「絆の力で世界を救う王道ファンタジーRPG」……そんなキラキラした先入観は、『テイルズ オブ アライズ』を開始してすぐに打ち砕かれた。
『テイルズ オブ』シリーズは1995年から続く日本屈指のRPGとして名高いが、筆者はいままで触れてこなかったタイトルである。正直に言うと、本シリーズについては「アニメ調の少年少女らが仲間と絆を育み成長する姿が描かれている」くらいの知識しかなかった。
とはいえ、これだけ長く愛されているシリーズなのだから、きっと多くの魅力があるに違いない。であれば、ぜひともその絆を味わってみたい。
食わず嫌いばかりではいけないと思い、このたび2021年に発売された『テイルズ オブ アライズ』でようやくシリーズデビューを果たしたわけだが、そこで待っていたのは想像とはほど遠い、あまりにも “ギスギスした人間関係” だった。
公式サイトによると「鉄仮面に顔を覆われた青年と追われる少女が出会い、ふたつの星の運命を揺るがす物語がはじまる」と書かれていたため、てっきりこの男女を中心としたあたたかい仲間たちとの旅が始まると思っていた。しかし、なぜか異常に雰囲気が悪い。
どれくらい雰囲気が悪いかと言うと、つらい目にあっている仲間に対してヒロインが「足を引っ張るような道連れはいらない」と断言してしまうほどギスついている。こんな状態で、どうやって仲間との絆と成長を描くのだろう。
……ところが、筆者はこの胃の痛くなるような険悪な旅路の果てに、土下座して前言撤回したくなるほどの衝撃と感動を味わうこととなった。
なぜなら本作では、未熟な若者たちが過酷な奴隷制度からの脱却を目指す物語がしっかりと描かれていたからだ。
ということで、本稿ではシリーズ完全初見の筆者が本作をプレイして突きつけられた思わずツッコミをいれたくなる設定や、空気が悪いからこそ目が離せなくなる「ギスギスな仲間たち」が、真の意味で“自由への解放者”へと変わっていく様子を紹介させてほしい。
【ご注意】本稿には、魅力を伝えるうえでの最低限のあらすじや状況説明が含まれます。すべてをご自身で体験されたい場合はお気をつけくださいませ。また、本稿に掲載されている画像のキャラクターの衣装は一部通常衣装から変更されている部分があります。あわせてご了承ください。
文/TsushimaHiro
編集/柳本マリエ
※この記事は、『テイルズ オブ アライズ』の魅力をもっと知ってもらいたいバンダイナムコエンターテインメントさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
王道RPGだと思っていたら、胃が痛くなるほど空気が悪い
先述のとおり、筆者は「友情と絆のファンタジーRPG」を期待して本作のフタを開けたのだが、想像を絶するほど険悪な空気感に胃が痛くなりそうになった。というか、実際もう痛い。
というのも、本作は「痛みを感じない男」と「体に触れる者に激痛を与える女」というまるでパズルのピースが噛み合ったような奇跡のロマンティック(?)な設定とは裏腹に、お互いを拒絶し合う最悪のスタートで始まるからである。
その状況だったら運命を感じて熱い展開が見られると期待してしまう。
ところがこの少女、すべてを拒絶してくるのだ。ちょっと近づいただけでも「もう少し離れて」と徹底した塩対応を貫くのである。

ここで拒絶したらもうこれ以上に合う人はいないかもしれないのに。『テイルズ』シリーズってもしかしてこういう感じなの?
とはいえ正直なところ、その行動にも納得できる部分がある。なぜなら、痛みを感じない主人公があまりにも怪しすぎるからだ。
鉄仮面……ッ!?!?!?
「主人公の顔が見えない」ってアリなの?
たしかにこの見た目であれば、「もう少し離れて」という気持ちは理解できる。どうやら主人公には記憶がなく、痛覚もなく、極めつけにはこの「取り外すことができない謎の鉄仮面」をかぶっているという状況だという。
公式サイトに書かれていた「運命を揺るがす物語」は本当なのだろうか。

プレイ開始早々、不安しかない。
この見た目も相まって、主人公がヒロインに話しかけようとしても「見るな」「近づくな」「目的のために共に行動しているだけ」と拒絶されてしまうため会話すらまともに成立しない。
───どうしよう。
絆を育むスキがねぇッ……!!!
これ、大丈夫ですかね? 本作って、冒険・成長・絆の物語のはずなんですよね。
このままだと拒絶・拒絶・拒絶の物語で終わってしまう気がしている。
不安だよ。この子とうまくやっていけるか、不安だよ。
頼れる大人の退場によりパーティが崩壊しかけて本気で焦る
ここまではギスギスの連続だったが、途中から“社会経験が豊富で頼れる大人”が登場。「誰しも事情があるのだから」と主人公たちを導き、安心感を与えてくれるようになる。

ところが、そんな安らぎも長くは続かない。安定した現場は、大人がいなくなると崩壊する。再び、地獄のような雰囲気となってしまった現実に筆者は途方に暮れていた。
なぜなら取り残された情緒不安定な若者たちが、手を取り合うどころか互いへの不満を爆発させ、陰口すら叩き合う泥沼の喧嘩を始めたからである。
ギスギスな雰囲気で始まった旅でも、「せめてパーティメンバーが増えたらもうちょっと空気が改善されるのかな」と期待していた。しかしながら、それは幻想だった。
というか、ここからむしろ大幅に悪化する。
なんでよ。そろそろ絆のひとつが芽生えたっていいじゃない。
仲間が増えても、相変わらず「見るな」「近づくな」「関わるな」の姿勢を崩さないため、ほかのメンバーからはヘイトが溜まる。

雰囲気を悪くしていることは明らかなので、本人に直接ではなく主人公に対して「(あんなに態度が悪い子と)よく一緒にいられるよね」といった陰口も叩かれてしまう。
まるで崩壊しかけのサークルを見ているかのようで、お腹が痛くなってくる。
あまりにも空気が悪すぎて、ついには主人公が「こんなギスギスしてたんじゃ勝てるものも勝てない」と嘆いてしまうほど。
想像もしていなかった。
冒険・成長・絆を描く物語で「ギスギス」という単語を主人公が発することになるなんて……。
筆者もどうすればいいのかわからないまま旅を続けていると、このギスギスはついにピークに達する。それはとある仲間が失われたときだった。
大切な仲間を失ったことを嘆き、悼む主人公。その姿に対して、ヒロインは「私たちは戦っているのだから人が死ぬのは当然でしょ」と言わんばかりに冷徹な態度を貫き、さらには耐えられないのであれば「地元に帰ればいい」とまで言い放つ。
…………絶句。
もう、どうするのこれ。このすさまじい空気の悪さを前に、筆者はついに画面の前で頭を抱えた。敵の強さではなく、人間関係の破綻によって旅の継続が危ぶまれるという焦りを感じていた。
とはいえ、「戦っているのだから人が死ぬのは当然」という言葉も一理ある。
圧政に立ち向かうためとはいえ敵を倒すのだから、当然ながら仲間を失うこともあるだろう。だから、この言葉は正しい。だが、いまはその正しすぎることがただただ悲しい。

つらい奴隷生活からみんなを解放するためにはじまったこの旅のメンバーは、これまで背負ってきた悲しみや怒りを乗り越える術を知らない少年少女たちだ。
積み重なった感情は決壊寸前。このままで本当に旅を続けられるのだろうか。
「ただ悪いヤツを倒すゲーム」だと感じていた自分を殴りたい
さて、正直に言うと筆者は本作の物語の序章の段階では「勢いで進む大味な物語」と思っていた。
だが、中盤に差しかかるとこれまでの価値観を根底から揺さぶる重い展開に顔面を殴られたような衝撃を受けた。
勧善懲悪では片付けられない根深い搾取や欺瞞の構造を突きつけられ、綺麗事だけでは済まない現実を知る。すると、本作は想像していた王道ファンタジーとは違い、現実世界でも答えが出ない問題を考えさせられる“生々しい旅となる。
これまで、意地でもギスギスを乗り越えるという謎のモチベーションで遊んでいた筆者も、「彼らがどうやってこの世界を救うのか」を真剣に見届けたくなった。
ところが、その先に待っていたのはまた地獄だった。
表面上の平和に隠されたエグい真実は筆者の背筋も凍りつかせた。現場では、少年少女の物語であることを忘れさせるほどの絶叫と怨嗟が飛び交う。
それが、「う、うわぁー!」というレベルではない。
「ンギャアアアアアアアアンギヒィイイイイイイイイ!!!!!!!!」というガチの絶叫だ。
「声優さんの演技がすごい」といった感心すら吹き飛ぶほどの、本物の地獄がそこにあった。どうすればこの絶望的な空気から、彼らは前を向けるというのだろうか?
ありがたいことに、本作は私の疑問に対して明確な答えを用意してくれていた。
土下座して前言撤回させてくれ
終盤からエンディングにかけて、筆者は本作が「互いに許し合うこと」を伝えようとしていることを感じ取った。
あれほど絶望的だったふたりが、文字通り身を削りながら「歩み寄る」ことを選んだ結果、世界そのものの見え方を変えていく姿に、理屈を超えた感動を覚えたからである。
というのも、ともに旅をしてきたメンバーは奴隷、貴族、迫害された民族などが入り混じっているため、根本的に考え方が異なる。そんな一行が、ただひとつ「この世界をよくするため」という目的のために結束し、戦いに身を投じているからだ。
それぞれのメンバーが異なる環境で育っているため、感じ方や考え方、ものごとの捉え方や価値観も違えば衝突も絶えない。それでも彼らは歩みより、許し合い、本質的な問題へと目を向けて協力しあったのだ。
最初に「どうやって一組の男女が世界に影響を及ぼすんだよ」と斜に構えていた自分が恥ずかしい。彼らは、必死にもがいているというのに。もう、土下座です。
「このゲームで空気が怖すぎること以外で泣くことあるのかな」と思っていた自分をぶん殴りたい。ちゃんと感動した。
未熟で、未完成で、情緒も不安定な少年少女たちが、ようやく手を取り合って前へ進もうとしているからだ。彼らは不器用ながらも行動に移し、現状を変えるために必死に戦っていた。
その必死な姿を見ているうちに、いつしか彼らの葛藤を他人事とは思えなくなった。そしてエンディングを迎えるころには、彼らに向かって「頼むから幸せになってくれ」と心の底から願っていた。


あえて言葉にするのも野暮な気がしてしまうが、これが青春であり『テイルズ』なのかもしれない。
本作は、人の生み出す力や成長する過程がしっかりと描かれており、その道中で出会う仲間たちとの絆も見られる、まさしく“王道”のRPGだった。
本作が気になった方は、ぜひともダイヤの原石のような少年少女の歩む泥臭い旅路に身を投じてみてほしい。
また、本作は5月21日にNintendo Switch 2版が発売される予定だ。
長きにわたるギスギスを乗り越えてエンディングを迎えた彼らの後日談が見られる大型追加シナリオ「Beyond the Dawn」もあらかじめ収録されている。
これからNintendo Switch 2で本作に触れてみたい方にはぜひともおすすめしたい。
Tales of Arise™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.













