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『バーチャファイター クロスロード』が挑む「本当に新しい格闘ゲーム」を作るということ。格ゲーとアドベンチャーが融合した新ジャンル「ファイティングアドベンチャー」を作る挑戦。SGF現地プレゼンレポ

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米ロサンゼルスで開催されているSummer Game Fest 2026で、先日トレーラー映像とともについに正式タイトルが発表された『VIRTUA FIGHTER CROSSROADS』(以下、バーチャファイター クロスロード)に関するハンズオフプレゼンテーションが実施された。

開発を担当するRGGスタジオ(以下、RGG)より、本作のプロデューサーを務める山田理一郎氏と、『バーチャファイター』シリーズのブランド責任者である中屋年裕氏が登壇。期待を集める本作について、目指すビジョンや理念を語っていただいた。

取材・執筆/佐伯匠
編集/恵那

「蘇らせる」のではなく、「生まれ変わらせる」。セガの革新を担う伝説的タイトルが目指すビジョン

中屋氏:
さて、今回のプロジェクトをひと言で言うなら、RGGによってセガの伝説的タイトル『バーチャファイター』を蘇らせる、というものです。続編でも、リメイクでも、リマスターでもない。従来の格闘ゲームの垣根を超えた、まったく新しいゲームに生まれ変わらせる──それが私たちのゴールです。

まずは『バーチャファイター』シリーズのこれまでを振り返らせてください。セガは「創造は生命」という理念を掲げていますが、『バーチャファイター』の歴史は、まさにこの哲学を体現したシリーズです。

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画像はバーチャファイター – 株式会社セガより

中屋氏:
1993年に発売された初代『バーチャファイター』は、世界初の3Dフルポリゴン格闘ゲームでした。2D格闘ゲームが市場を席巻していた中で、その登場は業界に大きな衝撃を与えました。1994年の『バーチャファイター2』ではテクスチャマッピングと60FPSを実装し、ビジュアルクオリティとリアリズムが格段に向上。ローンチ後には日本で社会現象となり、「鉄人」と呼ばれるトッププレイヤーたちも輩出しました。

『バーチャファイター3』では当時最新鋭のCGテクノロジーとアンジュレーション、液体表現を導入。『バーチャファイター4』では業界初の「VF.NET」システムを採用し、日本中のアーケードをネットワークでつなぎ、戦績をICカードに保存するという、その後のアーケードゲームのスタンダードを生み出しました。そして『バーチャファイター5』ではAIベースのコメンテーターを実装。こうしてセガの歴史の中で伝説的な立ち位置を築いてきたシリーズです。

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画像はバーチャファイター4 – 株式会社セガより

中屋氏:
今回この新作を開発するRGGは、セガの中心的な開発スタジオのひとつで、深い人間ドラマと魅力的なキャラクターで知られる『龍が如く』シリーズで有名です。また、話題の最新作『STRANGER THAN HEAVEN』が来年1月に発売予定です。

『バーチャファイター』というセガの伝説的IPと、もっとも多産で急成長中のスタジオであるRGG。この2つの力を合わせて、まったく新しい『バーチャファイター』体験を世界中のプレイヤーにお届けすることをお約束します。

山田氏:
ゲームの中身については、私の方からお話しします。このプロジェクトに参加したのは約2年前のことです。ただ、バーチャファイターを復活させようとするプロジェクト自体は、それ以前からセガの中で長く存在していましたが、なかなかGOサインが出ず、難航している状態でした。

私が参加してから、「このプロジェクトはこう作るべきだ」という考えをチームに伝えていったわけですが、その際最初にチームに伝えたコンセプトが、「今までにない『バーチャファイター』を作る」「格闘ゲームの枠を超えるものを作る」ということです。特に日本では、格闘ゲームに対して「こうあるべきだ」というコアな固定観念が強い。その固定観念を壊して、枠を超えていかなければならないという意識でキーワードを設定していきました。

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山田氏:
一方で、作るにあたって絶対に守らなければならない「バーチャファイターのバリュー」があります。それが「リアリティ」と「イノベーション」の2つです。この2つが『バーチャファイター』のコアな部分だと思っていて、新しいものを作る際にも必ずここを守りたかった。

もうひとつ、RGGとしての強みは「ナラティブ」です。このレベルでナラティブを作れるスタジオは世界でもそう多くありません。だから同時に「『龍が如く』と同じものを作るわけではない」ということも、最初からチームに強く伝えていました。

つまり、バーチャファイターのコアバリューである「リアリティ」「イノベーション」と、RGGの強みである「ナラティブ」を掛け合わせて新しい体験を届ける──それがこのゲームのコンセプトです。

「プレイヤーの選択」がゲームの進行に大きく影響する、ナラティブドリブンなアドベンチャーに

山田氏:
もともと『バーチャファイター』にも設定やキャラクター、ストーリーは存在したんですが、これまでゲームの中ではほとんど語られてきませんでした。過去の設定を守っていくか、全部捨てて新しいものを作るか。私の前には2つの選択肢がありましたが、今回は過去の設定をリスペクトした上で、その延長線上にある作品として作ろうと決めました。

本作の舞台は、『バーチャファイター5』から10年以上が経過した世界です。かつては「J6」という組織が世界格闘トーナメントを開催し、「デュラルプロジェクト」を推進していました。しかし本作ではJ6はすでに崩壊し、世界には別の秩序がもたらされています。世界格闘トーナメントは開催されなくなり、かつてのファイターたちを覚えているのも、もはや一部の人間だけという世界です。

そんな世界の中で、本作の舞台として用意したのが「ヴィラサパラ」という東南アジアの街です。格闘技が歴史的に盛んなこの街は、マフィアが実効支配するカオスの土地です。ただ、ある事情から彼らの間では銃での抗争が禁止されている。だからマフィアたちは、お互いの揉め事を解消するためにファイターを使って決着をつける。その結果、この街ではファイターという存在が特別な価値を持っています。

アンダーグラウンドの格闘技は賭けの対象にもなっていて、一攫千金を夢見てこの街にやってくる人間も多い。街には複数のエリアがあり、大きなオープンゾーンを形成しています。ゲーム序盤の舞台となる中華街と、地下格闘技が行われる「ザ・ピット」と呼ばれるエリアがメインになります。

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山田氏:
本作のストーリーモードはアドベンチャーとして楽しめます。ただし、オープンワールドゲームではありません。『龍が如く』に近い「セミオープンワールド」のスタイルです。

ナラティブドリブンのアドベンチャーゲームである点は『龍が如く』と同様ですが、ゲームプレイの進め方は大きく違います。詳細はまだお伝えできませんが、ひとつ事前にお伝えしておきたいのは、「プレイヤーの選択がゲームの進行に大きく影響する」という点です。

サイドコンテンツやミニゲームも存在しますが、『龍が如く』シリーズが誇るサイドコンテンツやミニゲームの圧倒的なバリエーションとは方向性が違います。どちらかというと、メインストーリーとそれに付随するバトルに注力するのが、私たちの考えです。

プレイヤーの選択とゲームプレイが結果に影響する──そのゲームプレイを、私の中では「クロススタイル」と定義しています。これは『龍が如く』シリーズとは大きく違うものですし、プレイヤーに新しい体験を与えるアドベンチャーになっていると思っています。

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山田氏:
ストーリーとナラティブは、今まで『バーチャファイター』に完全に欠けていたものです。本作ではここを大幅に強化しました。RGGはもともとナラティブが強いチームですが、今回はさらにウェスタンライターも参加しています。スタジオとして本当に新しい取り組みです。

バーチャファイターにナラティブを与えるにあたって、私が考えたコンセプトは次の2つです。

1つ目が「モダナイズ」です。『バーチャファイター』の設定は90年代のカルチャーに強く影響されています。J6やデュラルプロジェクトは当時にはマッチしていましたが、今の時代に持ってくるとどうしても古臭くなってしまう。これを現代風にアップデートしていく必要がありました。

2つ目が「ビリーバブル」(Believable)、つまり「説得力」を作ることです。『バーチャファイター』の世界はどうやっても嘘の世界であり、現実にはありえない話ですが、そこにも説得力を持たせたい。これはRGGがこれまで取り組んできたことに非常に近い手法だと思っています。実際に桐生一馬みたいなヤクザはいませんが、でもプレイヤーはあのキャラクターを身近に感じられる。そういう説得力のある世界を描いてきたのがRGGです。

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この「モダナイズ」と「ビリーバブル」という2つのキーワードで、過去の設定を引き継ぎながら新しいものを作ろうと決めたとき、私が最もインスパイアされた作品が、HBOのドラマシリーズ『ウォッチメン』【※】です。

日本ではほとんど知られていない作品ですが、本当にすごいと思っています。スタッフに伝えた時も全然理解されませんでした。空から「イカ」が降ってくる世界をリアルに感じさせ、全身青のスーパーヒーローがかっこよくもないのに圧倒的な説得力を持っている。そういう意味で本当に衝撃的な作品で、今回の設定やストーリーラインを考える上で最も影響を受けた作品です。

とにかく格闘ゲームを超えて、ナラティブゲームとして評価されるものを作りたかった。そういうアプローチです。

※ウォッチメン(Watchmen)
ダークヒーロー「ロールシャッハ」が活躍する同名のDCコミックを原作にした、HBOのテレビドラマシリーズ。ドラマ版は原作の物語から34年後の現代を舞台にしている。

異なるトーンの物語を描く4人が主人公。その1人であるシエロは、「成長していく等身大のヒーロー」

山田氏:
本作は4人の主人公のオムニバス形式で物語が展開されていきます。ここでは、まず最初に触れる主人公として、シエロについて説明します。

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山田氏:
シエロはパラグアイに生まれ、アメリカに渡ったものの馴染めず、ヴィラサパラへと流れ着いた人物です。ボクサーとしてのバックグラウンドを持ち、ファイターとしてこの街で名を上げようとやってきましたが、なかなかチャンスをつかめず、八百長試合を受けながら日銭を稼いでいます。

家族や気の合う仲間と暮らしながら、どこか流されるように生きていたシエロですが、ある時八百長を破ってしまい、中国マフィアに追われることになる。ピンチに陥ったシエロと仲間たちを救ったのが、かつてのファイター・パイでした。これがシエロ編の導入ストーリーです。

トレーラーには、パイが振り向いて「あなたにはクンフーが足りないわ」と言うシーンがありますが、これはゲームのコンセプトを決めた段階から、「ファーストトレーラーには絶対これを入れたい」と言い続けていたものです。実際に完成して、自分でも本当にかっこいいと思っています。

山田氏:
シエロをどういうキャラクターにするかについては、チームで多くの議論がありました。最終的に目指したのは「等身大のヒーロー」です。プレイヤーが親しみを感じられる、特に初めて触れる人にも届くようなキャラクターにしたかった。

これに対してウェストチームのメンバーからは「アメリカのプレイヤーは最初からパワーがあってかっこいいヒーローの方がいい」という意見もあったのですが、私は日本的な「成長物語」というアプローチを選びました。「親しみやすく、成長していくストーリー」です。カンフー映画的な雰囲気もあるかもしれませんが、軸にあるのは彼の成長です。

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山田氏:
4人の主人公はそれぞれトーンが異なります。あるキャラクターはよりダークで厳しいトーン、別のキャラクターは探偵ものに近いトーン。ストーリーラインだけでなく、アドベンチャーパートの雰囲気もそれぞれ違います。各キャラクターの詳細はそれぞれの発表のタイミングでお伝えしていきますが、それだけバリエーション豊かなナラティブゲームプレイがあるということです。

また、トレーラーに登場する仲間たちは、必ずしもファイターというわけではありません。でも、そういったキャラクターたちの関係性もしっかりと描いていきます。それだけでなく、彼らとの関係性が実際のゲームプレイにも影響を与える部分が存在します。シエロ編以外でも多くのサブキャラクターが登場し、さまざまな人間関係を楽しめるのも、このゲームの本質のひとつだと思っています。

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「バーチャファイターは元々モダンなゲーム」。今作ではさらに1歩進み、「アケコンではなくパッドで誰でも遊べる」ことを重要視

山田氏:
最後に、バトルについてお話しします。トレーラーだけを見て「これは格闘ゲームじゃないんじゃないか」と思った方も多かったかもしれません。でも、このゲームはちゃんと『バーチャファイター』としてのベースを持った格闘ゲームで、そこは変わっていません。新しい取り組みなので理解されにくいかもしれませんが、そういうゲームを作っています。

アドベンチャーと格闘ゲームを融合させる際に、「1対1のバトルの連続でシナリオが進む」という形にはしない、と決めていました。それでは格闘ゲームとアドベンチャーが本当に融合したとは言えないし、プレイヤーに新しい体験を与えることにもならないからです。「多くの敵と戦うシチュエーション」をうまくシステムに落とし込むのは大きなチャレンジですが、ある程度形になってきていると思っています。

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山田氏:
そして当然、1対1のバトルも『バーチャファイター』の核にあります。従来のシステムの良いところを生かしながら再構築していますが、私が最も大事にしているポイントは、「パンチ・キック・ガードの3ボタンで、シンプルに楽しめること」です。これが最初の『バーチャファイター』の本質でした。格闘ゲームを遊んだことがない人でも入りやすかった、それが出発点です。そのコンセプトは今作でも受け継いでいます。

「このゲームはモダンな操作を入れるのか」とよく聞かれますが、私はこの質問に毎回違和感を覚えます。なぜなら、『バーチャファイター』はもともとモダンなゲームだからです。2D格闘ゲームに複雑なコマンド入力が増えていた時代に、突然「パンチ・キック・ガード」だけで遊べる新しいゲームが登場した。だから格闘ゲームを遊んだことがない人にも触れられた。それが最初の『バーチャファイター』であり、バーチャファイターは元々モダンなんです。

ただ、「だから今まで通りでいい」という話ではありません。アーケードスティックでの3ボタン+レバー操作は、アーケードでは遊びやすかった。でも家庭用ゲームとして考えると、必ずしも操作しやすいものではありませんでした。だから今回は、「パッドコントローラーで誰でも遊べて、初心者でも楽しめる」ことを第一に重視しています。

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山田氏:
バトル系のシステムについては昨年のTGSで発表していますが、今回のトレーラー映像にもそのシステムが反映されています。格ゲーコミュニティの人からすれば「もっと詳しく教えてほしい」という声もあると思いますが、今は新しいゲームのパッケージをお伝えしている段階です。システムの細かい部分は、改めてお伝えする機会があるので、もうしばらくお待ちください。

このゲームをひと言でジャンル分けするなら「ファイティングアドベンチャー」になるのかもしれません。ただ個人的には、ジャンル分けというのはあまり意味がないと思っています。とにかくこのゲームは「面白くて、誰でも遊べるもの」であることが大事です。ジャンルの枠を超えて、新しい体験だとプレイヤーが感じるものを作りたい。それが『バーチャファイター クロスロード』であり、私たちの新しいチャレンジです。

「バーチャが如く」とは言わせない。『龍が如く』とは違うものを作るという意識

──映像を見ると、『龍が如く』のスピンオフのようにも感じられる印象を受けました。RGGは『龍が如く』で知名度を上げてきましたが、この作品を立ち上げる上で、既存のコミュニティを遠ざけてしまうのではないか、という懸念はあったのでしょうか。

山田氏:
そういう懸念はもちろんありました。でも、プロジェクトを立ち上げて最初に「バーチャファイター新作をRGGが作る」と発表した時の反応が、私が想定していたものと全然違ったんです。どちらかというと「龍が如くスタジオが作るなんてすごい」という声が多く、RGGが『バーチャ』を作ることへの懸念は、思ったより少なかったというのが第一印象です。

おっしゃったような感想を持たれる方もいるかもしれませんが、私としては「バーチャが如く」と言われるのは一番嫌なんです。だからこそ、アドベンチャーやストーリーがあっても、「龍が如くとは違うものを作る」ということを最重要ポイントとして意識し続けています。

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山田氏:
パッと見て「龍が如くみたいだな」と思う人もいるかもしれませんが、ロングトレーラーやゲームプレイを見てもらえれば、全然違うものになるとわかってもらえると思っています。ですから、ゲームの全体像をきちんと伝えることが最も大事だと考えています。

中屋氏:
過去の『バーチャファイター』シリーズは、国内のアーケードからスタートしたタイトルがほとんどでした。でも今、世界中にバーチャファイターを愛してくれているプレイヤーがいる。そのことに対して、私たちは深くリスペクトしています。

だからこそ、世界のゲームプレイヤーが遊ぶものとして、「1人でも楽しく、長く、しっかり遊べるものを作る」という視点に立った時、今まで十分にできていなかったことが見えてきます。ストーリーだけでなく、言語対応や全プラットフォームへの展開といった部分をしっかりやっていくのが、今回のプロジェクトの大きなチャレンジのひとつです。格闘ゲームファンの方にも、世界同時に同じものを遊べる環境を提供できれば、満足してもらえると思っています。

──舞台が東南アジアになった経緯と、主人公シエロがパラグアイ出身である理由を聞かせてください。

山田氏:
舞台選びからお話しします。まず、格闘ゲームにはさまざまな国籍のキャラクターが登場します。そういう人たちが集まる場所には、多国籍なエリアが必要です。その時点で、日本は違うと判断しました。

かといって、ロサンゼルスのような街をRGGが描こうとすると、どうしても嘘くさくなってしまう。リアリズムをもって描き切れるものでもない、と思いました。

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山田氏:
そこから少し個人的な話になるんですが、私が最初期に行った海外の国のひとつがタイだったんです。その前にアメリカへも行ったことがありましたが、アメリカは「映画で見た世界だ」という感覚でした。でもタイで感じた雰囲気は全然違って、人々のパワーみたいなものを強く感じました。それ以来、東南アジアが好きになったんです。そういう「人々にパワーがある街」というイメージは、「ファイティング」というテーマと非常にマッチすると思い、舞台を東南アジアにしました。

次にシエロの国籍について。「今の時代の主人公」として誰が相応しいかを考えた時、複雑なバックグラウンドを持つ主人公の方が、今の時代にふさわしいと思いました。シエロはパラグアイ出身で、父親はアメリカ人。アメリカに渡ったが馴染めなかった──という設定が、今らしい主人公像だと判断したからです。「モダナイズ」というキーワードにも通じるアプローチです。

短いスパンでゲームを出してきたRGGだからこそ、開発メンバーにクリエイターとしての基礎体力がついている

──今作でかなり新しいことに挑戦できた理由として、『バーチャファイター5』からかなりの時間が空いていたことも影響しているのでしょうか?

中屋氏:
おっしゃる通りで、ベースゲームとしてはおそらく2009年から16年ほど空いていることになります。その間にゲーム業界の環境は大きく変わりました。実は、その間にも『バーチャファイター』シリーズで新しい試みをしようとしたことが何度かあったんですが、うまくいかなかったという経緯があります。

それを今この時点で形にするなら、世界のゲームプレイヤーに対して同じ体験を届けたい。そのコンセプトのもとで山田氏から提案があり、今のプロジェクトの方向性が決まりました。フランチャイズとして時間が空いていたからこそ、大きなチャレンジができたというのは、まさにその通りです。

山田氏:
作る側としては、時間が空いていることはディスアドバンテージです。ですが、「前の作品から引き継がなくても怒るユーザーが少ない」というアドバンテージもあります。ファンが求めているものを裏切るわけにいかないから、継続しているシリーズを大きく変えるのは本当に難しい。

でも私たちの場合、『バーチャファイター』のファンは「続編を出してくれるだけでも嬉しい」と思ってくれている。だから大きな変更を加えて「こういう新しいものはどうか」と提示した時に、「バーチャって新しいものなんだ」と受け取ってもらえたのが、情報を出してからの実感です。

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──RGGは開発テンポが速いですよね。どうしてこれほど次々に新作に取り組めるのでしょう?

中屋氏:
同じビジョンを見て、同じ方向性でものづくりに携わっているメンバーがいるから、最短距離で進めているのだと思います。それを毎年繰り返すことで、基礎的な力が蓄積されてきているのだと思います。

山田氏:
私が入社したのは1999年、ドリームキャストの時代です。当時は1年に1本タイトルを作る、というスピード感が当たり前でした。今のAAAタイトルはどんどん開発期間が長くなっていますが、私はたくさんゲームを世に出すことで成長してきました。

「面白い」「つまらない」というフィードバックを繰り返し受けることで、クリエイティブな能力は上がっていきます。RGGにはその「成長できる環境」があるんです。だから、『STRANGER THAN HEAVEN』と『バーチャファイター クロスロード』のような大作を、2本を同時に走らせているスタジオというのは、私の知る限り他にありません。それができるのは、短いスパンでゲームを出し続けてきたRGGだからこそだと思っています。

ドラゴンボールの「精神と時の部屋」に入っているような感覚、と言えば伝わるでしょうか。そういう感覚です。

キャラを登場させる判断基準は「このゲームでカッコよく出てきてくれるかどうか」

──本作ではストーリーモードを通じて新キャラクターの魅力を伝えるという手法をとっているように思いますが、格闘ゲームとして面白い手法だと感じました。これは意図的な設計なのでしょうか?

山田氏:
新キャラクターの魅力をストーリーで伝えるのは、完全に意図した設計です。歴史あるファイティングフランチャイズでは、新キャラクターが既存キャラクターを超えるのは難しいと思います。たとえば「ルークがリュウを超えるのは難しい」というのが正直なところです。

だからこそ、シナリオの中で新しい4人の主人公を好きになってもらう必要があります。ストーリーで魅力を伝えながら、操作にも慣れてもらう。それが「新キャラクターを主人公として設計した」最大の理由です。

──新たなキャラクターは、過去のキャラクターからインスピレーションを受けている部分もありますか?

山田氏:
過去キャラクターとのインスピレーションについては、私の実際の判断基準は「今回のゲームの設定の中でその登場がふさわしいかどうか」です。たとえば「シエロのアクションがMMA(総合格闘技)のストライカーに近いから、ベネッサが実装されるのでは」という声もありましたが、そういう判断軸ではありません。設定が先にあります。

もともと『バーチャファイター』では、「こういうアクションのキャラクターを作りたい」という発想からキャラクターが生まれ、キャラクターが格闘スタイルや流派を体現していました。でも今回は違います。「この世界でどういうキャラクターがかっこいいか」から出発しています。

パイで言えば、「年をとって中華料理屋のおばちゃんになっているあの人がパイだった」というのがかっこいいんじゃないか、というところからスタートしています。このゲームでかっこよく出てきてほしい──それが私の唯一の判断基準です。

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山田氏:
また、もうひとつ意識しているのは、やはり『ウォッチメン』です。リアリティラインを超えるようなキャラクターでも、説得力ある世界と説得力あるストーリーラインがあれば成立する。『ウォッチメン』のドクター・マンハッタン【※】のようなキャラクターでも、あの世界では完全に説得力を持っていた。

だから、リアリティのある世界を作ったからといって「このキャラクターは出られない」という制約にはならないと思っています。

※ドクター・マンハッタン
DCコミック『ウォッチメン』に登場するスーパーヒーローのひとり。超常的なパワーを持つ作中で唯一のヒーローで、姿はほぼ全裸、青く輝く肉体をもつ。

──今後、新たなキャラクターが追加される際も、ストーリーはしっかり作られていくのでしょうか?

新キャラクターが今後追加される際も、当然ストーリーをちゃんと作っていくことになると思います。今までにないリアリティのあるキャラクターを感じられるゲームにしないといけないので、新しいキャラクターが投入される際にも、それが感じられないといけません。

ただし、新キャラクターをどのような形で投入するかは、これまでのゲームとは違うアプローチになるかもしれません。そこはいろいろ考えながら計画を立てていかなければならないポイントだと考えています。

編集者
三度の飯よりゲームが好き。 HoN、LoL、Dota2におよそ1万時間費す。 きっとその時間でどんな資格も取れたけど、後悔はしていない。 なお下手の横好きの模様。
編集・ライター
ル・グィンの小説とホラー映画を愛する半人前ライター。「ジルオール」に性癖を破壊され、「CivilizationⅥ」に生活を破壊されて育つ。熱いパッションの創作物を吸って生きながらえています。正気です。

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