『Demon’s Souls』や『DARK SOULS』に端を発した“ソウルライク”は、アクションRPGのサブジャンルとして、いまや完全に定着している。日本国内にとどまらず、世界的なブームにもなっているのは、電ファミ読者もよくご存じだろう。
そういったなか、中国を拠点とするゲーム開発者への支援プロジェクト「China Hero Project」から、新たなソウルライクが登場する。それが、PC(Steam)/ PS5で3月27日に発売される、『AI LIMIT 無限機兵』だ。
『AI LIMIT 無限機兵』は、ソウルライクの最も楽しい部分を抜き出して、煮詰めたようなゲームだ。しかも、すべてのゲーム設計が攻撃に特化しており、うまく立ち回ることができれば、斬って斬って斬りまくる爽快なバトルを楽しめる。スタイリッシュアクションにも通じるガン攻め推奨のバトルは、ソウルライクが好きな人にとっても新鮮に映りそうだ。
ソウルライクのひとつの進化の方向性を感じさせる本作の魅力を、本稿でひもといていこう。
“攻め”から“攻め”につなげられる「シンクロ率」のシステム
本作の基本システムの多くは、オーソドックスなソウルライクを踏襲している。普段からソウルライクや死にゲーを楽しんでいる人なら、チュートリアルは不要なくらいだろう。
そういったなか特徴的といえるのは、スタミナの概念がないこと。つまり、その気になれば、攻撃を立て続けに繰り出せるのだ。
さらに、回避における無敵時間が比較的長く、使用後は即座に攻撃に転じられる。とくに敵をロックオンしている最中に使えるステップ回避は、プレイヤーキャラの身体能力が高いこともあり、すこぶる軽快だ。
ソウルライクといえば、スタミナなどのリソース管理も醍醐味の一つではあるが、本作ではその制約は緩い。これを聞く限りだと、「ヌルいんじゃないの?」と思うかもしれないが、実はこれには深い理由がある。
本作の最大の特徴は、“シンクロ率”を基点とする各種システムによって、徹頭徹尾に攻撃特化のアクションを実現していることだ。
画面中央下部には、シンクロ率のゲージが常に表示されており、プレイヤーキャラの行動に応じて増減する。基本的には敵に攻撃を加えたり、敵を倒したりすることでシンクロ率は上昇する。逆に攻撃を受けてしまうと、シンクロ率は下がってしまう。
そして、たとえ同じ攻撃を行った場合でも、シンクロ率が「0~49.9%」「50~79.9%」「80%以上」の各段階で、与えられるダメージ量が低・中・高と変化するのだ。さらに、“刻印”と呼ばれる装備を入れ替えることで、各段階の幅を変化させたり、より高い段階を追加させたりもできる。
攻撃を与え続けられれば、大ダメージを出せるだけでなく、高いシンクロ率を維持することで有利に展開できる。逆に、ダメージを受けると体力が減るだけでなく、シンクロ率も減少し、ジリ貧に陥ってしまう。
ちなみに敵の攻撃を受けてシンクロ率が0%になってしまうと“ウィーク状態”となり、一定時間行動不能に陥る。敵の攻撃が苛烈な本作でこうなってしまうと、ゲームオーバーも同然。そのため体力の増減以上に、シンクロ率の増減が戦局に与える影響が大きく、それによって本作は常に“ガン攻め”が推奨されているのだ。
そして、ここで実に悩ましいのは、武器スキルなどの強力な特殊攻撃の使用時にも、シンクロ率を消費してしまうことだ。大ダメージを出せるからといって、調子に乗って特殊攻撃を無闇に連発すると、シンクロ率は減少し、やがては与えられるダメージも下がってしまう。
逆に、シンクロ率をキープしたいがために、特殊攻撃を温存しまくるのも、プレイヤーキャラのポテンシャルをじゅうぶんに引き出せない。
そのため、戦闘中はどこかのタイミングで、シンクロ率を吐き出してでも特殊攻撃を繰り出す局面が生じる。特殊攻撃の使いどころをちゃんと考える必要があり、その判断の見極めが本作をプレイしていて面白いのだ。
上でも述べたように、回避が強力な本作では、敵からの攻撃を受けずに流水のごとく美しく戦い続けられる。そして、スタミナの概念がない本作では、烈火のごとく激しく攻撃し続けられる。回避やスタミナの制約が緩いことに、れっきとした理由があることが分かってもらえるだろうか。
シンクロ率を基点としたさまざまな攻防が、戦闘における一挙手一投足に、明確な意義を与えてくれる。しかもリソースはシンクロ率のみという明瞭さゆえに、思考が邪魔されない。常に動き回って攻撃できるのでストレスもないし、シンクロ率を高い状態でキープして、ひたすら攻撃し続けられるのは、スタイリッシュアクションにも通じるモノがあって本当に気持ちがいい。
三十六計攻めるに如かず。攻め手には事欠きません!
攻めれば崩せるが、攻めなければ崩される。攻めるために攻撃を避け、攻撃を当て続けることが至上の戦略となる。強いもの同士の超常対決だからこそ、“攻め”によってターンを握り続けることが重要だ。
雑魚モンスターが相手なら、攻撃を複数回命中させると容易によろめかせられるが、強敵相手にはそうはいかない。通常攻撃だけでは割り込まれることも多々ある。そこで、「武器スキル」、「スペル」、「フレーム能力」といった、さまざまな特殊能力を駆使することで、敵に攻撃の機会を与えずに戦局を有利に進められる。本作では、いかなる強敵であっても、強力な攻撃であれば崩すことができるのだ。順番にチェックしていこう。
・武器スキル
本作に登場する各武器には、装備時に専用の「武器スキル」が使用可能となる。突進攻撃や連撃、一撃のダメージが高いもの、相手を崩しやすいもの、さらには“毒霧”なんてものもある。
プレイヤーキャラは2種類の武器を装備し、瞬時に切り替えられるので、敵や用途に合わせた戦術を選びやすい。さらに、攻撃中に武器を切り替えると、即座に次の攻撃につなげられるのだ。これらによる無呼吸連撃のループが、『AI LIMIT 無限機兵』の楽しさの源泉となっている。
・スペル
スペルは、あらかじめセットしておくことでワンボタンで繰り出せる、強力な特殊攻撃だ。装備する武器(武器スキル)にクールダウンタイムは影響されないので、スペルとの組み合わせて自分だけの戦術を追求できる。この自由度の高さも本作の見どころだ。
たとえば最初のエリアで入手できるスキルの「レールガン」は、ボスの体勢さえも崩すことができる。しかも速射性があり、消費するシンクロ率も20%と控えめなので、ここぞというときに頼りになる存在だ。
今回のプレイで筆者が特に気に入ったスペルは、「連射ミサイル」だ。文字通り敵にミサイルを雨あられのように撃ちまくるスペルで、高いダメージを与えつつ、ひるませることが可能だ。狭いところでは命中させるのが難しく、シンクロ率の消費量も30%と重めだが、こういったクセのあるスキルをどうやって使いこなすのかを考えるのも面白い。発射から着弾するまでに時間がかかることを利用して、通常攻撃と合わせてたたみかけるのが楽しい。
・フレーム能力
フレーム能力は、どちらかというと防御寄りの特殊能力だ。いわゆるパリィに該当する「Cフィールド」、攻撃を受け止めつつ突進を行う「シールド」、体力と引換に追加攻撃を発生させるバフの「ペルセクロー」、回避と同時に雷ダメージを発生させる「サンダーステップ」の4種類に大別される。
たとえばCフィールドは、遠距離攻撃やボスを含むほとんどの敵からの攻撃に対処できる。しかも持続時間がやや長めで、他のソウルライク作品ではパリィが苦手な筆者でも、ガシガシとカウンターを取ることができた。「パリィってこんなに気持ちいいのか!」と驚いてしまった。使用時に消費するシンクロ率が少ないのも嬉しいポイントだ。
ポストアポカリプスな世界に映えるアリサが可愛い
ゲーム序盤では、この独特な世界観の説明やストーリーが断片的に提示される。
ポストアポカリプスな世界観で、人類は恐ろしくマズい謎の飯“ゾルダマ”で命をつなぎつつ、限界よりも先に救済が訪れることを祈っているという。
そういったなか主人公のアリサは、記憶を失った“名も無き機兵”として、地下水道で目ざめる。この機兵は、人間と同じ姿を持った人工生命体という設定で、何度でもよみがえることができる。ここから、世界の謎を解き明かすため、戦いに身を投じることとなる。
もっとも、それより筆者が強調したいのは、アリサが無口で可愛いということだ。
しかも、防具に装備条件は存在せず、アリサを好きに着せ替えることができる。いろんな角度から眺めることも……!
ソウルライクの新しい可能性を提示した一作
今回の先行プレイでは、ゲーム中盤のクライマックスまで体験できた。ここへ来るまでのあいだに、色々と経験して心得ていたはずだが、ここで待ち受けるボスモンスターに、筆者は71回も敗退した。しかし、それでも、勝つまでぶっ通しでプレイし続けてしまった。
どうしてここまでハマったのかを考えたが、運が介入する余地が少ないのである。回避はもちろん、攻めの上手さもはっきりと結果に出る。「なぜ負けたのか」、「なぜ勝てなかったのか」が明確な現実として突き付けられるから、たとえやられてしまっても、すぐにリベンジしたくなるのだ。そうした試行錯誤の末に、自身のターンを手放すことなく、敵に暴威のループをお見舞いする瞬間は、もうたまらない。
シンクロ率のシステムによって、“攻める”という選択肢に、敵の体力を削る以上の意味合いをもたらしている。細かいリソースを気にすることなく、ただひとつシンクロ率を軸に考えるのはシンプルで、そして見事な新奇性を生んでいる。
一撃貰えば終わりという、ギリギリの命の獲り合い。
これだからソウルライクはやめられない。
“美少女ソウルライク”と聞いて色メガネで見てしまうかもしれないが、本作は美少女を冠さなくても、ソウルライクとして面白い。それに加えて、アリサが可愛いから装備集めにも精が出る。筆者としては文句の付けどころは一切ない。
ソウルライクの新しい方向性を示した『AI LIMIT 無限機兵』は、PC(Steam) / PS5向けに3月27日に発売予定だ。