としてプレイオフまで戦い抜いた。グループステージは4勝1敗で、同グループを1位で通過したAngryBird選手にも勝利を収めている。
またShuto選手と言えば、ここにいたるまでのルーザーズ2回戦におけるTakamura選手との激闘も見逃せない。セット、ラウンドともに追い込まれながらもギリギリの場面で「瞬獄殺」を交えた逆転、相手の波動拳を抜けるSA2「崩天劫火」、そして最後の最後で相手の無敵技をガードしての勝利……と劇的な展開で、まさに“地獄からの生還”を果たした。“修羅”の名がふさわしいその活躍に、会場のファンが大いに沸いたのは言うまでもないだろう。

タイトル名:ストリートファイター6
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そのShuto選手はこれまで通り豪鬼、そしてBlaz選手は先ほどと同じくリュウを選択。両国の舞台で、世界最高レベルの「リュウvs豪鬼」が見える……これだけでも頬が緩んでしまう。
この試合はBlaz選手の鋭い対空と差し返し、そしてShuto選手のドライブラッシュに反応した無敵技など、両者の反応の良さが目立った。Shuto選手は防御に回った場合の無敵技の判断もすさまじく、豪鬼は体力が少ないため他のキャラクター以上にリスクが大きいにもかかわらず、要所で読み合いを制することで相手の攻めのペースを乱していく。
セット数は2-2までもつれこみ、最終セットの1ラウンド目はBlaz選手が先制。しかし続く2ラウンド目、Shuto選手もドライブリバーサルからのSA1「滅殺豪波動」による削りKOと素晴らしい判断を見せる。そして運命の最終ラウンド、最後はShuto選手の無敵技暴れを読んだBlaz選手が制し、もう一歩、グランドファイナルへの歩みを進めた。
Blaz君本当に強かった
— CR シュート (@Shuto_fgc) March 8, 2025
自分が良くなかった所もそんなになかったけど実力がまだまだ足りずでした…!
俺のCC優勝という夢は叶わなかったけど
これで次こそ優勝するという新しい目標が出来た🔥
今大会は応援の力で100%出し切れました
今日まで応援いただいた皆さんありがとうございました!!!!😭

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★ルーザーズクォーターファイナル vsTWIS|NOATHEPRODIGY
ルーザーズクォーターファイナルでは、ウィナーズ側で翔選手に敗れたNoahTheProdigy選手との対戦に。Blaz選手は引き続きリュウ、NoahTheProdigy選手もメインキャラクターのルークと、新旧主人公対決の様相を成した。
リュウの強みのひとつとして、バーンアウト状態の相手に対する「波掌撃」を使った固め【※】がある。また相手のガードの上からドライブゲージを削る能力も高く、Blaz選手はこれらを活かしてNoahTheProdigy選手にプレッシャーをかけていく。互いにリスクを背負いながらも攻める早い展開となり、セット終了後の再戦選択のスピードにさえ、両者の勢いが表れているようだった。
最終ラウンドは相手を画面端、バーンアウト状態まで追い詰めたBlaz選手が波掌撃を使って強引に固め、たまらず前ジャンプによる脱出をはかったNoahTheProdigy選手を、落ち着きはらった昇龍拳対空でフィニッシュ。まさかの「3-0」ストレートで下し、さらにもう一歩、コマを進めた。
※弱版の波掌撃は、バーンアウト状態の相手にガードさせてもリュウが先に動ける、有利フレームをとれる技となる。これによって相手の動きを制限しながら、画面端に追い込んだり、削りダメージでじわじわと体力を減らすことができる。

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★ルーザーズセミファイナル vs REJECT|ANGRYBIRD
Blaz選手のルーザーズセミファイナルの相手は、中東を代表するプレイヤーのひとり・AngryBird選手。EUのストリートファイターリーグでは全試合出場、全試合勝利という驚異の記録を打ち立てており、グループステージは4勝1敗の1位で突破した。昨シーズンの「EVO」覇者でもあり、REJECTへの加入が大きな話題を呼んだのも記憶に新しい。
この日はウィナーズ側でJuicyjoe選手に敗れたものの、ときど選手とのREJECT対決を制し、さらにルーザーズクォーターファイナルではJuicyjoe選手にリベンジを果たして上がってきた。

タイトル名:ストリートファイター6
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そのAngryBird選手はここでは豪鬼、Blaz選手はまたもリュウを選択。1セット目は最終ラウンドで両者体力がわずかになるまで続いた殴り合いをBlaz選手が制し、ポイントを先行する。
会場が大きく沸いたのが2セット目の最終ラウンドだ。中段によるダブルアップを狙ったBlaz選手がバーンアウト状態となり、AngryBird選手はそこでドライブインパクトを狙うが、Blaz選手は垂直ジャンプでそれを回避。ジャンプ攻撃からSA3「真・昇龍拳」を叩き込み、約半分ほど残っていた豪鬼のHPを大きく削る。
弱攻撃ひとつで倒れる状態まで追い込まれたAngryBird選手は「瞬獄殺」によるダブルアップでの逆転を狙うが、Blaz選手はそれも読み切っていたのかジャンプで回避。2-0でリーチをかけた。
そして3セット目、ドライブインパクトに対する投げ、画面端の相手に対する攻めのドライブリバーサルなどを見せながらAngryBird選手を追い込んでいく。リュウの自己強化技「電刃錬気」の隙を狙った瞬獄殺も不発に終わり、最後はBlaz選手が上からの攻めを冷静に昇龍拳で返して、またも「3-0」のスコアで勝利を収めていった。

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★ルーザーズファイナル vs DRX|LESHAR
怒涛の勢いでルーザーズサイドを駆け上がってきたBlaz選手、グランドファイナルへの道のりの最後の壁は、ウィナーズファイナルで翔選手に敗れたLeShar選手だった。
これは解説でも触れられていたが、リュウは相手の内側に入っていく能力自体は決して高い方ではなく、エドのような長いリーチの技から火力につなげられるキャラクターと対峙するには相応の技術が求められる。
1セット目からLeShar選手は鋭い差し返しでBlaz選手を追い詰め、1ラウンドを先取。が、2ラウンド目ではバーンアウト状態になったエドをグイグイと追い込み、「サイコフリッカー」による揺さぶりをジャストパリィで対処する冷静さも見せ、Blaz選手が勝利。そして3ラウンド目はLeShar選手の無敵技による切り返しを読み切って、重要な1セット目を制した。
2セット目でも「サイコスパーク」のスキをしゃがみ強キック、いわゆる大足でとがめる鋭い反応を見せる。このセットも最終ラウンドまでもつれ込むが、体力不利の状況からBlaz選手がふたたび無敵技を読み、リュウの高火力をふんだんに叩き込んで2セット目も奪う。
2度の大きな読み負けが影響したか、3セット目ではLeShar選手がドライブリバーサルの反撃に失敗したりと、普段の正確無比なプレイングに似つかわしくないミスが見られるように。互いのSA3が交錯する一幕もありながら、最後はバーンアウト状態でSAゲージもなくなったエドを画面端のドライブインパクトでスタンに持ち込み、ここでもまさかの「3-0」でBlaz選手がグランドファイナル進出を決めた。

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……
「あのLeSharが、3-0で負ける……?」
会場にいた筆者が、思わずつぶやいたのはそんな言葉だった。2024年のストリートファイターリーグ、日本最高峰の舞台で圧倒的な強さを見せ続けたLeShar選手。誰が彼を止められるのか、そんな疑問が浮かぶほどの強さを魅せてくれたLeShar選手が、3-0のストレートで敗退。にわかには信じられなかったが、まさに目の前でそれは起こっていた。
しかも、15歳の操る「リュウ」によって。
弁解するような言葉になるが、筆者はLeShar選手というプレイヤーが大好きであり、ストリートファイターリーグのグランドファイナルを観たひとりとして、彼の活躍を願っている。……なのにどうしてか、この日ばかりは「Blazが勝つ瞬間を見たい」と思ってしまったのも、また事実だ。
その理由はいくつか思い浮かぶが、大きいのは彼の15歳という年齢と、リュウというキャラクターの持つ魅力だろう。昨年、「Ultimate Fighting Arena 2024」で激闘の末にKusanagi選手のリュウが優勝したときも似たような感情を抱いた記憶がある。というか、筆者がいまリュウを使用しているのは彼(Kusanagi選手)の影響である。
脳を焼かれた……決して正確な言葉ではないと思いつつ、そう言わずにはいられない。古参の格ゲーマーではないし、ずっとリュウを使ってきたわけでもない筆者でさえ、彼らの「リュウが勝つ」姿には何とも形容しがたい魅力を、カッコよさを、憧れを感じてしまう。
会場の盛り上がりを見るに、同じような感情を抱いていた方は筆者以外にもいたのではないだろうか。最近では半ば公式にラーメン屋扱い【※】をされていたりもするけれど、やはり「リュウ」というキャラクターは『ストリートファイター』のファンにとって特別な存在なのかもしれない。
何はともあれ、チリの15歳に、10歳以上も年下のプレイヤーに、もしゲームを遊んでいなければ、決して交わらなかったであろう存在に脳を焼かれる──。こういうことがリアルにあるから、格ゲーってのは最高なのだ。
※ラーメン屋扱い:『ストリートファイター6』におけるリュウのコスチュームがラーメン屋の店主風に見えるとユーザーの間で話題になったもの。さらにカプコンと湖池屋の公式コラボにて「リュウがラーメン屋を開いたら…」という“設定”のもと、「昇隆軒 リュウ特製ラーメン味」のポテトチップスまで生まれてしまった。ちなみに、奇しくも本大会でBlaz選手が使用していたのが該当のコスチュームである。筆者もコスチュームの変更を検討している。