なんかよくわかんないけど、お前が犯人な気がするから……。
犯人はお前だ!
だって、「神の力」で決めたんだから、お前に決まってる!
……そんなのアリ?
こんなトンデモ展開から始まる『終天教団』は、DMM GAMESとTookyo Gamesがタッグを組み、『ダンガンロンパ』シリーズ、『超探偵事件簿レインコード』、『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』などを手がけてきた小高和剛氏による新作ADVだ。
このゲームには、冒頭からとにかく胡散臭い、それでいて強烈な魅力を放つ謎があふれかえっている。主な登場人物は主人公の「下辺零」、天使たち、教団幹部の5人なのだが……。
主人公含めて全員が胡散臭い。
まず主人公。記憶を失くしているが、どうやら「終天教団」の教祖らしい。教団員だけが住まう「終天教国」はとにかく街並みが不気味で、ヤバい雰囲気が漂う。こんなところを治めているのだから……
当たり前に、胡散臭い。
次に天使。主人公を導くとか言って登場するが、そもそも天使ってなんだ。しかも、能力の詳細もデメリットも説明されないままに主人公に「神の力」を使えと勧めてくる。
もちろん、胡散臭い。
教団幹部の5人にいたっては、なんと全員が教祖を殺した容疑者だ。
当然、胡散臭い。
それどころかこの世界は、サブキャラにしては濃すぎる教団員たち、世界の終焉を示す数字、神の力──と、とにかく胡散臭い謎だらけで、あぁ~もう!先が気になりすぎる!知りたい知りたい知りたい!
そんな胡散臭い謎の数々が強烈な魅力を放ち、物語に引き摺り込んでくる『終天教団』。本校は、この沼にどっぷり浸かり教団員となってしまった筆者による、教団員を増やすための勧誘記事だ。この教団の「胡散臭ポイント」7つに触れながら、本作の魅力について紹介したい。
ここが胡散臭くてたまんないよ『終天教団』

『終天教団』の胡散臭いポイントその1:「神の力」
本作の主人公であり、終天教団の教祖である「下辺零」は冒頭で何者かによって殺されているが、なんと「神の力」によって蘇っている。この明らかにオーバースペックな神の力なるものは、主人公も使えるらしい。なんとも便利そうな能力だ。
ほう、どれどれ。
早速警備員に見つかり、ピンチな状況に追い込まれたので使ってみると……。

演出気持ち悪っ!?
日本語っぽいけど微妙に違う謎文字が出たり眼がぎょろぎょろしてたり、タコ足みたいなものと腕が絡みついていたり、チューブが見えてたり、「禁忌」の匂いがプンプンする強烈な演出。
これ、使っていい力なのか……?
ま、まぁこれはあくまで演出。一体どんなことが起きるのか楽しみにしていると、
!!!???
え、警備員の頭が爆発した……。
これはどっちかっていうと「悪魔の力」では?
しかもこの神の力、なんと終天教では禁忌とされている力らしい。なんでそんなものを教祖が使えるんだ……。

胡散臭いポイントその2:天使
もちろん、こんな力を使わせてくる「天使」もどうかしてる。本作の案内役は天使の「ヒメル」と「ミコトル」だ。困ったことがあればヒメルは明るく元気に、ミコトルは冷静沈着に語りかけてくれる。
神の力で復活したときから傍にいて導いてくれているけれども、なにせ主人公は記憶喪失。なんだか都合のいいことを言われているだけな気も……。とはいえ、記憶のない主人公とそうなるまでの経緯を知らないプレイヤーは彼らに従わなければ何もできないわけで、しぶしぶ従うしかないのが実情だ。

そもそも、「天使」ってなんなんだ?という疑問もあるが、序盤をプレイした限りではその正体は不明だ。とはいえ、彼らとの掛け合いは死体が転がる明らかに不穏なシチュエーションでも軽やかで、本作の清涼剤……とも言えるかもしれない。
胡散臭いポイントその3:終天教国
本作の舞台でもある「終天教国」は終天教が作った小さな国だ。住民は全て教団員で構成されている。教団員は“人類の滅亡を願っている”というとんでもない宗教だが、教団員はあくまでひそやかに滅亡を願っているので、皆穏やかとのこと。
ホントか……?
町のシンボルや至る所に見られる不穏な眼のマークが視界に入るたび、この国には何かを感じざるをえないだろう。



胡散臭いポイントその4:主人公
「終天教国」という国が怪しい匂いプンプンなら、そんな国の「教祖」である主人公もめちゃくちゃ怪しい。本作では主人公の死の真相を解き明かし、終天教団の5人の幹部の中から犯人を見つけ、そしてその犯人を殺すことが目的だ。
・胡散臭い教団の教祖
・殺されている
・記憶喪失
……ここまで揃うと、流石にプレイヤー目線でもこの主人公も怪しく感じる。「実は殺されるような理由があったんじゃないか」、「実は裏で悪事を働いてたんじゃないか」など勘ぐりは止まらない。


しかし、殺される前の姿を見ると、とても悪事を働くような人間には見えないから不思議だ。
ここまで紹介してくると強烈な世界観に置いていかれそうになるかもしれないが、安心してほしい。主人公は記憶喪失なので、この国の不気味さに触れるたびに私たちプレイヤーと同じ目線でビビってくれるのだ!
まだまだあるぞ!
胡散臭ポイントその5:世界の終焉までのカウントダウン
終天教団は「平和的に、ゆるやかに終焉を願う」という話だったが、その日を確かに待ちわびるかのように、町の至る所で「終焉までの残り日数」と思しき数字を見かける。残り日数、というとTookyo Gamesの前作『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』を想起する方もいるだろう。
同作では100日間学園を防衛する、という目的があり、日に日にカウントがアップしていたが、『終天教団』ではカウントが減っていく。その上、「世界の終焉」とは何なのか、そもそも街の中にこの数字が散りばめられているのはなぜなのかは不明だ。

胡散臭ポイントその6:終天教国の住人たち
犯人候補の5人の幹部の各ルートでは、幹部以外にもさまざまなサブキャラクターが登場する。
が、さすがこの国の住民というべきだろうか。誰も彼も、一癖二癖あるキャラばかりだ。味方だと思っていた人に裏切られ、敵かと思えば味方だったり、プレイ中は彼らにめちゃくちゃに振り回される。
中には幹部以上に好きになってしまうキャラクターも出てくるほどに魅力的で、彼ら彼女らの動きも見逃せない。


胡散臭ポイントその7:終天教団の5人の幹部
この5人の幹部は、それぞれ『終天教団』の行政機関の一角を担っている側近だ。
一般の住民よりも遥かに教祖に近づく機会があるため、幹部全員に教祖殺害の容疑がかかっている。しかも教祖はバラバラにされており、教祖の死体の各部位(頭部、両腕、両脚)は各々の幹部が保管中、胴体のみがまだ見つかっていないようだ。
じゃあ今動いている主人公の肉体は?身体の部位を各々が保持するなんて狂ってるような……。
う~ん、やはり胡散臭い。
犯人はそもそもひとりなのか、共犯なのか、そもそもこの中にいない可能性なんかもありそうで、考えればキリがない。
「終天教団」、疑わしい点が多すぎる!
私はお前が犯人だと思う。だからお前が犯人だ!
本作では、プロローグが終わったと思ったら、いきなり主人公を殺した犯人を選ぶことになる。
しかもここまでで何もヒントはないし、自分を殺した犯人なんてわかるわけない……。なんなら主人公は記憶を失くしているし、プレイヤーである自分にも、彼ら5人の幹部のことは全くわからない。
でも、天使曰く「神の力」で選んだ犯人は外れることはないらしい。

容疑者を選んで幹部に近づく……のではなく、「神の力で犯人を決めつけてからその幹部が犯人である証拠を探す」。なんというゴリ押し探偵。容疑者側としたらたまったもんじゃない。
だが、安心してほしい。ここで犯人を選ぶことは、物語の結末を決定することではなく「ルート選択」を意味する。各ルートによってゲームシステムが異なっており、幹部ごとに全く異なるゲーム体験を楽しめる。あなたの気持ちのおもむくままに、安心して(?)気になる幹部を犯人と決めつけよう。





筆者はこの中で、早速ショタ天才科学者の伊音テコ君のルートを選んだ。
決して「ショタ天才科学者」が好みだったからではなく、犯人だと思ったからだ。根拠はないが、神の力がそう言ってたのだから仕方ない。
自分を殺した容疑者なのに、好きになっちゃいそうだ……


幹部をひとり選んで犯人にすると、各ルートに分岐する。どうやら、今回の「教祖殺し」事件とは別に、各省でもトラブルが発生しているようで、各ルートではこれらの事件を幹部とともに解決していく。本ルートで描かれるのは、科学省の研究所で起きた異教徒によるテロだ。
本ルートのジャンルは、「マルチ視点ザッピングノベル」。
もっとも大きな特徴は、各キャラクターの視点に飛びながら(ザッピングしながら)物語を進められることだ。今回の事件を解決するためには主人公だけでなく、伊音テコの視点で物語を見つめることが必須。
彼の思考や過去を彼自身の視点で追っていくことができるというのが新しい。それに、テコ君がどういう人物なのか、他人である主人公の目線と本人の目線の両方で見れたのがとても嬉しい。


彼の思考は時に狂気を含んでいて倫理性を欠いており、とても理解しがたい。だが、彼の目線に立つことで、行動原理とその行動の理由がわかってくるとどんどん魅力的になってくる。そしてこれが『終天教団』の罠であり、蜜の部分だ。
容疑者のことを知るにつれて、どんどん容疑者を好きになってしまうのである。
なんとも皮肉な話で、開幕から犯人だと決めつけたのに、彼ら彼女らのことを知るにつれて「犯人であってほしくない」と願ってしまう。
しかし、「神の力」は絶対。一体容疑者たちがどのような結末を迎えるのか、ぜひその眼で確かめてほしい。

他ルートにも少し触れよう。例えば、黒四館仄ルートは恋愛アドベンチャー(?)だ。

黒四館を名乗る3人の女の子たちの中に潜む「黒四館仄」を見つけ出すために彼女たちを攻略していくことになる。最初の女の子を攻略していくと意外と簡単に落とせてしまい、「お、チョロいぞ?」と思ったのも束の間、もし告白した女の子が「黒四館仄」本人でなかった場合、複数の女の子を同時に攻略しなければならない。

しかし、この同時攻略がめちゃくちゃ大変なのだ。
複数の子を同時に攻略する場合、すでに告白している子を放置しているとだんだん機嫌が悪くなり、一定ラインを超えるとバッドエンドに。とにかくがんばってストレートに攻略をするもよし、物好きはあえてバッドエンドに飛び込むもよし。不思議な恋愛アドベンチャーが待っていた。


5つのルートを攻略した先に何が待ち構えているのか、どんな結末を迎えるのか。ふたつのルートをプレイしただけでは、まだまだ知りたいことだらけな『終天教団』。
本作は2025年9月5日にNintendo SwitchおよびPC(DMM GAME PLAYER、Steam)にて発売予定だ。今からどのルートを始めるか、誰を犯人に選ぶかを考えて、教団員になる準備を始めよう。
それでは皆様 ハッピーニューエンド…よい終焉を
我らに終天教のご加護あり!