スクウェア・エニックスとKLabGamesの共同開発による新作スマホゲーム『ドラゴンクエストスマッシュグロウ』(以下、『DQスマグロ』)が、2026年4月21日にグローバル同時配信される。
指1本、縦持ち、オート攻撃。そう聞くと、定番の『Vampire Survivors』系ローグライトRPG(以下、ヴァンサバ系)の「ドラクエ版」を想像するかもしれない。筆者も最初はそう思っていた。
だが、実際にプレイを進めてわかったのは、このゲームの芯にあるのは意外にも“育成”だということだ。
ローグライト的なビルドの組み立ても、アクションの爽快感も確かにある。
しかしそれらは全部、ドラクエが長年積み上げてきた「レベルを上げ、装備を整え、もっと強い敵に挑む」というコアループに、スマホならではの味付けをするためのトッピングだった。
『DQスマグロ』は、ヴァンサバや『アーチャー伝説』の文法を借りながらも、最終的にどこへ着地しているのか。本稿で解説していこう。
ビルドはリセットされる。しかし積み上げたものは、消えない
一見、本作はローグライトRPGそのものに見える。その印象を作っているのが「冒険スキル」だ。
モンスターを倒すと落ちる「グロウ結晶」を集めてゲージを溜めると、ランダムに3種類の冒険スキルが提示され、そのひとつを選んで習得する。攻撃手段そのものが増えたり、発動条件付きのバフが乗ったり、効果はさまざまだ。
マジックボールに「ボール毒」と「ボールHP吸収」を重ねれば、ダメージ・状態異常・回復を兼ねた主砲が完成する。そうしたシナジーの組み立てもできる。
冒険中に取得できる「冒険スキル」はランダム。組み合わせ次第で効果は強力になるが、ステージを出ると0に戻る
この仕組み自体はヴァンサバ系でおなじみのものだ。どれだけ強いビルドを組み上げても、ゲームプレイを終了すると元に戻る──一見、何も積み上がっていないように見える。
ところが本作のキモは、ここから先にある。ゲームプレイ中の瞬間的な成長(=グロウ結晶による冒険スキル)とは別に、その外でじっくり積み上がっていく成長要素が幾重にも用意されている。
ステージクリアで経験値を獲得する「職業レベル」、専用素材で開放する「職業パネル」、素材で強化するごとに特殊効果が解放される「装備品」。これらに加え、特に奥が深いのが「メモリ」という装備品だ。
- 職業レベル。経験値を貯めるとレベルが上がっていく
- 職業パネル。職業毎に素材を使いアンロックしていく
「メモリ」はステータス上昇のほかに特殊効果を持つものがあり、武器の「いきなり冒険スキル」と組み合わさると、ステージ開始直後から複数の冒険スキルが発動した状態で走り出せる。
つまり、ステージをプレイする前の編成段階から、戦略が始まっているのだ。
ここに、ローグライト系タイトルとしての『DQスマグロ』の独自性がある。ステージ内で得られるスキルが光って見えるのは、ステージ外で積み上げた土台があってこそ。ランダム性と積み上げ、ふたつの軸を交差させるバランス設計に、本作の狙いがはっきり出ている。
- 装備品の強化。強化するとパラメーターが上昇するのはもちろん、特殊効果もアンロックされていく
- 各モンスター毎の「メモリ」というアイテムもあり、装備するとパラメーターに補正がかかる
育てれば、必ず抜けられる
この設計が実際に機能しているかどうかは、難易度のかかり方に如実に表れている。
本作は、育成要素をスキップしてゴリ押しで進もうとすると、すぐにゲームオーバーになる。冒険スキルの引きが多少良くても、装備強化石を集めず、メモリも整えず、職業レベルも据え置きのままでは、少し強い相手でも、あっさり詰むのだ。
逆に、メモリを厳選し、武器を強化し、職業パネルを開けていくと、同じステージが嘘のようにスルッと抜けられる。爽快感というより、じわじわくる手応え──コツコツ積み上げた成果が、ある閾値を超えたところで一気に効いてくる、あの感触だ。
メモリのランクアップや装備の強化など育成要素は幅広い。きっちりと育てなければ進めないバランスだ
この手触りは、ヴァンサバ系の「今回のビルド次第で抜けたり抜けなかったり」というギャンブル性とは別物である。むしろ、王道RPGの「レベル上げが足りないから戻って狩る」という、あの懐かしい手詰まりと突破のリズムに近い。
ローグライト的な一発勝負の爽快感を求めるなら、本作は違う。しかし、装備強化石を集める面白さ、メモリを拾って強化する楽しさ、武器種ごとに立ち回りが変わる発見──このあたりに惹かれるなら、深くハマれるはずだ。
立ち止まらなければ、攻撃できない
その育成を試す場となるバトルもまた、見た目のシンプルさとは裏腹に「攻め」のゲームだ。
『DQスマグロ』のバトルは、見下ろし視点のフィールドで主人公を動かし、押し寄せるモンスターを蹴散らしていく形式だ。通常攻撃はオート。プレイヤーが指で触るのは、移動と必殺技「スマッシュ」の発動タイミングくらいしかない。
ここまでなら、確かにヴァンサバ系の系譜そのものに見える。けれど本作には、似たジャンルの多くが採用していないひとつの大きな縛りがある。
通常攻撃を出すには、立ち止まる必要があるのだ。
移動中は攻撃が発動しない。敵の攻撃を避けるために動き回るだけでは、火力が出ない。だから、どこで立ち止まりどのタイミングで攻撃を通しきるかを、常に考え続けることになる。
敵の群れをひたすら蹴散らしながら逃げる「ヴァンサバ的な気持ちよさ」とは明確に違う、ヒット&アウェイの重い駆け引きがある。
実際に触ってみると、これは結構アクション性が高い。放置でゴリゴリ上がっていくタイプの爽快感ではなく、「立ち止まるリスクを取って攻撃を通す」楽しさ。本作の手触りは、ヴァンサバ系よりも、むしろ『アーチャー伝説』の”攻め”に近い。

加えて、パーティは最大3人編成で、操作キャラはいつでも切り替え可能。HPが減ったら控えに交代する、弱点属性に応じてキャラを変える、必殺技の発動タイミングを見極める。
こうした判断が積み重なり、「簡単な操作なのに、奥を覗くと意外と深い」──そんな構造が、本作のバトルには仕込まれている。
育成は重い。でも、スマホゲームとしての快適さは妥協していない
育成というと手間がかかって面倒そうだ、と感じるかもしれない。だが、その心配は無用だ。
作業的な周回はスキップ・オート任せにして、強敵や新しいステージに挑むときは手動に切り替える。このスイッチングのしやすさが、本作の快適さの核心だ。

スタミナがある限り使えるスキップ機能と自動周回機能が両方実装されており、手動プレイの途中でも任意のタイミングでオートに切り替えられる。必殺技の発動や冒険スキルの選択まで任せられるので、少し手を離さなければならない状況でも問題ない。
メモリ集めや装備強化石の収集にある程度の周回を前提とする本作において、こうした時短導線が完備されているのは素直にありがたい。
これは、ローグライトを借りたドラクエである
『DQスマグロ』は、コマンド式RPGでもなく、王道のアクションRPGでもない。ヴァンサバ系や『アーチャー伝説』の文法を借りつつ、その外側にドラクエ本来の育成ループを重ねることで生まれた、シリーズ初のフォーマットだ。
レベルを上げ、装備を整え、次の敵に挑む。あのコアループが、メモリやスマッシュという新たな要素をまとってスマホの縦画面に生まれ変わった。
もし「ローグライトって死にゲーでしょ? ドラクエに合う?」と思っている人がいたら、むしろ逆だと伝えたい。本作はローグライトというより、ローグライトの技法を取り入れたドラクエ流の新しい育成RPGである。
ヴァンサバ的な一発勝負のスリルを求めるタイプのゲームではないが、じっくり育てて、昨日詰んだステージが今日は抜けられる、その達成感を繰り返したい人には深く刺さるだろう。
『ドラゴンクエストスマッシュグロウ』はモダンなローグライトだけど、ちゃんとドラクエの味がする。4月21日の配信が楽しみな一作だ。














