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『ウィッチャー3』ディレクターが手がける新作『The Blood of Dawnwalker』は、NPCと「特別な関係」になれる。しかし噛み殺してしまうことも【先行プレイ&インタビュー】

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バンダイナムコエンターテインメントより、9月3日に発売されるPlayStation 5、PC、Xbox Series X|S向けゲーム『The Blood of Dawnwalker』

本作は、中世ヨーロッパを舞台にしたダークファンタジーRPGで、プレイヤーの選択によって物語が変化する「ナラティブ・サンドボックス」を採用している。

それにくわえて、30日30夜という限られた時間の中で家族を救うという目的や、昼は人間、夜は吸血鬼として能力が変化する主人公など、ユニークなゲームシステムが特徴の作品だ。

『The Blood of Dawnwalker』レビュー・評価・感想:血を摂取できなければ渇きに苦しみ、自我を失うことも_001

本作を手掛けるのは、2022年にポーランドで設立されたRebel Wolves。現在は約160名が所属しており、『ウィッチャー』シリーズや『サイバーパンク2077』などに携わってきたベテランクリエイターが集結している。同スタジオのデビュー作として制作が進められているのが『The Blood of Dawnwalker』である。

Rebel Wolvesが目指しているのは、「シングルプレイヤーのストーリー重視型RPG」の制作だ。『The Blood of Dawnwalker』でももちろんアクション要素は多数盛り込まれているが、それだけではなく、じっくり物語を楽しめるような作品に仕上げられていた。

リリースに先駆けて、本作のベータ版を4時間ほどプレイする機会をいただいた。こちらの記事では、そこからわかったゲームの特徴や魅力について紹介していく。

なお、本作は現在もPCを含むすべてのプラットフォームで最適化が進められているほか、アニメーションやビジュアルのブラッシュアップ、ゲームバランスの調整などが行われている。そのため、本記事で紹介する内容は製品版までに変更される可能性がある点をご了承いただきたい。

また、記事の後半では本作のナラティブディレクターであるヤコブ・シャマレク氏へのインタビューも実施している。そちらでも興味深い話を聞くことができたので、あわせてご覧いただきたい。

文・取材/高島おしゃむ
編集/anymo

プロローグから引き込まれる重厚なストーリー

ゲームの舞台となるのは、黒死病が猛威を振るう14世紀のヨーロッパだ。本作の物語は、カルパティア山脈にあるサンゴラ谷から始まる。主人公のコーエンが暮らすサンゴラ谷は、吸血鬼の領主・ブレンシスに支配されており、人々は彼の血を飲まされる「血のミサ」と呼ばれる儀式に参加させられていた。

しかし、その儀式で血を飲むことを拒んだ母は殺され、家族もブレンシスに捕らわれてしまう。家族は30日後に行われるブレンシスの戴冠式で、血のいけにえとして捧げられる運命にあった。

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血の儀式の前から、心ここにあらずで食事も薬も口にすることはなかった母親。その後、悲劇が起きてしまう。

そうした中、主人公のコーエンは昼は人間、夜は吸血鬼の「ドーンウォーカー」という特異な存在となる。故郷を支配するブレンシスから家族を救うため、30日30夜という限られた時間の中で旅立つことになるというのが、大まかなストーリーである。

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今回試遊したのは4時間だが、そのうち3時間ほどは冒頭のプロローグ部分をプレイ。その後、オープンワールドが解放されたあと、1時間ほど自由にマップ内を探索することができた。ちなみに、プロローグ部分はチュートリアル的な内容でありつつも、物語部分も含めてじっくりと楽しめるような作りになっていた。

ゲームの舞台も独特の雰囲気を持っている。ダークファンタジーというと荒廃した街並みを想像しがちだが、主人公の住む村はどちらかというと田舎のような風景だ。草木が生い茂った山の中にあるような景色で、都会の喧騒とはかけ離れた世界が広がっている

今回はPC版でヘッドフォンをしながらプレイしていたということもあってか、雨が降り注ぐ中で村を移動している場面では環境音が臨場感たっぷりに聞こえ、世界観への没入感を高めてくれた。

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主人公と大きく関わるキャラクターたちも魅力的だ。主人公コーエンの父親であるピーターは、かつて傭兵として活動してきた人物である。家族思いの人格者であるだけではなく剣の腕前でも定評があり、その技術を息子のコーエンにも伝授している。

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コーエンの父親であるピーター。

もうひとり、プロローグ部分に登場するヒロイン的人物がアンカだ。

彼女はコーエンの友人であり、薬草学者でもある。コーエンの母親に飲ませるための薬を調合してくれたのも彼女だ。村から少しだけ離れた場所に住んでいるが、ラテン語を話すこともでき、世の中の事情にも詳しい。血の儀式で行われた惨劇の後、コーエンを手助けしてくれたが、その後、物語にどのような形で関わってくるのかも気になる人物であった。

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薬の調合だけでなく、豊富な知識を持ったアンカ。

4つの方向を選ぶバトルシステムを採用

このプロローグでは、単純にものを調べたり走ったりといったチュートリアル的な内容も含まれている。そのひとつがバトルシステムだ。本作では、「方向指定型戦闘方式」と呼ばれるシステムが採用されており、コントローラーならば十字キーで方向を選んだ後、攻撃や防御を行っていくことになる。

特に重要なのは防御するときだ。たとえば敵の兵士と戦う場合、こちらに斬りかかってくる前にどの方向から攻撃してくるのかが事前に分かる。それを見て十字キーを押しながらブロックボタンを押して、防御していくのだ。

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この「方向指定型戦闘方式」とは別に、従来の戦闘方式も用意されている。こちらはブロックボタンを押すことで自動で方向を選んでくれるというものだ。操作は少し簡略化できるが、デメリットとしてスタミナが減ってしまう。

1対1でのバトルならともかく、本作では複数の敵を相手に戦っていかなくてはならない場面に出くわすことも多い。中には背後に回り込む敵がいるなど、その動きも狡猾だ。そのため、なるべくスタミナを消費しない「方向指定型戦闘方式」をマスターしたほうがより有利にこの世界を生き抜いていけるだろう

また、左右からの攻撃を受ける直前に回避すると、スタミナを消費しないだけではなくこちらが攻撃を仕掛けるチャンスも生まれる。さらに「方向指定型戦闘方式」でパーフェクトブロックに成功すると敵が攻撃を受けやすくなるので、こうした基礎的なバトル要素を駆使しながら戦っていくことになるのだ。

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ときには武器ではなく、素手で殴り合うこともある。

人間と吸血鬼を繰り返しながらゲームをプレイ

先ほどもすこし触れたが、主人公のコーエンは昼間は人間として行動するが、夜になると吸血鬼になる

ここで少しだけ補足しておきたいのが、本作における時間の概念だ。昼夜など時間の進行要素が盛り込まれている通常のゲームでは、基本的に時間の進行は自動的に行われる。しかし、本作の場合は重要な選択肢を選んだときなどに時間が進んでいく仕組みが採用されている。

さらに具体的にいうと、昼と夜、それぞれ8つのコマに分かれており、特定の行動をするごとにそれが進む仕組みだ。つまり、時間というリソースをどの要素に割り当てるのかといったことが、物語全体にも関わってくるようになっているのである。

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こちらは地図を開いている画面だが、右上に時間の進み具合が表示されている。

コーエンの能力が大きく変化するのは、やはり夜の吸血鬼になったときだ。戦闘時のシステム自体は人間のときと変わりないが、剣とは別に鋭い爪で相手を切りつけることができる。また、瞬時に敵の背後に回るなど、トリッキーな動きをすることも可能だ。

吸血鬼の状態では、実は体力を回復する手段はひとつしか用意されていない。それが血を吸うことである。戦闘中に限らず、「貪欲な噛みつき」という技を繰り出して吸血することで、敵にダメージを与えるだけではなく自身の体力を回復することができるのだ。

これは実際に体験したことだが、プロローグで坑道を探索しているときに、複数のゴブリンのような敵に囲まれてしまいどうしても勝てないという場面があった。ゲーム中に死んでしまった場合、その直前でセーブした状況から再スタートとなるのだが、そのときに減ってしまっている体力は回復されない。つまり、毎回少ない体力のまま再戦を挑んでいたため、何度も負け続けてしまったというわけだ。

こうしたときに有効なのが、「貪欲な噛みつき」である。敵の集団がいるポイントから少し手前に戻ると、ときおりネズミのような小動物を見かけることがあった。

この小動物に「貪欲な噛みつき」を使って吸血することで、少しだが体力を回復することができた。あとはこれを繰り返していくことで、体力を万全な状態まで持っていくことができ、無事敵の一団も倒すことに成功した。

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逆に、人間のときにしか使えない技も用意されている。それが、アンカから伝授された「魂の強制」だ。こちらは死者と話すことができるという能力で、特定のヒントを得たいときなどに活用することができるというものだ。このように、人間の状態と吸血鬼の状態とでは異なる能力を使えるので、それぞれを活用しながらゲームを進めていくことになるのである。

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昼間と夜間、それぞれで使える異なる能力を最大限に活かしていこう。

スキルツリーでパークを取得してキャラクターを強化!

マップを探索していると、あちらこちらに「祠」を見つけることができる。こちらは保管庫やファストトラベルのポイントとして利用できるほか、「パーク」の項目からスキルツリーを解放していくことができる

本作のスキルツリーは、大きく分けて3つの系統にわかれている。

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「魔術」は主に昼間の人間の状態で使えるもので、回復や商品の価格が安くなるなど様々な効果が得られるものが用意されている。「剣術」は、体力など主に剣術に関するパークが取得できる。「吸血術」は、吸血したときの体力回復量アップなど、その名の通り吸血鬼の状態の際に使用できるパークを取得することが可能だ。

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こうしたパークを取得するためのスキルポイントは、レベルアップすることで獲得できる。そのため、レベルアップしたときには忘れずに「祠」を訪れるようにして、自身を強化していくようにするといいだろう。

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「祠」とは別に、ゲーム中にパネルを開くことで、様々な情報にアクセスすることが可能だ。たとえば、「日誌」では現在受けているクエストの状況などを確認することができる。次の目的がなんだったのか忘れたときなどに、簡単に確認できるのはありがたい。

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こちらで地図が見られるほか、「用語集」で分からない単語やキャラクターの概要などを確認することもできる。また、入手した装備などはそのままでは自動で身に付けることはないため、「インベントリ」で設定しておくことも必要だ。

これは余談なのだが、最初に父親の依頼で母親の薬を受け取りに行くときに裸の姿のまま外出したのだが、あとからスタッフの方に部屋に自分の服があることを教えられた。こうしたアイテムも見逃さないように手に入れておき、しっかりと身に付けるようにしよう。

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敵側の勢力も「宮廷」の項目から確認できる。
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初めて家の外に出かけるときは、忘れずに自室で服を入手して身につけておこう。

マップを探索していると、フィールド上で様々なアイテムを入手することができる。それらを使って、クラフトでアイテムを作り出すことも可能だ。このように、やりこみ的な要素も含めて、かなり遊び応えのあるシステムになっている。

ひとりひとり異なったプレイが楽しめるオープンワールド

濃厚なプロローグが終了した後、本作のメインともいえるオープンワールドが解放される。といっても「オープンワールド解放!」というようなアナウンスがあるわけではなく、シームレスに移行していった印象だ。

今回の試遊は、ひとつの部屋に複数のメディアが集まって行われていたのだが、最もプレイの幅が大きく出ていたのが、やはりこのオープンワールドに突入してからである。Rebel Wolvesでは「ナラティブ・サンドボックス」と呼んでいる部分だが、単なる器というだけではなくプレイの幅も大きく広がり、それが本作最大の特徴となっていたのだ。

とりあえずのゲームの目的はブレンシスがいる城を目指すことではあるが、こちらもどんなルートで行くかも含めてまったくの自由だ。途中、敵がいるような場所もいくつか用意されており、それぞれ殴り込んで戦闘を楽しむこともできる。もちろん、危険だと感じた場合はあえて避けるという選択もありだ。

ちなみに、道中でかなり手強そうな熊を見かけるシーンがあった。今回の参加者の中には熊と戦っている勇敢なプレイヤーもいたようだが、筆者は明らかにヤバそうだと感じたのであえて避けて通るようにした。

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通常のセーブとは別にクイックセーブも利用できるため、直前にセーブしてからとりあえず殴りに行ってみようといった楽しみ方もできる。特にオープンワールドに突入したばかりのときは、まだバトルシステムに慣れていなかったため、練習も含めて敵と戦うときに利用することができた。

そうした中で、酷い目にあってしまったのが沼地で出会った敵だ。ファンタジー世界に登場する爬虫類のような見た目をしているのだが、なんとこの敵、毒による攻撃を仕掛けてくるだけではなく、「貪欲な噛みつき」もできないようになっていた。まさに吸血鬼に対して相性の悪い相手だったのである。

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驚いたのは、「シャドウステップ」による移動だ。これは吸血鬼の状態でのみ使える特殊能力だ。こうしたオープンワールドの場合、山や崖などがある場所では、見えている場所であっても移動できない場合が多い。しかし本作では、シャドウステップによってある程度自由に移動できるようになっていたのだ。

このシャドウステップを簡単にいうと、瞬間移動のような技だ。たとえば、崖など普通にジャンプするだけでは距離が届かないような場所でも、簡単に移動できるようになる。指定できる移動先はあまり遠い場所は選べないものの、あらゆる場面で活用することができるだろう。

もうひとつ面白いのは、離れた場所の移動だけではなく、天井や壁を指定してその側面にくっついたまま移動できるところである。人間離れした吸血鬼らしさを感じられるアクションであった。

また、こちらは今回体験することができなかったが、PVなどを見るとコーエン自身が狼に変身して移動することもできるようだ。このように、新たなパークをどんどん習得していくことで主人公も強化され、プレイの幅も広がっていくことが期待できる。

このオープンワールド部分のポイントとして押さえておきたいのが、「偵察塔」である。こちらは上に登って周囲を確認することで、周辺にある3つのアクティビティを見つけることができるというもの。特に序盤は何をしたらいいのかわかりにくいので、こうした場所を利用して移動先を見つけるのも良さそうだ。

ただし条件があり、この「偵察塔」の上に登ることができるのは吸血鬼になっているときのみという制限がある。というのも、上に登るには「シャドウステップ」で垂直移動しなければならないためだ。もちろん「シャドウステップ」はスタミナを消費してしまうので、途中で休めるポイントを利用しながら登っていくことになる。

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ここまでが、今回試遊で体験できた大まかな範囲である。ゲームとしてはこれから本番が始まっていくという序章部分であったが、それでも十分にゲームの魅力を体験することができた。ちなみにゲームの難易度は、ストーリー、フェア、チャレンジ、デュエリストの4段階が用意されているが、今回はデフォルトのフェアを選択している。

ゲームとしてはストーリーの要素が強いため、アクションはそれほど得意ではないという人も、難易度を調整して十分に楽しめるような配慮がされている。これからさらにゲーム自体の精度も高めていくということなので、リリースが待ち遠しい。

『The Blood of Dawnwalker』ナラティブディレクター・ヤコブ・シャマレク氏インタビュー

ゲームの試遊終了後、本作のナラティブディレクターであるヤコブ・シャマレク氏にインタビューを実施した。

本作の特徴である「ナラティブ・サンドボックス」の考え方をはじめ、シリーズ全体の構想やプレイヤーの選択が物語に与える影響、世界観に込めたこだわりなど、プレイだけでは見えてこなかった数々のテーマについて話をお伺いした。

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ナラティブディレクターであるヤコブ・シャマレク氏。

──『Dawnwalker』のサーガは、ひとつの作品でひとつの物語が完全に完結しつつも、数百年の時を超えて、「プレイヤーの決断が次作の現代社会に引き継がれる」という野心的で、すごくワクワクする計画が明かされています。プレイヤーの選択が次回作にどう影響していくのか、現時点で話せる範囲で計画の一部を聞かせていただけませんか?

ヤコブ・シャマレク氏(以下、ヤコブ氏):
本日体験していただいたパートは第1部となります。中世から始まり、数百年をかけ、数作品を通して時が経っていきます。最終的には現代まで描く予定です。第1部では、ひとつの作品の中の重要な選択肢や背景が、次のゲームに持ち越されます。きちんとそれぞれのゲームが繋がっているという実感を持てるように、組み立てていく予定です。

我々は、それぞれのプレイヤーにとって違う体験になるように気をつけています。ゲーム内で母親がどんな様子だったのか、誰が血を吸われたのかといったことを確認してもらいたいです。ゲーム内に登場するキーとなるNPCですら、それぞれのプレイヤーごとに異なる体験になっています。

──吸血鬼というとコウモリのイメージがあります。本作では、象徴として赤い蛾のようなものが描かれていました。あれは何か関連性があるのでしょうか?

ヤコブ氏:
あまりネタバレしたくありませんが、蛾は別世界や異世界、別次元というものを表しています。この世界では、吸血鬼がそれと関連しています。

伝承やどこかで一冊の本にまとめられているというわけではなく、読み物であったりパズルであったり、世界中にいろいろな方法でバラまかれています。それぞれを組み合わせることで、全体像が見えてきます。私は考古学を少したしなんでいるので、絵画など過去のものも、うまく活用しています。

──ちなみに、今回のゲームとは関係なく海外では蛾はどんなモチーフとして扱われているのでしょうか?

ヤコブ氏:
もちろん、夜のシンボルのひとつです。しかし、光に惹かれると死に繋がってしまう。本作の主人公であるコーエンも欲に駆られている状態なので、その結果どうなるのか?……というところに繋がっています。

──これは世界観を演出するためのフレーバー的なものなのか、それともコーエンの物語にしっかり絡んでくるものなのでしょうか?

ヤコブ氏:
世界を表すフレーバー的なものになります。

コーエン自身はキャラクターとして成り立っており、彼自身にも過去があります。そして、家族に関する暗い過去も存在しています。しかし、プレイヤーによっては、そうした過去にまったく触れることなく終わることもあります。もちろん、深くまで掘り下げる人もいます。

──本作に登場するNPCと、特別な関係になることはできるのでしょうか? 夜に話しているときに、咬み殺してしまうような選択肢が出ますが、重要なときにそれを使ってしまうこともできるのでしょうか?

ヤコブ氏:
いろいろなキャラクターと仲良くなったり、いずれは特別な関係になったりすることも可能です。ですが、血に対する飢えというメーターが存在します。夜に出会うキャラクターはすべて血を吸うことができるので、気をつけなければなりません。

コーエンというキャラクターは半分人間、半分吸血鬼ですが、私たちはそのバランスをきちんと考えたいと思いました。吸血鬼のときは自由にスーパーマンのように動くことができます。しかし、気をつけないと大事な人も咬み殺してしまいます。このように、メリットとデメリットが存在するバランスを作りたかったのです。

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──本作は、プレイの仕方によって展開がかなり変わるとお聞きしました。そのため何度も繰り返し遊ぶことができると思いますが、1回当たりの大まかなプレイ時間はどのぐらいになるのでしょうか?

ヤコブ氏:
さまざまなプレイ時間が考えられます。

我々の開発の柱のひとつとして、「見えない壁を作らないようにする」というものがありました。プロローグが終わると、オープンワールドが開かれます。本当に自由になります。家族を救うという目的は存在しますし、かなり難しいものの最初の日に家族を救うことも可能です。

また、プレイスタイルによっても異なります。たとえば探索を自由に楽しむこともできますし、スキルやレベルアップを最大まで極めることもできます。探索する場合は、60時間以上楽しむことができます。

それから、大事なことのひとつとして、敵はただそこにとどまっているわけではありません。敵対勢力に対するメーターが用意されており、アグレッシブにプレイするほどメーターも上がり、プレイヤーに対してアグレッシブになるなど行動が変わっていきます。敵対勢力のメーターが高くなりすぎると、敵側から賞金首としてこちらを倒しに来るということもあります。

──30日以内に家族を救わなくてもゲームを続けることができるとお聞きしました。30日が過ぎてしまった場合、また別の目標が出てくるのでしょうか?

ヤコブ氏:
30日が過ぎてしまったら、家族は死んでしまいます。その次は復讐劇という目的が出てきます。

──逆に30日以内に家族を救った場合、ハッピーエンドになるのでしょうか? また、そこから新しい目標が生まれるのでしょうか?

ヤコブ氏:
あまりネタバレはしたくないものの……家族を救う方法も複数あります

家族を救ったあとにサプライズがあり、その地域や家族がどのように変わっていくのかを見てほしいです。黒死病の時代で、なおかつ吸血鬼が存在するので、それがどうなるのか……。キャラクターにはさまざまな選択がありますが、それらによって地域の状況の結果も複数存在します。

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──吸血鬼のコーエンと人間としてのコーエンとで、家族と一緒に暮らすときの幸せの在り方も異なると思います。家族を救うというのは、ひとつの意味だけではないと感じました。

ヤコブ氏:
ハッピーエンドだけではなく、グレーゾーンがある物語が好きなんです。

善と悪を単純に分けられない部分も描きたいと考えています。もちろん、コーエンが人間性を保つことも本作では重要な要素です。プレイヤーが吸血鬼としての欲望に身を任せて行動すれば、それに応じた展開が待っています。いっぽうで、人間性を保とうとするプレイを続ければ、ゲームが気づいてその姿勢に応じた物語が描かれていきます

たとえば、吸血鬼として多くの血を吸えば、さまざまなスキルを獲得できます。これはプレイスタイルにも大きく関わる要素です。そのいっぽうで、本作にはモラルの概念もあります。倫理観を意識した行動を取っていれば、その選択に沿ったストーリーが展開されます。

──急に誰かを助けるようなことをしても信じてもらえなかったり、逆に急に悪いことをしたらショックを受けたり、そういったNPCの反応はありますか?

ヤコブ氏:
キャラクターによってはそういう状況もあります。すべてではありませんが、「裏切り」という行為にショックを受けるキャラも存在しています

私自身の考え方、ゲームの描き方としては、選択の重さを重視しています。ゲームが提示した選択肢に対してプレイヤーが悩み、どの選択肢をどのような気持ちで選ぶか。そして、選択の結果が起きるということをすごく重視しています。

とある選択肢を選んだとき、ゲームはいわゆるネガティブな反応をしたかもしれません。夜寝る時に、「これは本当にいい選択だったのか、悪い選択だったのか」ということをあなた自身に悩んでもらうゲームを作りたかったのです。

──黒死病の蔓延する14世紀という陰鬱な時代に、吸血鬼の退廃的なモチーフを重ねていますが、この時代と世界の手触りを作るうえで、ビジュアルや音楽で最もこだわった点はどこでしょうか? 具体的なインスピレーション元はありますか?

ヤコブ氏:
まず14世紀という舞台自体が、黒死病だけではなくさまざまな宗教的な問題や戦争、環境の問題などもあり、人間もふくめボロボロの状態です。吸血鬼はそうした悪などを表したものです。いわゆる封建時代、領主がいて貴族がいて、労働者からもいろいろと吸い上げています。

ビジュアル面に関しては、そうした中世の絵画にインスピレーションを受けました。ゲームをプレイしているときによく見てもらうと、絵や本などはそちらをモチーフにしています。欧米のRPGは、英語圏のファンタジーがメインになります。私たちはできるだけ、東欧の伝承をうまく取り入れて、ほかの英語圏のRPGとは異なるユニークなものを表現したいと考えました。

サウンド面では、カルパティア地方の音楽にインスピレーションを受けています。メンバーのひとりに音楽家がいて、見たこともないような楽器をいっぱい持っています。そちらを実際にゲームでも使用しています。

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──本作では、「ナラティブ・サンドボックス」が重要なものとしてアピールされていました。そちらを作るのにどれぐらい苦労されたのでしょうか?

ヤコブ氏:
とても難しかったです。既存のオープンワールドは大きな世界がありクエストがありますよね、それをさらに広げました。私自身は、すべてが初めてで自分でそれを作りあげて学んでいくことを楽しんでいます。TRPGのアイディアも盛り込んでおり、選択肢がAかBかというだけではなく、「あなたは何がしたいんですか?」という問いも表現したいと考えました。

たとえば、クエストをこなした後で別の場所にいったときにどうなるのか。飢餓に負けてNPCを殺したあとに行くとどうなるのか……そうした繋がりを確認するのが、重要であり、大変な部分です。

「ナラティブ・サンドボックス」は今後、我々のスタジオとして重要なひとつになると思いますし、これをキーにしていけたらと考えています。

──プロローグで母親に薬を与えるときに、以前に聞いた手順通りに作ることができるか試されるような場面がありました。このように、しっかり話を聞いているか試すような場面はゲーム中に他でも出てくるのでしょうか?

ヤコブ氏:
我々にとって、この要素をゲーム序盤に入れることは重要でした。というのも、プレイヤーの行動には必ず結果が伴うこと、そしてそのためには相手の話にしっかり耳を傾けることが大切だと、最初に伝えたかったからです。そのため、本作には相手の話をよく聞かなければ先へ進めないクエストも用意しています。

このプロローグでは、ほかの種族とも出会います。ひとりはツノが生えた種族、もうひとりは小柄な種族です。それぞれ独自の文化的背景があり、それを理解することで、彼らとの関係を深められる可能性が高まります。住民の話に耳を傾け、周囲を調べ、とある絵画に込められた意味を理解することで、深い関係を築いていけるのです。

──人間の状態と吸血鬼の状態とで、パワーのバランスはどのように取っているのでしょうか?

ヤコブ氏:
昼間の人間の状態では、魔法で死者と話すことができます。死者と話すことで、さまざまな謎やロアをより深く理解することができるようになります。もちろん、昼間ならば誰かを咬み殺す心配もありません。

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──主人公のコーエンは、ビジュアル的にも性格的にも魅力的な人物に見えました。主人公にさまざまな選択をさせるということで、バランスを取るのに気をつけた部分はありますか?

ヤコブ氏:
コーエンを作るときに、彼がどのようなキャラクターであるか我々の中でもいろいろな話をしました。「シニカルな強者」というキャラクターがよくいますよね。ただ、それとは少し異なるキャラクターを作ってみたかったんです。自分の感情をオープンにして話す、フレッシュなキャラクターです。

彼の特徴のひとつが、共感です。彼は人の話をきちんと聞くし、それに対して相手のことも考えることができます。現実と同じように選択肢によって何かが変わるかもしれないという、心の中の躊躇をしっかり表現したいと思いました。そうした悩ませる選択肢を作りたかったのです。

主人公自体を、善悪という単純な図式ではなく、そのキャラクター自身が抱える難しさとして、そしてプレイヤーが感じる、善悪とは関係のない難しさとして、きちんと表現したいと考えました。プレイヤー自身がゲームを通して、さまざまなジレンマを経験できるところが、ビデオゲームの素晴らしいところだと思っています。

「親近感のある人」、例えるなら道を聞きやすい人を作りたいと考えました。オッドアイになっているところも、半分人間、半分吸血鬼ということを表しています。

──ネズミの血を吸ったときに、コーエンがまずそうなリアクションをしました。血の質は気にしたほうがいいのでしょうか?

ヤコブ氏:
人間の血が一番栄養があり、HPも一番回復しやすくなっています。動物は、人間と比べるとすこし質が下がります。吸血鬼の血も吸うことができますが……そちらは全く別の話になるので、ゲーム内で確かめてみてください

──モラル的な話かもしれませんが、家の中に入ったときにパンが盗めるようになっていました。これは盗んでしまったら、何か影響があるのでしょうか?

ヤコブ氏:
盗みは影響がありますが、単純なシステム的なものです。いっぱい盗んでも罰金程度です。ゲームのモラル的な部分は、血を吸うことに関してのみ影響を与えます

──作中の時間が進むことで、取り返しのつかない要素や、受けられなくなるクエストは出てくるのでしょうか?

ヤコブ氏:
いわゆる「取り逃し」が発生する場面は、数少ない状況でしか起こりません

それよりも起こるのは、NPCを長く待たせた場合に、その行動に応じた結果が生まれることです。30日というメインの制限とは別に、クエストごとにも時間は流れています。依頼を受けたからといって相手がいつまでも待ってくれるわけではなく、その間にも状況は変化し、結末も変わっていきます。緊急性というものをゲーム内で表現したかったんです。

時間制限がプレイヤーにプレッシャーを与えることは理解しています。しかし、私たちはそれをストレスではなく、世界への没入感を高めるための仕組みとして取り入れています。時間に限りがあるからこそ、選択に重みが生まれるよう設計しています。

──最後に本作の発売を楽しみにしているファンに向けてメッセージをお願いします。

ヤコブ氏:
私たちは、日本のプレイヤーが本作を遊べるようになること、皆さんの感想を見ることを楽しみにしています。とてもパッションのあるプロジェクトなので、ぜひ楽しみにしてください。

 

ライター
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。
編集者
3D酔いに全敗の神奈川生まれ99’s。好きなゲームは『ベヨネッタ』『ロリポップチェーンソー』『RUINER』。好きな酔い止めはアネロンニスキャップとNAVAMET。
Twitter:@d0ntcry4nym0re

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