でかいイベントがあるらしい。
そしてどうやらそのデカいイベントに、あの『Farming Simulator 25(ファーミングシミュレーター 25)』が出るらしい。

『ファーミングシミュレーター 25』をみんなは知っているだろうか。知っているだろうとも。あれは面白いゲームだ。農業ができる。それもすごくリアルだ。
トラクターとかコンバインとか、あとなんか名前は知らないけどでっかい機械がたくさん登場して、ごうんごうんと動く。そういうのを動かすのは楽しい。ロボットを操縦するみたいな感じだ。
「へえ、面白そうですね!どんなイベントなんですか?」
「なんでも、5日間にわたって開催されて、来場者数は60万人近くになるらしい」
(60万人!)
おれのなかのシネマティックな分身がささやく。「こいつはコトだぜ旦那!今年の東京ゲームショウでも26万人ちょいだってんだから、いったいどんなビッグイベントなんだろうな!」
高まる期待、渦巻く陰謀。思えばどんなイベントなのか?って聞いたときにもっと怪しむべきだったのだ。「来場者数60万人です」ってなんにも答えてないじゃんねえ。
「第148回 秋田県種苗交換会」開催地、秋田県湯沢市。
いやこれ、ガチ農業のイベントじゃないですか?
執筆/恵那
※この記事は、『ファーミングシミュレーター 25』をもっと多くの方に遊んでほしいセガさんと、電ファミニコゲーマー編集部のタイアップ企画です。
秋田県種苗交換会、あまりもガチな「農」の祭典だった
田舎って、くうきうめ~~
みたいになるかと言われたら、田舎育ちの筆者は特になりません。せいぜい「畑の匂いするな~」くらいでしょうか。
そんなわけで、やってきました秋田県湯沢市。
東京ゲームショウの2倍を超える人が集まるイベントという情報に、「どんなバカでか会場でやるんだ……?」とおそれ慄いていたのですが、到着した会場はごく普通の市民体育館。
いやこんなとこに60万人も入らんだろ!と思っていたら、どうもここはメイン会場のひとつではあるものの、会場自体は複数ある模様。他の会場とはシャトルバスで繋がっているらしいです。会場をシャトルバスで繋ぐ……?

なんだかあんまり聞きなれないスケールの話です。
コンパクトでスマートな暮らしを嗜むシティボーイの私からすると「マジでなにを言ってるんだ」という感じですが、実際そうなっているのだから仕方ありません。この総合体育館と隣の文化会館をメイン会場に、3つの協賛会場があるのだそうな。
地図を見て一瞬(歩いていけるんじゃない?)と思ったら地図の縮尺がアレなだけで普通にバスで20分とかかかる立地でした。どんな規模感なんだ。
朝9時前から始まったオープニングセレモニーでは、会場となった湯沢市の市長さんによる挨拶があり、地元中学校吹奏楽部の生徒さんたちによる演奏があり、テープカットがあり、鏡開きがあり、振る舞い酒があり……。
なんというか、ゲーム系イベントなんかのユルさに慣れた身からすると、お堅い感じに身がすくむな。っていうか普通に行政とかが絡んでるガチの農業イベントなんだから当然と言えば当然なんだけど……。
先ほどはするっと流してしまったのですが、このイベントは今年で148回目。まさか芥川賞みたく年に2回もやったりはしないと思うので、つまりはどんなに早くても明治11年には始まっている計算※になるというワケです。めちゃくちゃ歴史あるじゃん。
で、どんなことが行われているイベントなのかというと、まずひとつがこちら、農作物の品評会です。
※ちゃんと調べたら本当に明治11年に始まっていました。ってことはコロナ禍はおろか戦時中ですら休まずやってたってことですけど????

農家さんが丹精込めて育てたさまざまな農作物が、体育館中にずらりとならぶさまは、見る人が見れば感動間違いなしなのかもしれないのですが、あまりに土と縁遠き人生を送ってきた筆者の頭からは「これ『牧場物語』でみたやつだ!!!」というアホすぎる感想しか出てきませんでした。
とはいえなかなか圧巻の光景。八百屋さんでもなかなかお目にかからないレベルでお野菜が並んでいます。というか私は考えたこともなかったんですが、なんと世の中にはネギだけでも10や20できかないほどの品種があるらしいのです。
「夏扇パワー」とか「大地の響」とかいかにもそれっぽい名前のものもあれば、RPGにでも出てきそうな「緑の剣」とかいうちょっと面白い感じの名前のものも。剣かと思って購入したら装備画面で違和感に気づくやつですね。※
もちろん秋田と言えば「あきたこまち」を始めとしたお米の産地。会場の一角にはお米のコーナーもあります。ただしお米、率直に言ってネギや白菜以上に素人にはぜんぜん差が分かりません。
脱穀されたお米がトレーに乗せられて並んでいるのですが、「お、おこめだ!」以外の感想が出てこない。そりゃお米だよ。

こういう展示会場なので、農業に関する研究の展示なども。個人的にめっちゃ気になったのがシイタケ栽培で用いられた廃材(菌床)を使って、ヘラクレスオオカブトを育てるという循環型農業についての研究。
農業分野の素人過ぎて、シイタケとヘラクレスオオカブトがなんでいきなり繋がったのか全然わからないんだけど、カブトムシを育てるってワードだけでなんかめっちゃワクワクする……!
菌床というのは、きのこを栽培するために使うおがくずのようなもので、きのこを育てた後に廃棄する必要があるのだけれど、それには大量の費用がかかるらしい。
でもその菌床をヘラクレスオオカブトの幼虫に食べさせる→幼虫は糞をする→糞は堆肥として農業に再利用&もちろんカブトムシも売れる。なんだかよくわからないけど、ゴミからヘラクレスオオカブトが育つってこと!?永久機関か!?(永久機関ではない)
外もすごいぞ!「農」に関わる機械が全員集合の農業機械化ショー
えらく地味なイベントじゃねーの、と思ったそこのあなた!
違いますよ、言ったじゃないですか、このイベントは複数の会場をシャトルバスで繋いだイベント。いま見たのはメイン会場のほんの一部でしかありません。
本イベントのもうひとつの大きな目玉は「農業機械化ショー」。要するにトラクターやらコンバインやらの農作業用機械メーカーが一堂に集まる展示もあるんです。筆者はトラクターとコンバイン以外の農業機械の名前がさっぱり分かりませんが、なんか愉快なものがたくさんあるはずです。
そんなわけで、メイン会場からバスに揺られること約20分……。
広い!デカい!人も多い!!
っていうかここにいるのってみんな農業関係者じゃないの?筆者、浮きすぎじゃない?急に心配になってきたな……。
率直にいうと正直ナメてたんですが、想像の10倍くらい楽しいです。だだっ広い河川敷に農作業用機械がモーターショーばりに大量に並んでいて、その反対側には屋台まで出ている。お祭りじゃん。
取材日は平日だったのですが、それでも会場にはかなりの人。これ休日に来てたらどうなってたんだろう……。
こちらの会場は主として農業機械の展示がメインではあったのですが、「種苗交換会」だけあって、植物の苗を扱っているようなコーナーだったり、
あと、なんとメインホールで研究展示を見た、ヘラクレスオオカブトを使った循環型農業の実物(カブトムシ)も!
す、すごい、こんなに早く伏線を回収できてしまうなんて。伺ったところでは、先ほどの展示とは別口でやられているらしいのですが、まさか本当にヘラクレスオオカブトをキノコ栽培と組み合わせているなんて。すごい、すごすぎるぜ秋田の農業……!

ちなみに今回、『ファーミングシミュレーター 25』内に機械が登場するという縁で、実際に展示されていたクボタさんの機械も間近で見させてもらいました。
最新モデルを紹介する展示会ということで、残念ながらゲーム内に登場する機械は置いていないとのことだったのですが、こんな機械に間近で接することなんて普段ないから、なんかもうゲームに登場するとかどうとか関係なく普通に楽しいです。でっけー!!

ふだんはあまり目にする機会もない内部の様子も写真に取らせていただきましたが、めっちゃコックピット感ある!メカメカしいぜ……!
ただこの機械、なんと実際には乗り込んで操縦しなくても、自動操縦で自動的に作業を進めてくれるらしい。えっ、いま農業ってそんなことになってるの???
今回伺ったお話で面白かったのが、ハイテク機器を活用して行う、いわゆる「スマート農業」というもの。なんでも今は、衛星からのデータを活用することで、さきほどのような機械を田畑に合わせて自動操縦させたり、育成状況を記録しつつ適切な肥料の量を調整するようなことまでできるらしい。
何も知らずにゲーム内にこんなシステムが出てきたら、「ゲーム的なご都合主義かな?」と思ってしまいそうなのに、なんだかむしろ現実の方が先に進んでいるような感覚すらある。まさか秋田で未来を実感することになるとはね……(遠回しに失礼)。
あれ、そういえばわたくし、ゲームの取材のためにここに来たのでは……?
『ファーミングシミュレーター』農家の皆さんに大人気。その道のプロたちも興味津々
びっくりするほどアツい「農」の熱気にあてられて、来た目的を忘れてしまいそうだったのですが、ちゃんとありました。『ファーミングシミュレーター 25』の展示。
しかも大好評。
そして面白いのが、試遊コーナーで実際に設置されていたコントローラーです。
リアルすぎる。
ええ……ゲームはともかく、なにこの本格仕様のコントローラー。これってゲームだよな? なんだよこれ、農業か?(農業ではある)。
単にリアルなだけでこんなに面白そうに見えることあるんだ……?
こちらのコントローラー、別にこの体験会のために特別に用意されたものでもなんでもなく、ゲームガジェットで有名な株式会社ホリから普通に販売されているもの。おねだん5万4980円と、さすがになかなかいいお金額ながら、リアルトラクターはウン千万円とかするので、それに比べたら爆安と言えるかもしれません。
映像がディスプレイに流れると、通りかかった人も思わず画面に見入ってしまう。ふだんゲームをプレイしたりしなさそうな人たちまでも興味津々。
というかこのコントローラー、ステアリングはもちろんペダルまでちゃんと用意されているなど、リアルに作られすぎているんですよね。
そのせいで正直操作は若干難しいと思うのですが、遊ぶ人遊ぶ人、みんな操作がめちゃくちゃ上手いんですよ。
そりゃそうだよね、この会場ってプロしかいねーんだもん!
『ファーミングシミュレーター 25』自体は、農地の耕作どころか、まず農機具を購入するところから始まるようなゲームなのですが、会場では田植えや収穫など、わかりやすく設定されたシチュエーションを選んでプレイできる形に調整。
普段農家の皆さんが仕事としてやっていることを、サクッとそのまま再現できるようにセットされているというワケです。

そうするとやっぱり気になるのが、そもそも「なんで?」という話。今回『ファーミングシミュレーター』には多くの人が集まっていたのですが、それもそのはず、この展示だけが会場内で異様な輝きを放っていたんですよ。
いや確かに組み合わせとしてはもうこれ以上ないほどバッチリではあるんですが、なんかこう、絶望的に遠くない……? この隣ではシイタケ廃菌床でヘラクレスオオカブトを育てる研究の展示とかやってるんよ?それはそれで正直めっちゃ面白かったけど。
そうした疑問に答えてくれたのが、この企画を立ち上げたという湯沢市の総務部企画課地域活力振興班の班長、佐々木訓氏。佐々木氏は湯沢市役所の職員としての勤務の傍ら、eスポーツ団体「デジラボ」の代表としても活動しており、デジタル技術を活用した地域振興をめざしているというお方です。

──今日はありがとうございます。さっそくなんですが、なぜ今回『ファーミングシミュレーター』をこの「秋田種苗交換会」で展示することになったのでしょうか?
佐々木訓氏(以下、佐々木氏):
きっかけは、市役所の商工課の方から「デジタルでなにか農業に関連したブースを出したい」という相談を受けたことでした。そこですぐに『ファーミングシミュレーター』しかないな!と思ったんです。農業・デジタル・体験とくれば、もう『ファーミングシミュレーター』しかないですよね(笑)

──それは本当に間違いないです(笑) 佐々木さんは普段からそうしたデジタル分野でのサポートのお仕事をされているんですか?
佐々木氏:
普段は私も市役所の企画課に勤めているのですが、それとは別に「デジタルの力で地域を盛り上げる」ということを目標に、eスポーツに関する取り組みをやっていまして、最近だと地元の映画館を借り切ってゲームの大会を開いたりもしました。
──うわあ、それも面白そう! そうした取り組みの延長が、今回の展示にもつながったんですね。遊ばれた方の反応はいかがでしたか?
佐々木氏:
イベントは今日が初日ではあるんですけど、実は準備の段階から運営スタッフの皆さんがもう興味津々といった感じだったんですよ(笑) 農機メーカーの方であったり、農協の方、県議会の議員さんといった方まで、触ってみたい!という引き合いがすごく多かったです。
もちろんイベントに来る方は農家の方が多いですから、そういった方たちからの反応も面白かったです。みなさん「ウチの機械とはここが違うな!」と、自分が持っている機械と比べつつ感想を述べてらっしゃるんですよ。普段実物に乗っている方たちにこれを遊んでもらえているのは、すごく面白いですね。
──本当に農業関係者の方が多いですよね。まだ平日なのに、別会場では人の多さに驚きました。
佐々木氏:
「種苗交換会」は私の知る限りでは秋田県独自のイベントで、県外からもたくさん人が来られます。湯沢市でやってる夏祭り・冬祭りでも6~7万人くらいなので、だいたい10倍くらいの規模ですね。もっとも今日は平日なので、明日以降の方が親子連れの方なんかもたくさんいらっしゃると思います。
──小さいお子さんはこういうの絶対好きそうです。楽しんでもらえるといいですね。
佐々木氏:
実は今日も何名か来られてましたよ!ついさきほど、ペダルに足が届かないようなお子さんがいらしたんですが、周りの大人がサポートしてあげながら、初めての運転を楽しんでくれていたみたいです。

──ゲームというのが「個人的な遊び」という枠を超えていろんな人に伝わっていくのは面白いですね
佐々木氏:
eスポーツみたいなゲームのイベントでもそうだと思うんですが、あれも単にゲームの勝ち負けが面白いというだけではなくて、「みんなで遊べる場所である」ことが良いのだと思います。
とはいえ私たちの住んでる地元の湯沢に「東京ゲームショウ」のようなイベントが向こうから来てくれることはなかなかありません。だったら自分たちでそういう場所をつくってあげたいな、と考えて続けていた活動が、今回のイベントにも繋がりました。その意味で、今回は手ごたえも感じています。
「デジタルでより良い未来をデザインしていく」というのが私たちが掲げている目標なのですが、今後も東北からこうした発信を続けていければと思っています。
──ありがとうございました!
ということで、「秋田県種苗交換会」についてのレポートでした。
最初に話を聞いたときには本当に「え、は、はい?」みたいな感じでしたが、イベント自体が予想以上に面白く、自分自身びっくりでした。
実を言えば、「こんなとこで『ファーミングシミュレーター』の展示やったとして、本当に人が集まるんだろうか……?」みたいな失礼極まりない懸念もあったのですが、全くの杞憂どころか、普通に人気スポットになっていたのも面白かったです。
普段仕事としてやってることが「ゲーム」になると急に面白そうになってしまう現象、たぶん農業に限らずあると思うんですが、プレイされていた方はみなさん楽しそうに遊ばれていたのが印象的でした。
ちなみに『ファーミングシミュレーター 25』はシリーズとして初めて「稲作」が可能になった作品でもあり、「農業と言えばコメだろ」という我々日本人にとってもより満足度の高いタイトルになってます。

さらに、11月4日には大型の拡張DLC『Highlands Fishing』も発売。新たなマップが追加され、なんとサケやマスといった魚の水産養殖が可能に。
もちろんボートも操縦できるし、岸辺で普通に釣りを楽しむことだってできちゃいます。なんかもう農業から飛び出してない?
とまあ、こんな感じでますます進化を続けている『ファーミングシミュレーター 25』。お米を作ったりデカい機械を乗り回したりすることに興味はあるけど、巨大な資本も広大な土地も農家の親戚もいない……という方でも手軽にガチ農業を体験できます。
なんなら来年にはNintendo Switch 2向けの『Farming Simulator: Signature Edition(ファーミングシミュレーター:シグネチャーエディション)』も発売予定であり、とうとう携帯機でもプレイできるように。こちらは2026年1月22日リリース予定で、DLC『Mercedes-Benz Trucks Pack』も収録されているとのことです。
もちろん、より没入的な農業体験がしたければ、PC版+ホリ製コントローラーと合わせれば、本稿で紹介したようなさらなる本格志向のプレイも可能です。気になる方はぜひ公式サイトなどもチェックしてみることをおすすめします。






























