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『スト6』賞金1.5億円の世界大会覇者・翔と、15歳の神童リュウ・Blazの激闘があまりにアツすぎた──。国技館をブチ上げたふたりの“伝説”を1.5万字で振り返る

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「良い試合が多すぎるだろ! 全部ベストバウトだよ! どこを記事にしろってんだ!!」

今回、「CAPCOM CUP 11」の4日目を現地観戦させていただいた筆者の素直な心境は、こんな感じだった。

いや、本当に良い試合しかなかったので、まだ観ていない方は今すぐアーカイブを視聴していただきたい。筆者の記事なんか読んでる場合じゃないよ……と言うと卑屈すぎるかもしれないけれど、やっぱり格ゲーの試合って文字で追うより、実際に観た方が絶対に面白いと思うんですよね。

そんな世界最高峰の大会を制したのは、日本の「翔」選手。両国国技館で行われた優勝賞金「1億5000万円」の大会で、世界中の強豪たちの間を勝ち抜いて、日本人が優勝する……それだけでも最高にアツい。日本の格ゲーファンとして、こんなに嬉しいことはない。

また、翔選手と言えば、2023年にサウジアラビアで行われた「Gamers8」での優勝が記憶に残っている人も少なくないだろう。ふたたび大規模な世界大会で優勝を果たした形となり、今や間違いなく格闘ゲームの競技シーンにおける大スターのひとりだ。

ただ、その一方……個人的にはどうしても、何が何でも取り上げなくちゃいけないと思ったプレイヤーがいたのだ。

それが決勝で翔選手に敗れ、2位になった南米・チリのBlaz選手。当日は初戦で翔選手に敗れてルーザーズに落ちるも、怒涛の勢いで勝ち上がり、グランドファイナルの舞台でふたたび翔選手と相まみえることになった。

驚くべきは、まずその「15歳」という若さだろう。格闘ゲームは30代、40代でも現役で結果を出し続けているプレイヤーが多く、今大会の出場者も多くは20代~30代。近年では10代~20代前半のプレイヤーもかなり台頭してきているが、その中でも15歳でカプコンカップの大舞台に立ち、2位という結果を出す姿には、尊敬を超えたある種の畏怖さえ感じずにはいられない。

そしてもうひとつ特筆すべきは、彼が「リュウ」でルーザーズを勝ち上がったこと。厳密には他のキャラクターも使えるマルチなプレイヤーなのだが、この日に限っては彼の「リュウ」を語らないわけにはいかない。日本・両国で、彼のリュウは間違いなく、筆者をふくめた少なくない格ゲーマーたちの“脳を焼く”ほど輝いていた……はず。

『ストリートファイター6』カプコンカップ大会レポート:優勝は日本の翔選手_001
▼試合中のBlaz選手
タイトル名:ストリートファイター6
権利表記:©CAPCOM

というわけで、今回のレポートでは翔選手とBlaz選手の試合にフォーカスして、その模様をお届けしていきたい。最初に「全部ベストバウト」といった通り、他の選手たちも素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたので心苦しい限りだが、全編を書き起こすのは現実的ではないし、それを読む時間があったらむしろアーカイブで映像を観て欲しいというのもある。

なお、記事後半では優勝者・翔選手に向けて大会後に行われたインタビューの模様と、当日の会場の写真にあわせて4日目の試合結果をお届けする。特に翔選手へのインタビューは壇上で行われたものと異なる質問にも答えていただいているので、ぜひご一読いただきたい。


抜群の安定感でウィナーズサイドを勝ち上がった翔選手。日本のファンが“観たかった”一戦・LeShar選手との対決もまさかのストレート勝利

★ウィナーズ1回戦 vs 2GAME|BLAZ

翔選手は1~3日目に行われていたグループステージ(グループC)を4勝1敗、1位の成績で突破。そしてこの日、ウィナーズの1回戦で当たったのがBlaz選手だった。正直、この時点の筆者は、まさかグランドファイナルもこのふたりの組み合わせになるとは、まるで予想していなかった。

対するBlaz選手はグループステージ(グループD)をまさかの5勝1敗で勝ちあがってきたプレイヤー。あらためて彼のプロフィールを振り返っておくと、南米・チリの弱冠15歳でありながら、「CAPCOM Pro Tour 2024」のワールドウォーリアー(南米ー東地域)で驚異の4度優勝を果たした、まごうことなき“神童”である。もちろん、今回のカプコンカップ出場者の中では最年少だ。

ウィナーズ1回戦では、翔選手はJP、Blaz選手はケンを選択。 翔選手が2ポイントを先取した段階でBlaz選手が豪鬼にキャラクターを変更するが、その3戦目も翔選手が制し、ウィナーズサイドで勝ち上がる。解説のハメコ。氏も触れていたように、日本ではトッププレイヤーの間でケンを使用しているプレイヤーが多いこともあり、翔選手側の対策が充実していたのも勝因のひとつだったようだ。

ストレートで1回戦を突破した翔選手は大きくガッツポーズ。まだトーナメントの先は長いとはいえ、重要な1戦目をいい形で勝ち切ったのは、メンタル的にもプラスに働いたと見られる。

『ストリートファイター6』カプコンカップ大会レポート:優勝は日本の翔選手_002
タイトル名:ストリートファイター6
権利表記:©CAPCOM
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▼ここではBlaz選手はケン・豪鬼を起用していた
タイトル名:ストリートファイター6
権利表記:©CAPCOM
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▼重要な初戦を制し、大きくガッツポーズする翔選手
タイトル名:ストリートファイター6
権利表記:©CAPCOM

★ウィナーズセミファイナル vs TWIS|NOATHEPRODIGY

翔選手の2戦目はウィナーズセミファイナル、対戦相手はグループBを1位で通過し、ウィナーズ1回戦でTakamura選手を制したNoahTheProdigy選手だ。

NoahTheProdigy選手は、おもにルークを使用するアメリカの若手プレイヤー。『ストリートファイター6』では攻防の要となるドライブゲージを使い切ってしまうと「バーンアウト」と呼ばれる一時的な弱体化状態に入ってしまうが、彼はそれを恐れることなく、すさまじい勢いでゲージを消費しながら苛烈に攻めるスタイルが特徴的である。

そのプレイスタイルと、バーンアウト中はキャラクターがやや白っぽくなることから、ついた異名は「カリフォルニアの白い暴走特急」。勝利後のパフォーマンスの派手さにも定評があり、この日の1戦目・Takamura選手に勝利した後にはステージの周囲をニコニコで走り回る姿も観客を沸かせた。

ウィナーズセミファイナルでは、まず翔選手がJP、NoahTheProdigy選手がルークを選択。ただし、JPがバーンアウト状態の相手に対して非常に強力な攻めを展開できることから、さすがのNoahTheProdigy選手もいつものような試合展開を作り出せず、翔選手が2ポイントを先取してリーチをかける。

追い込まれたNoahTheProdigy選手は、3戦目でキャミィにキャラクターを変更。が、翔選手がキャミィの強みである「上からの攻め」をいなすような形でリターンを得るみごとな対応をみせ、ストレートで勝利。ウィナーズファイナルへの進出を決めた。

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タイトル名:ストリートファイター6
権利表記:©CAPCOM
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タイトル名:ストリートファイター6
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タイトル名:ストリートファイター6
権利表記:©CAPCOM

★ウィナーズファイナル vs DRX|LESHAR

いよいよ、これに勝てば決勝進出を決められるウィナーズファイナルにて翔選手の前に立ちはだかるのは“黄金の右手”ことLeShar選手。LeShar選手はグループFを4勝1敗で1位通過し、この日はふ~ど選手と「エド」同士のミラーマッチを制し、さらにスウェーデンのJP使い・Juicyjoe選手にも勝利してここまで勝ち上がってきた。

LeShar選手と言えば、日本のファンの間では「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2024」での活躍を思い出さずにはいられないだろう。韓国のeスポーツチーム・DRXからレンタル移籍加入という形で「Yogibo REJECT」に参加し、リーグ本節では10戦8勝、何度となく重要な大将戦を制して圧倒的な存在感を見せつけたプレイヤーだ。

その強さ、活躍ぶりから日本での人気も非常に高く、会場でも半ば“日本勢”かと思ってしまうほど多くの声援を受ける。また、エドのSA2「サイコキャノン」を使った高難度コンボも高い精度で成功させており、そのたびに会場から合いの手の声があがっていたのも印象的だった。

ふたりは「ストリートファイターリーグ」に参戦していたプレイヤー同士だが、ディビジョンが異なっていたため、リーグ中で相まみえることはなかった。それもあって、日本のファンからするとこのウィナーズファイナルはまさに「観てみたかった一戦」。会場も大いに沸く中、翔選手がJP、LeShar選手がエドを選択して試合が幕を開ける。

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タイトル名:ストリートファイター6
権利表記:©CAPCOM

1セット目ではLeShar選手のコンボミスで生まれたチャンスを見逃すことなく、翔選手が先制。2セット目も相手をバーンアウトに追い込んでから、JPのSA2「ラヴーシュカ」を使って削りKOもチラつかせながら攻め、ラウンドを先取した。

そして2セット目の2ラウンド目、LeShar選手が仕掛けた起き攻めに対し、翔選手が「アムネジア」OD版を交えた駆け引きから、SA1「チェルノボーグ」を2回ヒットさせるコンボを披露。読み勝てばセットを取れる、ここぞという場面で切った手札がみごとに刺さり、会場が大歓声に包まれる。

3セット目も設置技「ヴィーハト」を活かした読み合いを制して翔選手がラウンドを先行、2ラウンド目も序盤はLeShar選手のペースかと思われたが、ひとつのミスから流れは大きく翔選手に傾き、そのまま押し切る。スコアを見れば、まさかの「3-0」でウィナーズファイナルを翔選手が勝利し、グランドファイナルへの進出を決めた。

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▼正確無比なプレイングで、日本の競技シーンを大いに沸かせてきたLeShar選手
タイトル名:ストリートファイター6
権利表記:©CAPCOM
『ストリートファイター6』カプコンカップ大会レポート:優勝は日本の翔選手_010
タイトル名:ストリートファイター6
権利表記:©CAPCOM
『ストリートファイター6』カプコンカップ大会レポート:優勝は日本の翔選手_011
▼SFLでも大活躍したふたりの戦いを、多くの観客が固唾を飲んで見つめていた
タイトル名:ストリートファイター6
権利表記:©CAPCOM

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編集者
オーバーウォッチを遊んでいたら大学を中退しており、気づけばライターになっていました。今では格ゲーもFPSもMOBAも楽しんでいます。ブラウザはOpera

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