あらたなユニバースビヨンドがく、来る……!
『マジック:ザ・ギャザリング』(以下、『MtG』)が豪華すぎる他IPとコラボする夢のエキスパンション群、ユニバースビヨンド。過去にも名だたる有名タイトルとコラボしてきた実績を持ち、もはや『MtG』の“定番コンテンツ”にもなっているわけですが……、また今回も大きな作品と次元が交わってしまうようなのです。
そのタイトルは『アバター 伝説の少年アン』(以下、『アバター』)。2005年ごろにニコロデオンで放送され、当時の子どもから大人まで年代問わずファンを獲得したというある種伝説的な作品で、水・土・火・気といった元素をモチーフとした技を扱う“ベンダー”を中心に描かれる冒険活劇です。
日本では2007年ごろより衛星放送向けに展開されていたため、当時ご覧になったという読者の方もいらっしゃることでしょう。(もっとも当時はシーズン3にあたる『火の巻』が放送されないままニコロデオンが撤退してしまったようですが……。)
いまではネットフリックスをはじめとした配信サービスで『水の巻』『土の巻』『火の巻』すべて視聴することができるようになり、筆者もつい先日『アバター』の世界に足を踏み入れました。見てみると、かなり面白いんですよこの作品。あとアッパとモモがかわいい。
もちろんカード化されています。(画像は『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』カードイメージギャラリーより)
そんな筆者もドハマリな『アバター』とのコラボカードを今回も独占先行プレビューさせていただける。
なんて幸せ!
もちろん今この記事を読んでいる読者の方々のなかには「まだ『アバター』を知らないよ!」という方もいることでしょう。でも大丈夫、お気に入りのキャラをみつけたり、世界観に触れてみたり。『マジック:ザ・ギャザリング』のユニバースビヨンド製品は楽しみ方が色々あります!
では、早速ですがウィザーズ・オブ・ザ・コーストさんからお預かりした超貴重な一枚を独占公開させていただきます!
新規カード《放棄された気の寺》

《放棄された気の寺》
土地
あなたが基本土地をコントロールしていないかぎり、この土地はタップ状態で戦場に出る。(T):(白)を加える。
(3)(白), (T):あなたがコントロールしている各クリーチャーの上にそれぞれ+1/+1カウンター1個を置く。
今回ご紹介するカードのモチーフとなったのは、本作の主人公・アンが育った気の寺。カードの効果よりも先に、『アバター』における「気の寺」がどのような存在であるのかを語らせてください。
物語開始時点でアンは氷の中で眠っていたため、作中ではじめて描かれたのは彼の100年ぶりの再訪でした。作中でアンは、気の民がひとりでも生き残っていることを期待し、気の寺での思い出を仲間であるカタラ、サカに話していましたね。
エターナル環境向けのカードにはなってしまいますが、アンと仲間たちのデッキは白単色で構成できます。原作ファンの方は統率者戦向けに組んでみると熱いかも?(画像は『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』カードイメージギャラリーより)
アンにとって気の寺は、「技」より先に「心」を整える場所。そう受け取れる場面がいくつかあります。本カードのアートとして描かれている、ギアツォ和尚の像が中央に据えられ奥に聖なる部屋の入口が見える構図は、思い出話からひと呼吸おいて足並みを揃えるような空気感を示している……と見ることもできるでしょう。
そして、カタラ、サカ、モモと仲間が増え、結束していく様子が、起動型能力である全体への+1/+1カウンターの付与で表現されているのかも……。起動コストがやや重めに設定されているのは、彼らが完全な仲間になるまでの道筋を表しているともとれます。
さらに「基本土地がないとタップインになる」という挙動からも、山奥の寺へ至るまでにかかる手間や、“基本”から学ぶ姿勢に重ねたものというフレーバーが読み取れ、原作視聴者としてはしみじみと、それでいてしっかりと熱いカードになっています。
白ならではの横並びに相性ぴったり!
さて、それでは本カードの性能的な部分を深掘りしていきましょう。
白の横並べは“まずは数で押す”、それから“全体で底上げして畳みかける”のがある種の王道です。《放棄された気の寺》はその後半である“底上げ”の部分をサポートする装置として機能します。
うれしいのは一時的な修整ではなく+1/+1カウンターという部分で、仮に土地である《放棄された気の寺》が破壊/追放されたり、決め手のターンを相手に妨害札で崩されてしまっても、+1/+1カウンターはクリーチャーに修整値として残りつづけ、次のターン以降も戦力となります。この持続性は大きな魅力といえそうです。
中盤以降に余りがちなマナも、若干重めではあるものの(3)(白)(T)で毎ターン恒常的な火力へと変換できるため、手札が微妙なタイミングでも盤面を成長させることが可能で、リミテッドではダメ押しの打点上昇となりそうです。
警戒持ちが多めのデッキでは攻撃もブロックも堅牢に、トークンを雑多に生成するタイプのデッキでは能力を起動するだけで“質”も追い求めることもできるかもしれません。
また、瞬間最大風速を狙いたいアンセム系のアーキタイプと棲み分けできるのもポイントで、相手の隙がなければ《放棄された気の寺》でカウンターを積む。逆に少しでも余裕があれば一時的な修整に頼ってでも押し込むといった動きもできるかもしれません。とくに、白単色デッキや二色のデッキであれば、基本土地要求のアンタップインもしやすくなりそうですしね。
いろいろな戦法のマスターキー? 《放棄された気の寺》から数多のサブプランにつなげ!
そして《放棄された気の寺》の強みは、ただの全体強化に留まらず、置かれたカウンターが軽減・踏み抜きランパン・倍化/増殖といった複数の扉を同時に開ける“マスターキー”にもなるところにあります。
たとえば、《西の樹の木霊》でマナ基盤を膨らませる導線を作ったり、《硬化した鱗》や《倍増の季節》、そのほか増殖をおこなえる緑のカードと組み合わせて積み上げ速度そのものを二段三段と加速させたり。
《放棄された気の寺》が配る+1/+1カウンターは、置いた瞬間から複数の勝ち筋へ枝分かれしていきます。とはいえ、全体に配るという性質上、横並びとの相性が一番なのは否めないですが……。
(画像はGatherer – Official Magic Card Databaseより)
一気に複数のクリーチャーを改善することができるため、《歩行する摩天楼》のコスト軽減能力を活かして早出ししたり、増やしたカウンターを《オゾリス》で回収/分配するのもいいですね。クリーチャーが改善されていると何かが起きるカードとは相性が良さそうです。
(画像はGatherer – Official Magic Card Databaseより)
個人的に面白い挙動ができそうだと感じているのは、『団結のドミナリア』で登場したキーワード能力である「後援/Enlist」です。

後援/Enlist (このクリーチャーが攻撃するに際し、あなたがコントロールしていて攻撃することを選んでおらず、速攻を持っているかこのターンの開始時から継続してあなたの コントロール下にあるクリーチャー最大1体をタップしてもよい。そうしたとき、ターン終了時まで、このクリーチャーは+X/+0の修整を受ける。Xはそのタップされたクリーチャーのパワーに等しい。)
「後援」持ちのクリーチャーは攻撃時、攻撃していないクリーチャー最大1体のパワー分、自身のパワーをあげることができます。
《放棄された気の寺》で盤面の基礎パワーがじわっと底上げされると、統率者戦などでありがちな、“立たせたままのシステムクリーチャー”を、後援の燃料として育てることができるわけです。
たとえば《新ベナリアの守護者》なら、たとえ攻撃に出さないシステムクリーチャーが1/1といった低打点だったとしても《放棄された気の寺》と組み合わせるだけで、プラスされる打点が2点3点と増えていきます。
後援時には占術もでき、さらにはカードを捨てるだけで破壊不能も付与されます。これの打点があがっていけば、ちょっと怖いかも(マナは相当に掛かりますが……)。

また、赤を足して《バルデュヴィアの狂戦士》や《連合の戦暴者》と組み合わせてブロックしづらくする方向性も考えられるでしょう。
ほかにはアゾリウス(白青)なら構えつつ、相手のターンの終了時に寺を起動。オルゾフ(白黒)なら除去で突破口を作る……といった動きもありえそう。クリーチャー主体のデッキに組み合わせやすい白というカラーだからこそ生まれる面白さといえますね。
(画像はGatherer – Official Magic Card Databaseより)
同系統のカードと比較してみよう
自軍クリーチャー全体に+1/+1カウンターを置くという効果を持つ土地としては《ガヴォニーの居住区/Gavony Township》が代表的でしょう。永続的に使えるかつタイミングを選ばないのが特徴的な土地でしたが、有色マナを生み出せなかったり、色拘束が重かったりとピーキーな性能をしていました。

そのほか、《巨森、オラン=リーフ》といったカードもありましたが、タップイン土地である点や、「このターンに出た緑のクリーチャーに限定される」点など、これまた難しい性能をしていましたね。

起動型能力ゆえ打ち消され難く、土地であることから多くの除去の的にもなりにくいので長期戦で価値が積み上がるのがこの手のカードたちです。
過去の同系統のカードと比べても、起動コストの色指定が1つになっている点や、有色マナも生み出せる点は、大幅な強化と言えそうです。
条件付きアンタップインとはいえ、アンタップの条件も緩く、伝説の土地でもないので横並べも可能と考えると……実はデメリットってあんまりなくない?
『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』は11月21日(WPN店舗では11月14日)に発売!
《放棄された気の寺》は、白らしい横並べの底上げに恒常性を与えつつ、得た+1/+1カウンターをコスト軽減やマナ基盤の増強、カウンターの倍化・増殖、そして後援の参照源といった別レールでの起点に転用できる一枚でした。
土地ゆえに打ち消されにくく、余ったマナを毎ターンの確実な前進へ置き換えられる点や、『アバター』という作品での“気の民”の扱いやキャラクターたちの成長といった側面が重なりフレーバーとしても好印象。
アンタップインの条件も現実的で、白単、二色であれば比較的たやすく採用できそうなため、デッキ構築の懐を広げてくれることでしょう。《放棄された気の寺》による一押しをみなさんも色々試してみてください。
最新拡張セット『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』は、11月21日(WPN店舗では11月14日)より発売予定となっています。
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