目指したのは『SAO』の世界に行った証を残すということ。開発者へのインタビュー
ここからは、『SAO』ゲーム総合プロデューサーの二見鷹介氏と『Echoes of Aincrad』制作担当の八幡泰広氏を迎えての合同インタビューの模様をお届けする。本作の製作背景や注目の「デスゲームモード」などゲームデザインについてのお話などをたっぷりとうかがうことができた。

──開発の経緯についてお聞かせください。なぜ「アインクラッド編」をリブートすることになったのでしょうか。
二見鷹介氏(以下、二見氏):
『SAO』冒頭の“デスゲームに囚われた瞬間”をユーザーさんが体験していないこと、さらにアニメ3期『ソードアート・オンライン アリシゼーション』放映後の次の展開が控えている中で、イチから『SAO』のゲームを再構築しようという思いがありました。
ゲームシリーズの話は既に完結していますが、そことはまた違う世界線で新しく再構築された『SAO』を楽しんでほしいと考え、この企画がスタートしています。
──開発はいつ頃から進めているのでしょうか。
二見氏:
企画自体はかなり前から始まっています。構想は『ソードアート・オンライン フェイタルバレット』の開発が終わったころからありました。方向性が決まって作り始めたのが2021、2022年頃くらいですので、実際の開発期間としては3、4年くらいをかけています。
──企画の初期案から大きな変更はなく、当初の構想のまま進んだのでしょうか。
二見氏:
1度大きく変わりました。本作の遊び方を決める上で1、2年ほど技術検証を行い、現在の方向性に変わったのが2021、2022年くらいという感じです。
──初期案について、もう少し詳しく教えてください。
二見氏:
初期案、気になりますか?
初期案はもっとトッピングが細かい感じでしたね。より「デスゲーム」でした。スタミナや体力がどんどん減っていく中、中継地点に向かうときに自分のリソースを考えていかなければ“本当に死ぬゲーム”でした。そこからストイック過ぎないようにしつつも、マップを解放していく遊びは変えず、アクション寄りにシフトしていきました。
──「デスゲームモード」の発案は、どなたによるものだったのでしょうか。
二見氏:
「『SAO』らしさってなんだろうね」という話をした時に、配信者やプレイヤーが楽しめるモードがあった方がいいよねって、提案させていただきました。“寝落ちしたら倒されて、セーブデータが消える”みたいな遊びが別にあってもいいよねって。
今作はレベル上げやキャラクタービルドをしたら、あまり死なずにクリアできるかもしれません。ですが、敵の攻撃に当たらないようどう挑んでいくのかという、緊張感のある遊び方には『SAO』らしさがありますし、そうしたところで採用させていただきました。
キリトみたいに、レベルを上げてマージンを取って挑む人もいれば、そのまま一発でクリアしてしまう人もいるだろうし、その途中でやられる人もいる。『SAO』本来のデスゲームならではの楽しみ方が出せるんじゃないかなと思い、「入れましょう」と形になった経緯があります。
──「デスゲームモード」には専用の難易度が用意されるのでしょうか。それとも既存の難易度設定の中で選択する仕組みでしょうか。あわせて、プレイ中に変更できるのかも教えてください。
八幡泰広氏(以下、八幡氏):
今回、難易度は4つあります。あまりゲームに慣れてない方向けの難易度「ストーリー」のほか、「ノーマル」、「ハード」、「ベリーハード」があって、そこからさらにデスゲームモードを選ぶか否かとなっています。
ストーリーからベリーハードまでは、クエスト中を除いていつでも任意に変えることが可能です。チャレンジしたい方は“ベリーハード×デスゲーム”という遊び方もできますし、「ストーリー」だけど緊張感を出したい方は“ストーリー×デスゲーム”といった選び方もできます。元々備わる難易度に対して、デスゲームモードにするかどうかを決める形ですね。
二見氏:
サラッと死ぬときもあるよね。
八幡氏:
そうですね。結構初見では理不尽な敵もいるにはいるので……はい(笑)。
二見氏:
皆さんも遊んでいただいてモンスターから逃げられない、敵をたくさんトレインしちゃって、大勢と戦わなきゃいけないときに「あっ」みたいな感じになっちゃう人もいると思います。色々な種類のボスが登場するので、多分初見が一番楽しくてショックもデカいし、ヒリヒリします。
八幡氏:
ちなみに、本来はストーリーコンテンツを1度クリアした方向けのモードになっています。
──セーブデータは分けて管理できますか。たとえば通常プレイのデータを残したままデスゲームモードに挑戦し、失敗時はデスゲーム側だけ消える、といった運用は可能でしょうか?
二見氏:
セーブデータのコピーはできません。仕様としては3つスロットがあって、それぞれがオートセーブで進みます。例えば、デスゲームモードのセーブデータで死亡するとそのデータは消えますが、それとは別にデスゲームモードを選ばないで進めているセーブデータはそのまま残ります。
──世界観設定について伺います。今作は(『ソードアート・オンライン プログレッシブ』【※】など)どの作品要素をベースに位置づけているのでしょうか。あわせて、登場するキャラクターや要素の方向性も教えてください。
二見氏:
『プログレッシブ』をベースにしてるわけでもなく、『SAO』をイチからベースにしていて、逆に『プログレッシブ』が生まれたときに、そのあたりの設定周りや使えるもの、もしくは共有できるものは入れさせていただいています。
『プログレッシブ』がベースというよりは『SAO』の始まりをベースに、『プログレッシブ』の要素を入れているとイメージしていただければと思います。
※『ソードアート・オンライン プログレッシブ』:
「アインクラッド編」を、詳しいダンジョン攻略の模様やキャラクターの心情描写などを加えて再構築したライトノベルシリーズ。アニメ劇場版2作品も公開されている。
──ストーリーは原作を踏襲した形で進むのでしょうか。それとも一定のオリジナル要素があり、エンディングの方向性も変わり得るのでしょうか?
二見氏:
ストーリーに関しては、今回“始まりの物語”というところで、デスゲームになったときのプレイヤーの立ち振る舞いだったりとか、主人公がどういう人たちと出会っていくのかを描いた話になっています。
ベースとしては1層、2層と序盤のお話が1つのお話としてまとまっていると、イメージしていただければと思います。原作では75層でクリアですが、1層の広さがおよそ縦横10kmぐらいなんですね。それを100層作ると、開発期間だけで10年くらいかかると思います。どちらかというと、映画のようなボリュームゾーンで1つのエピソードを楽しめる作り方をしています。
もちろん、原作で起きたことは裏で起こっています。今回はプレイヤーがその瞬間に立ち会っていて、「本当にこのデスゲームを攻略するのかどうか」みたいな生々しい話をプレイヤー視点で語られます。
例えばキリトの物語は、ベータテスターとしてゲームの情報を知っているのに、生死が関わるデスゲームにおいて、「なぜ情報提供しないんだ」みたいなところの軋轢から描かれます。そうした「ほかの人がどういう目線でキリトを見ているのか?」をプレイヤーが体験できるのが今作の魅力です。残酷さや生々しさ、葛藤などがオリジナルストーリーを中心に楽しめる物語となっています。
──街の中では具体的にどんなことができるのでしょうか。今回触れられなかった要素も含め、答えられる範囲で教えてください。
二見氏:
道具屋や鍛冶屋が基本機能としてあって、それが中心になりますが、それ以外にもサブクエストが発生します。探索や物語を進めていくと、街でキャラクターから依頼を引き受けたり、あるいはサブクエストをクリアすることで、ほかの街で新しいサブクエストが発生することもあります。
街中にはサブクエストが何十個と存在しますが、今回体験していただいたのはその1つです。あと、シナリオが進行していくと仲間との会話内容が変わったりもしますので、そういった楽しみ方もできると思います。
──本作では、キャラクターとの会話などによって仲良くなったり信頼度が上がったりするような仕組みはありますか。もしある場合、関係性の変化が戦闘などに影響する要素はあるのでしょうか?
二見氏:
「好感度」のようなものはありません。……っていうのは、まだ1層、2層の出会いなので、付き合うとかイチャイチャはアレなんで。
ただ、物語やサブクエストを進めていくと、キャラクターが話をしてくれるクエストとかもあったりして、その個性が深掘りされていく作りになっています。プレイしながらいろんなキャラクターのお話が深掘りされていく形になると思います。
──キャラクタークリエイトの自由度は、どの程度でしょうか?
八幡氏:
キャラクタークリエイトに関しては、基本的に性別、髪型、顔の形、体型、身長などを変更できます。細部まで細かくできるほどではありませんが、これまで『SAO』のゲームを楽しんでいただいた方には楽しめるぐらいの種類はご用意できていると思います。
──“二刀流”は可能でしょうか?
八幡氏:
それはできないですね。
僕がこのチームにジョインしたときに同じ質問を二見にしたことがあって、「オマエ、まだ1層でできるわけねぇだろ」と言われました(笑)。
先ほど二見が言ったのと同じで「二刀流」の権利って、それこそキリトが中層や上層まで行き、極限の状態で発現したユニークスキルなので。あったらお客さまに喜んでいただけるかもしれないですが、逆にがっかりされるお客さまも多いんじゃないかなと思っています。
二見氏:
非常に難しいですよね。ユニークスキルって呼ばれているものだけども、キリトしか使っちゃいけないみたいな。
ただ、「ゲームとしては使いたい」ところはあって、その辺をどうするかもお話はしたんです。今回は『SAO』の世界で僕も冒険したいと思えるタイトルで、世界観を重視するユーザーに向けつつ、キャラクターファンも満足できるようなネタを入れました。
特にキャラクターファンには、キリトたちの活躍が存分に見れる110分超のプロモーションアニメ映像が限定版特典に入っていますので、ぜひそちらをお買い求めいただくのもアリなんじゃないかと思います。何かいいタイミングがあれば、ifモードみたいなものをやれたらなとは思いますが、現状ではないですね。
──今回体験したサブクエストはフィールドが大きく感じました。フィールドはサブクエストごとに個別に用意されるのでしょうか?
八幡氏:
アインクラッドの1層、2層エリアがある中で、クエストごとに探索するクエストエリアが仕切られています。そこはクエストごとに違うところもあれば共有してるところもあります。試遊ではマッピングしながら遊んでいただくところを重視しましたが、お客さまの進め方によってはメインで探索したマップが解放されているから、サクサクとサブクエストが進められるときもあると思います。
二見氏:
補足すると、1層だったら1層で頭の街から迷宮区と言われる箇所まで全部繋がっている作りにはしています。ただ、1つのクエストの中でイチからそこまで行くことはありません。マップとしてはオープンワールドではなく、幾つかのピースを組み合わせて1つの世界を作っていき、そのピースを全部組み合わせると、頭からケツまで続いている形になっています。
メインクエストを進めるとそのピースが途中までは無くて、その次のメインクエストを進めると、さらに先のピースまで続く。そして、そのピースの横側をサブクエストなどを通して広げていく形になります。
歩くだけでもかなり時間かかりますし、今作はマップ自体が“ダンジョンチック”になっているので、1つの大きなダンジョンとして楽しんでいただくような遊び方になると思います。
──洞窟など暗いエリアがありましたが、暗所を照らす松明のようなアイテムは用意されているのでしょうか?
八幡氏:
はい、あります。今回の試遊ではご用意はしませんでしたが、松明のようなアイテムがありますので、それを使って暗いエリアを探索できます。
二見氏:
たくさんあるわけではないですが、暗いところを明るく照らすライトのようなアイテムや、溝があったときにそれを乗り越えられるアイテムを使用するといったギミックも登場します。
──フィールド内にトラップのようなギミックや、「毒沼」のような危険地形は登場しますか?
二見氏:
はい、あります。プレイヤーが使用する武器にも敵の攻撃にも状態異常はもちろんありますが、このゲームはソウルライクじゃないんです。「アクションRPG」です。あくまでもそことは線引きしていて、アクションRPGとして楽しめるものにしています。
ただ、「ダンジョン」は登場します。例えばそこで宝箱を開けると、モンスターがたくさん出てくるトラップも存在します。逆に言えばそのトラップを利用してアイテムを集めたりとか、そういうことも可能です。状態異常に関しては敵が使ってくることが多いかと思います。
──「SAOらしい世界」の魅力を、あえて一言に凝縮するとどのような言葉になりますか?
二見氏:
「これは、ゲームであっても遊びではない」。
『SAO』のいいところって、あの生々しさだと僕は思っているんですね。僕の印象的なキャラクターのセリフで、“明日仕事行けないんだけど”みたいなものがあったりするんです。彼氏と連絡がつかないとか。
作中でも最初に配信者が出てきたりとかするんです。そういう人たちがリアルの生活をしているのに「ゲームから出られない」っていう話が『SAO』における生々しさなのかなと思っていて。ですが、茅場晶彦【※】から言わせてみれば「これは、ゲームであっても遊びではない」ので、そのギャップみたいなところは楽しみ方なのかなと思います。
現代のSNSにも似た体験があると思っているので、ユーザーさんが触れやすい内容になっているんじゃないかなと思います。
──本作のコンセプトはどこから立ち上がったのでしょうか。軸/核となる考え方やキーワードを教えてください。
二見氏:
軸としては“私たちは、確かにここにいた”っていう存在の証を証明したい気持ちがありました。『SAO』の世界に行きたいという気持ち、行ったときに何ができるのか、そこにいた証をどう残すのか? そういった感情がコンセプトの核です。
あの世界を自分たちが攻略しているあるいは、マッピングして世界を広げていく遊びだったり、ストーリーでも「私たちがここにいるからこそできることってなんだろうね」といった部分を、一般プレイヤーならどう感じるかの目線で体験してもらいたいと考えています。
──原作サイドとのすり合わせで、特に印象に残っているやり取りや、「ここで固まった」と感じたエピソードがあれば教えてください。
二見氏:
「現代ローカライズはしましょう」というお話はさせていただきました。
例えば、アニメを含めて『SAO』が登場した12、13年前に無かったものは積極的に取り入れたいというお話をいただいています。
ゲーム本編ではないですけども、作中で映像を録画できる機能と、現代のキャプチャー機能など、今の時代でニアリーイコールになれる形を原作側とお話をさせていただき、追加したエピソードはあります。
ですから、現代のプレイヤーが遊んでも遜色ない設定にはブラッシュアップできたんじゃないかなと思います。
八幡氏:
キャラクターの関係性とかも、今だからこそ刺さる部分があります。
──プロモーション映像について伺います。CGアニメーションを採用した理由は何でしょうか。
二見氏:
ゲームゆえに作っているモデルや世界観の情報量を増やさせていただいてるんですね。例えば「ボア」っていうモンスターも、ゲームならではの毛並みなどのディテールがあります。モンスターや背景など、『SAO』の世界観に合わせて、適切に情報量を増やしたため、それらをしっかり使ってあげたい。
制作する上で共有できるところを含めて、今回はCGアニメーションが1番良い落とし所なんじゃないかなということで、採用させていただきました。
ダウンロード版のアルティメットエディションを買うと、中にアプリケーションが入っていて、そこに設定資料やBGM、110分超えの映像が同梱される形です。映像は5.1chサラウンドにも対応しています。
八幡氏:
補足させていただくと、あくまでも“プロモーション映像”ですので、ゲームの発売前後に何らかの形で、ご覧いただけるようにしようかなと思います。
ただ、一時的に公開するものですので、手元に残しておきたい方向けの商品としてご用意させていただいています。また、“未公開のカット”も含まれるので、そこも楽しみにしていただきたいです。
──本日はありがとうございました!(了)
©2020 川原 礫/KADOKAWA/SAO-P Project
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