『エースコンバット』シリーズの一番の魅力は「あれ、俺ってエースパイロットじゃね?」と錯覚してしまうほどの没入感だと思う。
リアルな空や雲の風景や、追いつ追われつしながら敵にかじりつくドッグファイトなども没入感を盛り上げてくれるが、個人的には仲間や敵パイロットがやたらと「エース」扱いしてくれることがすごく大きい。
シリーズを遊んできた人にはおなじみだと思うが、このゲーム、これでもかとばかりにプレイヤーをヨイショしてくれるのだ。
時には“伝承の悪魔”になぞらえられ、戦場に到着するや「このパイロット、できる!」「噂の奴が来てくれたぞ!」と敵も味方も大興奮。そうなると、こちらもつい「あ、そうか。俺ってエースだもんな!」という気分になってしまう。
特に今作では、ストーリー部分を語るシネマパートが一人称視点になったこともあって、操縦桿を握る前からパイロット気分が味わえる。
食堂などで一緒に食事をとる場面もあり、戦場の外でも仲間たちとやり取りできるのもアツい。主人公=プレイヤーであるひとりのパイロットとして、仲間と一緒に飛んでいる感覚を味わわせてくれる。
今作では『エースコンバット5』などの僚機指示システムが復活しており、自分が戦場をコントロールしているんだという感覚も気持ちがいい。なにより、僚機がしっかり活躍してくれる。
過去シリーズではなんとなくプレイヤー自身と物語の主人公の距離が遠くて、そのせいで僚機の仲間ともちょっと距離がある感覚だったのだけれど、今作ではそれがぐっと近くなっている。
こうなるとどうしても気になるのが、マジで誰にも死んでほしくない! ということだ。過去作のプレイ時には軽いトラウマもあったし……。頼むから、誰も死なないで欲しい。
今回、そんなシリーズ最新作『ACE COMBAT 8: WINGS OF THEVE』(以下、本文中では『エースコンバット8』)を先行プレイしてきたので、その魅力についてお伝えしていく。
また今回の試遊にあわせてプロデューサーの下元学氏、シリーズディレクターの河野一聡氏へのインタビューも実施しているので、こちらもあわせてお届けしている。
本作もやっぱり僚機が魅力的。頼む、誰も死なないでくれ
『エースコンバット8』はシリーズの伝統を保ちつつ、それを順当に進化させているゲームだが、過去作との一番大きな違いだと感じたのが、仲間との距離が近いことだ。
今作では、シネマパートが一貫して主人公の一人称視点になっており、僚機の仲間たちが生身の状態で登場する。食堂ではともに食事をし、こちらへ直接語りかけてきて、握手などの直接的なインタラクトもある。
つまり、これまで無線の向こうにいた仲間たちが、今作では明確に“目の前にいる”のだ。
顔を見て、声を聞いて、一緒に食事をして、機体を選んで、同じ空へ飛ぶ。そんなことをしているうちに、どんどん情が積み上がってしまう。
また個人的にかなり嬉しかったのが『エースコンバット5』を思わせる「4機編成&十字キー4方向」の僚機指示システムが復活していたことだ。
前方攻撃・分散攻撃・援護・特殊兵装のON/OFFの切り替えにわかれているが、前作よりも細かい指示が可能になっている。たとえば、「前方攻撃」を指示している場合、通常はプレイヤーがターゲットしている敵を攻撃目標にするのだが、2回押しすることで、ターゲットの前方周辺にいる“別の敵”を攻撃するよう指定することもできる。これがじつに、指示を出している感が強い。
単純にゲームとしても便利なのだが、戦場をコントロールしている指揮官の気持ちが味わえるのがかなり気持ちいい。「指示も出しながら、敵をさばく俺、うまくね?」と、エースパイロットな自分に酔える。
先行プレイの中で一通り指示を試してみたところ、今作は特に味方が強くなっている気がした。
前方攻撃では、目の前でミサイルを放ってしっかり敵を撃墜してくれる。分散攻撃では、強敵と思われる敵機のケツについてドッグファイトを仕掛ける。援護では、ピッタリ後ろを守ってくれる。とにかく頼もしい。
ミッションを終え、みんな大好きデブリーフィング画面に入ると、自機と僚機がどんなルートを飛行していったのかの軌跡を確認できるので、味方がいい感じに敵と戦っていたりするのを見るのも楽しい。どんな無茶な飛行をしても、しっかり追従してくれるのがちょっと申し訳ない。
主人公たちは4機1隊の編制でチームを組んでおり、僚機は主人公以外に3人。
博識で気配りができる“プロフェッサー”エリントン・バクスターは、頼りどころしかない兄貴分的な存在で、飛行中の無線通話も『エースコンバット』節とでもいえるウィットに富んだもの。
仕事人気質な“ノイズ”ウィリアム・コスターは、それほど饒舌ではないが、締めるところはしっかり締めてくれるといったタイプで、渋いカッコよさがある。
そしてまっすぐな性格で、とにかく可愛いターシャ。
ギャルじゃん。
えっちょっと待って、めっちゃ性癖を刺しにきている。あまりに可愛すぎる。これまでのシリーズではちょっと見たことないタイプな気がする。
金髪からピンクがかった色へと変わるグラデーションのウルフショートヘア。片足だけ裾をまくったストリートスタイル。幼さの残るフェイスライン。主人公のこともいきなりあだ名で呼んでくるし、なぜかひとりだけコールサインがなく、ずっと本名の「ターシャ」と呼ばれているのも可愛い。
戦場で何を惚気ているのか。敵機を見ろ。レーダーを見ろ。真面目に職務を果たせ。……なんて怒られそうですが、仕方なくないですか?
こっちは命を預ける僚機の話をしているのである。
彼女と同じ編隊で空へ上がれるのだから、それだけでも価値ある体験だと言わせていただきたい。
ちなみに、僚機としてどの戦闘機に乗ってもらうかもプレイヤーが選択可能なのだが、ハンガーで機体を選択するときには対面でどの機体に乗るべきなのを「さあ決めて」と話しかけてくる。
別に筆者がえこひいきするわけでは断じてないのですが、一番いい機体を渡しますとも。絶対に生き残って欲しいですから!
地上にいる時から空の上まで、ずっとパイロット。空戦の没入感もパワーアップ
もちろん本作の魅力は仲間だけではない。パイロットとしての没入感もさらに増している。
たとえばそのひとつが、シリーズではおなじみの大型兵器との戦いだ。今作では、そうした大型の敵と戦う際、機体全体にダメージの当たり判定が発生するようになっている。
過去作では大型機と戦う場合、「TGT」と指定されたコンテナにしかダメージを与えることができなかったが、今作ではなんとそれ以外のすべての場所にちゃんとダメージ判定がある。
機関砲でどこかしらに撃ち込むことができれば、しっかりダメージが蓄積されるのだ。弾痕もくっきりと現れるので、その細かさが現実感を生み出していた。
さらに、敵を撃墜すると、「連鎖破壊」も発生する。撃墜された敵機やその一部などが他の機体に衝突し、連鎖的な破壊効果を生むのだ。
狙い澄ました一撃で敵を落とすのも気持ちいいが、ときには「どこでもいいから当たれー!!」と祈りながら機銃を乱射し、巨大兵器へ立ち向かう。そうして連鎖的に壊れていく様は、実に爽快だった。
戦闘機の壊れ方、ミサイルの着弾音、戦闘機の撃墜音などもさらにクリアになっており、敵機を打ち落としている実感を強めている。スマートな戦い方ではないかもしれないが、それでも戦場を切り開いている感覚を味わえる。
空、機体、雲、爆発、そして音。そのすべてが、プレイヤーを「パイロット」にするための密度を増しており、空を飛ぶ体験そのものが、確かに進化している。
最初に驚いたのは、操縦席に乗り込み、空母から発進するまでのムービーシーン。FPSのように自分で歩けるわけではなく、視点を動かせるだけなのだが、動線が自然で、気づけば没頭してしまう。
太陽が照り返し、キャノピー越しにパイロットのヘルメットが映し出され、戦闘機が動き出す。あたりを見回すと、見送ってくれる整備士たちがいる。その場にいる登場人物も、背景も、すべてが現実的で、発進する瞬間には思わず緊張していた。
試遊部屋に座っているはずなのに、頭の中では完全に出撃前のパイロットになっていた。
やがて敵機が来襲し、エンゲージするなかで急旋回すると、VRモーションチェアに乗っているわけでもないのに、すぐそばを墜落した戦闘機が落ちる音や、グラグラと揺れるコクピットの視点が臨場感に拍車をかける。
特にヘッドホン越しに聞こえるエンジン音や衝撃音はかなり強烈で、視界だけではなく、耳からもコクピットの中に押し込まれていくような感覚があり、物理的なGなどもちろん発生していないのに、脳が勝手にGを感じているような錯覚がある。
ムービーシーンを見ているだけなのに、試遊部屋でひとり「Gを感じるぅぅぅ!!!」と情けなく踏ん張っていた。
お決まりではあるが、敵エース部隊の登場シーンの熱さも健在だ。超絶かっこいいBGMと、粋なジョークを飛ばしてくる無線。これからエンゲージする瞬間の高揚感を、しっかり煽ってくる。
シネマシーンの演出については、パイロットを正面から映すカットなども多用されていて、なんだか映画の一場面をみているような感覚にもなる。というか本作の僚機たちのヘルメットには、それぞれコールサインが記されており、もうどう考えてもあの映画だ。う〜ん、マーヴェリック!
いざドッグファイトが始まると、シリーズ初期から受け継がれてきた、敵とエンゲージする時の緊張感、強敵の背後についた時の支配感、巨大兵器へ挑む時の高揚感、現実的には無理だろうと思われる狭所でターゲットを撃ち抜く爽快感など、往年の持ち味は変わらない。
特に空を飛んでいて印象的だったのは、雲が前作と比べても非常にボリューミーになっている点だ。本作では雲の再現に「cloudly」という独自エンジンを採用しているらしく、雲の量感もパワーアップ。突入してみると、振動や画面の揺れ、操縦桿の不安定感などが伝わってくる。
なにより、雲を「抜けた」ときの気持ち良さがかなり強い。
雲に入る。視界が遮られる。機体が揺れる。抜ける。空が開ける。
それだけの流れなのに、妙に達成感がある。飛行しているだけではなく、空をこじ開けているような感覚だ。
また、先行プレイの最中に話を聞いて細かい再現だな~とおもしろかったのが、今作では何度も戦っていくうちに「機体が汚れていく」らしい。もちろん一戦ごとに洗浄してあげることもできるというのだが、あえて残して自分の戦いの勲章にする、といった楽しみ方もできそうだ。
このようなビジュアルの一新や、細部にわたるこだわりが、没入感をさらに高め、本作ならではの“深化”を感じさせる仕上がりになっていた。
伝説のエース「シーヴの翼」の名前を託され、借り物の名声を背負い込んだパイロットが、自分自身の操縦で本物のエースになる。その瞬間を体感できると、確信を持って言える試遊だった。
そして願わくば、その空の先で、僚機たちと一緒に帰ってきたい。
全員で。
頼むから、誰も死なないでくれ。
























